ある日の気づき

「ユダヤ人」、「反ユダヤ主義」、そして「(ネオ)ナチ」の定義について

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はじめに
1. Wikipedia での「反ユダヤ主義」説明の混乱と非中立性
2. ユダヤ教とシオニズムの区別は重要
3. 本家ナチと米英資本家の関係
4. 付録
更新履歴

はじめに^

問題に関連する概念の「定義」を適切に行う(および適切に使用する)事は、しばしば問題
解決への重要なステップとなる(数学や自然科学における例は付録を参照)。裏を返せば、
ウクライナ紛争関連の事実確認」でも述べたように、必ずしも簡単なことではない。

昨今の日本(含む西側諸国)での今次ウクライナ紛争関連の言説において、「ネオナチ」と
「ユダヤ人」である現ウクライナ大統領(+現ウクライナ首相」)との関係や、直近での
ロシア外相のヒトラーの出自に関する発言について、かなりの混乱があるように思われる。
本記事では、これらの事に関連する概念や用語の「現在流布している「定義」」の問題点に
ついて検討する。(動機の一つは、儒教の「名を正す」という思想を実践して見ること)。

その前に、明示的な「定義」以前の問題として「ナチ」という概念/用語への「暗黙の前提」
ないし「イメージ」について、西側諸国とロシアでは、大きな違いがあると指摘しておこう。
# ロシア・ビヨンド(主にロシアの文化や観光スポットの広報サイト)の記事が、ロシア人の
# ナチス第二次大戦への一般的イメージを知る上で参考になる(検索の期間指定の既定値は
# 「昨年」なので、ここでの目的上は画面右上の方にあるボタンで「全て」に変更を推奨)。
西側諸国では、「ナチ」と言えば、「ユダヤ人の大量虐殺者」としてイメージされる場合が
多い。しかし、ロシアで「ナチ」と言えば、「ロシア人の大量虐殺者かつロシア国家の敵」と
してイメージされるに決まっていることは、第二次世界大戦での犠牲者数を知ってさえいれば、
少し考えれば分かる事のはずだ。さらに言えば、本家ナチが「ユダヤ民族」への敵意だけでは
なく、「スラブ民族」への侮蔑も剥き出しにしており、「奴隷化の対象」と見なしていた事は、
よく知られている。

ウクライナの「ネオナチ」は、言い換えれば「反ロシア主義者」だ。つまり、ロシア視点では、
「本家ナチと「同一視」できる連中」なので、その排除を指して「非ナチ化」と呼ぶことは、
当然のことに過ぎないわけだが、この事実の認識が欠けている議論が、あまりにも多過ぎる。
# ウクライナのナチについては、Cargo OffcialBlog の記事幻想の近現代の記事を参照。
より長期の歴史的観点から、ナチズムを「西欧に特徴的な侵略主義」と定義することも可能。
# Deeply Japan の記事にある「第二次大戦後の西欧はナチ2.0」との指摘は至言だと思う。
例えば、下記で引用されている侵略事例は、時代が遠く離れてはいるものの、ある種の抽象的
イデオロギー(「ローマカトリック」、「西欧文明」、「自由」、「民主主義」)を表看板に
した残忍さが甲乙つけ難く、これらの事例を含む「(広義の)ナチズム」は示唆に富む概念。
ナチズムとはどういう意味か?(Sakerアーカイブから)
本家ナチスのイデオロギーは「ゲルマン民族の優越」だったが、例えば、セシル・ローズ
思想=「アングロ・サクソンの優越」と並べれば、「取り立てて言うほどの差」はない。
社会体制についても、時代的条件による表面的な差の背後に「債権者寡頭制/金融寡頭制」が
共通の実態としてあるとマイケル・ハドソンが指摘している(e.g. 著書『古代の崩壊』で)。

1. Wikipedia での「反ユダヤ主義」説明の混乱と非中立性^

実を言えば、前々から気になっていたので、そのうち「歴史」カテゴリの記事で取り上げたいと
思っていたのだが、ネット上に数多ある「反ユダヤ主義」の説明の中で、類例のない混乱ぶりを
示しているのが、Wikipedia の下記エントリである。最初の「定義」がおかしいためか、続きの
説明も、問題だらけというか、率直に言って「問題しかない」と評さざるを得ない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/反ユダヤ主義
「ユダヤ人およびユダヤ教に対する敵意、憎悪、迫害、偏見のこと。
また、宗教的・経済的・人種的理由からユダヤ人を差別・排斥しようとする思想のこと。 」

まず、1行目が「反ユダヤ*主義*」の定義としては、明らかに間違っている。日本語としての
構造上も問題があるのだが、それはひとまず置く。そもそも、敵意、憎悪、迫害、偏見という
概念を、「ユダヤ人およびユダヤ教に対する」という限定だけで、*主義*と呼べるはずがない。
例を挙げよう。イスラエル軍の空爆で両親が殺されたパレスチナ人の子供が、ユダヤ人に敵意を
持てば、その敵意も「反ユダヤ主義」だとでも言うのだろうか?「考えて物を言え」という以外、
評する言葉がない。

日本語としての構造上の問題とは何か述べておこう。それは「ユダヤ人およびユダヤ教」という
くくり方にある。歴史上の「反ユダヤ主義」の典型例として、元祖ナチを挙げることには異議は
ないだろう(なお、仮に異議があっても、認めるつもりはないことを断っておく)。ところで、
元祖ナチは、ユダヤ教への敵意、憎悪、偏見を表明していただろうか?彼らは、ユダヤ教という
宗教を迫害しただろうか?(なお、これら2つの疑問文は「修辞疑問」である)。つまり、一見
「論理的 AND」のように見えるが、実際には、「論理的 OR」を意味していると解釈しない限り、
この文章は「定義」として意味を成さない。もう一つ、微妙な問題は、ユダヤ教という「宗教」
自体を「迫害」の対象と考えることは適切ではないという事だ。つまり、「迫害」の対象になり
得るのは、あくまでも「人の集団」つまり、「ユダヤ教徒」と考えるべきだ。「宗教」は特定の
思想/信念および、その思想/信念に基づく特定の行動様式であって、「「宗教」の信者」とは
明らかに異なる概念。その区別は明確にしておかないと筋道が通った議論ができない文脈の方が、
同一視して問題ない文脈より、はるかに多いだろう。そもそも、百科事典での「定義」を与える
際には、より慎重に、区別するべきだ。「ABC予想は確かに証明されていると信じられる理由
という数学に関する記事でも述べたが、「まず区別して議論を始めておいて、同一視して良いと
いうなら、その旨を示せばよい。区別せずに議論を始めると、原理的に避けられない誤りが存在
するからだ。」という事に異論はないだろう(なお、仮に異論があっても認めるつもりはない)。
以上から、最初の一文は、少なくとも、次のように書き換えないと、論理的におかしいわけだ。
(1) 「ユダヤ人への*いわれのない*敵意、憎悪、および、ユダヤ人への迫害、偏見」、
または
(2) 「ユダヤ教に対する敵意、憎悪、偏見」のこと。

ところで、こう書き換えると、すぐ明らかになる事がある。(1) は政治問題/社会問題であるが、
(2) は、そうではないことだ。(1) を「ユダヤ人差別」、(2) を「ユダヤ教批判」と言い換えて
見れば、明らかだろう。言い換えへの異議は却下するが、説明を補足する。(2) の部分の定義の
実例を挙げる際にも、それが単なる「敵意、憎悪、偏見」であり、正当な批判/非難ではないと
いう根拠を示す必要があることは、(1) の部分についてと同様で、言うまでもない。ところが、
Wikipedia で前述の定義に引き続く説明では、歴史上の有名な思想家が*ユダヤ教について*
述べた事についてすらも、「反ユダヤ主義」の事例として、何ら根拠を示さずに、数多く列挙
しているわけだ。単なる知的傲慢なのか、それとも、例えば、イスラエルのしている残虐行為に
対する正当な批判をも「反ユダヤ主義」であるかのように印象操作するプロパガンダの一環なの
かは定かではないが、後者の可能性も頭から除外してかかるわけにはいかない。

なお、(1) や「宗教的・経済的・人種的理由からユダヤ人を差別・排斥しようとする思想」との
定義に対しての例を挙げる際にも、その例が確かに「*いわれのない*敵意、憎悪」あるいは、
「迫害」、「偏見」、「差別」であることを示せない場合、正当な例示ではなくなる。さらに、
「排斥」についても、「正当な「排斥」」と呼び得る事態まで、「反ユダヤ主義」に含めれば、
「レッテル貼り」による詭弁/プロパガンダとなるだろう。例えば、アヘン戦争開始の直前に
アヘンを持ち込むイギリス人商人を清国は*排斥*したわけだが、それを非難すべきことだと
言い張るほどの恥知らずは、今となっては、さすがにいないはずだ。つまり、*排斥*が常に
不当だと無条件に決めつけるわけにはいかない。例えば、移民を*無制限に*受け入れる事が
できない限り、受け入れ限度を越えそうな時に、宗教的・人種的・経済的理由で、特定集団を
受け入れ対象から排除することは、国家主権の正当な行使の範囲内だろう。無論、排斥の方法
については、可能な限りの人道的配慮が必要であることは言うまでもないが、受け入れた後に、
どんな社会的影響が予想されるかは、集団の構成員の属性によって大きく違う可能性があると
いう現実的判断がある場合をも非難するのでは、無責任な机上の空論になるからだ。

さて、「反ユダヤ主義」と呼ぶことで「記述の中立性」への疑念が湧く例が、Wikipedia での
異様に長い「反ユダヤ主義」の項の説明に含まれているのだが、判別時に注意すべき点として、
「ユダヤ人」や「ユダヤ教」という言葉で、「反ユダヤ主義者」が*本来/真意として*何を
指し示そうとしているか、少し考えて見る余地があると指摘しておきたい。「反ユダヤ主義」
という言葉は、それが*適切に指し示す政治問題/社会問題*を解決するための議論において
使用すべきである。特に、思想家の発言における「ユダヤ人」という言葉は「差別/迫害対象
とされるユダヤ人」とは、概念/集合として「外延」も「内包」も違うように思われる場合が
多々ありそうに思われる。一見「反ユダヤ主義」的な印象があっても、「政治問題/社会問題」
として憂慮すべき「反ユダヤ主義(=ユダヤ人差別)」とは直接結びつきそうもない文脈での
発言まで「反ユダヤ主義」として一くくりにするのは、例えば「部落差別問題に関連する団体
によって行われたとされる「吊し上げ」行為」を連想させる点もあって、少し違和感がある。
例えば、下記のマルクスでの例が、典型的と考える。
「マルクスにとってユダヤ主義は資本主義や利己主義の別名であり、ユダヤ人は高利貸しの
別名であった。」

当時のドイツでの資本主義の主要な担い手、特に金融関連企業の幹部の大半が「ユダヤ人」に
分類されたであろうことは事実だし、歴史を振り返れば、長きに渡り「金融業者はユダヤ人」
という状況がヨーロッパでは続いていた。そもそも「利息を取ること自体を禁止する」という
キリスト教社会でのルール(教会法として明文化もされた)では、利息を取れば即「高利貸し」
になるわけだし、利率は「儲かる」程度には高かった。いわゆる「旧約聖書」(ユダヤ教では
「新約聖書」は聖典でないので「旧約」とはキリスト教での呼称だが)の記述で「異教徒から
であれば、利息を取ってもよい」とあることで、ユダヤ人であることが「金融業を営む特権の
保持者」であることをも意味したヨーロッパでの歴史的時間は、非常に長い。その積み重ねの
上に、当時のヨーロッパ(そして現在は全世界)での金融秩序が形成されているわけで、今も
「かってのユダヤ人高利貸しの末裔」が金融業界を支配しているという主張を、頭から否定は
できない。というか、かなりの蓋然性がある主張だと評価せざるを得ない。Wikipedia では、
「反ユダヤ主義」の項目での説明の他、「ロスチャイルド家」の項目でも「反ユダヤ主義」の
「陰謀論」の「犠牲者」であるかのように、「ロスチャイルド家」が記述されている。
ロスチャイルド家 - Wikipedia
「ロスチャイルド家はしばしば陰謀論の対象となっており、その多くは反ユダヤ主義に由来
している。」
しかし、これは「中立性」を大いに疑わせる記述だ。「陰謀論」が一般に「レッテル貼り」の
用語であることは「「「陰謀論」という陰謀論」という陰謀?」の記事で触れたが、そもそも
現実にロスチャイルド家が途方もない規模の資産、その財力に伴う権力、そして金融業界での
「特権(的地位)」を保持している事は単なる事実に過ぎない。なお、ここで「特権」として
想定している事は、具体的には各国の中央銀行が持つ「通貨発行権」である。「知ってる人は
知ってるが、知らない人は知らない」事実として、多くの国の中央銀行は民間企業か半官半民
であって*政府から独立*している事に注意して欲しい(なお、日本銀行は半官半民であるが
政府が 55% の株式を持っているので、比較的、政府の制御下にある方だ。アメリカの中央銀行
FRB は純然たる民間企業である)。そもそも世界最初の中央銀行であるイングランド銀行は、
ロスチャイルド資本であり、FRB の創立にもロスチャイルドが出資している(ロックフェラー、
モルガンも出資)。つまり、私企業が紙切れに印刷して、お金を作って儲ける(通貨発行益を
得る)という、途方もない権利を持っている。いわゆる「ロスチャイルド家関連「陰謀論」」の
多くは、こうした事実に基づいた議論から派生したという説明の方が、「反ユダヤ主義」から
派生したという説明より、どう考えても説得力がある。「「反ユダヤ主義」から派生した」と
主張したいのなら、その論拠を示すべきだ。単に「ロスチャイルド家がユダヤ人である」という
事実は論拠になり得ない。1つか2つ、ネーサン=ロスチャイルドのエピソードの細部について
難癖を付けてみても、上で言及した事実の圧倒的な印象は揺るぎようがない。さらに言えば、
ロスチャイルド家を始めとして、イギリスの貴族になっているユダヤ人一族がいる事も、財力
から権力が派生することを端的に示している(下記を参照)。
https://forbesjapan.com/articles/detail/32750
(バロネス = baroness という称号に注目すればよい)。

下記のシリーズ記事は、読み物としてなかなか楽しめるし、アヘン戦争、幕末、スエズ運河
買収の挿話や貴族位獲得までの経緯の挿話は、(「ウクライナ紛争関連の事実確認」の記事で
述べた基準に照らして)歴史的事実でしかないとも言える。
https://www.japanjournals.com/culture/gudaguda.html

「ロスチャイルド家」の Wikipedia での説明では、「19世紀のロスチャイルド家は、近代
世界史においても世界最大の私有財産を有していた。20世紀に入ると、一族の資産は減少し、
多くの子孫に分割された。」などと、あたかも過去の話のように述べて実態を矮小化しようと
しているが、そもそも*大資本家の資産が減少したままであるはずがない*し、減少したと
して、現在の規模がどれだけか?推定値に触れないのでは、印象操作との疑念を禁じ得ない。
ロスチャイルド」と検索すると、例えば、以下のような記事がヒットする。
https://newsee-media.com/rothschild-family
「先進国家レベルの資本力を持つと言われるロスチャイルド家ですが、2020年現在の資産は
どれほどなのでしょうか?
実は、ロスチャイルド家の総資産については公表されておらず不明です。
ただ、推定の総資産として「1京円」という天文学的な数字があげられています。つまり、
1兆円の1万倍の金額にあたります。」
https://cherish-media.jp/posts/11025

「2021年07月21日公開 
2021年07月21日更新
【総資産5京6500兆円!】世界一の金持ち一族。ロスチャイルド一族とは?」
ともかく、2つの記事で、桁数は一致している(笑)。さらに言えば「コロナ騒動に伴って
資産家層への富の集中が進んでいる」という話があるので、後の方の金額が大きいことは、
別におかしくはない(笑)。

さらに、「多くの子孫に資産が分割された」なら、「特権的富裕層」という社会階層の中に、
ロスチャルド家の血脈が広がったとの見方もできる。なお、ロスチャイルド家の家訓として、
「結婚は身内の間でする」と決まっているそうだから、資産分割の進行への歯止めは考えて
あるわけだ。ただし、「娘が他家に持参金付きで嫁ぐ」のはアリということで「多くの子孫に
資産が分割された」と言うが、実態は「持参金」レベルの持ち出しに過ぎない可能性もある。

2. ユダヤ教とシオニズムの区別は重要^

西側諸国の報道で「アラブ諸国の反ユダヤ主義傾向」を云々している場合がしばしばあるが、
アラブ諸国が非難/批判しているのは、「イスラエル」という国家として具現化してしまった
「シオニズム」
、および、その帰結である侵略および付随する「人道に対する罪」である。なお、
ここでの「人道に対する罪」の定義は、「ウクライナと西側諸国の犯罪」の記事で言及した条約
での定義のどれか、ないし論理的 OR (集合としては和集合)を取ると想定している。
(イスラエル成立時点では、それらの条約はなかったが、起きたことの内容に当てはまる定義と
して条約を参照している。なお、その後、(ジェノサイド条約を筆頭とする)それらの条約が
締結された後も、定義にあてはまるイスラエルの問題行動は継続されている事にも注意しよう。
https://note.com/kakehashi_pale/n/nedcd7c1cdd76
「イスラエルの建国が公式に宣言されるとともにアラブ諸国軍とイスラエルの戦争が始まり、
70万人以上の難民が発生。元々あった517の村が「消された」のです。こうした一連の
出来事をパレスチナの人達は「ナクバ=大災厄」と呼んでいます。」
https://web.archive.org/web/20180830201914/http://diplo.jp/articles18/1807-03Nakba.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/パレスチナ問題
https://ja.wikipedia.org/wiki/パレスチナ分割決議
「シオニズムとして知られるユダヤ人の民族主義とアラブ人の民族主義は競合し相反するため、
これに対処すべく分割が提案された。」
# シオニズムは、既に他人が住んでいる土地に自分たちの国を作ろうとする話=侵略の思想で、、
# 単なる「民族主義」とは言えない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/シオニズム
https://kotobank.jp/word/シオニズム-72275
「シオニズム運動は、パレスチナにユダヤ人の国家を築くことを目指した運動。
先住していながら土地を追われたパレスチナ住民からの抵抗が、今も続いている。」
http://inri.client.jp/hexagon/floorA6F_hd/a6fhd200.html
「シオニズムとユダヤ思想は別物である。
シオニズム運動は、現在のような人種差別的なイデオロギーと軍事思想に基づいたシオニズム
以外にも、幾つかの流派があり、初期のシオニズム運動は比較的穏やかな性格のものであった。
しかし、次第に強硬路線を唱える者たちに乗っ取られていく。」

ちなみに、シオニズムとロスチャイルド家の関係は、よく知られた事実でしかない。さすがに
この事実を「陰謀論」扱いするほど無知/恥知らずな人は、いないだろう。

さて、以上 2. で述べてきた事から 1. を見直して欲しい。
「ユダヤ人」が「ナチスによる差別/迫害の対象となった集団」ではなく「国際金融資本家の
代表」や「シオニスト」という意味合いで言及されている(あるいは、「ロスチャイルド」が
例として挙げられていると見なせる場合や、そもそも「シオニスト」という用語が使われて
いる)場合に、その文脈での「ユダヤ人」への批判/非難を「反ユダヤ主義」の現れと見なす
ことに、筆者が賛成しない理由は、お分かり頂けたかと思う。

3. 本家ナチと米英資本家の関係^

ウクライナ紛争関連の事実確認」の記事に、ウクライナのネオナチとユダヤ人オリガルヒの
関係についての記事へのリンクがある。ウクライナは、ある意味、政府がネオナチによって
乗っ取られた状況と見るのが、ロシア語話者への露骨な差別政策の最も自然な解釈と思われる。
そもそも、本家ナチも、米英の資本家から資金提供を受けていたわけで、その米英の資本家の
一部は、当然ながら、ユダヤ系だったという事にも注意しておこう。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202204230000/

まあ、「ウクライナのネオナチ=反ロシア主義」という図式が、最も基本的事実だとは思うの
だが、元祖ナチと「西側諸国の資本家全体」との関係にも触れないと、「ナチ=反ユダヤ主義
だから、大統領と首相がユダヤ人のウクライナ(ネオ)ナチがいるはずがない」とか言った
思い込みから抜け出すのに苦労しそうな人が、意外なほど多そうな今日この頃なので。

4. 付録^

息抜きという意味も込めて、数学と自然科学で、定義の見直しが問題解決に決定的に貢献した
事例を挙げておこう。

- アインシュタインによる同時性の定義(→特殊相対論)、重力の定義(→一般相対論)
- ボルツマンの原理における統計力学的エントロピーの定義
- ブレンステッドによる酸化反応の定義(=「電子が奪われること」)
- ヒルベルトによる「公理」概念の見直し
- エミー=ネーターによる、「群」としてのホモロジーの定義
- グロタンディークによる、スキーム論に基づく代数多様体の定義

あと、新たな概念の定義自体が、問題解決に決定的に貢献した例も挙げよう。
- ニュートンによる「加速度」の定義
- ファラデーによる「電磁場」の定義
- ガロワによる「群」の定義
- カントールによる「集合」の定義
- リーマンによる「多様体」の定義
- ハウスドルフによる「位相空間」の定義
- アイレンベルグとマックレーンによる「圏」の定義

最後に「反面教師」という意味合いで、問題解決を遅らせた「定義」も挙げてみる。
- アリストテレスの四元素
- フロギストン
- 有機物生成に必要と考えられていた「Vital Force」

更新履歴 ^
2022-05-07 05:13 : フォントサイズ変更、リンク追加
2022-05-07 05:37 : リンク追加
2022-05-07 06:06 : リンク追加
2022-05-26 13:19 : タグ #歴史 を付与。
2022-07-03 00:44 : 他記事からの参照可能位置にid付与、リンク追加
2022-09-06 21:47 : 節へのリンク追加
2022-11-25 15:17 : 記事先頭に戻るリンク (^) 追加
2023-03-28 13:54 : 長い歴史の文脈から見たナチズムの定義関連の記述+リンク追加
2023-05-08 12:54 : 民間企業であるFRB(米国中央銀行)の株主構成へのリンク追加
2023-05-12 01:20 : ロシア人の第二次大戦+ナチス観ウクライナのナチ関連リンク追加

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