おれがね、小学校5年のときに、
同じクラスに、大山くんって子がいて、
大山くんには、首の後ろにイボがあった。
おまけに、天然パーマだったから、
みんなから、ダイブツって呼ばれてたんだけど、
それって、親しみを込めてっていうよりも、どちらかというと、負の方向っていうか、
いじめの対象としての総称だった。
で、みんなから「ダイブツ、ダイブツ」って、いつも言われて、
そうすると、いつもダイブツ、「ハニャ?」とか「ホニャ?」とかね、
おーい!ハニ丸くんの、マネで、返す。
ハニ丸くんって、当時NHKでやってた、ハニワが主人公の幼児向け番組なんだけど、
そのマネがなんか、憎たらしくって、イボへの偏見に加えて、余計いじめられるんだけど、
ある時、ダイブツがキレた。
「ダイブツのイボは、イボころり~」とか、みんなに言われて、
その中の一人に、飛び掛っていった。
けど、結局、力も弱いから、そのまま逆に押し倒されちゃうんだけど、
結構ね、激しく押し倒されて、そのまま揉み合いになったんだ。
その瞬間。
大仏くんのイボが、取れた。
結構、頭でっかちのイボだったから、
飛び掛った子の手が、大仏の首の後ろを、強く引っ掻いちゃったら、
取れた。
みんな、ヒャーーーーってなって、
イボが、床にコロンと落ちて、
それで、ダイブツは
わんわん泣いちゃって、
体の一部が、取れたことに、
みんな怖くなっちゃって、
ざわざわ、ざわざわ、って、
子供は、残酷だから、
うつるぞ、うつるぞ、って。
「イボ地帯」だ、なんだって。
そんなときに、誰かが、「先生くるぞ」って、言った。
先生来るってなったら、バレないうように、机とかイスとか、散乱した教科書なんか元に戻して、
何事もなかったかのように片付ける、子供だから。
そして、おれは見たんだ。
ダイブツが、泣きながら自分のイボ拾ってポッケにしまうところを。
そのまま、先生が来て、騒ぐこともできなかったし、
誰にも何も言わないまま、今日まで来たけど、
あの、イボに
今、
会いたい。
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