よしーの世界

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不死身の特攻兵   鴻上尚史

2021-05-08 07:28:56 | 
読んでいる最中に興奮し、憤りのあまり本を叩きつけたくなる衝動を覚えた。特に富永恭次司令官の無知、

無能に対して誰も逆らえず(富永司令官は最後まで米軍に対して全軍抵抗を主張しながら、自らは軍隊を

残し単独でフィリピンを離れ台湾に逃亡するという暴挙を犯しながら、戦後生き永らえている)優秀なパ

イロットである岩本隊長を富永司令官の無謀な命令で死なせてしまっている個所では、大戦中の日本軍の

幹部のひどさを思い知らされた。


本書で漠然とした大戦中の特攻に対するイメージがまた違ったものに変わり、「必ず死んでこい!」とい

う命令に従わず9回も出撃しながら生還した特攻兵がいたことに驚かされた。どう考えても特攻は理不尽

で意味のない作戦に思え、実際岩本隊長は「出撃しても、爆弾を命中させて帰ってこい」と力強く言って

いる。元々戦闘機は爆弾と違って軽く作られている。命中するには難しく、優秀なパイロットも戦闘機も

一度の出撃で同時に失ってしまう。最前線で戦う兵士もドンドン失ってしまう作戦は只々無謀としか言え

ない。


本書の中心人物である佐々木友次氏はフィリピンの激戦を生き残り、戦後郷里の北海道に住み92歳まで

生きた。著者は佐々木氏の生存を知り、何度も病院を訪れ同氏の体験を聞き本書を執筆している。そこ

には戦争を体験していない著者に沢山の疑問があり、これは書いておかなければならないという思いが

込められている。


読後に現在の日本の状況と大戦中の軍部の様子が酷似していると思った。新型コロナウィルスとの戦い

に日本の政治家、官僚達は右往左往し科学的根拠のない対策を何度も実行し、海外でコロナウィルスを

制しつつある国もいくつかある中、日本においては先が見えない事態に陥っている。日本の菅首相は頼

りなく、コロナを抑え込むという気迫に欠け、国民の窮迫を他人事のように捉えているように思えてし

まう。リーダーに対して責任を取らせることが出来なかった過去が今の日本の状況を造らせている。



不死身の特攻兵          鴻上尚史       講談社現代新書



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