「決定的な瞬間となる可能性」
ウクライナ軍ハルキウ州“ほぼ全域”奪還
(2022年9月12日)
ウクライナ軍が11日までにハルキウ州の“ほぼ全域”を奪還。
要衝の都市からロシア軍を撤退させることに成功しました。
半年にわたりロシアの占領下にあった、北東部ハルキウ州バラクリアでは、
ウクライナ国歌とともに国旗が上げられました。
バラクリア市議会Facebook:「大統領に結果を発表します。
ハルキウ州バラクリアはウクライナ軍の支配下にあります。
任務完了です。現在9月8日午後4時。ウクライナに栄光あれ」
街とその周辺には、いたるところにロシア軍の戦車や車両、
兵器が打ち捨てられていて、ロシア軍はパニックに陥ったともいわれます。
住民たちは息を潜めながら、その時を待っていました。
住民:「3カ月間、地下室で生活した。今もそんな生活をする人がいる。
食料を入手するために時々、地下室を出たりしながら生き残った。
ウクライナ軍が奪還するとは正直思っていなかった。
ウクライナの兵士が来たと分かった時、とてもうれしかった」
住民:「私は肉料理、友達はボルシチを作って、
ウクライナ軍に持って行きます。涙が出るほど幸せです」
住民:「パスポートなしでは移動できず、携帯電話は検査され、
黄色と青色の物が見つかると壊された」 街はまだ機能する状態ではなく、
支援物資が配られています。とはいえ、ロシア軍がいなくなったことは、
住民たちにとって安心のもととなっているようです。
住民:「何も売ってないし、食料を買うところすらない。
でも、発砲や敵対行為がないことが大事です。
もう外を歩くのが怖くないので、呼吸が楽です」
ウクライナ軍の反転攻勢はこれで終わりではありません。
ハルキウ州南部イジュームでは、市議会の建物に国旗が掲げられ、
ゼレンスキー大統領もイジュームを奪還したと発表しました。
ゼレンスキー大統領:「戦士たちよ。今、ウクライナ中の人々が君たちの行動を目の当たりにし、
祝福している。世界も喜びに満ちている。敵はパニックに陥っている。
君たちはウクライナの誇りだ。無事に帰還することを祈っている」
ニューヨーク・タイムズは、この奪還を
「戦争の決定的な瞬間となる可能性がある」と報じました。
イジュームは、ロシアからの補給路がつながる要衝。
ロシア軍が3月から占領し、ドンバス地方に侵攻する拠点にしてきた街です。
ウクライナ軍は今月6日以降、電光石火の勢いで、
イジュームを含むハルキウ州の大部分を奪還。ロシアの補給路は断たれました。
ロシア国防省、コナシェンコフ報道官:
「ドンバス解放を目指す特別軍事作戦を達成するため、
バラクリアとイジュームの部隊を東部ドネツクに再編成する」
旧日本軍風に言えば「転進」です。
アメリカのシンクタンクは「ロシアが作戦上の大敗北を喫した」としています。
ウクライナ軍は、このための“布石”ともとれる動きを見せていました。
2カ月前から力を入れていた南部地域の奪還攻勢です。
ロシア軍の補給路を何度も攻撃し、攻勢を強めていくウクライナ軍。
ロシア軍は防衛部隊の増派を余儀なくされ、
その規模は約1万人とも言われています。
ウクライナ軍はさらに揺さぶりをかけるように先月末、
「ヘルソンを含む多方面で反転攻勢をかける」と宣言。
イジューム奪還に向けた奇襲作戦が始まったのは、
この宣言の1週間後のことです。
CNN:「へルソンでは確かにウクライナ軍の攻撃があったが、
その意図はロシア軍を釘付けにすることにあったようだ」
ただ、半年におよぶ占領で懸念されるのは
、ブチャのような虐殺が起きていないかということです。
7日に解放されたばかりの村では、
3月にロシア軍が埋葬するよう命じた
遺体を掘り起こす作業が行われていました。
戦争犯罪の捜査が早速始まっています。
警察官:「埋葬されていた2人の遺体を調査した。
首筋には銃による傷があり、両耳は切り取られていた」
地元住民:「ロシア兵に脅迫されて墓を掘った
銃を持っていたので、言う通りにするしかなかった」
ハルキウ州の中でも占領は免れてきた州都ハルキウ。
攻撃は度重なり、今も続いています。
フォトジャーナリスト・児玉浩宜さん:「現在午後8時を過ぎたところです。
急きょ市内が停電になりました。つい先ほど空が赤く光るのが見えました」
児玉浩宜さんが滞在していたのは、ハルキウ市内のホテル。
児玉浩宜さん:「宿の方からキャンドルを頂きました。
復旧のめどは立っていないそうです」 停電の原因は、
ハルキウ郊外の発電所へのミサイル攻撃で起きた火災でした。
ウクライナ側は、イジュームなどの奪還に対する’報復だとしています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp