生きることの「重み」を言葉にする
「人は、ただ生きているだけでも意味(価値)があるのです」と、作家の五木寛之氏は書いている。
私という一人の人間が病気を克服して生きられたら、自分にとってはもちろん家族その他の人々にとって、何にも代えられない大きな意味(価値)がある。
会社は、このような一人ひとりの「重みのある」人間の幸せのためにあり、活動する存在だと思う。
だから、会社としてかりに「何兆円企業を目指す」等の壮大な目標を立てたとしても、これらの目標が社員一人ひとりの生きる「重み・価値」とつながることが大事である。
そうではなく、文字面(つら)だけの壮大な言葉では、社員一人ひとりの情感にはまったく届かない。
会社のどのような目標やビジョン、政策についても、社員一人ひとりの「命・生きること」に響く情感が伴わなければ、人は、心底から共感して力を引き出す状態にはなれない。
巨人パブリックスを動かす情感
パブリックスの創業者が貫いたミッション(使命)は、「お客様に喜んでもらい、買い物を楽しさに変えること」であり、これが何と、1,000店以上・年商約2.4兆円規模の現在も実行されている。
それを支えるのは、文書通達や朝礼での唱和ではなく、各社員に対する先輩・上司からの一対一の教え方である。すなわち上司たちは、一人ひとりの社員が「情感」を感じる言葉で仕事のすべてを説明し、これが1,000店以上の全組織を動かしているのである。
ローマ時代の英雄、カエサル(シーザー)の大軍の一兵卒の言葉。「カエサルは私たちを理解してくれる。だから、彼のために戦う」。
カエサルはただ単に戦いに突き進むのではなく、常に各兵卒の現場の状況を理解し、彼らの情感に触れる言葉を発信していた。
私は、「人間(この場合は各兵卒)は、自分を理解する人のためには命をも惜しまず献身する」と、本で読んだことがある。
一人ひとりを理解することによる情感は、これほどまでに強い力の根源になるのである。
スロー・ビジネスの奨め
今から80年近く昔の、1930年に創業したパブリックスの規模は約2.4兆円。確かに巨大会社ではあるが、世界の巨大チェーンに比べれば成長の速度は遅い。
それは、一貫して社員を最も大事に考え、先輩・上司との一対一のつながりを教育の基本としている結果である。創業以来約80年という期間は、むしろ、パブリックスのスロー・ビジネスの一面を示していると思う。
巨大チェーンという大組織へ急速成長するノウハウ。それは主に欧米から学んだ、成長と市場支配の「一手段」にすぎない。
一方、人間にとって最も大事なのは、「命・生きること」の大事さの「共有」である。
会社では、経営者以下の幹部が深い「情感」を持って言葉を語ること。一人ひとりの社員は、「情感」を持って物や店(売場)を作り、「情感」を持って顧客にサービスすることである。
このためには、経営者と幹部がまず、人間の原点「命・生きること」から物事を発想し、社員一人ひとりの「生きていること」に深く共感することが出発点になる。そしてできるだけ、情感の伴う一対一の対話で仕事を指導する。
こうすれば、ビジネスの発展はどうしてもスローペースになる。
しかし、急速成長して市場支配へ向かうだけの行き方と、社員の一人ひとりを大事にして情感を共有する行き方と、どちらに価値があるだろうか。
日本の小売・飲食店の「情感」の込もった秀逸サービスと商品は、世界中からますます高く評価されつつある。
しかし、これらの秀逸店で、急速成長や市場支配だけを目指す企業は見当たらない。
病気が「食べること」への情感を深めた
私はいま病床で、「普通に食べること」の素晴らしさとありがたさを、
生まれて始めて深く感じしている。
それは進行性胃がんの治療で約1ヶ月間、むかむか感が強くて食欲がなく、
人間にとってごく当たり前の「食べたい」状態になれないからである。
私は生まれて初めて、「普通に食べること」の幸せさを、体の奥深くから感じ取った。
そして、「食べること」はすなわち「命・生きること」そのものである。私はいま、
「命」の掛け替えのなさに深く感じ入っている。
医療スタッフの献身から受ける感動
医師を初めとする医療スタッフの献身には、心から胸を打たれる。
主治医以下3人の医師は、週末も早朝・深夜もなく治療に献身している。特に若い
医師には休日がないようであり、「いつ休むのだろうか?」と心配になる。
病院とは別の温熱治療を引き受けた私の知人は、自分の業務を犠牲にして殆ど
毎日来院してくれる。
これらの医療スタッフの献身に、十分な見返りはない。それでも献身するのは、
「命・生きること」への強い使命感があるからだとしか思えない。
私は大病に罹り、「食べること」、「命・生きること」の素晴らしさと、「命を救
う使命感の強さ」を、深い情感を以って受け止めた。
(以下、後日掲載します)
シニア商品とその売り方を学ぶ店
HCI顧問・会田玲二
巣鴨地蔵通り商店街と京王百貨店
膨大な購買力と人口を潜在するシニア層をつかめば、売上げを拡大することは間違いない。
その圧倒的実績を誇るのは、昔から「おばあちゃんの原宿」と呼ばれた巣鴨地蔵通り商店街であり、同商店街に学んだ京王百貨店新宿店だ。
洋装カッポーからダンス・スラックスまで
元気を付ける商品
華やかファッションと百均店や産直店も
「おもてなし」のある「癒しの場所」づくり
ウォーキングシューズが主力の京王百貨店新宿店
*以上、小見出しのみ。
この全文と写真は、HCI会員専用ブログに掲載しました。
また、「月刊需要創造」5月号に掲載します。
視点:シニアと主婦層が重要だ
HCI顧問・会田玲二
ユニクロはガールズを狙う
膨大な購買力を持つシニア層がある
シニア層が働き消費する未来を創る
アクティブシニアの芽生え
シニアの大衆層は実質的で地味
割烹着スタイル等の商品化から
*以上、小見出しのみ。
この全文は、HCI会員専用ブログに掲載しました。
また、「月刊需要創造」4月号に掲載します。