伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

トロロアオイ農家で学んだ

2023年07月23日 | 遠野町・地域
 トロロアオイは和紙漉きに欠かせない。
 この植物の根から抽出する粘性の物質をネリというが、ネリは漉き船の水に溶かしこむことでとろみをつけ、楮の繊維が水中で均等に浮遊する状況を作る役割を果たす。

 このトロロアオイを我が家の畑にも植えているわけだが、植え始めから見るとだいぶ大きくなり、同時に草もだいぶ伸びてきた。放っておけないので、畑に出たついでに草引きだ。



 車輪のついたイスに座って転がしながら、畝間と畝に生えた草を引いていく。写真の手前に引き抜いた草の山があるが、この2倍ほどの量の草を引いて、すっきりした畑が表れた。

 間引きをされていない株があったので、今更ながら間引きもした。根を見ると渦を巻くように曲がっている。我が家の畑は粘土質の上、十分にこなされていないため土の塊もある。根っこを太くまっすぐ育てたいのだが、土の改良をしなければ難しい。まあ曲がって育ってもネリを取り出すことは出来る。今後の課題ということで、まずはこの株をしっかり育てよう。

 トロロアオイの葉っぱの上には虫もいた。



 顔が面白い。これは何かと思って調べて、やっと正体が分かった。ツマグロオオヨコバイの老齢幼虫のようだ。成虫になると全体が緑色になり、羽の縁が黒くなり、胸と頭に黒い点の模様があらわれる。よく見かける虫だ。色は違うのだが、昔からこの虫をみるとウルトラマンの怪獣・メトロン星人を思い出す。私だけだろうが。



 毛虫も。たぶん葉っぱを食べる。正体を探すがなかなか分からない。似たものはいるのだが、黒い模様が少し違う。ただそれはオクラの害虫というカテゴリーで見つけた。トロロアオイはオクラの仲間なので、もしかしたら同じものなのかもしれない。その名はフタトリコヤガという。ガの一種のようだ。

 少し前まではウリハムシが最大の害虫だったが、これからは様々な害虫が寄ってきそうだ。

 さて、このトロロアオイをより良く育てるノウハウを知ろうと訪ねた小美玉市。栽培農家のお話は来年には活かしたいものだ。

 小美玉市ではかつて50軒程の農家がトロロアオイを栽培していたというが、現在は7軒が注文生産に従事し2021年度は13トン(15kg×890箱)程を生産したという。同市で生産されるトロロアオイは全国の75%程のシュアを誇っているという。まあ、全国の和紙生産を土台で支えている産地と言えそうだ。

 ちなみに以前、小美玉でトロロアオイの栽培をやめるという誤った報道がされたことがあったそうだ。全国の産地で危機感が高まり、栽培継続の働きかけとともに、和紙産地から農作業のボランティアが小美玉にやってくるようになったという。それだけ和紙の世界では大切な地域になっていると言えそうだ。



 案内された栽培農家に聞いたトロロアオイの育て方だが、畝間は70cmから75cm程とって種で植え付ける。以前は手植えをしていたそうだが、現在は種屋さんに依頼してシーダーテープを作り機械で植えるという。発芽後は15cmから20cmの株間をに間引き、その状態で育てる。



 成長して花芽がつきだした頃に芽かきを行う。上部の葉っぱは5枚から6枚残し、下部の葉っぱは新芽といっしょに除去する。この時期に化成肥料を追肥し畝に土あげし、花芽はつぼみになった段階で摘み、摘芯もする。芽かきは2回程するという。





 後は、成長を待って収穫。茎の下部で切断した根を箱詰めし出荷するという。

 また種は、茨城県大子の農家に依頼し栽培しているという。トロロアオイは同じアオイ科の植物と交雑すると品質が低下するので、交雑しない純粋なトロロアオイの種を手に入れるためにそうしているという。

 聞いた話しは多くが聞きかじって一定の知識を持っている内容だったが、今回の研修でその知識を整理できたように思う。また、芽かきは2回程で良いというのは目からうろこのお話で、昨年は新芽が伸びるたびに何度も芽を欠いた記憶がある。そこまでひんぱんにやらなくて良いという説明は、作業軽減につながり、ラッキーな知識となりそうだ。

 研修で栽培の現場を見て、条件の違いを目の当たりにしたという思いもある。。小美玉市の栽培農家の土は軟らかい。たぶん関東ローム層由来の土で水はけも良さそうだ。ここでは畑を作る前段として、トラクターにプラソイラという器具を装着して50cm下まで耕しているという。トロロアオイの植えてある場所を見ると、最初の段階で畝たてはほとんどしていないように見えた。つまり平な畑に直接種をまいているという印象だ。深く柔く水はけが良い畑なのでこのような栽培が可能となるのだろう。我が家の畑とは雲泥の差だ。

 条件の違いの大きさを呪ってもしょうがない。まずは土作りが大切ということだろう。今年は粘土質の畑に籾殻をすき込んで見た。来年、さらに量を増やしながら、少しでも柔らかな土に変えていければ良いかなと思う。

 また、トロロアオイは連作はできず、作付けはだいたい3年から4年程をあけるという。植え付けている畑で、今年半分程空けたのが昨年トロロアオイを作付けした場所で、残り半分に今年作付けをした。すると最低3年空けようとすると、作付けする場所がここにはない。来年、作付けする場所をどうしようか。悩みどころだ。

 ちなみに栽培農家の庭の樹上からホオジロのさえずりが聞こえてきた。枝の間に姿を見つけた。



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