伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

いわき市立美術館のエリック・カール展を見てきました

2018年05月05日 | 文化
 「はらぺこあおむし」。うちの子ども達が幼児の頃、寝付かせるときに絵本を読んであげたが、その中で何度も読んだ記憶くがある。

 失礼ながら、鮮やかな色彩の絵はどこか前衛的な印象を与え、幼児向けなのかな・・なんて思ったりもしたが、子ども達にしてみれば、鮮やか色彩に心が奪われるのだろう。何度も、何度も、読まさせられた記憶が残っている。

 その作者エリック・カールの展覧会を開くと案内が届いて、これは見に行きたいと思っていたが、連休に保育士をしている娘が帰ってくれば、たぶん見に行きたいというに違いないと思って、連休を待っていた。案の定、見に行きたいというので、今日の観覧となった。こどもの日ということもあるのか、会場にはたくさんの家族連れがいた。



 当然のことながら初めての原画体験だ。

 原画を見たから分かったことがある。エリックさんの作品はどれも鮮やかな色彩をしている。輪郭線こそ描いていないものの、輪郭が背景と描かれた対象物をシャープに分けている印象に残っていた。このシャープな輪郭はどこからくるのだろうと思っていた。

 一目原画を見て分かった。描かれた絵は、実は切り絵なのだ。作品の題名を示す札には「コラージュ」とある。彼は、構図を決めたら、色鮮やかな色紙を作成した上で、描く対象物の部品を色紙から切り取り、これを貼り合わせて一つの作品を組み立てていたのだ。このため、描かれた対象物と背景にはシャープな輪郭が生まれることになる。印刷物の絵本の絵からは、この技法を読み取ることができなかった。

 彼の絵は、鮮やかな色彩が特徴の一つと思う。色の鮮やかさを表現するために、部品部品で色が交じり合わない切り絵の手法がもっとも適していたのだろう。

 そして、作品に描かれた動物や虫などを見ると、非常に良くその特徴をとらえている。観察とデッサンの力に優れているからこそできる業なのだろう。



 また、エリックさんが日本人作家いわむらかずおさんと共同で制作した「いつでも会える」(童心社)という絵本がある。この作品にまつわる展示もある。いわむらさんがエリックさんに絵本製作の上でアイデアを提案し、エリックさんがこれを承諾したやり取りなどが紹介されていた。2人の作風は全く違う。その2人がどんな物語を紡いでいるのだろう。これは絵本を手に取ってみなければ分からない・・。

 さらにエリックさんは日本の浮世絵にも影響を受けたと言っている。

 作品となっている対象物は面の集合体として形成されている。この1つの面は1つの文様の紙で構成される。この面処理とシャープな輪郭。確かに浮世絵を思わせるものがある。今、読んでいる「たゆまずとも沈ます」(原田マハ著)は浮世絵の影響を受けたゴッホに題をとった小説だ。当時の日本では顧みられなかった浮世絵の芸術性が、世界に影響を与えていることをこの展覧会でも知った。日本の芸術にも、同じ日本人として目を向け、誇りを持つことが大切かもしれない。

 数々の作品を見て、一番気に入ったのが実はナマケモノを題材にした作品だった。「ゆっくりがいっぱい」という絵本に使われている作品だ。展覧会会場の出口でグッズの販売がされていたが、そこにおそらくこの作品もあったのだろう。混みあっていたので私は見なかったが、きっとあったはずだ。

 今度、本屋さんにいったら探してみよう。

 ちなみに、この作品の画像はここにあった。→エリック・カール スペシャルサイト(偕成社)HPより


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