
戦後、実家の母が、まだ結婚をする前のこと、隣家に満州から帰国したご夫婦が住んでいたそうだ。
その奥さんから、教えてもらったという餃子。
母が作っていた、みじん切りにしたキャベツがたっぷりの餃子。
母は、その方に習った通り、餃子の皮も手作りだった。
私は、手を抜いてスーパーで買った皮を使う。
満州では、茹でたり蒸したりするのだそうだ。
私は、幼い時から食べていた茹でた餃子が好きだけど、家人の好みに合わせてやっぱり日本風に焼く。

そのご夫婦は、帰国の途中、二人のお子さんを亡くしたという。
奥さんの足の裏は、木の木っ端のように固くなっていたと、どれほど歩いたものかと、母が言っていた言葉を思い出す。
その母も、兄を特攻で亡くしている。
遠藤誉の『卡子』(チャーズと読む)(文芸春秋社)。

この本は、遠藤誉さんの家族が、中国大陸から、日本へ帰国するまでの厳しさを描いているノンフィクションである。
この本を読み終わった時、ああ、いろんなことの事実を、私は、或いは私たちは、知らな過ぎると思ったものだった。
遠藤誉さんはご健在で、現在は筑波大学の名誉教授。