
アトリエのかえり
道をまちがえて
森へ迷いこんでしまった
手さぐりで暗がりをかき
道をさがした
腐葉土を一歩踏むたびに
心音は速まった
ほんとうの闇は
まだ見たことがなかった
はやく一枚の絵を仕上げなければ
とおくに月明かりが見える
生き物の寝息が
どこからか漏れてくる
言葉すくない
あなたを疑っていた
樹木のざわめきに
フッと足もとが浮いた
真実のない不安
ほんとうの姿の怖さ
ゆえに色彩をまとった
もし千年がつづくのなら
なにも描きはしないだろう
くねった道があらわれたとき
精霊が
やさしく
語りかけてくれるだろうか