出張先でクタクタになってホテルに戻り、テレビのスイッチを入れた。
いきなり中国地方(広島・山口・島根石見)と思われる言葉が飛び出してきた。ローカル番組でなく映画のようである。しばらく見ていると萩か長府のような武家屋敷のシーンが展開。時代設定は、どうやら私の高校時代と重複するようだ。中学生の頃、NHKで夕方放送していた「少年少女ドラマシリーズ」のような内容で、途中からストーリーもわからないまま珍しくテレビに見入ってしまった。
この映画のタイトルは『チルソクの夏』というもの。1977年7月7日、韓国釜山で行われた関釜陸上親善競技会に出場した下関の高校2年の女の子が、韓国の男の子に出会い、恋をし、翌年の下関大会での再会を誓うという、淡い恋物語。
「チルソク」とは韓国語で「七夕」のこと。
私は、翌日、さっそく、この本を求めて、仕事の合い間に山口市にある大きな書店に出かけた。しかし、在庫はなかった。ネットで見ても中古本はあるものの、どこのネット書店も「品切れ、重版未定」となっている。となると、余計に読みたくなってしまい、版元の営業部に電話し、どうにか1冊GETした。
ただ、版元の営業部の若い女性担当者に「2004年4月の作品なのに品切れ重版未定ですか?」と私が尋ねると、「もう2年も前の作品ですから……」。
現在の出版状況をとても端的に表している一言でした。
本そのものの読後感想は、コバルト文庫や秋元文庫を思い出させる甘酸っぱい感じ。今の中・高校生が読んで、どう感じるか気になるところ。あまり安っぽい雑誌・テレビ・エロビデオに洗脳され、10代の大切なものを見失わないでほしいなぁ、こういう甘酸っぱい時間を経験してもらいたいなぁ、と思わせる作品でした。
仕事場でバイトしている大学生の女の子が、たまたま長府の出身なので、この本の感想を聞いてみようと思っています。
(個人的評価:★★★)
(おすすめ度:中・高校生必読! パパやママの高校時代の恋愛はこういうものだったのだ!)