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いろいろレビュー(旧サイト)

本と映画とときどき日記

生協の白石さん

2010年01月07日 | エッセイ

流行ったのは3~4年ほど前でしょうか。
本屋で立ち読みして、ほのぼのした気持ちになったのを覚えていますが、
最近運よく手に入ったのでじっくり最後まで読み通しました。

東京農業大学の生協で働くなぞの人物、白石さん。
学生から寄せられるいろんな要望(?)に「一言カード」で心温まる返事をくれます。


生協への質問・要望、意見
「仙豆がほしい」

生協からのお答え
「大豆や小豆すら品揃えしていない生協に仙豆など望むべくもありません。
 空想上の豆とはきっぱりと決別し、日頃からの滋養強壮に励んで下さい。」


すばらしいセンスと人間性に脱帽です。

人間の覚悟

2009年11月22日 | エッセイ

五木寛之さんの本。
タイトルは重そうですが,中身はわりととっつきやすく,さらさら読めるエッセイです。

内容をかなりおおざっぱにまとめると,「『諦める』ことの推奨」です。
ただし,それはギブアップというネガティブなイメージではなくて,
「事実を真正面から受け止める」ということを意味します。
(本書では「明らかに究める」ということばを使っていました)

例えば,今の時代は成長期に比べるとどうしようもない状況ですが,
これに対して五木さんは,「躁の時代は終わり,鬱の時代になった」
ということをちゃんと受け止めなきゃだめ,と言っています。

また,仕事や恋愛が思い通りにいかなくても,「人生は憂いに満ちているもの」と理解する,
他人に親切にしたのにリターンがなくても,「そういうもんだ」と思わなきゃいけない,といったことを説いています。

いろんな思想が引用されていましたが,中でも親鸞の考え方と五木さん自身のの戦時体験が
大きなバックボーンになっていると感じました。
「もっと要領よくがんばりなさい」みたいな啓発本が多い中で,ちょっと後ろ向きな感じもしますが,
個人的には「他力に任せて諦める」という五木さんの考え方に共感します。

むくどり最終便

2008年12月06日 | エッセイ
池澤夏樹のエッセイ集、「むくどり通信」シリーズ。
今回がはじめてでしたが、いきなり最終便を読みました。

エッセイ自体は週刊朝日に連載していたもので、今回のは1999年に書かれたものらしいです。
なのでトピックはちょっと古いものですが、それでも今から振り返って見るとおもしろいものでした。
特にコンピュータ関係の話とかは、ほんとに10年くらいで進んだことを実感する。

全体的には当時著者が在住していた沖縄関係の話が多かったです。基地問題とか、沖縄ことばとか、太田知事のこととか。
そのほかにも、スパイスから作るカレーの話とか、化石の話とか、双眼鏡・カメラの話とか、ポル・ポトの話とか、発電システムの話とか、とにかく守備範囲が広いです。すごいですな。
世の中にはちょっと考えればいろいろとおもしろいことがあって、関心を持ちたいと思うのですが、実際はなかなか余裕がない。もったいないことです。

池澤さんは(作家だから当然なんだろうけど)ことばの使い方が豊か。
以前、ことばが豊かな子どもほどケンカしないって聞いたことがありますが、
大人も同じようなものかも。
テクニックがどうとかではなく、ことばの使い方には人間性が表れる。

できればムカつかずに生きたい

2008年10月18日 | エッセイ
田口ランディのエッセイ集。
もともとは2000年にでたものなので、「ひきこもり」「いじめ」「プチ家出」など、トピックとしてはひと昔まえのものが多かったです。

田口ランディは、以前に友人の勧めで『コンセント』を読んで知ったのですが、かなり衝撃的な作品だったのを覚えてます。
特にひきこもりの兄が死んで腐乱していく描写がとてもリアルで、強く印象に残りました。

著者のことをよく知らなかったのですが、今回のエッセイの中でこのモデルが実の兄だということを知って、驚きというかショックのようなものを受けました。

エッセイの中身は著者も言っているように、とても個人的な体験とそこから生まれた考えを書き綴ったものですが、特に前半では「家族」の話が多く取りあげられています。
ひきこもりの兄の死、酒を飲んでキレる父親、両者の仲たがいで板ばさみになる母。
こうした壮絶な実体験から『コンセント』が生まれたんだなぁとしみじみ・・。

家族問題もそうですが、多くのテーマに対してとても正直に自分の考え方が書かれたものだと思います。
「なるほど、そういうふうにとらえればいいのかもね」と気づかされるものもいくつかありました。
個人的には「まっすぐな言葉の模索」というのにふんふんと納得。

田口ランディは盗作疑惑なんかでも話題になったようですが、よくわらないのであまり気にせず。
とにかく本作は「読んでよかったな」と思いました。

LOVE&FREE ―世界の路上に落ちていた言葉

2008年09月05日 | エッセイ

何年か前に立ち読みして買った本ですが、今でもことあるごとに開いています。

アメリカンバーを開き、出版社を設立し、バンドを組み、その後2年間に渡って世界を放浪した高橋歩の冒険旅行の記録。

オーストラリア、東南アジア、ユーラシア、ヨーロッパ、アフリカ、南米、北米、そして日本。
それぞれの場所で残した詩と写真をまとめたのが本書ですが、どちらもほんとにすばらしいです。
というか、詩と写真が両方あってこそ、伝わるものが何倍にも感じられるような気がします。

はじめから読まなくても、ぱらぱらめくって目についたページを見てみるだけでも楽しいです。
必ず「旅に出たい~!」って気分になります。

お気に入りをひとつ。

   夕陽に感動する余裕を持って、毎日を生きよう。
   夕陽は、いつもそこにある。

「はっ!」っと思った人は明日夕陽を見てみましょう。