うちの母ちゃん。
父が筑豊の炭鉱時代。わが家はけっこう裕福だったと思う。
それで時々、父の腹違いの弟が、我が家に金を借りに来た。父は仕方なく、貸してやっていたが、たびたび重なるとやはり、わが家も困る。
ここで母ちゃん登場。
やってきた弟にいきなり、「お前いくら借りてると思ってるんだぁーいい加減にしろー」
おとうと、「何ぬかすー殺してやったろーかい」と、もって来ていた土方用のつるはしを振り上げた。
すると母ちゃんは「おう、やったらんかい。殺してみんかい。ただ言っとくぞ、わいも人間じゃ。木の股から生まれとらん」
さらに続けた。
「血筋には、お前みたいなチンピラじゃない本筋もんもいくらでもおる。それでもよかったら、さあ。殺してみんかい」
ビビったのは、弟の方だった。そのまま帰った。
この間。私と父は奥の部屋にいた。
父曰く、「今日は母ちゃんに任せとこう」
普段はとてもやさしい母、根性と肝っ玉が据わっていた。