習得への情熱 チェスから武術へ――上達するための、僕の意識的学習法

何かを習得したい！と思ったらその予習ができる本です。

これから、新しく趣味を始めたい、料理を極めたい、読書を極めたい、SNSを極めたい、テコンドーを極めたい、
何を極めたいかは何でも構いません。

畢竟、何かを極めることの根本は、抽象度を上げて考えると共通点が多いからです。
著者のジョシュ・ウェイツキン氏は、チェスと格闘技・太極拳推手の2つの競技で世界チャンピオンに登り詰めた異色の経歴の持ち主です。
何かを極めるとは、具体的にどういう状態を目指すべきかを自身の体験談に基づいてこの本を書かれています。

・僕のこれまでの経験を振り返ってみても、成功者のほとんどは、より高いところに目を向けてあらゆる戦いで危険を冒しているし、目先のトロフィーや栄光なんかよりも、頂点を目指す過程の中で学んだことの方がずっと意味があるということを知っている。P４７

・何かを目指して生きるのは、ちょうど平均台の上にいるようなものだと思う。
子供の頃は恐怖心もなく、落ちたら危ないなんて思いもしない。
大人になっても、遊び心に満ち、危険を意に介さない子供の心理状態を持てるような、そんな弾力性のある意識を育むことが、ハイレベルな学習の大切な要素だ。P９７

・ウィリアム・チェン先生は弟子にパンチを教えるとき、よく、お茶を注ぐのと同じことだと言っていた。P１４０

・他のプレイヤーが大きくて華麗で比較的実用性の薄いレパートリーを身につけていた一方で、僕は身体メカニズムを力強く凝縮させる道を選んでいた。
実際の話、激しい競争の中を生き残れる者というのは、自身の持っている技術を相手よりわずかでも深く磨いた者だ。
トップになるために必要なのは、ミステリアスなテクニックなんかではなく、一連の基本的技術とされているものだけを深く熟達させることだ。
どんな分野でも深さは広さに勝る。P１４３

ブルース・リーも1万種類のキックを１回ずつ練習した人よりも、１つのキックを１万回練習した人を恐れると言ってました。
歌舞伎の世界でも、舞台の演技の失敗よりも、日常の襖の開け方の所作を厳しく叱責されます。

まとめると、どんな分野でも基本を極める。
勝負の極限状態でも、日常生活を送っている時と同じ心理状態を保てるようなメンタルを鍛える。
前回の「レンジ・知識の幅は最強の武器になる」で紹介しましたアナロジーを使って他分野のノウハウを練習や勝負に活用する。

習得への情熱 チェスから武術へ――上達するための、僕の意識的学習法 ジョッシュ・ウェイツキン みすず書房