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横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

耐性菌感染症と適正抗菌薬療法

2012-06-14 08:35:41 | 院長ブログ

昨夜は青葉区医師会/耳鼻咽喉科医会の学術講演会に出席させていただきました。昭和大学臨床感染症学の二木芳人教授のご講演でした。幹事は、先週の4区合同耳鼻咽喉科医会に続いて、青葉区の朝比奈先生です。お疲れさまでした。

耳鼻咽喉科の患者さんの大半は、感染症かアレルギーですので、抗菌薬は重要です。明快なお話で、知識の整理ができました。以下にご講演の内容を書きますが、自分の復習のためにですので、興味のない方は、パスしてください。

DRSP(多剤耐性肺炎球菌)が少し落ち着いてきて、BLNAR(耐性インフルエンザ菌)は増えている。

従来膀胱炎にはキノロンがよく効いていたのだが、キノロン耐性の大腸菌が増えている。

市中(入院患者さんでない)MRSAにロイコシジン(強い毒素)を持ったものが、日本でも、とくに若い人の皮膚軟部組織への感染で見られるようになった。歯科治療で、口腔内の菌を全身に飛ばすことが多い。現在ブドウ球菌の2−3割がMRSAであるが、従来はこんな毒素をつくるようなMRSAは、少なかった。

呼吸器感染はまず、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モレキセラカタラリス、マイコプラズマ、クラミジアの5種類の菌がターゲットと考える。(耳鼻科領域では、主にはじめの3種類でしょうか)。15年前は、マクロライドがこれら5種類のすべてに効いたが、2002年には0%だったマクロライド耐性マイコプラズマが、2011年には89.5%に達している。今日の二木教授の見解では、マクロライド少量長期投与(慢性副鼻腔炎や細気管支炎の治療に用いられる)が耐性菌が増えた原因というわけではい。

5種類をターゲットと考えると、成人の呼吸器感染では、ニューキノロンが選択される。それがだめなら、下痢の副作用が必発だが高容量マクロライド(ジスロマックSR)。

小児では、まずマクロライド。だめなら副作用に注意しながらテトラサイクリン。小児でもニューキノロンが一番効くのだが、それを推奨しないのは、多くの小児に使用されてキノロン耐性菌が増えて、高齢者などの呼吸器感染症に効く薬がなくなってしまうのを避けたいから。

日本の抗生物質の用量はアメリカに比べて少なすぎる。時間依存性抗菌薬であるペニシリンやセフェムでは、1日の40%の時間帯でMIC(最小発育阻止濃度)を超える血中濃度が必要だが、日本の少ない用量では(たとえきちんと8時間ごとに服用しても)非常に難しい。一般の外注検査会社の検査結果で用いられるMICは高容量で使われるアメリカのデータに基づいたものなので、検査結果で感受性ありであっても、日本の少ない用量では効かないことがある。

従来は耐性菌が増えても、新しい抗生物質が開発されて対応できていたが、新しい抗生物質の開発は、製薬会社にとって儲からないものになっており、今後ほとんど開発の予定がない。

最近日本人の死因として、肺炎が増えつつあったが、ついに数日前発表された最新のデータで、脳血管疾患を抜いて、死因の第三位になった。

呼吸器感染症では、経口セフェムはもう予防投与としてしか使えない。それもメイアクト、フロモックス以外は、全く使えない。クラリスは肺炎球菌のほとんど、インフルエンザ菌の過半数に効かない。でも、倍量(アメリカでは一般的な量)なら効く可能性があるので、アレルギーなどで他の薬が使えないときには、マクロライドの倍量投与が良いかも。

ジスロマック、クラビット(500mg1日1回)は、日本でもアメリカと同様の投与量だから効く。(クラビットはアメリカではその後、750mgが認められた)。

濃度依存性の抗菌薬であるニューキノロンで、肺炎球菌に対して、クラビット(500mg)は、AUC(血中濃度時間曲線下面積)/MIC(=効くかどうか)、は一応合格だが、Cmax(最高血中濃度)/MIC(=耐性菌をつくらないぐらい徹底的に菌をやっつける)、は不十分で、将来耐性菌が増える可能性はある。ジェニナック、グレースビットはCmax/MICもクリアー。インフルエンザ菌では、ジェニナックもCmax/MIC不十分。グレースビットはクリアー。

感染症は、治療期間を可能な限り短くし、短期に制圧することが肝要。

耐性菌は、感受性のある菌が治療によって耐性菌に変わるのではなく、自然界で耐性遺伝子を獲得した菌が不十分な治療で生き残って増えることが主な理由です。中途半端な治療が一番良くないのです。あまり効かないと分かっている薬を使うことを避け、効く薬を十分な量投与することです。 

 

 

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