ある日の気づき

マイケル・ハドソン「新自由主義は本当に死んだのか?」(レポート)

目次
はじめに
1. 新自由主義の明白な失敗
2. 新自由主義の奇妙な不死性と不可視性
3. 新自由主義の真の目的を隠す虚構とプロパガンダ
3.1 新自由主義の目的は公的な「政府」の「富裕層による私的権力」への置き換え
3.2 「政府介入の排除」言説は嘘: 実際は「富裕層のための介入」への置き換え
3.3 新自由主義は富裕層の利益のために考案されたイデオロギー
4. マルクスまでの古典派経済学と新自由主義につながる「新古典派」経済学
4.1 「重要なトリックワードは市場、特に自由市場」
4.2 レンティア市場での価値から乖離した価格による社会問題
5. 新古典派経済学と新自由主義の概要
5.1 「19 世紀後半に何が起こったか」
5.2 新古典派経済学は「価値」、「生産」、「歴史」を無視する劣化した経済学
5.3 新自由主義は、古典派経済学で考えられていた自由を否定する反社会的哲学
6. カール・ポランニーの経済思想とマルクスを含む古典派の経済学の関連
7. 新自由主義は産業空洞化をもたらす
8. 資本主義は、競争が消滅すれば、生産効率向上に寄与せず、むしろ社会の桎梏となる
8.1 新自由主義の言説の特徴
8.2 「産業資本主義」から「独占資本主義≈金融資本主義」への移行
8.3 「業界内での競争の排除としての独占」と「富の創出方法に関する構造的独占」
8.3.1 独占禁止法は、主に金融資本主導のトラスト成立を阻止して、競争の維持を図る
8.3.2 独占禁止法は経済が「構造的独占」に達した時期に成立した社会主義への対抗策
9. 新自由主義と独占
10. 新自由主義の奇妙な不死性
10.1 第二次世界大戦後の「資本主義の黄金期」と、その終焉時のプロパガンダ
10.2 債権者の力の増大
10.3 米国の「超帝国主義」:「ブレトン・ウッズ体制(米ドル制度)」の帝国主義
10.4 米国での金融規制撤廃によるバブルが「米ドル制度」により全世界に波及
11. 「新自由主義」言説の嘘を暴く
11.1 10年ごとの新自由主義の変遷
11.2 アメリカ(および西側)公式言説の嘘
11.2.1 嘘を暴く「問いかけ」: まず米国以外の状況を見る
11.2.2 米国の経済状況についての嘘を暴く
12. 新自由主義の地政学
更新履歴

はじめに^

本記事は、The Unz Review サイトで言語に日本語を指定して下記 URL を参照して得た
マイケル・ハドソンとラディカ・デサイの対談テキストをレポート風に編集したもの。
https://www.unz.com/mhudson/is-neoliberalism-really-dead/
「新自由主義は本当に死んだのか?」

なるべく短くするため、以下のように編集した。
(1) 省略しても大意に影響しないと思われる語や文を単に削るか「…」と置き換えた。
(2) →、←、∴、∵、i.e. などの記号で関係を示す語や文を置き換えた。

節に分けて表題を付したことで、議論の流れを追いやすくすることを意図しているほか、
会話の背景について筆者が推測できた箇所については、# で始めた行に補足説明を追加し、
多少なりとも理解に必要な予備知識が少なくなることを意図した。

1. 新自由主義の明白な失敗^
「1980年代末、IMFと世界銀行は「構造調整プログラム」を第三世界の国々に押し付けた」
「IMF は常に「重要な食糧と燃料の補助金の撤回、社会保障費の削減プログラム」を処方」
「人々はプログラムにより引き起こされた不況による失業の増加に抗議」→「暴動」
「世界銀行の報告書は、新自由主義の処方箋は、それが課されたどの経済においても
生産力の回復にはまったく役に立たなかったことを本質的に認めた」
「2008年の金融危機後、ほとんどすべての人がケインズの復活、新自由主義の終焉、
国家の復活について語っていた」
「アラン・グリーンスパンは議会委員会の前で、銀行に対する自由市場のアプローチに
ついて部分的に間違っていたこと、危機によって衝撃と信じられない思いに陥ったことを
認めていた」
# 2008年の金融危機を予測していたマイケル・ハドソンに言わせれば、「部分的」どころか、
# 「何もかも」間違いということになるだろう。

2. 新自由主義の奇妙な不死性と不可視性^

「しかし、この大規模な転換点となった出来事の後でさえ、そこから浮かび上がった本当の
物語は、このテーマに関するある本のタイトルが示すように、新自由主義の奇妙な不死性」

# 新自由主義の不可視性は、言説自体に含まれる内容や目的の隠蔽工作(=煙幕)が原因。
「あまりにも多くの煙幕があり、不可視性の問題などについても煙幕がある」
「新自由主義の時代には、市場は基本的に一般の人々、労働者に押し付けられる」
i.e. 「労働組合への攻撃などにより、労働者は互いに競争することを余儀なくされる」
# 一方、十分大きい企業は、様々な参入障壁を設定し、価格競争を回避することを常とする。
「新自由主義が始まってから 40 年が経ち、それはしばしば富裕層には社会主義、貧困層には
競争を伴う新自由主義となり、富裕層は救済される」
# 同様な構図は、「自由貿易」に関する言説と現実との対比にも見られる。i.e. 富強な国は
# 自らが唱える規則にすら*都合の良い時に限って*従うが、「弱い」国は同意してもいない、
# あるいは「強制されて/騙されて「同意」させられた」規則の絶対遵守を強制され、逸脱に
# 対しては、時に武力/暴力すら振るわれる。

「新自由主義は自らを見えなくしたい」:「悪魔のようなもの」
∵「もし悪魔がいるなら、悪魔は自分が存在しないと言いたがります。新自由主義は、
不平等は存在せず、搾取は存在せず、すべてが公平だと言います」
# 「価値自由」論や「倫理的観点の排除」などの言説は、この隠蔽工作の一環に過ぎない。

3. 新自由主義の真の目的を隠す虚構とプロパガンダ^

3.1 新自由主義の目的は「公的な政府」の「富裕層による私的権力」への置き換え^

「彼らが本当に見えなくしたい、あるいは実際に消滅させたいのは政府」「新自由主義は、政府による
規制のない経済を主張し、詐欺や搾取、略奪的貧困化に対する社会保障や高利貸し法を廃止」
「彼らは消費者保護に反対」「債務者が破産を利用できることにも反対」「バイデンは学生が破産に
よって学生ローンを帳消しにし、借金から逃れられないようにした」
# マイケル・ハドソンは「「社会政策としての借金の帳消し」の否定は西欧文明固有の病弊」だと
# 古代経済史の研究によって示したことで知られる。

「つまり、新自由主義とは、基本的に経済の二極化の原動力」
「新自由主義は、経済がますます不平等になっている理由を正当化する方法」「あたかもこれが
完全に自然なことであり、適者生存であり、実際には効率化への道であるかのよう」
「それはイデオロギー」「新しい道徳的価値観」「新しい宗教であると言ってもいい」
# つまり、かってマルクスが社会観察で発見し、問題視した*剥き出しの*資本主義。
# (naked capitalism : ハドソンが、しばしば記事を投稿するウェブサイト名でもある)。

「宗教は相互扶助を支持し、国民全体の向上を訴える」
「新自由主義」:「貪欲は良いことであり、アイン・ランドは良いことであり、{政府から、
政府の規制から自由でありたいと訴え、金持ちは金持ちになるために何でもできる」
# アイン・ランドは人名 Ayn Rand : リバタリアン/新自由主義の作家/評論家。
# WikiPediaに「哲学者」との記述もあるが、現代哲学では必須の前提知識である論理学の
# 素養を欠く事は経歴からも明らかで、哲学の学会では、そのような認識はされていない。
# 一般に、新自由主義的な主張には論理的欠陥が多いことは、本ブログの経済関連の記事で
# 繰り返し指摘してきた(参照の際は「記事一覧(テーマ別)」から、どうぞ)。
「そして、もし金持ちが金持ちになったとしても、それは彼らが生産的であるからであり、
搾取があるからではない」
「つまり、新自由主義は、今日私たちが目にしているすべての問題を隠すための覆い」

3.2 「政府介入の排除」言説は嘘: 実際は「富裕層のための介入」への置き換え^

「新自由主義は政府の介入を一切行わないことを主張していますが、これは一種の煙幕…
偽装工作のもう 1 つの側面」「現実には、新自由主義の時代には膨大な量の政府介入」

「米国を含むほぼすべての国を見てみると、新自由主義時代の始まりによって経済における
国家の役割がわずかに減少しただけで、多くの場合、ほとんど、あるいはまったく減少して
いません。したがって、その意味では、市場に関することではありません」
「第二に、一方では、彼らは、ああ、ご存知のとおり、私たちは何もしていない、国家は
何もしていない、これは単に市場の結果だ、と言いたい」

3.3 新自由主義は富裕層の利益のために考案されたイデオロギー^

「新自由主義も台頭してきました。例えば、サッチャー夫人は、70年代に首相になる前に、
相手側にもイデオロギーがあるのだから、私たちもイデオロギーを持つ必要があるとよく
言っていました」i.e. (提唱者側の視点では)
「新自由主義は、ケインズ主義や福祉主義など、中道左派のイデオロギーに対する一種の
対抗手段」∴「新自由主義は、前面に出てきていた代替的な視点」
# つまり、プロパガンダ。
「新自由主義の重要な問題…自由市場と競争がすべてであると宣伝していること」
「しかし、現実を見てみると、歴史的に見て、それは巨大な独占資本の力を維持することに
関する…それが何よりも重要だった」
# プロパガンダの目的は、特権的富裕層の権益の維持+拡大。

4. マルクスまでの古典派経済学と新自由主義につながる「新古典派」経済学^

4.1 「重要なトリックワードは市場、特に自由市場」^

「新自由主義が主張する市場や自由市場…アダム・スミス、ジョン・スチュアート・ミル、
さらにはマルクスといった古典派経済学者が自由市場について語ったこととはまったく逆」
「どんな市場も社会制度…税法、刑法、あらゆる種類の政府規制によって形作られます。
政府のない市場など存在しません」
「もし市場を形成する政府をなくしたら、市場を形成するのは富裕層」
#  i.e.「公正な「法」」が無ければ、「手前勝手な「力」」が支配する社会になる。

「アダム・スミスが 19 世紀全体を通して自由市場と表現した意味は何でしょうか。
それは封建制の遺産から解放された市場」
「働かずに眠っている間に金を稼いでいた地主階級のいない市場。独占のない市場」
「アダム・スミス…は地主と独占を排除したかった」→「価値と価格の理論」
# 新自由主義は「価値」(と「生産」)を論じない。「「価格」(と「交換」)の理論」が表看板。

「自由市場の古典的経済学では、あらゆる市場を価値と価格理論の観点から見ていました。
価値とは社会的に必要な生産コスト」i.e. 定義:「価値とは何かを生産するためのコスト」
「しかし、市場価格はこのコストをはるかに上回る可能性」「たとえば経済的地代」
「地代は実際の価値を超えた価格の超過分」「たとえば、住宅用の土地の使用料を請求
する場合、土地にはコストがありません。コストは単に存在するだけ」「土地を私有化
して流用し、コストを追加する法的特権」「独占についても同じ」「独占とは、好きな
ように請求し、生産コストをはるかに超える価格を設定できる法的権利」
「つまり、それ(らの封建制の桎梏から解放された市場)が自由市場」

「新自由主義がやったこと」:「経済言語と経済用語の歴史全体を消し去り、代わりに
自由市場とは、家賃を求める人々にとって自由な市場であり、家主が規制なしに好きな
家賃を請求できる市場であり、独占者が市場が許容する限りの料金を請求できる市場
であるという言い方に変えた」
「人々が年間1万ドル、医療費に2万ドルを喜んで支払うなら、それが市場が許容する金額」
「お金か命か。それが基本的に新自由主義のスローガン」

「彼らのレンティア市場という概念を実現するために、彼らは経済思想の歴史、さらには
経済史さえも消し去る」
# 「レンティア」: 「レント(=「不労所得」=「不当所得」=「経済的地代」)」を貪る者。
# レント: 「労働の対価」ではなく、主に「特定の財を占有していること」に基いて他者から
# 徴収して得る収入で、社会全体から見て「収入(=財/価値の追加)」でなく「費用」になる。
# 地代と利子は典型的で古くからあるレント。∵地代は土地の占有、利子はお金の占有に基く。
# ある意味で、公的な「税」の私有化に近い。「独占」に伴う「超過利潤」もレントの一種。
「ローマ帝国の崩壊」←「このような寡頭政治があったときに何が起こったか」の事例。
「新自由主義は寡頭政治の市場であり、民主的な市場ではない」

4.2 レンティア市場での価値から乖離した価格による社会問題^

「価格とは何か?価格は物の価値に、価値はその物の生産コストに基づく」
「(市場での)価格は「価値」より高くなることも低くなることもある。
「大多数の生産者にとって市場価格は彼らのコストよりも低いことが多い」
「つまり、労働者は彼らの労働に対して彼らのコストよりも低い市場価格を得ている」
「農民や小規模生産者、個人商店のオーナーや事業主は、彼らの生産コストをはるかに
下回る価格を得ていることが多い」∴「寡頭制的な生産形態を奨励」

「別の点について」:「新自由主義は…19 世紀後半まで続けられてきた堅固な経済言説の
伝統全体を消し去る」→「19 世紀後半に何が起こったの…か…は非常に重要」

「19 世紀後半には、一方では、マルクスとエンゲルスが、アダム スミスやリカードが
大きな役割を果たした古典派政治経済学の伝統…の多くの未解決の問題を解決」
「価値とは何だったのか。剰余価値とは何だったのか。それはどこから来たのか」
「資本と労働の間で(「価値」が)異なる割合で配分されたのはなぜか…など」
「すべて、実に興味深い疑問」
「マルクスとエンゲルスは、*弁証法的に*これらの疑問をすべて考え…解決…
その結果、資本主義に対する大きな非難」←「リカードの下でも(兆しはあった)」後述。

「労働が生産コストを下回るという←指摘は非常に重要」
∵「労働者が生活費を下回る賃金を支払われると、負債を強いられる」
i.e.「地主や独占者がただで食べるために生産コストを上回る金額を請求するだけでなく、
労働(の対価)が「生産コスト」を下回ると…債権者階級への負債に追い込まれ…経済…
…市場が二極化する」←労働者の場合は「生産コスト」≈生活費。
「労働者については…彼らに何らかの信用を与える人がいるとすれば、そうだ」
# ↑いわゆる「(産業)労働者」に金を貸す金融業者の有無は、社会状況に依存。
「歴史的にあらゆる種類の農民や小規模生産者に当てはまってきた」「農民が常に借金の
サイクルに陥っているのは、彼らの生産物が必要な種類の収益をもたらさないから」
# ↑農民や小規模生産者には、文字通りの意味で「生産コスト」がある。

5. 新古典派経済学と新自由主義の概要^

5.1 「19 世紀後半に何が起こったか」^

「マルクスとエンゲルス」:「 (「新」の付かない)古典派経済学を頂点に導いた」
# ↓ここでの「社会主義」や「反資本主義」は「剥き出しの資本主義への反対」全般を指す。
「リカード」:「すべての「価値」は労働に由来」…と…主張」→「「リカード派社会主義」の
さまざまな潮流の基礎」←マルクスとエンゲルスも彼の「労働価値説」は継承。
「この種の考え方、非常に優れていて堅実な経済的な考え方は、マルクス以前からすでに
反資本主義の潮流」
# ↑ここでの「社会主義」や「反資本主義」は「剥き出しの資本主義への反対」全般を指す。

「マルクスが登場(したのと同時期に)まったく異なる考え方…新古典派経済学(が出現)」
「全体として…特にオーストリア学派の経済学では…市場…に完全に傾倒」
「その…経済学は発展し、ケインズ時代を通じて生き残り…ほぼ 100 年を経て、ついに
サッチャーやレーガンなどの政権…によって影響力を獲得し、過去 40 年間世界を苦しめた」

5.2 新古典派経済学は「価値」、「生産」、「歴史」を無視する劣化した経済学^

「新自由主義は、本質的には新古典派経済学の極端な…版」
「新古典派経済学は「価値(「新」の付かない古典派が重視した諸概念)」を無視する」
「生産についてではなく、市場と交換について…価値についてではなく、価格について…
のみ語る」
「資本主義を「社会を組織する歴史的に特定の方法」とは考えず…「ルーシーの時代から」
i.e. 「人類の最も初期の時代から」存在したかのように考える」
# ルーシー: 最古の人類(アウストラロピテクス)化石。女性のものと特定されている。
∴「これらすべての点で、新古典派経済学は経済的思考の劣化」

5.3 新自由主義は、古典派経済学で考えられていた自由を否定する反社会的哲学^

# 「自由」の意味/役割/目的が次のように、すり換えられた。
# 古典派経済学では、 封建的桎梏から解放された、社会全体での効率的生産が目的。
# ∴封建的桎梏ではない、万人のためになる社会的規範の追加は「自由」と矛盾しない。
# 新古典派経済学では、社会的規範を無視した、特権的富裕層の私利追求が目的。
# ∴特権的富裕層の私利に役立つ社会的規範の追加は「自由」と矛盾しない。

「新自由主義は実際には反自由主義と呼ぶべき」
「自由主義」:「地代や利子や独占地代のない自由市場の古典的な考え方」
「新自由主義は反社会的哲学」「オーストリア学派の考え」
「彼らは、市場の定義には社会がまったく含まれていないと言いました」
「マーガレット・サッチャーは社会など存在しないと言いました」
「新自由主義的な社会観と市場観は、政府も補助金も社会感覚もない」
「すべては個人主義」:「あたかも社会全体を個人主義で作れるかのように
公共インフラは存在しません」←「インフラはすべて民営化」

「信用と…通貨創造はすべて、公共事業ではなく民営化」
「銀行家たちにお金を創造させ…銀行家たちは…利子…「地主階級に貸し付け、
不動産や油井や鉱山を購入させ(て得た)、経済的地代」を搾取」

「オーストリア経済学は、政府が天然資源の賃料や地代、所得を受け取る…改革に…反対」
i.e.「すべて富裕層に渡るべき(という主張)」
「アメリカでもジョン・ベイツ・クラークが「不労所得など存在しない。誰もが望むだけ
稼ぐ。地主は家賃を稼ぎ、詐欺師は奪える分を稼ぐ」と言っている」
→「新自由主義の基盤である新古典派経済学が、古典的政治経済学の伝統と異なる点」

6. カール・ポランニーの経済思想とマルクスを含む古典派の経済学の関連^

# 特に、カール・ポランニーの著書「大転換」の内容との関連。
「擬制商品」問題=「土地、労働、お金が本来「商品」ではないこと」
# ↑擬制: fiction/fictional の(堅苦しいが関連文献での標準的な)訳語。
「資本主義では、それらは商品であるかのように扱われ…ポランニーが詳細に語った…困難や
問題(の原因になる)」
「ポランニーの言ったことはマルクスや伝統的な古典派政治経済学とは何の関係もないと
多くの人が考えている」←大変な認識不足で実際は密接に関連。↓
「土地、労働、お金は商品ではない」→「スミスからリカード、マルクスに至る
古典派政治経済学の伝統全体が、地代、労働賃金、お金の利子が設定される特別な法則を
見つけることに関心」→「(この関心が)古典派政治経済学(の伝統全体)に反映」
「新自由主義経済学、新古典派自由市場経済学では…稼得所得(価値の創造を伴う所得)と
不稼得所得(「レント」=「不労所得」=「経済的地代」)を区別せずポランニー…を嘲笑」

7. 新自由主義は産業空洞化をもたらす^

「新自由主義経済学、新古典派(自由市場至上主義)経済学は本質的に悪意のある経済学」
∵「1870 年代に出現…資本主義が独占資本主義に変貌しつつあった数十年間に起こった」
→「彼らは自由市場と競争を称賛」←実際には、どちらも消滅しつつあったので欺瞞的。
「米国が産業空洞化したのは、稼いだ収入と稼がなかった収入の違いを認識しなかったから」
「1980年代以降、ロナルド・レーガンやサッチャーの時代から」
「この世界観は、問題を解決することや、社会を地主や債権者の利益から解放することに
つながらず、結局は産業空洞化につながる」

「新自由主義者は、利益はすべて労働者を雇用することから生まれ、労働者の生産物に
対して、雇用コストよりも高い料金を請求するという点でマルクスに同意」
「しかし、マルクスが言った「労働者が生産したものを購入し受け取ることができる
ように、労働価格を上げよう」ではなく、新自由主義者は「労働価格を下げる必要がある」
と主張」i.e.「反労働者戦略」

「1990年代のクリントン政権下で、アメリカは、いかにして米国の労働力の価格を下げて
国内の利益を増やすかと考えた」
「労働力を中国やアジアなど、より賃金の安い場所に移転し、米国の労働力をアジアの労働力と
競争させ、産業を空洞化させた」
「これらはすべて、いかにして金持ちになるか、つまり99%ではなく1%の富裕層がいかにして
金持ちになるかという新自由主義のゲームプランに従った結果」

8. 資本主義は、競争が消滅すれば、生産効率向上に寄与せず、むしろ社会の桎梏となる^

8.1 新自由主義の言説の特徴^

# ↓新自由主義の言説の特徴に関する問題提起
「資本主義が独占資本主義へと移行しているときに、突然競争について語り始める」
# ↑これはなぜか。

# ↓マルクスの観察
「競争は(経済社会の発展段階としての)資本主義を正当化し得る唯一の概念。∵競争は
資本家に、より生産的になるよう強いるある種の規律を課し、生産力を発展させる。」
# i.e. 競争が経済構造において支配的である間は、資本主義は社会の発展に有用。

「マルクス」:「資本主義が独占段階に達する時点で、社会主義への移行の機が熟している」

「新自由主義」:「資本主義の終焉時点において、資本主義を守るためのイデオロギー」
# マルクスの指摘への危機感から来る、特権的富裕層(+代弁者)の「対抗策」

8.2 「産業資本主義」から「独占資本主義≈金融資本主義」への移行^

「産業資本主義」≈経済構造において「競争」が優位にある段階の資本主義
「労働者の生活費のほとんどを政府に負担させることで、労働価格を下げようとした」
「政府は医療を提供、企業は医療、教育、基本的なニーズを賄う十分な給料を労働者に」

# 19世紀末から20世紀初頭(第一次大戦まで)に何が起こったか。
「マルクス:「新自由主義は地主の利益と封建的利益を守る∴消え去る」と信じた」
「しかし、「マルクスが予期していなかったこと」が起きた」(後述)。
「独占資本主義」≈「新自由主義」
「交通、通信などの自然独占という意味での独占は常に存在」
「自然独占サービス、交通、水道、医療を原価または補助金付きの価格で
民営化して国家の手から奪い、独占することで、莫大な収入(基本的には地代収入)」
「新自由主義での富の主な起源は、工業生産ではなく、公共領域の資産…交通システム、
電力システム、通信システム、医療、教育を「民営化(私有化)」して政府から奪う事」
「第一次世界大戦直前の数年間、2 つの対立する(経済)哲学が存在」
(1)「産業資本主義」→「社会主義」を志向する複数の経済学派
「政府が労働の基本的なニーズを満たし、コストを負担せずに済むようにし、こうした
サービスをすべて民営化する国々と競争できると主張」

(2) 「オーストリア系アメリカ人の民営化派:←新古典派←オーストリア学派)
「政府を廃止して、政府がこのようなことをするのを阻止したいと主張」i.e.
「マーガレット サッチャーやロナルド レーガンのように、民営化派が経済を自由に利用
できるようにしたい」→「新自由主義」

8.3 「業界内での競争の排除としての独占」と「富の創出方法に関する構造的独占」^

# マイケル・ハドソンとラディカ・デサイの立ち位置の微妙な差が現われた箇所
「2 種類の「独占」概念」↔「独占禁止法の役割の二面性」
(1) 独占禁止法は、「業界内での競争の排除としての独占」を(ある程度)解消することで、
消費者の福祉を改善する。
(2) 独占禁止法は、「富の創出方法に関する構造的独占(=競争の実質的形骸化)」の成立を
表面的に取り繕い、「社会主義に移行すべき時期に達した」ことを人々の目から隠す。
# 対談では、ハドソンが (1) 、デサイが (2) を念頭に発言。
# i.e. デサイはマルクスの発展段階論に忠実で、 ハドソンは、あまり重視していない。
# おそらく、社会主義への移行速度についての感覚の違いに由来する。多分、ハドソンは
# 「一般民衆の生活水準が実際に向上する限り、細かい原則論や方法は問わない」立場。

# ↓デサイの議論
「マルクス」:「資本主義が独占段階に到達する」
「競争の過程自体の展開が、その自然な結果として独占を生み出す 」
→「競争の過程によって非効率的な生産者がすべて排除された後には、残るのは
1 社か少数の生産者」→「少数の非常に大規模な生産者がすべてを独占する傾向」
→「独占資本主義へと移行」
「マルクス」:「この段階…必ずしも悪いところはなく、より効率的な生産につながる」
∵「単一の工業企業における…人々の協力を伴う大規模な労働の社会化」
「英雄的な企業家などの神話が神話に過ぎないことが誰の目にも明らか」
→「神話が暴露され、人々は物事を公的に管理する用意ができるだろう」i.e.
「人々は、これは私たちの労働であり、これは社会的労働であり、社会化され、公的に所有
されるべきであると言う」

「新自由主義がこれまで阻止することに多大な貢献をしてきたこと」

8.3.1 独占禁止法は、主に金融資本主導のトラスト成立を阻止して、競争の維持を図る^
# ↑ハドソンの議論

「1890 年代(以降の)アメリカの反トラスト法」↔「銀行家が産業をトラストに組織化」
「マルクスが述べた市場の仕組みではなく…銀行が…会社を…買収…トラストを作り…
競争が起こらないようにする…略奪的な方法で行われている」

# 「新自由主義」の欺瞞
「価格を下げるために戦うすべての人に自由競争の教義であると約束」
「実際には、高い独占地代を請求できるように経済全体を独占することで競争を妨げる」

# 「マルクスが予期していなかったこと」
「産業資本主義が金融資本主義との戦いに敗れ…吸収され…どういうわけか、基本的に
反資本主義的な金融化と新自由主義へと進化」
「経済的に自己破壊的…成長ではなく、停止運動/脱成長の法則」

8.3.2 独占禁止法は経済が「構造的独占」に達した時期に成立した社会主義への対抗策^
# ↑デサイの議論

「米国では、JP モルガンのような銀行が、19 世紀後半から 20 世紀初頭にかけて、
経済のカルテル化、独占化、トラスト化において本質的に主導的な役割」
「ヒルファーディング」:「ドイツでの同様の傾向(を指摘)」

「銀行がそれを支援していたとしても、これは資本主義の自然な傾向」
「マルクス」:「この…独占段階に到達したら、社会主義に移行する時期」
「ヒルファーディング」:「ドイツ経済の大部分を実質的に公有化するには、ベルリンの
大手銀行 6 行を国有化するだけでよい」←「彼は正しかった」
「レーニン:独占資本」=「ヒルファーディング:金融資本」=「ブハーリン:資本の国有化」
=「すべての主要な資本主義社会が今や巨大な独占企業によって支配されている」
=「マルクス:社会主義の時代」

「独占禁止法」:「資本主義の新自由主義擁護者が、資本主義経済の独占構造を実際に維持
しながら、一定の最低限の競争レベルを見かけ上維持しようとするのを助けるため」
「独占でなければ、それは寡占であり、競争は主に名ばかり」
「資本主義を正当化する観点(口実)の移行:「競争」→「消費者の福祉」
「資本主義が賞味期限を過ぎており、もっと根本的な対策を講じなければならないという
事実を隠そうとする」

9. 新自由主義と独占^

「輸送であれ公共事業であれ、自然独占活動は実際には国家によって行われることが
多かった…市町村レベル、州レベル、連邦レベルを問わず、かなりの量」

「国家が創出し維持してきた自然独占を、資本が民営化(私有化)しようとする試み
…医療サービス、水道(ほかの)公益事業、交通、教育など…すべて」

「(私有化の)目的は生産拡大ではなく、所得を搾取すること」
「何かを生産することによって実際に得られる(主に労働者や中小企業などの)所得の
割合はますます縮小」
「家計に負債を負わせる場合も、企業に負債を負わせる場合も、政府に負債を負わせる
場合も、経済の負債構造全体を通じてる…金融独占資本主義が所得を搾取する」

「新自由主義のもとでは、ほとんどの富は公共領域の民営化によって生み出される」
「社会主義と新自由主義の争い」:「自然独占と基本的なニーズ(医療、教育、通信、交通…)を
誰が提供するか」i.e.
「低コストで提供される公共サービス」
→「民営化+独占化され経済的地代を搾り取る手段」
「経済的地代こそが、新自由主義の重要な目的」:「利益というよりは、独占地代」
「新自由主義は独占地代と利益の区別を否定」:「明確な区別をした古典経済学とは対照的」
i.e.古典経済学の示す「地代を受け取る人」≠「利益を受け取る人」が事実であって、
区別を否定する新自由主義の言説は、嘘/まやかし/プロパガンダ。

「不労所得としての地代」と「何らかの稼得要素を含む賃金や利益」は「生産」との関係に
よって区別される」↔「新古典派経済学は生産にまったく焦点を当てない」

「今日のすべての資本、特に米国のような国における資本の目的は、本質的にこれらの
独占活動などを食い物にして利益を得ること」

10. 新自由主義の奇妙な不死性 ^

「資本主義が独占段階に到達したら、人々はそれを社会化することの重要性に気づく
だろうとマルクスは期待していた」→期待通りにならなかった理由を議論する。

10.1 第二次世界大戦後の「資本主義の黄金期」と、その終焉時のプロパガンダ^

「新自由主義や新古典派経済学」=「独占資本主義の悪意のある擁護」
↓防げなかった↓
「アーノルド・メイヤーが1914年から1945年の30年間の危機と呼んだもの」
=「帝国主義間の戦争、大恐慌、そして最終的には核兵器、ホロコースト」
# ↑この結果、新自由主義(=レンティア市場志向の新古典派経済学)は、言わば、
# 相撲の「死に体」/将棋の「必至」/メディア作品の「オワコン」相当と見なされた。
∴↓「ケインズやポランニーのような人々の予想」↓
「この期間の終わりまでに、世界は資本主義から離れていく…資本主義が引き起こす
破壊や悲惨さは明らか…世界は資本主義を容認しない…急進的に左派に向かう」
「しかしその後、資本主義の黄金時代が訪れ、ほとんどの人が、その資本主義の黄金時代を
資本主義そのもの、いや、世界経済成長の黄金時代とみなし…ケインズやポランニーの
ような人たち…第二次世界大戦後に資本主義が終わると思った人たちも間違っていた、
資本主義は勢いを取り戻し、すべて順調…と言っていた」
# 「アーノルド・メイヤー(原文での Arnold Mayer)」は文字起こしでの表記ミス。正しくは
# Arno Joseph Mayer (間違った綴りでの検索結果からも推定可能だが、下記から明らか)。
# https://www.goodreads.com/author/show/110754.Arno_J_Mayer
「新自由主義の40年を経て非常に明らかになったこと」:
「第二次世界大戦後の30年の成長の…源は、独占資本主義が厳しく規制され、完全雇用の
ためのマクロ経済運営の実践、福祉国家の創設、国内需要の拡大、大幅な拡大など、
社会主義的な制度や慣行…社会主義的な措置こそが、資本主義のダイナミズムを説明」
「このモデルが危機に陥った」:「社会主義的な措置のせいではなく、基礎にある
システムが資本主義のままだったから」(X)←後に、結果的に明らかになる(後述)。
# しかし、「黄金期の終焉(=70 年代の危機)」の際「原因は社会主義的施策」との
# ハイエクやフリードマンらのプロパガンダによって、新自由主義が復活。
「70 年代の危機の後、これらの国の政府が新自由主義に転向し、これらの社会主義的な
措置の多くを撤回」←撤回後に黄金期のダイナミズムは復活せず、(X) が明らかに。
→「資本主義は公営企業を食い物にして民営化し、国家を不当な利益を得るための
手段として利用するシステムへと変化」→大多数の生活水準を低下させ危機が慢性化。

10.2 債権者の力の増大^

「1945 年以降、資本主義が黄金時代を迎えたように見える…別の要因」
「世界大恐慌によって借金がほぼ消滅し、戦争中は消費者や企業は借金をせず、戦後は
第一次世界大戦後のような敗戦国への賠償金もなかった」↓
「ドイツでは経済の奇跡」←「借金のない社会から始まった経済」
「1945年以降、多くの景気循環…各循環は、より高い債務レベルから始まり…債務の
増加により債権者の力が増大」
→「1980年代にサッチャー、レーガン、そして新自由主義が政権に就いたのは、主に、
債務の増加、つまり、労働者、企業、政府による債務を抱えた債権者階級の貯蓄の増加から
生じた債権者の力の増大の結果」
→「政府は基本的に債務圧迫に陥りがち」

「1980年代以降、国際通貨基金は各国に」以下を要求:
「外国の債権者に返済しなければならない、そして外国のドル保有者に返済する方法
として、基本的に(国家による自然独占の)インフラを売却しなければならない」
i.e. 「負債が、主にIMFと世界銀行を通じて、南半球全体で独占の民営化を強いた」

10.3 米国の「超帝国主義」:「ブレトン・ウッズ体制(米ドル制度)」の帝国主義^

# マイケル・ハドソンの著書「超帝国主義」に詳説されている。米国は自国通貨のドルが
# 基軸通貨である状況を「(ブレトン・ウッズ体制の前提だった)金との交換」停止後も維持
# することにより、*政府債務を他国への権力のテコとして使用できる*立場を確立した。
# i.e. 金に代わり財務省証券で貿易赤字の資金調達を行えば、仮に償還されるとしても、
# 支払われるのは、FDR が発行する紙幣だから、米国はタダで物資を入手したも同然。
# おまけに、政治的圧力により財務省証券を保持させ続ければ、償還すら行わずに済む。
# cf. 橋本龍太郎首相(当時)の「米国債を売りたい衝動…」発言。
「新自由主義は負債に基づくだけでなく、米国中心の現象」
∵「第二次世界大戦後、債権者中心のシステムは…米ドルと米国政府債務に基づいていた」
「本質的に、米国の軍事支配を支払うための国際収支赤字によって積み上がった債務」
「新自由主義以外の選択肢をなくす」
→「800 の米軍基地という軍事的な鉄拳で新自由主義を強制」
→「新自由主義をグローバル化」

「新自由主義時代に(米国での、あらゆる)債務が急激に増加」
「労働組合への攻撃…大規模なアウトソーシングなど…労働者の収入が圧迫され
「労働者が何かを必要とする場合、借金」

「社会支出に関しては政府支出が大幅に削減」
「他の多くの支出…産業支援、産業への補助金…軍事活動…大幅に増加」

「米国のすべての政府、特に共和党政権…富裕層への減税…前政権を上回ろうとし…
税制はますます逆進的に」→「政府…家計の債務危機」
「企業がより大きな企業に買収されると、企業を買収したより大きな企業や金融関係者は、
その企業が提供する担保に基づいてできるだけ多くの借り入れを行う」「配当金や利益を
自分たちのものにするために、買収したすべての企業に可能な限りの負債を負わせる」
「新自由主義」→「これらすべての点で、債務の大幅な増加」
独占資本を国家規制と社会的義務の重荷から解放しても、生産力は回復しなかった」
「資本、独占資本を自由にし、世界の残りの人々の稼いだ収入を食い物にすることを
可能にし、その結果、世界の労働者の大多数を犠牲にして、ごく少数のエリートが
ますます裕福に」

「独占資本の守護者は基本的に金融関係者」
「1945年には既に債務の急激な増加が始まっていた」
「富の増加と金融資産の集中による圧力が高まり、金融階級が独占の保護に主導権を握り、
独占化の触媒的、そして最終的には支配的な役割」
「金融部門とその他の部門との相互作用に注目する必要」

「世界の負債額をグラフにすると、確かに第二次世界大戦後の時期に増加」
「その後、新自由主義時代に非常に顕著に急増」

10.4 米国での金融規制撤廃によるバブルが「米ドル制度」により全世界に波及^

「米ドル制度の問題」(10.3 と関連)
「米国の対外債務だけではなく、あらゆる…債務の爆発的な増加…それが支える金融市場、
そしてそれが生み出した投機が、世界の債務の原因」
「米国の経常収支赤字は大きいとはいえ、最大の債務構造の小さな部分」

「しばしば考慮されない(負債増大原因の)重要な区別: (A) と (B)」
(A) 「指数関数的に増加する複利」「すでに存在する負債の利子」
(B) 「ほとんどの負債は単に過去の信用に対する利子の蓄積ではなく、銀行が単に銀行券を創造
することによって…生み出された」
# 「原因 (B) こそが、新自由主義時代の爆発的な負債増大の主因」=本項の主題。
「爆発的な銀行券の創造…信用創造の独占の民営…信用の生産的使用や生産手段と
釣り合いが取れない…既存の生産手段を買収して乗っ取り、独占し、縮小し、金融化する
ために作られた」

11. 「新自由主義」言説の嘘を暴く^

「新自由主義」:
「経済の仕組み、さらには資本主義経済の仕組みに関する正確な理論ではなかった」
「新自由主義は、約束していたような繁栄をもたらすことができなかった」
「その結果、新自由主義は10年ごとに形を変えた」
「私たちが見てきた40年…少しずつ異なるタイプの新自由主義を目にしてきた」
∴「新自由主義の終焉という報告」→「大げさに誇張されている」
「新自由主義がジャンク経済学で機能しないという事実を隠すために、国民所得計算と
GDP計算で描かれる経済の全体像が再設計されている」
i.e. 「非生産的で略奪的なレント(不当な利潤追求の諸経費/経済的地代)が、まるで
製品であるかのように描かれている」
「成長の幻想」↔「成長のうち、純粋に金融による部分(を差し引いたものが現実)」

11.1 10年ごとの新自由主義の変遷^

1980年代
「市場は良く、国家は悪いという典型的な新自由主義」
↑「レーガンやサッチャーのような右翼、新右翼政権」←80年代終わりに消滅。

1990年代
「グローバリゼーション(を口実にするゴマカシ)の新自由主義」
↑「ブレアのような新労働党、いわゆるクリントン派、第三の道の政権によって推進」
i.e.「労働者階級の支持基盤に「私たちは皆さんの賃金を上げたい、福祉を増やしたい、
環境保護を改善したい。しかし、私たちの手はグローバリゼーションによって縛られ…
私たちはそれに屈服するしかない。2000年代までには、仕事はなくなる」と言った」

2000年代
「ジョージ・ブッシュ・ジュニアの時代、アメリカは帝国に…ヨーロッパはユーロ硬化症、
日本は不景気」→「アメリカ経済は、特に住宅バブルと信用バブルによって…非常に活発な
経済であるかのように見せかけられた」

2010年代
「2008年以降は、大規模な緊縮財政」「それが2010年代の新自由主義」

2020年代
「今、私たちは新自由主義の新たな形を目にすることになる」
「幻想と現実の衝突」:「米国では、あらゆる世論調査で、消費者、労働者は困窮している」
注)「消費者とは労働者を意味する新自由主義的な言葉」

11.2 アメリカ(および西側)公式言説の嘘^

「バイデン大統領」「どうしてこれ以上悪い状況になるのか」
「ニューヨークタイムズのポール・クルーグマンの記事」:「GDPは上昇と述べている」
「確かにGDPは上昇」
しかし「すべて独占階級、金融、保険、不動産に発生…労働者には発生していない」
「彼らがGDP上昇による好況について語ったとき、それは新自由主義化されたレンティア経済」

11.2.1 嘘を暴く「問いかけ」: まず米国以外の状況を見る^

「もし中国が社会主義を放棄し、1990年にクリントン政権下で米国の新自由主義モデルを
採用していたら、中国はもっと良い状態になっていたか」
(cf. 「ロシアが新自由主義者を招き入れ…公共部門のすべてを支配階級とギャングに
無料で与えた」結果、どうなったか)
(1990年代のロシアのボリス・エリツィン、米国のクリントン、オバマに従って、もっと
良い状態になったとは考えられず、社会主義の維持が正しかった事は明白。だとすると…)
「新自由主義が考慮に入れていないものは何なのか」、
「世界の他の国々が米国のやっていることを真似して利益を得ることはない」

11.2.2 米国の経済状況についての嘘を暴く^

「米国自体では、バイデン経済学は、産業政策について語っており、本質的には
新自由主義の拒絶…という考えがあるが、これはまったくのナンセンス」
∵↑この考えは、新自由主義が自由市場に関すると暗黙に前提されている」
「新自由主義は自由市場に関するものではなく、資本主義が今や独占の老化段階にある
事実を隠すためのもの」←「あたかも競争を復活させるかのように語る」
実際は「縮小し続ける…金融化された独占、資本主義エリートの力を維持すること」
「企業などへの巨額の補助金を伴うバイデノミクスは、まさにその別のバージョン」
「疑似市民的新自由主義」in 「資本主義、コロナウイルス、その他」
「国民はX、Y、Zの商品を無料または非常に安価で手に入れなければならない…ワクチン
であれ、さまざまな形態のグリーンテクノロジーや輸送手段であれ、政府はこれらの
製品の生産に多額の補助金を支給し、民間企業はそれを政府に高額で販売」
「政府は、少なくとも名目上は、安価または無料で、それを私たちに提供」
「しかし、実際のところ、私たちは税金でそれを支払うことになり…また、私たちが得る
商品やサービスが粗悪品であるため、おそらく持つ価値がない」
「これが、私たちが目撃しようとしている疑似市民的新自由主義の一種」
「バイデン経済学と呼ばれているものは、新しいポスト新自由主義時代の到来ではなく、
新自由主義が50年目に取る5番目の形態」

12. 新自由主義の地政学^

# 新自由主義は「一極覇権の維持」対「多極化」の対立の背景ないし原因そのもの。
「新自由主義は、基本的に、新たな冷戦…熱戦に変わっていくグローバル化した冷戦」
∵「システムを維持するためには、新自由主義に/米国に代替案があってはならない」
「なぜ米国は中国と戦っているのか?」∵「 中国は代替案」+「ロシアは代替案」
「米国と NATO、ヨーロッパが縮小し、ユーラシアがはるかに先を進んでいる」
↑(世界が認識すれば)
「明らかに代替案があり、人々はユーラシアの多極的発展が、米国が作ろうとしている…
武力と軍事寡頭政治の傀儡…新自由主義、金融化、民営化の世界と何が違うのかと問う」
「これは昔の冷戦のようなもの」
「一方では、資本主義が賞味期限切れであることを認めようとしない国々」
↕(今後ますます顕著になるであろう分断)
「他方では、そのことを認識し、実際に人々のために機能する経済を創り出すための
あらゆる興味深い方法を試そうとする国々」

更新履歴^
2024-08-12 10:46: 人名注釈: アイン・ランド、「アーノルド(アーノ)・メイヤー」追記

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ジャパンラブサムライ
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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