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基金よ、残高証明、出せ!

2007年11月02日 | 年金
基金よ、残高証明、出せ!

2007.11.01
OPM 研究会
年金カウンセラー 高野 義博


【序】
2007年の世論を騒がせ与野党逆転を招いた年金問題、特に社会保険庁<年金記録漏れ>問題、さらに、企業年金連合会<年金不払い>問題、これとは別に、今回問題になっていない企業年金採用企業、特に代行返上基金と解散基金における闇に埋もれている<未請求>問題等々の根幹にあるものは何だろう?

それを学者先生や学識経験者お得意の一言「請求主義」と言うのでは、余りに総論的で何も言っていないのと同じことになろう。ここは、じっくり歴史的な視点と現場で行われている事情を勘案して、実効的な具体的解決策を提示すべきであろう。

<年金記録漏れ>問題、<年金不払い>問題等に共通するのは、官民共に預かり資産の情報開示欠如がある。つまり、<受託者責任>などという高邁な理念など無縁・無経験の日本の官僚・経営者・機関運営者等は受託資産の公開というセンスはもともと持ち合わせていないのである。そもそも日本には、過去も現在もフィデューシャリ(受託者)の観念は存在しないのである。

【破】
筆者はかって勤務先の某厚生年金基金で、業務委託形態をⅡ型からⅠA型に移行したうえで、年度末に全加入員に<加入員台帳>を配布すべく準備をしたが、天下り常務理事と喧嘩になりつぶされた経験をしたことがある。そのときは、まさか、これが今回の問題の根幹になるとは予見できなかった。

 というのも、この<加入員台帳>配布を他の基金と共に毎年行っていれば、<受託者責任>の一端を果たせただろうし、加入員の基金認識も高まったであろうと残念でならない。であれば、代行返上や基金解散も多少なりとも抑制できただろうし、<年金記録漏れ>問題、<年金不払い>問題等もかなりの部分解決できたであろう。そもそも制度発足時に、<加入員台帳配布せず>というボタンの掛け違いがあったものと思われる。

 ご承知のように、この<加入員台帳>には、氏名・生年月日・性別を初めとして標準給与月額の履歴、現時点の年金額等が表示されているのであるから、毎年この配布をすれば、社会保険庁の監視、受託者の覚悟(受託者責任)と共に、加入員の基金認識は格段にアップしたはずである。



















<単独・加算・ⅠA型厚生年金基金の加入員台帳>
【出所】高野 義博「年金生活への第一歩」p.52

 この<加入員台帳>配布は、万全の策ではなくても、アン・フィデューシャリの土壌に種をまくことは出来たはずである。他の<会計決算報告>や<基金便り等の広報>や<お決まりの啓蒙通知>の手段にも増して、具体性に勝るのである。

 転じて、この<加入員台帳>配布をしていなければ、資産を預かっている者の<受託者責任>の一端を果たしていることにはならないのである。この配布は、なにも基金に限ったことではなく、企業年金連合会も然り、社会保険庁も然り。つまり、預かり資産を保有するすべての機関の機関存続の必須義務である。これを実現できない機関は現在を生き抜く機関足り得ないのでなかろうか。

【急】
 とはいえ、現実のわずかに残った基金の現場には、
1.基金業務の機械化が進んでいない。 → コスト意識、自主独立の気概が少ない。
2.フィデューシャリ(受託者)意識が醸成されていない。
3.加入員台帳を配布している基金はないもよう。 → 受託者責任をはたしていない。
という現実があり、この問題にかかわっていられない緊急の事案が山積している。

 そこで、今回不祥事の今後の再発防止策のひとつとして、あえて、基金よ、残高証明、出せ! と、発言しよう。加入員ならびに受給待期者のひとりひとりの受託資産の残高証明、すなわち<加入員台帳>の個人配布を毎年度末に行おう。

 こうまで言っても、まだ「義」をはたす気になれないのだろうか! 覚醒を遠く離れたまま、いぜん、惰眠をむさぼるままなのだろうか。ことによると、そんなこと、どうでもいいよ! というレベル?



【参考資料】
1.厚生年金基金連合会 受託者責任研究会「厚生年金基金受託者責任ハンドブック(理事編)厚生年金基金連合会 1998年
2.樋口範雄『フィデュシャリー〔信認〕の時代』有斐閣 1999年
3.厚生年金基金連合会 受託者責任研究会「厚生年金基金受託者責任ハンドブック(運用期間編)厚生年金基金連合会 2000年
4.高野義博「人様のお金」 2000年
 http://homepage2.nifty.com/hitosama-no-okane/opm/index/opm155-7.pdf
5.高野義博「厚生年金基金事務長奮闘記」2001年
 http://homepage2.nifty.com/hitosama-no-okane/opm/index/index.htm

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