日本でもイスラムと聞いて、あまりいい印象を持たない人が多いのではないか。私もタリバン、
ISなど「イスラム=テロリズム」という図式をつい頭に浮かべてしまう。日本では海外情報
がアメリカ経由で入ってくるので、どうしても偏ったものになってしまう。しかしイスラム諸
国の紛争の元はその資源に目を付けたアメリカ、ヨーロッパ、ロシア等の大国の介入によると
ころが大きい。資金も武器も与え、混乱に拍車をかけ、その結果大量の難民を生み出した。
日本を訪れたアラブの王族たちは、乗客たちが新幹線に整然と乗り込み、東京ディズニーラン
ドにゴミが見当たらない事に強い印象を持ち、戦乱にあったアフガニスタンのジャーナリスト
たちは日本に招請されて、「日本の平和なところが好き」と答え、ある女性ジャーナリストは、
「日本の若い女の子たちは実ににこやかな表情で街を歩いている」と語る。
イスラム大学の学長は「日本の市民は整列することに慣れており、清潔を保ち、正直で、よく
他人を助け、インドネシアでも失われつつある様々なイスラムの価値観を見つけることができ
た」という。
大正期以前から中東諸国と良好な関係を築いてきた日本は、欧米の価値観とは異なるものを持
ち発展してきたことでイスラム諸国から尊敬を受けている。アメリカの次期トランプ大統領は
先の就任式で「イスラム過激主義を根絶する」と宣言した。世界は一部の人々のモノではない、
日本は欧米とイスラムの国々との間に入り、今までとは異なる外交を考えなければいけない。
イスラム唯一の希望の国日本 宮田律 PHP新書