真理は奇跡的に意識を回復して久幸と由紀の結婚式に参列する事ができた。
「恐らく最後の力を振り絞ったのだろう」
二人の結婚式を見届けた後、由紀に、
「久幸さんを宜しく頼みます」
こう言って、また意識を失った。そしてその意識は二度と回復する事はなかった。
ちょうど二十四時間後、真理はこの世を去った。
死に顔は安らかな仏のような顔をしていたのだった。
久幸と由紀は遺体に取りすがって泣いたが、真理の心がもうこの世に戻ってくる事はなかった。
「かわいそうに」
由紀が涙声で言うと、
「いや、真理ちゃんは由紀ちゃんという人が見つかって幸せだったんだ」
とやはり涙声で言うのだった。
真理は三十三歳の生涯を閉じたのである。