北関東ばんがいち

ネットの極地に住む、ダメ大学生が日常と社会を淡々とつづるブログ。ネットで会ったおもろい人紹介アリ

思想というモノがいる日常、その2

2005-10-10 12:03:22 | 妄想創作
この大学の図書館は、勉強に必要がある本は全くないかあっても役に立たないのに
「彼女」に与える食事の材料となる奇妙な資料はたくさんあるという普通の学生にとっては
役に立たないが、私のような「彼女」を飼っている人間にとっては有用な図書館であった。

私は入館許可証をカードリーダーに差し込み図書館の中に。
相変わらずやる気のなさそうな地方公務員がうぞうぞ緩慢な動きを見せていた。
「彼女」はと言うと、こういう場合いつも頭の少し上の辺りを羽根で飛んでいるのだが・・・。
私が「彼女」が近くにいることを確かめようと辺りを他人から不自然に見えないように気を配りつつ
ぐるりと見回したとき、視界にずしりと背中に少女を乗せた小太りの男が目に飛び込んで
きた。彼は熱心に図書館のパソコンを何かに取り憑かれたように見つめている。そして、
狐耳の生えた幼い見た目の割に妖艶なところがある少女はその小太りの男を微笑ましく
見つめている。少し小馬鹿にしたような表情を浮かべながら。その時だった。

スッ

一瞬風が吹いたように感じた。
視野の隅に「彼女」が入り、その後ひらりと少女の横に私の「彼女」は舞い降りた。
しまった、アイツは「彼女」にとって大好きな食事の1つだった。
私は小太りの男に気付かれないように、週刊誌をマガジンラックから手に取り
小太りの男の後ろのソファーにどっかりと腰を下ろした。

小太りの男、彼は同じサークルに所属していたヤツだ。名前は菊池とか言ったか。
地元の名門高校を成績最下位で卒業し、この大学に二浪してなんとか滑り込んだらしい。
だから一度身体をこわし大学を辞めている私とは同学年と言うことになる。
まあ、サークルについては私の方から辞めてしまったのだが・・・。
その頃、「彼女」と狐耳の少女はじりじりと私と菊池の間でにらみ合いを続けていた。
「良いからちょっとご飯ちょうだい!」
「彼女」が口を開いた。しかし、少女の方も小太りの男にべったりとまとわりつくような
格好をとり、更に口を尖らせて
「フン、これは私がここまで育てたのぉ。アンタみたいな相手を育てられない二流の
マモノとは違うのよ」
と言い、「彼女」はふつふつと沸点が下がってくる。
「何よ。私だって育てられるわ!それに私のスタイルなら、右も左も上も下も・・・」
「じゃあ、菊ちゃんと話してみる?」
そう少女が言うと少女の姿は消え、代わりに小太りの男がこちらにいきなり振り返った。
「ボボボボボ……………」

菊池の目は死んでいた。サークルに私がいた頃より、少女の「育成」は進んだ感じだ。
「お願い、ここで会話ができれば高純度のミツが食べられるの」
「彼女」が私の耳元で囁く。私も「彼女」にそんなことを言われれば気分は悪くない。
さて、こいつと話をしなければ……。
「や、やぁ、久しぶりだねえ」
「ボボボ……、ファン日…、アイコク……、サヨク……」
大丈夫か、こいつ。そう思ったが、何とか会話を続けないと…。
「あのさ、ゼミどうしたよ」
「……ゼミ、ドウシヨウモ、……ボボボ、ナイケド、入ったよ」
「そうか、まあゼミやればウチの大学…」
「…デモ、左翼…、いやだああああああ、もう……だからオレハネ…………」
パソコンの画面を見せる、菊池。何やら難しそうな文章が並ぶが、バナーがアレ
だったので素早く脳内で「見なかった」処理をした。
「…、じゃ、オレ帰るわ。サークルのみんなにも宜しくな」
「ボボボボボボ…………」

「あー、疲れた」
私はそんなことを呟きながら新聞コーナーに向かった。「彼女」は幸せそうに
空を飛びながらもお腹をさすっている。
「ああ、満足した」
脳内で「そうかそうか、やれやれ」と私は相づちを「彼女」に打ちながら
日経新聞を読み始める。
(不定期に続く)