一度は行ってみたい、何度でも行ってみたい美術館 、第二弾はオルセー美術館です。またパリですが、パリは芸術の都ですから。

建物は1900年のパリ万国博覧会に合わせて建造されたオルセー駅の駅舎だったものです。1986年に美術館となり、1848年(2月革命)から1914年(第一次世界大戦)までの作品を受け持ち、それより古いものはルーヴル、新しいものはポンピドーセンターが受け持つとのことです。
したがってオルセーには、印象派(旧印象派美術館の収蔵品をすべて引き継いでいます)と、印象派に先立つ新古典主義やアカデミズム(印象派はアカデミズムに対する反発から生まれた)と、自然主義、写実主義の作品が展示されています。
私の入学した大学の入試は、一次試験(学科試験)のあと2次試験(面接のみ)がありました。面接官の教授となぜか絵の話になり、どんな絵が好きかと問われ、ゴッホが好きだった田舎の高校生の私は、生意気にも後期印象派が好きだと答えました。Post-impressionnismeは正確にはポスト印象派ですから、印象派には含まれないという意味になりますが、当時は後期印象派と訳すのが一般的でした。昨年国立新美術館で行われた展覧会も、オルセー美術館展(ポスト印象派)となっており、最近はポスト印象派と呼ぶようになっているようです。
ルーヴルの主役がモナリザなら、オルセーの主役はムーラン・ド・ラ・ギャレット(1876)でしょうか。幾多の印象派の名作が揃っている中でも、このルノワールの大作は際だっています。また、日傘の女(1886)は、モネの作品の中でも好きなもののひとつです。私の若い頃のアイドル、ゴッホの作品にもいいものがあります(オーヴェールの教会:1890)。ミレー(落穂拾い:1857)やコローといった、印象派とは一線を画す自然主義の画家たちも、印象派とほぼ同時代なのは、意外な気もします。

アカデミズムは、印象派が登場した当時のフランス画壇の中心で、ダヴィッドやアングルの流れをくむ、美しい絵もたくさんあります。もしアカデミズムの画家たちがもう少し早く生まれていたら、評価は全く異なったかも知れません。完成度においては、印象派の画家たちより上なのです。しかし、過去の技術を洗練させただけでは、時代に置いていかれてしまうという好例でもあります。下はその代表者のひとり、ウィリアム・アドルフ・ブグローのヴィーナスの誕生(1879)。彼らは、感傷的、保守的、ブルジョア的などと批判されました。でも私はブグローもけして嫌いではありません。

印象派が好きな人は、オランジェリー美術館も必ず訪れて下さい。規模は小さいですが、名作揃いです。見物は睡蓮の間。晩年のモネが国の要請を受けて仕上げた、楕円形の部屋の壁全面が睡蓮の絵という部屋です。印象派と呼ばれる画家は多くても、フランスにとって、モネとルノワールは別格だったようです。二人とも長寿で、名声を得るとともに多くの作品を残しました。

