伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

被爆地のねがい、子ども達のねがい政府は率直に応えてほしいな

2024年08月08日 | 平和・戦争

 朝のあいさつは、週3回、場所を変えて実施している。

 この日は深山田の沢繋に立ち、遠野から常磐方面に向う車、常磐方面から遠野に向う車、それぞれに頭を下げ「おはようございます」と声をかける。

 約1時間、ここは数百台の車が横切っていく。多いか少ないかは別として、頭を下げたり、手を振ったり、時にはクラクションが鳴らされたり、何らかのあいさつが返ってくることがある。ありがとうございます。

 さて、広島の式典で、同市の松井市長は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化やイスラエル・パレスチナ情勢の悪化で、強まりつつある国際問題の解決のために武力に頼らざるをえないという考えについて「市民社会の安全・安心を保つことは不可能では」と問題提起。かつてゴルバチョフ・ソ連大統領が核兵器の根絶と軍縮を決意し、レーガン米大統領と対話をして、冷戦を終結に導き、米ソ間の戦略兵器削減条約の締結を実現したようには、「為政者が断固とした決意で対話をするならば、危機的な状況を打破できることを示している」として、為政者を動かすために行動することを呼びかけた。

 また、日本政府がNPT(核兵器不拡散条約)の各国の対話にリーダーシップを発揮するとともに、核兵器禁止条約の第3回締約国会議にオブザーバー参加し、一刻も早く締約国となることを求め、広島も核兵器廃絶とその先にある世界恒久平和の実現に向け、世界の人々と共に力を尽くすことを誓うとした。

 一方、岸首相はどうだったのか。

 相変わらずちょっと残念の感が漂う。

 79年前の惨禍を繰り返してはならないとしながら、「『核兵器のない世界』の実現に向けて努力を着実に積み重ねていくことは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命」とした。気にかかるのは「努力を着実に積み重ね」ることが使命とされている点だ。どうして「『核兵器のない世界』の実現」を「わが国の使命」として直接上げないのか。そこに現在の政府の「核兵器のない世界」に対する姿勢がにじみ出してくるように思う。

 また、「核兵器不拡散条約(NPT)の維持・強化のため、『ヒロシマ・アクション・プラン』の下での現実的かつ実践的な取組を進め、核軍縮に向けた国際社会の機運を高めるべく、国際社会を主導」というのだが、「アクション・プラン」そのものが西側の核保有を前提にしていると批判されるなど、「核兵器のない世界」とは距離があるものだ。被爆者団体も、こうして政府の市政を批判している。

 さらに、「我が国は、核兵器国、非核兵器国を含むFMCTフレンズの枠組みを立ち上げた。私自身、先頭に立って主体的に関与」するという。ここでいうFMCTは「核兵器用の核分裂性物質生産禁止条約」のことをいい、「フレンズ」の参加国は、日本、米国、英国、フランス、イタリア、オランダ、カナダ、豪州、ドイツ、ナイジェリア、フィリピン、ブラジルの12か国となっている。そもそも、米国など核保有国が持つ既存の核兵器用の核分裂性物質は条約の枠外に置く主張がなされるなど、既存の核保有国は引き続き核兵器を保有することが可能となるなど、問題点が多いものとなっているようだ。日本も同様、枠外に置く主張をしているというが、その点から考えてもFMCTフレンズが「核兵器のない世界」にどうつながっていくのか不透明な枠組みとなっているように見える。

 こうして考えると首相のあいさつの方向での取り組みの方向には、一刻も早い核兵器のない社会の実現の方向性は見えてこない。ことし1月の段階で、核兵器の無条件禁止を内容とする核兵器禁止条約に署名した国は93か国・地域で、批准した国は70か国・地域まで前進している。広島市が主張するように日本が核兵器禁止条約を批准して、唯一の被爆国として廃止の先頭に立つことが必要なのではないだろうか。

 広島県知事は、「いわゆる現実主義者は、力には力を、という。核兵器には、核兵器を」というが、核兵器は存在する限りいつか使われると指摘し、「私たちは、真の現実主義者にならなければならないん。核廃絶は遠くに掲げる理想ではない」と早期の核兵器廃絶の取り組みを訴えた。そして核兵器の維持増強に世界で使われる費用の「十分1.4兆円や数千人の専門家を投入すれば、核廃絶も具体的に大きく前進する」と、世界各国の代表の前で訴えた。やはり首相の見識とは大きな隔たりを持っているように見える。

 「色鮮やかな日常を守り、平和をつくっていくのは私たちです」

 子ども宣言はこう呼びかけた。この声に率直に耳を傾けていくことが、今の政府に強く求められているのではないだろうか。



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