伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

調べてみました。3・11になぜサイレンは鳴らなかったのか・・

2014年03月30日 | 市政
 3月11日午後2時46分、サイレンの吹鳴に合わせて黙とうを呼びかけたいわき市。私のツイートでお知らせし、議会棟の日本共産党控室にいた私もサイレンの吹鳴を待ちました。しかし聞こえない。その時間に庁内放送で黙とうが呼びかけられ、あわてて目を閉じました。

 黙祷が終わると、数人からサイレンが聞こえなかったという連絡をいただきました。なぜ聞こえないのか知りたいという声です。この問に適切な答えをする知識を持ちえていませんでした。そこで改めて聞き取り調査をしてみました。

サイレンは消防団員への通知用

 まず、サイレンが聞こえなかったという問題です。

 いわき市消防本部が発行している統計書「いわき市の消防」によると、消防団の施設としてサイレンの数が161ヵ所と記載されています。これは消防団の詰所に設置されたサイレンの数で、この他に消防署所13ヵ所にも設置されているそうで、全部で174ヵ所にサイレンがあります。

 これら消防サイレンは、火災などの災害発生時に消防団員などを招集する目的で行う、情報伝達手段として設置されています。その吹鳴方法などは、消防法施行規則で定められており、主な消防サイレン吹鳴方法は次のとおりです(草津市HPより作成)。



サイレンの運用は設置箇所ごとに行われる

 消防団員への伝達手段であることから、サイレンは設置された詰所、あるいは消防署所ごとに運用されます。詰所の場合は、そこに駆け付けた消防団員が操作して吹鳴することになるわけです。消防署所も職員が操作します。どこかに設置されたセンターが一括して、これらのサイレンを吹鳴するという仕組みにはなっていないわけです。

 例外は分遣署で、出動すると無人になる可能性があることから、それぞれ上位に位置する消防署から操作ができるようになっている所もあります。例えば江名分遣署は小名浜消防署から操作ができるそうです。一方では遠野支所に併設する遠野分遣署は、支所の宿直員にお願いして操作するようになっているそうです。つまり、サイレンの運用は、設置された場所ごと、それぞれの事情に即して行われているということです。

 操作方法から分かる通り、これらのサイレンを一斉に吹鳴するためには、大変な労力をつぎ込むことになります。あらかじめサイレンの設置場所に人員を配置し、同じ時刻に吹鳴の操作をすることが必要になるわけです。

いっせい吹鳴は実際は難しそう

 この話を聞いて3月11日にサイレンが聞こえなかったという理由が分かります。
いっせい吹鳴の実施には手間と人出がかかるのです。全部で吹鳴しようとすれば、160を超える施設にあらかじめ人員を配置することが必要になります。ですからあの日は、消防署(すなわち、基本的にいつも人員が確保されている)に設置されたサイレンの吹鳴で対応したそうです。このため、遠いところは聞こえない、風の向きなど条件が良いところではるか遠くにサイレンを聞くことになったわけです。

 ツイッターでは、同僚議員の話として「苦情でスイッチを入れないことがある」旨のツイートをしていました。“どこかで吹鳴の操作をしたのだが、スイッチが切られているために鳴らなかった”と伝わったでしょう。そして、日常的にも同じことが起こっていると誤解を与えてしまったと思います。

 しかし、実情の聞き取りをしてみると、ニュアンスは違いました。そもそも、サイレンの吹鳴は設置箇所ごとに操作が必要であり、吹鳴はされたのだがスイッチが入っていないので鳴らないということではないことです。苦情によって日常から吹鳴されないケースがあるとすれば、市の側からの説明を前提にしながら、地域的な合意作りが必要だということです。混乱させるかもしれない情報を出したことをお詫びします。

 一方後述しますが、消防団員への災害発生の周知方法は、震災後に導入された携帯電話等へのメール配信サービスに代行されるようになってきた、という情報伝達上の環境変化があります。これもサイレンの運用に影響をもたらす一つの要因になりそうです。

 また、「沿岸部にはサイレンがないのでしょうか」という質問がありました。消防団詰所あるいは消防署所があればサイレンが設置されます、が答えとなります。現在、津波で被災して詰所やサイレン設備が流出している場合があると思います。それぞれの被災地で区画整理事業等がすすみ、消防団詰所が再配置される場合に、サイレン設備も再建されるものと思います。

毎月1日のサイレンは「交通事故ゼロの日」の呼びかけ

 毎月1日のサイレンが鳴らなくなったというツイートもありました。
 私の住む遠野町ではしっかり聞こえているので、どこも同じく吹鳴されていると思っていました。

 ところでこの吹鳴の意味をみなさんは知っていましたか。恥ずかしながら私は知りませんでした。「1日だから」と漫然と考えていたのです。しかし、そこにはきちんとした意味がありました。いろいろと問い合わせてみると、このサイレンは、「交通事故ゼロの日」をアピールするための吹鳴だといいます。

 何故1日なのか。これについて担当者に聞き忘れたのですが、次の理由を推定しています。

 1956(昭和31)、57年頃に生産や輸送の活発化で産業災害が増大する傾向を示したため、政府は58年に産業災害を減少させるための5カ年間の目標をたて、様々な施策に取り組むことにしました。しかし、その後、自動車事故なども続発するようになり、各種の安全対策強化と産業・交通などの安全運動発展を図るために、1960(昭和35)年に毎年7月1日を「国民安全の日」とすることにしました。この1日が毎月1日の「交通事故ゼロの日」の根拠なのではないか、と考えました(本当かな・・機会があったら確認してみましょう)。

 いずれにせよ「交通事故ゼロの日」の吹鳴は、市民協働部市民生活課が要請し各消防署で実施されます。実施の有無を聞いてみましたが担当は把握しておらず、現時点では実態はわかりません。しかし、事業効果を高めるためにも、1日吹鳴の意味の周知と吹鳴の実施の確認はしておいた方が良いかもしれませんね。

防災行政無線は災害専用で沿岸部に86基設置

 2つ目に防災行政無線のお話がありました。これは先に書いたサイレンとは全く別の系統で運用されます。

 設置の目的は、大規模災害発生時の避難勧告、避難命令などの告知などです。無線の免許を取得して実施されていますが、電波法が目的外の使用を禁止していることから、どんな放送でも出来るというわけにはいかないようです。今年3月11日の震災記念のサイレン吹鳴に設備を使わなかったのはこのためです。

 この放送設備は、いわき市では久ノ浜から勿来まで、津波の恐れがある沿岸部に86基整備されています。ちなみに吹鳴方法は、以下の通りです。いわき市のホームページで紹介しています(⇨防災行政無線の吹鳴方法にリンク)。



 さてこう確認してくると、災害等の際の情報をどう伝達するのだろうか、と思えてきます。防災行政無線はサイレンの吹鳴と音声伝達に対応しますから、沿岸部では災害等の際にはこれを活用して情報伝達ができます。しかし、それ以外の地域では、消防団員に情報を伝達する手段として設置されたサイレンしかないということに、一般的にはなるのです。それは、音声には対応していません。しかもサイレンを鳴らすためには個別に操作するしかない装置です。

一般的な周知はサイレン・その意義を住民に周知して

 とは言ってもこれを活用することは必要でしょう。吹鳴方法が周知されていれば、我が家にどの程度の危険が迫っているのか、一定程度知ることができます。そのために、日常から市民に活用方法を徹底することが重要となります。“うるさい”などの苦情には、そんなに頻繁に使われるものではないので、繰り返し理解を求めることでの対応をしていくしかないでしょう。もっとも近在に赤ちゃんがいる場合は、あの音はちょっときついかもしれません。「生まれて間もない赤ちゃんがいるから街頭演説やめてくれ」と懇願されたことがあった位ですから・・。

防災メール配信サービスの活用を

 二つ目に、市は携帯電話等のメールに災害情報を通知するサービス「いわき市防災メール配信サービス」を実施しています。地震、津波、風水害、波浪など、本人が得たい情報を指定して登録することによって、登録した災害が発生した場合、携帯電話等にメールを送信するサービスです。全て登録すると、結構多くのメールが配信されるので、必要な情報を精査して登録したほうが良いようです。接続するための手続きは以下のアドレスです。
「いわき市防災メール配信サービス」の登録方法⇨いわき市防災メール配信サービスにリンク

エリアメールで市独自の情報も配信

 三つ目に、携帯電話やスマホをお持ちの方にはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク以上携帯電話3社と提携し、避難勧告などの緊急の防災情報を携帯電話にお知らせする緊急速報メールサービス(エリアメールサービス)を実施しています。

 これは一定の災害等があった際に自動的に配信されますが、気象庁が配信する緊急地震速報や津波警報に加え、いわき市独自に避難情報、指定河川洪水警報、土砂災害警戒情報などが配信されます。
 詳しくは⇨エリアメール紹介にリンク

 実は先のサイレンと関係しますが、いま、消防団員などは火災情報をこのサービスを利用して受け取るケースが増えていると思われます。消防団員に自営業者などが多かった時、団員を招集する手段としてサイレンは有効だったと思います。しかし現在は団員にサラリーマンなどが増えており、地元を留守にするケースが増えています。だから、メール送信サービスを活用した方が、情報を収集しやすいのです。ただ3年前の震災時にメールがつながりにくい状況になったことを考えれば、緊急時の伝達手段としてのサイレンが要らなくなるということはないと思います。

防災行政無線の確認に電話サービス活用を

 そして四つ目に、防災行政無線の関連となりますが、放送が風雨などで聞きづらいことがあることから、放送内容を電話で確認できる「防災行政無線電話応答サービス」が実施されています。
防災行政無線電話応答サービスの専用ダイヤル番号は⇨0246-21-9901
 詳しくは⇨防災無線電話応答サービス紹介にリンク

 以上、消防施設のサイレン吹鳴の疑問から調べ、災害時の情報伝達についてまとめてみました。ご参考までにどうぞ。

 なおいわき市の防災情報についてのホームページを探したのですが、見つけにくかったです。最初は「各課のページ」から「危機管理課」をたどり、設置されたボタンを次々開き、やっと「身の安全を守るために」というボタンからページを見ることができると分かりました。後に、トップページの左肩にリンクが貼ってあることに気づいたのですが、目立たないために気が付きませんでした。トップページの真ん中に並ぶ「ライフメニュー」にボタンを設置するなど改善した方が良いように思いました。

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