ある日の気づき

ショルツェのIUT理論批判への望月の反論

目次
はじめに
0. 他文書参照時の記号
1. 望月が批判した NHK スペシャル後半のバカバカしさ
2. 京都でのショルツェらの言動について
2.1 打ち合わせにおけるショルツェらの異常な態度
2.2 ショルツェらの IUT 理論への根本的な誤解
2.2.1 (FM1) : 根本的な誤解 (Fundamental Misunderstanding) 1
2.2.2 (FM2) : 根本的な誤解 (Fundamental Misunderstanding) 2
2.2.3 (FM3) : 根本的な誤解 (Fundamental Misunderstanding) 3
2.2.4 誤解原因の候補 (Possible Causes for these Misunderstandings)
3. 望月自身による「ショルツェらのレポートの誤りを指摘した文書」から
3.1 IUT 理論と遠アーベル幾何の関係を無視した事が問題の元凶
3.2 ショルツェらのレポートが全くのデタラメである証拠
3.2.1 [Cmt2018-05] (C15)
3.2.2 [Cmt2018-05] (C16)
3.2.3 [Cmt2018-05] (C17)
3.2.4 [Cmt2018-05] (C18)
おわりに/その後どうなった

はじめに^

本記事の主目的は、ショルツェ (Scholze) とスティックス (Stix) が 2018年3月、京都での
望月+星との打ち合わせ後に執筆したレポート(後述)の(特に次の意味での)間違いがどこか
*できるだけ素人にも確認しやすいように*記述すること。
「系3.12の証明論理を、論文に書かれている通りには、追えていない。間違って想像した、
(あるいはデッチ上げた?)実際の IUT 理論とは無関係の内容に基づいて、IUT 理論への
誹謗・中傷をしてしまっている。」

上記の論点についての記述内容は、基本的に望月のレポート [Rpt2018] およびショルツェらの
レポートへの望月のコメント [Cmt2018-05]と [Cmt2018-08]、特に前者を参考にした(というか
和訳して引用しているだけの部分が多い ^^;)。数学的ではない事(e.g. 関係者の心理など)では、
筆者の私見が比較的多い。

0. 他文書参照時の記号

0.1 2018 年3月の打ち合わせに関する望月のレポートを参照する際の記号
[Rpt2018]
[Cmt2018-05]
[Cmt2018-08]

0.2 ショルツェらのレポートを参照する際の記号
[SS2018-05]
[SS2018-08]
[ZBL-S2021]

0.3 本ブログの関連記事を参照する際の記号
[IUT2ABC01]:ABC予想は確かに証明されていると信じられる理由
[IUT2ABC02]:ABC予想は確かに証明されていると信じられる理由(2)
[IUT2ABC03]:読書ノート:ABC予想入門(黒川 信重/小山 信也【著】)
[IUT2ABC04]:読書日記:黒川信重,小島寛之の「21世紀の新しい数学」
[IUT2ABC05]:読書ノート:「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」
[IUT2ABC06]:宇宙際タイヒミュラー理論についての覚え書き(1)
[IUT2ABC07]:宇宙際タイヒミュラー理論についての覚え書き(2)

他の参考文書に関する記号は [IUT2ABC06] で示したものに準ずる。
ただし、本記事が主に参考にした望月の文書で別の記号で指示されているものについて、
以下に対応を示す。

望月の文書の [Fsk] ↔ 本記事での [FI02]

1. 望月が批判した NHK スペシャル後半のバカバカしさ

# 本節は、もともとは [IUT2ABC06] の一部として執筆した。
# 望月によるブログでの批判および批判対象となった番組の Web ページは下記。
https://plaza.rakuten.co.jp/shinichi0329/diary/202205020000/
https://plaza.rakuten.co.jp/shinichi0329/diary/202301010000/

https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/blog/bl/pneAjJR3gn/bp/pBg9n63J4m/
アデレード大学 助教 デイビッド・ロバーツ 博士「望月の理論で奇妙なのは、
まず全く同じものだといいながら、次に、それらを完全に異なるものとして
扱う点です。数学では同じと見なせるものは同じとするのが原理原則です。
同じでありながら同時に異なるものなんてありえるのか、真剣に考えてみましたよ。
いやいや、絶対無理ですよね」

この人物の言い草が* IUT 理論について何一つ調べず*奇妙な妄想に耽る事を「考える」と
称しているだけなのは、[IUT2ABC06] 4. の「単解構造」と「正則構造」の説明に照して明白。
元祖タイヒミュラー理論への「おぼろげなイメージ」すら持っていないのではなかろうか。
英語版「宇宙際タイヒミュラー理論への誘い」Invitation to Inter-universal Teichmuller Theory
(https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/travel-english.html [16]-[20])も読んでいない。
∴「下手な考え休むに似たり」のお手本です。本当にありがとうございました。:-b

デュピー 博士「こんな感じの違和感です。誰かがあるものを持っていて、『それは
これと同じものでもあるし、また同時に異なるものでもある』といったときのような。
多くの数学者は、それは『2が4と等しい』といっているようなもので、そんなことを
いえば、数学は破綻すると反論したんです」

上記人物の同類。それにしても、どこで、誰に対して「反論」とやらをしたのだろう?
IUT 理論のワークショップで、こんなタワケた発言が出来たのなら、ある意味「勇者」
とも言える :-b が、もちろんそんなはずはない。大方、どこかで聞きかじっただけの
人物同士の「井戸端会議(多分、ネットの掲示板)」での噂話への「反論」なのだろう。

ここまでは、「IUT 理論は、*実際に違う*ものを区別をしているだけ」という話だった。
望月の「宇宙際タイヒミューラー理論はまさしくこの「ポアンカレの格言」(=つまり、
一見して同型には見えないものが実は同型であることを示す … )に立派に則している」
とのコメントについても、[IUT2ABC06] 1. 2から明白。

∴この回の NHK スペシャルという番組は、「放送法」違反ではなかろうか?

昭和二十五年法律第百三十二号_放送法
「第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の
放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
...
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかに
すること。」
四項については IUT 理論の専門家側からの「指摘が的外れであることを説明する論点」を
紹介しようとしていない点が違反。

#  本節の残りは 、 [IUT2ABC01] の一部として 記述した内容を少し編集して、ここに移動した。
# ∵上述した「数学的事実の歪曲」とは少々性質が違う話だが、「何かについての事実」が
# 問題の番組中では曲げられてしまっていたのでは…?という印象が拭えない事なので。
「望月新一のかつての指導教授であったゲルト・ファルティングスの「これまでの数学との違いを
分かりやすく説明する言葉を見つけてほしい」という番組中では「もっともらしく聞こえる」意見も、
↓ブログでの望月のコメントと照合すると「あまり感心できない」印象になる。
「なお、ファルティングス氏の場合、ご本人の研究(=1980年代後半の、p進ホッジ理論における
「殆どエタール拡大」の研究が特にそうですが)の歴史的経緯から考えても上述の主張はとても
不思議な主張に聞こえます。ご本人の研究論文の場合、他のp進ホッジ理論の専門家が論文の
アイデアをちょっと聞いただけで論文の正否の判断が簡単にできたかというと、実態は
(関係者の間ではよく知られている話ですが)それには程遠いものでした。実際、同氏は当時、
まさに自分の論文を丁寧に読んでくれる研究者が余りいないことによって的外れな批判が多発
しているだけだと盛んに主張していたように記憶しております。
つまり、同氏の主張を時間軸に沿って総括しますと、「自分の論文を丁寧に読んでくれない
研究者は断じて許せないが、他者の論文を丁寧に読むことを自分に期待するなんて到底承服
できない」という、身勝手極まりない、一方的な主張のようにしか聞こえません。」
# なお、 [IUT2ABC02] で上記の望月のコメントを裏づける資料があることを述べた。

2. 京都でのショルツェらの言動について

ショルツェらの間違いは 1. で言及した2人と基本的には同じだが、より「タチが悪い」事に、
「理解しようとする意欲すら無く、何か別の心理状態なのでは?」と思わせる、異常な態度を
京都での打ち合わせの際に見せている。それだけに、1. で触れた「NHK スペシャル」に関連する
NHK の Web ページでのショルツェの扱いは、率直に言えば*噴飯もの*と形容したくなるほど、
違和感を禁じ得ない。

以下、望月による打ち合わせのレポート [Rpt2018] を抄訳し、場合により補足説明(#)を加える。

2.1 打ち合わせにおけるショルツェらの異常な態度

[p.1]
星と望月からなる一方のチーム(HM)はIUTchの様々な側面を説明する役割を担い、
ショルツェとスティックスからなるもう一方のチーム(SS)はHMの説明の様々な側面に
異議を唱える役割を担った。

[pp.1-2]
§2.ショルツェは、IUTchに関して以前から否定的な立場をとっており、3月の話し合いの
後も、彼の立場、そしてSSの立場は否定的なままであった。
私自身の結論、そして3月の議論を経た後のHMの結論は以下の通りである:

SSの否定的な立場は、IUTchに関するSS側のある根本的な誤解(本報告書の残りの部分で
詳しく説明する-- 簡単な要約は§17を参照)の結果であり、特にIUTchに何らかの欠陥が
あることを意味するものではない。

[p.3]
(GLR1) : 論理的推論における一般的な注意 (General Logical Reasoning) 1
どのような数学的論証であっても、その論証の中で論じられている状況において別個の
ものと見なされるべき数学的対象を恣意的に同一視することによって、矛盾を導くことは
常に容易である。
一方、これは決して、元の数学的議論に論理的な欠陥があることを意味しない!
(GLR2): 論理的推論における一般的な注意 (General Logical Reasoning) 2
別の言い方をすれば、(GLR1)で得られた矛盾の正しい解釈は、(GLR1)の恣意的な同一視が
適用されていない元の議論に論理的な欠陥がある(!)という結論ではなく むしろ
(GLR1)で得られた矛盾は、恣意的に同一視された別個の数学的対象が確かに別個であること、
すなわち、(例えば、元の議論を正確に理解するためには!)別個の数学的対象として
扱われなければならないことを意味しているという結論である!

このような誤解を解くという観点からは、3月の議論が不十分であったことは実に残念である。

[pp.5-6]
# ショルツェらは、IUT 理論 (IUTch) の本来の用語や記号を使っての説明を拒否するという
# *途方もなく異常な態度*を取り続けている。
§4. 3月の議論の数学的内容の説明に進む前に、3月の議論の主要なテーマであったと
思われる様々なトピックを簡単に列挙しておく:
# 用語の簡単説明 :( [KF01] =「宇宙と宇宙をつなぐ数学(←元ビデオ)」の用語との対応)、
[KF01] 目次丸ごとの引用 や 「インフォーマルな(くだけた)説明」が、本やビデオの内容を
# 思い出したり、以下で初見になる用語のイメージを描く際、役立つかも知れない。
(T1) IUTchにおける、数学的対象に対して行われた様々な操作の履歴の扱い;
(T2) IUTchにおける数学的対象の型([IUTchIV], §3の意味での「種 (species) 」)の扱い;
(T3) 「id-version」、つまり「同一視射 (identity morphism)」(§2の議論を参照!)により、
馴染みのある対象の様々なコピー(フロベニウス的バージョンやエタール的バージョン
異なるホッジ劇場 (Hodge theaters) に現れるコピーなど)を同一視することによって
得られるIUTchの変形。# ←当然、本来の IUT 理論と全く異なる。
(T4) IUTchにおける多重射 (poly-morphism) の使用に対するSSの反対。
(T4-1) 好みの問題として、# ←理論提唱者が↓重視する概念を拒否する理由↓としては酷すぎる。
(T4-2) (Ind1,2)のような不定性の導入は論理的に不要または「無意味」とSSが考えたため;
(T5) IUTchにおける様々な対象のコピーを区別するためにラベルを使うことへのSSの反対。
(T5-1) 好みの問題として、# ←仮に区別して議論する事も認めない。↓何様の積りだろうか?
(T5-2)そのようなラベルの使用はSSにとって論理的に不要、あるいは「無意味」であると
思われたからである;# ↑何様…以下同文。
(T6)IUTchの様々な重要なアイデアや概念、例えば、別個の数論的正則構造(要するに、
別個の環構造)を考察することをSSが拒否したこと;# ←「頭がおかしい」レベルの振舞い。
(T7) 単純化の問題; # ←少し先の望月による説明参照。↓やはり「頭がおかしい」。
# ↑実際は「誤りを含む過度な「単純化」に固執する態度」の問題。
(T8)HMの発言をSSが誤って解釈することがある。(T8-1)を(T8-2)の決定的な宣言として
SSが誤解することがあること: # 「誤解」と言うより、むしろ曲解。
(T8-1)「お望みであれば、IUTchのそのような修正版を検討されても結構ですが、IUTchの
本質的な内容が、そのような修正版でも有効であることは、決して明らかではありません」
(T8-2)「あなたが望むなら、IUTchのそのような修正版を検討してもよい。さらに、IUTchの
本質的な内容は、そのような修正版でも完全に有効であることを保証する」
# 望月は青少年期を米国で過しており、英語力に問題はない。ラテン語などの知識も
# ブログから伺え、むしろ言語能力全般が高いと思われる。∴上の「SS の誤解」は、
# 実際は誹謗・中傷レポートの前提としての*意図的な曲解*とも考えられる。

(T9) [IUTchIII]の定理3.11の多輻的 (multiradial) 表現の詳細な説明。
# ↑ここでの望月の説明を聞くまで、ショルツェらは、定理3.11の内容について、
# 何一つ分かっていなかったフシがある。だとすれば「系3.12 の証明が全く追えない」
# との感想は当然でしかない。もっとも、説明への理解度が低過ぎるか、最初から曲解
# して「根拠のない誹謗・中傷を繰り返していた事の言い訳作り」に利用する積りだったか
# (または、その両方)によって、デタラメなレポートを書く材料を得ただけなのかも。
これらのテーマのうち、(T1)と(T2)がある意味で最も本質的あるいは基本的と思われる。
とすれば、(T3), (T4), (T5)は、本質的に(T1), (T2)の「帰結」であると 理解できる。
さらに、(T4), (T5)は(T3)の特定の側面として理解することができる。

対照的に、(T6), (T7), (T8)は、3月の話し合いの特定の手続き的側面に言及している。
(T6)、(T7)、(T8)は、3月のディスカッションの手続き的な側面に言及しているが、それにも
かかわらず、ディスカッションの数学的な内容に大きな影響を与えている。
ここで
(T7)の簡略化の問題とは、議論されている数学的内容について、(問題の中心にとって
不必要で無関係な細部を排除する観点から)どの簡略化が数学的に正しく、意味があり、
役に立つかという一般的な問題を指す。つまり、この一般的問題(T7)は、IUTchを単純化
しようとするSSの誤った試み((T3),(T4),(T5),(T6)を参照)で、無意味な矛盾を導く。
(Smm)、(GLR1)、(GLR2)に要約されている)。
一方、(後述の§8、§13の議論を参照)(T7)は、IUTchで導入された技法が、IUTchで生じる
様々な状況に対するより素朴なアプローチと比較して、実際に単純化をもたらす状況にも
言及している。
最後に、(T9)は比較的スムーズに進んだ、 [IUTchIII]の定理3.11の多輻的アルゴリズムの
内容の端的な説明についてである。
(T9)に対するSSの立場は、(T1), (T2), (T3), (T4), (T5), (T6)に対する立場から、これらの
アルゴリズムの妥当性を争うのではなく、アルゴリズムの非自明性、つまり、実質的な内容を
争うというものであった。

2.2 ショルツェらの IUT 理論への根本的な誤解

# [Rpt2018] pp.41-42

# ショルツェらのレポート [SS2018-05]、 [SS2018-08]、 [ZBL-S2021] の問題点は、
# 実質的には、それらに先立って望月が公表した [Rpt2018] で指摘済みの論点なので、
#「ショルツェらは、IUT理論を理解しようとした過程での疑問を述べているのではなく、
# IUT 理論への誹謗・中傷が自己目的化してしまっている」疑いがある。
# つまり、IUT 理論への理解は早々に諦め、「理解できなかった事で傷ついた、無駄に高い
# 自己評価」を回復するために IUT 理論の誹謗・中傷を始めたのだろうが、既に誹謗・中傷を
# 撤回すれば「面目を失う」心理状態に自らを追い込んでしまった可能性がある。

§17。本報告書で論じられている IUTch に関する根本的な誤解は、IUTch の以下の中心的な
側面を理解していないことに要約できる:
# 筆者の私見: 以下で指摘されている根本的な誤解は、IUT 理論において遠アーベル幾何
# 担っている役割、あるい両理論の関係を理解していないか、無視している事が背景にある。
# なお 3.1 での望月の指摘では、「より根本的な誤解の結果、遠アーベル幾何のIUT での
# 役割が分からないのであろう」という*因果関係を逆にした説明*になっている。しかし、
# 筆者は「誤解ではなく意図的に曲解」している場合に、「よく知らない遠アーベル幾何を
# 議論せずに済ませる理屈を*早い段階でデッチ上げておく方が話が簡単になる*」という
# 意識から、「遠アーベル幾何は不要」と決めつけたことで、以後の議論が全てデタラメに
# なってしまった可能性があると思う。

2.2.1 (FM1) : 根本的な誤解 (Fundamental Misunderstanding) 1
履歴の再初期化操作の重要性 ((T1)、(H2) を参照)、数学的オブジェクトの型の明示的な
指定 ((T2)、(H2) を参照)、および (IUTch などで) 切り替え対称性を許容する数学的構造の
構築における多重射の使用 ((T4)、(PMInd)、(PMEss) を参照)
# 「履歴の再初期化操作の重要性」の例は、Θリンクの始域と終域各々での数論的基本群や
# ガロア群という出自を忘れて抽象的位相群と見る場合や、エタール的データから復元した
# という出自を忘れて、環構造に由来するフロベニウス的データと比較する場合が典型的。
# 「切り替え対称性」は「系3.12」での「対数テータ格子」を辿る推論に必要な条件。i.e.
# 各リンクの始域 (domain) と終域 (codomain) の「宇宙=圏=ホッジ劇場」内の対象に
# 「主定理 3.11」の多輻的アルゴリズムを適用する際に、始域側の対象と終域側の対象の
# 役割を「交換する/切り替える」ことを可能にする前提条件。エタール的対象については
# 比較的単純な対応付けで確認できるが、フロベニウス的対象については、対数体積計算の
# 場面での単解構造に属する対象に対して「正則包(多重射の作用で不変で、元の対象を
# 含み、正則構造に属する対象)」を形成した後「上から評価する」事によって、成立する。
# なお、「対数体積 (log-volume) 」は,、集合の「測度( 長さ、面積、体積など)」の対数と
#  思って良い(定義は [HY02]p.44 にある)。また、「正則包 (holomorphic hull)」という
# 用語については、[HY01]p.45、 [HY02]p.93 での用例を見れば、イメージが掴める。
((SW)、(Sym)、(SWC1)、(SWC2)、(SWE1)、(SWE2)、(LbΘ)、(Lblog)、(LbMn)、
(EtΘ)、(Etlog)、(EtMn) を参照)。

2.2.2 (FM2) : 根本的な誤解 (Fundamental Misunderstanding) 2
複雑な数学的構造内で実質的に異なる役割を果たす、さまざまなよく知られたオブジェクトの
異なるコピーを区別するためのラベル装置の明示的な指定の重要性
# 「ラベル装置 (label appratus) 」は「使い方が工夫されたラベルの体系」くらいの意味。
(cf. (T3)、(T5)、(IUAD)、(SSDLFs)、(LbRl)、(LbEx1)、(LbEx2)、(LbEx3)、
(LbEx4)、(LbEx5)、(LbEx6)、(LbHT)、(LbΘ)、(Lblog)、(LbMn))
# 「ラベルを使用した説明を受ける事自体を拒否する」という*あまりにも異常な態度*は、
# 単なる「誤解」というより、*説得ないし論破されてしまう事への恐れ*とも解釈できる。

2.2.3 (FM3) : 根本的な誤解 (Fundamental Misunderstanding) 3
Θリンクの始域で発生するさまざまなデータ (つまり、値群部分と単数群部分) が
単一の環構造から発生するという要件の重要性。 (cf. (ΘCR), (VUSQ), (VUC))
# 環構造をΘリンクの終域側において「単遠アーベル幾何」で乗法モノイドの
# 構造から復元するに際し、加法構造の復元は「対数リンクでの乗法と加法の対応」
# によるので、結局、フロベニウス的データは、始域側の乗法モノイドだけに由来。
# よって、エタール的データは「乗法モノイドに対する(数論的基本群やガロア群と
# 同型な)抽象的位相群が持ち得る全ての作用」として、終域と共有可能。ここで、
# 乗法モノイド全体への作用は、「値群部分への作用」と「単数群部分への作用」の
# 直積にはならない(2次元ベクトル空間への作用が2つの1次元部分空間への作用の
# 直積にならない事と同様)。i.e. あくまで、環の乗法モノイドを一体的に見た上で、
# 作用を考察する必要がある。なお、この要件からは、多重射(による作用)概念の
# 必要性も派生する(∵「抽象的位相群が持ち得る全ての作用」の考察が必要)。
# Θリンクでの対応自体は「対数を取れば線形な」関係だが、「抽象的位相群が
# 持ち得る全ての作用」の対数体積への効果は、線形ではない。pp.24-26 の (LVEx)
# という見出しの一節に、この論点についての比較的単純な例を使った説明がある。
# この非線形性は [Cmt2018-08] p.4 (C14) 特に (Lin) という見出し以後の説明と関連。
# ("stack theoretic quotient" という代数幾何用語の意味については気にせずに、
# 単に p.24 で定義された2つの2次元領域 R_{a,b} と S_{a,b} の大きさの比較と
# いう初等的な観点だけに注目すれば、要点は分かるように書かれている)。
IUTch で開発された多輻的表現アルゴリズム、つまり [IUTchIII]、定理 3.11
(cf. (T3), (SSInd), (GIUT), (SSId), (†ΘCR), (SSIdFs), (SSADFs)) を適用する
ために満たさなければならない要件。

2.2.4 誤解原因の候補 (Possible Causes for these Misunderstandings)

# [Rpt2018] p.44
本レポートでは、これらの誤解の原因として考えられるさまざまな点を検討しました。
具体的には、
(PCM1) : 誤解原因の候補 (Possible Cause for Misunderstanding) 1
議論中の数学について深く考える時間が十分になかったこと (§2 の最後の部分、§10 の
議論を参照)、
(PCM2) : 誤解原因の候補 (Possib le Cause for Misunderstanding) 2
コミュニケーションの問題とそれに関連する手続き上の不規則性 ((T6)、(T7)、(T8) を
参照)、
(PCM3) : 誤解原因の候補 (Possible Cause for Misunderstanding) 3
馴染みのある数学的対象についての新しい考え方に対する強い不快感、または
なじみのなさ (§16 の議論を参照)、([Rpt2014]、(T2)、([Fsk]、§3.3) などです。

一方、3月の議論は、残念ながら、§17で要約した誤解の根底にある原因の論理構造を
完全に解明するには不十分でした。
# ↑後に書かれる[EssLgc] が「誤解の根底にある原因の論理構造」を解明した文書。

3. 望月自身による「ショルツェらのレポートの誤りを指摘した文書」から

ショルツェらは、彼らのレポートの初版 [SS2018-05] について、望月のレポート [Rpt2018] と
[Cmt2018-05] での誤りの指摘を見て、その公開を中止した。
その3か月後、ショルツェらは、望月による、彼らの根本的/致命的な誤りの指摘箇所は
*全て無視*し、*用語の誤りの指摘だけ反映*した版 [SS2018-08] を公開した。
(用語の誤り指摘だけでも少なからぬ数だったので、そのままにすると IUT 理論を理解
していないことが、*内容について確認するまでもなく、傍目にも明らか*との懸念から
表面を取り繕ったと解釈するのが自然であろう)。

驚くべきことに、このお粗末な文書 [SS2018-08] が、「IUT 理論への異議」の最も詳細な
解説として、「IUT への懐疑論者」からは「聖典」であるかのように珍重され、その結論
部分が WikiPedia にも引用されるという、奇怪な事態が発生した。←[IUT2ABC02] の主題。

望月は [SS2018-08] にコメントした文書 [Cmt2018-08] では、[Cmt2018-05] で指摘済で
[SS2018-08] で修正されていない問題については、[Cmt2018-05] の参照を指示している。
[SS2018-08] と [SS2018-05] では、命題に振られた番号や文のあるページが途中から少し
ずれているので、[Cmt2018-05] での指摘と [SS2018-08] での該当個所を照合する際には、
注意が必要になる。以下では、[SS2018-08] と [SS2018-05] の両方について、同じ内容の
記述の各文書内での位置を書いておく。

3.1 IUT 理論と遠アーベル幾何の関係を無視した事が問題の元凶

[Cmt2018-05] (C5) を和訳しておく。2.2 で述べたように、節の表題は筆者の私見を
反映したもので、望月自身の説明とは因果関係を逆向きに推測している。
# SS のレポートの参照箇所は、[SS2018-05] p.5 Remark 8, [SS2018-08] p.5 Remark 9

「この注釈は、IUTch で遠アーベル幾何学を適用する必要性を否定しています。
この否定は、遠アーベル幾何学の「基本群の同型性がスキームの同型性から従う」という
結果を根拠に主張されています。
実際は、「エタール的構造」、すなわち、ガロア群や数論的基本群など、はIUTch では
対数テータ格子の 0 列と 1 列(垂直)の間の)対称性などの構造的性質において、
(遠アーベル幾何学は)中心的な役割を果たします。
「エタール的構造」が対数テータ格子で満たす対称性は、さまざまな多輻的 (multiradial)
アルゴリズムの基礎)です。」

この後、望月は「ショルツェらに自らの誤りに気付かせるための質問」を続けている。
ここでは、ショルツェらの間違いを端的に説明しておく。

ショルツェらは「引用した「遠アーベル幾何学の結果」は、一つの宇宙の中でのみ意味を持つ」
という、IUT 理論以外の文脈では特に意識する必要がないが、IUT 理論では*決定的に重要な*
論点を見落している(筆者は*意図的に無視*した可能性ありと見る。少し後で根拠を再論)。
i.e. ある宇宙でのスキームは、たし算とは両立しないリンクで対応付けた別の宇宙に対しては、
意味をなさない。∵スキームは環構造の「幾何学的な双対」つまり環構造と等価なので、当然
たし算にも依存しているからだ。∴IUT 理論での「単遠アーベル的輸送(宇宙間通信)」では、
ガロア群を(特定の環構造全体と両立する)作用込みで考えることは出来ない。そうした場合、
その作用は環構造に依存するので、他の宇宙と共有できなくなってしまうからだ。

IUT 理論では、*群の環構造への作用を一旦忘れた*抽象的位相群としての「多重同型」で、
「不定性を許容(i.e.前提とする「剛性」を緩和)」した上で、復元の対象となるデータの
宇宙間での等価性を確保するという、*遠アーベル幾何自体には必要なかった*考え方が、
本質的な役割を演ずる。
関連する主な論点を箇条書きして整理しておく。
(1) (単)遠アーベル幾何は、エタール的対象↔フロベニウス的対象という双方向で一方から
 他方を復元(再構成)ないし同型性/等価性を示す定理を含む。ショルツェらはエタール的
 対象への言及なしでもフロベニウス的対象間の等価性が示せるかのような思い違い/曲解を
「エタール的対象←フロベニウス的対象」方向の定理を挙げて「主張(証明ではない!)」。
 SS レポートの問題は、*何一つ*証明しないこと(実は単に間違いなので、証明不可能)。
(2) IUT 理論で決定的に重要な*テータリンクの反対側との等価性*を示す際、「壁越え」が
できるのはエタール的対象(e.g. [KF01] 第7章 pp.245-248「対称性は壁を越える」参照。
なお、節の表題だけなら[IUT2ABC05]1. での同書目次の引用で確認可能)という条件により
エタール的対象→フロベニウス的対象という方向の復元アルゴリズムが必要不可欠。
∴ショルツェらの「IUT 理論に遠アーベル幾何は不要」とする議論は、とんでもない間違い。
i.e. [HY02]P.10の図 「単遠アーベル的輸送」=[KF01]での「対称性通信」が分かっていない。
なお、この問題 (T6) についての心理面からの筆者の考察が [IUT2ABC05] 4.3 にある。
(3) しかも、エタール的対象ですら、各宇宙のフロベニウス的対象との関係をいったん忘れる
操作なしには「壁越え」ができない(ある意味、フロベニウス的対象は「壁を作っている」)
ので、数論的基本群やガロア群としての出自を忘れた抽象的位相群として「可能な作用全て」を
考慮すると、特定の(軽微な)不定性を許容せざるを得ない。
(4) 「可能な作用全てを考慮し、不定性を許容した上での等価性」の考察とは、「多重射」概念を
利用する「多輻的表現/アルゴリズム」の考察に他ならない。

ショルツェらの「誤解」は不可解だ。*環同型でない関係*が設定された2つの「正則構造」を
(しかも、古典タイヒミュラー理論での*擬等角写像で結ばれた*2つの複素解析構造の区別に
なぞらえて説明されているにも関わらず)*区別した上で議論を始める事すら拒否する*とは、
一体どういう積りで打ち合わせに臨んだのか?最初から「数学的根拠を示さず IUT 理論を誹謗
してきた事への言い訳」になりそうな*曲解*を、フィールズ賞選考委員長からの圧力で*嫌々
行う事になった打ちあわせ*の場で押し通す事しか頭になかったのか?と疑わざるを得ない。

[KF01] (または本ブログ [IUT2ABC05]+[IUT2ABC06]+[IUT2ABC07])でも説明されている
*素人にも理解できる単純な論点*の無視なので、この箇所以後のショルツェらの議論は、
本来のIUT 理論とは無関係の、*ショルツェらの勝手な想像によるデタラメ*でしかない。

i.e. Wikpedia に引用されているショルツェらの議論は、無意味な*空想の産物*であり、
本来の IUT 理論との違いが大き過ぎるので、*悪意の捏造による中傷*の疑いもある。
∵ 「IUT 論文の系 3.12 の証明を自分なりに要約した」とは思えない*全く違う議論*を
「系 3.12 証明部分の要約」として述べているので、*藁人形論法*になっているからだ。

3.2 ショルツェらのレポートが全くのデタラメである証拠

[Cmt2018-05] (C15)-(C18) を和訳して、内容を見ていく。

3.2.1 [Cmt2018-05] (C15)

# SSのレポートでの参照箇所は §2.1.9 Θ-link([SS2018-05] p.8, [SS2018-08] p.9)

「テータリンクの標準的選択 (“canonical choice for the Θ-link”)」:
この「標準的選択」は、3 月の議論の最終日に議論された(SS の間違った「簡略化」が
ほどこされた)「id-version」の IUT (i.e. [EssLgc] の「RCS-IUT」) に基く概念です。
[Rpt2018] (SSId)。 [Rpt2018]、§10 で詳しく説明されているように、IUTch の多輻的
アルゴリズムは、この「id-version」(cf.[Rpt2018]、(SSIdFs)) に適用はできません。
つまり、この「id-version」は、非常に根本的な点で、これらのアルゴリズムを適用する
ために必要な条件を満たしていません。
# 実際の IUT 理論には、SS の言う「テータリンクの標準的選択(相当の概念)」は存在
# しない。∵いかなる意味においても「テータリンクを選択する」必要自体がない。i.e.
# 「不定性を許容した等価性」や「多重同型」による論理構成は「選択」操作とは無縁。

3.2.2 [Cmt2018-05] (C16)

# SSのレポートでの参照箇所は [SS2018-05] p.8 footnote 7, [SS2018-08] p.9 footnote 10

「望月氏はそれらを適切に区別していません。これは、私たちの主な懸念事項の一部」
(§2.2 の 2 番目の段落3 番目の文の最初のフレーズ
「 “As we indicated earlier, there is no clear distinction between abstract
and concrete pilot objects in Mochizuki’s work” 」も参照)
まず第一に、この主張が全くの誤りであることを 明確に述べておく必要があります。
確かに、F^{xμ} 素点縞 (prime strip) の固有構造によって決定される抽象的な
(圏論的(に定義される)標対象対数殼のテンソルパケット上の具体的(多輻的!) 表現
を区別するという問題は、IUTch の最も中心的な側面の 1 つです
(例:[IUTchIII]、定理 3.11; [IUTchIII]、系 3.12の証明。)
# SS のレポートは「具体的な q標対象、Θ標対象」という、そもそも IUT 理論で
# 定義されていない用語を無造作に使っている。自ら定義しようともしない。cf. 望月は
# 「対数殼のテンソルパケット上の具体的(多輻的!) 表現」という用語を使っている。
# この手のいい加減な用語法が SS のレポートには多過ぎて、IUT 理論の専門家による
# 文書の記述内容との対応を取ることが困難なほど。あるいは、これも意図的に内容の
# 確認を難しくして、第三者を誤魔化そうとしているためかも知れない。
この文脈で、「テンソルパケット」や「対数殼」などの IUTch の重要な概念が [SS2018-05]
には登場しないことに注意するのは興味深いことです ((C1) を参照)。)
むしろ、SS 側での、標対象の抽象的圏論バージョンと、対数殼のテンソルパケット上の具体的な
 (多輻的!) 表現の適切な扱いを巡る混乱こそが、以下の (C17)、(C18) で説明される SS の誤解 の
最も中心的な側面の一つと思われます。

3.2.3 [Cmt2018-05] (C17)

# SSのレポートでの参照箇所は以下。
- §2.2、[SS2018-05] p.8 footnote 7, [SS2018-08] p.8 footnote 10
- §2.2、第 2 段落の 3 番目の文 ((C16) を参照)。
- §2.2、第 3 段落、「慎重な同一視が必要です“requires careful identifications”;」;
- §2.2、第 4 段落、「一貫して同一視する“consistently identify”」。
- §2.2、表示された図。
- §2.2、第 4 段落、「望月氏はスカラーを導入したいと考えている。
“Mochizuki wants to introduce scalars”」:

§2.2 の議論は、[IUTchIII] の証明、系 3.12 のステップ (xi) で与えられた議論の
完全な誤解です。
# 前述のように、*ショルツェらの悪意による歪曲*の疑いもある。

[IUTchIII]、系 3.12 の証明には何の問題もありません。
# 以下の (N1)-(N5) は、 SSのレポートで系 3.12 の証明について主張されていること。
# IUT 理論の論文での系 3.12 での説明とは、用語や論理構成が全く違い、内容が対応
# しているようには見えない。筆者が曲解/デタラメ/ゴマカシの可能性を疑うゆえん。

(N1) 「実数のコピーの慎重な同一視を要求する 」 (§2.2、第 3 段落)。
“requiring careful identifications of copies of real numbers”
(N2) これらのコピーを「一貫して同一視する」こと (§2.2、第 4 段落)。
“consistently identifying”
(N3) §2.2 で表示された図の最下行にある「R_Θ」や「R_q」などのオブジェクトを
同一視すること。
(N4) §2.2 で表示された図に現れるような、可換図式でなければならない「ループ」を
考えること。
(N5) 「j^2 のスカラーをどこかに導入したい」(§2.2、第 4 段落)。
“wanting to introduce scalars of j^2 somewhere”

つまり、(N1)、(N2)、(N3)、(N4)、(N5) のいずれも、[IUTchIII] の証明、系 3.12 の
ステップ (xi) では決して発生しません。
特に、§2.2 の議論の中心となる (N4) のループは、[IUTchIII]、系 3.12 の証明では
決して発生しません。

このループは、[Rpt2018]、(Smm)、(GLR2)、(AD)、(SSAD)、(SSADF)、(SSDLFs)、(LbEx1)、
(LbEx4) で議論されている*ラベル/環構造の誤った同一視*に正確に対応します。
つまり、SS が検討した IUTch のさまざまな修正バージョン (つまり、さまざまな異なる
ラベル/環構造の誤った同一視で得られたバージョン) には、そのようなループが誤って
導入されているため、§2.2 で述べられているような問題が発生します。
実際に論文 [IUTchI]、[IUTchII]、[IUTchIII]、[IUTchIV] で展開されている理論では、
テータリンクの両側の環構造が区別されます ([Rpt2018]の(IUAD)を参照)。
# 本来の IUT の多輻的アルゴリズムは「一方向性」で、「ループ」は存在しない。
# (LbEx1) は「始点と終点を同一視すれば、線分だったグラフがループになる」という
# 分かりやすい話。(LbEx4) は異なる複数の部分体が同型(e.g. 有限次代数拡大の
# 共役体)の時、それらの部分体を同一視すれば*当然*矛盾が生ずるという話。

この状況は、これらの異なる環構造間の関係を計算するという高度に非自明な問題を
引き起こす状況です ([Rpt2018],(GIUT) を参照)。
この関係は、特定の不定性の導入を代償に、[IUTchIII]の定理 3.11 の多輻的表現を
使用して、テータリンクの反対側にある共通の「入れ物(である数学的構造)」に
(計算に関連する)対象オブジェクト (Θおよび q 標対象 (pilot object) の
さまざまなバージョンなど) を埋め込むことによって計算されます。
この「入れ物」は単一の「入れ物」であり、特にその(「入れ物」の)サブセットの
特定のコレクションに対して適切に定義された (well-defined ) 単一の対数体積関数と
両立するため、§2.2で表示された図のように) 「ループが可換図式である必要」という
問題はまったくありません。
# SS は、[IUT2ABC06] 1.2 で述べた「単遠アーベル幾何による数学的構造の新しい見方」
# i.e. 「復元用データの入れ物」としての見方/認識を得ていないため、IUT 理論の概念定義で
# 背景/意図/目的を把握できず、IUT 理論での証明が追えないのだろうと思われる。

3.2.4 [Cmt2018-05] (C18)

# SSのレポートでの参照箇所は §2.2 全体。

したがって、要約すると、§2.2 で議論されている議論は、[IUTchIII] の系 3.12 で
実際に与えられている議論とは根本的に異なる議論です。
実際に[IUTchIII] 系 3.12 の証明で示される議論の中心部分は、[IUTchIII] 定理 3.11 の
多輻的表現であり、これを使用すると、特定の不定性の導入を代償にして、Θ リンクの
反対側にある相異なる環構造間の関係を、共通の「入れ物」への埋め込みによって
計算できます。
一方、この多輻的表現は [SS2018-05] ではまったく議論されていません。
# ↑明白な違い。多輻的表現(アルゴリズム)については[IUT2ABC07] 1. で述べた。
特に§2.2で論じられている議論は、([IUTchI]、[IUTchII]、[IUTchIII]、[IUTchIV] (!) で
実際に展開されている理論の論理構造の欠陥の説明としてではなく、むしろSSが提案した
IUTchの修正版の定義における、Θリンクの反対側の(IUTchの観点からは区別できる)
環構造を恣意的に同一視/混同することによって得られる表面的な内部矛盾として)
最も正確に説明されます。
[Rpt2018]の(Smm)、(GLR2)、(AD)、(SSAD)、(SSADFs)、(SSDLFs)、(LbEx1)、(LbEx4)の
議論を参照。

[Rpt2018]の(Smm)、(GLR2) で説明されているように、一般に、いかなる数学的議論が
与えられた場合でも、議論に現れる、区別する必要がある数学的対象を、恣意的に
同一視/混同するだけで、そのような表面的な矛盾を得るのは常に非常に簡単です。
一方、恣意的に修正されたことから生じるそのような表面的な矛盾は、純粋に形式的な
手続きレベルと抽象的な論理レベルの両方で議論の論理構造におけるギャップや欠陥の
現象とは根本的に質的に異なる現象です。

おわりに/その後どうなった

[IUT2ABC01]、[IUT2ABC02]、[IUT2ABC05]、そして本記事で述べてきた通り、IUT 理論への
*具体的な数学的言明を伴う批判*は、*2018 年時点で*望月の反論により粉砕されている。
IUT 理論の誤り発見への懸賞金」は、IUT 理論への*具体的な数学的言明を伴う批判*で
有効なものなど*存在しない*事実を、一般大衆に分かりやすく伝えるために設定された。
比較的最近の状況については、↓望月のブログを参照。
https://plaza.rakuten.co.jp/shinichi0329/diary/202401020000/

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