臨床現場の言語聴覚士(ST)

臨床現場の言語聴覚士(ST)のブログ、です。
摂食・嚥下障害や高次脳機能障害などについて考察します。

自信喪失①

2008年03月28日 | Weblog
人間は、誤嚥する動物である、と分かってはいるのだが。

脳血管障害型やアルツハイマー型の認知症で、先行期が…だったり、普通だったら胃瘻のレベルの方々が、経口摂取するのは、とてもハイリスクだ。

傾眠状態なら食べない、と教科書には書いてあるが、そうなると、食べれない人ばかりになってしまう現状。

これがまた、閉口状態なら物理的に入らないのだが、閉眼でも気配で分かるのか、口にスプーンが近づくもしくは、口に触れたりして、開口される場合が多い。

療養病床の削減がもうじき、本格化するのだろうが、目の前の現実世界では、すでに先取りして、普通だったら胃ろうだったり、顕性や誤嚥性の肺炎で既にターミナル状態の方々と、どう向き合っていくのか、をマネージメントしなくてはいけない。

いま、嚥下障害を診る、ということは、食べれて良かった、さぁおしまい、では無く、いつ食べるのを止めるべきか、を念頭に置かなくてはならないだろう。

○○度ギャッジアップ、一口ごとの嚥下を確認して下さい、で話しが済めば、よいのだが。

CVA後に、1週間だけ食べれて、肺炎になって、胃ろうになって、さようなら、って、どうなのだろうか。

何を評価したのだろうか。

食べることと、安全に食べることは、違う。

残念ながら、食べる楽しみと安全な経口摂取の両立を、同時に選択出来ない病態は存在する。

一旦、安全第一で”嵐”をやり過ごし、天候回復を待つ間に、次の出航に備えて、地道な訓練を行い、出航出来る日を待つ、というのも、立派な方策だと思うのだが。

食べたいから食べてもらいました、肺炎です、では、無責任だろう。

せめて、経口摂取OKと判断して、経口摂取による誤嚥性肺炎にしたのなら、少しでも、軽減出来るように介入するべきだ。

そのためには、原因が経口摂取にあると判断が出来なくてはならない。

発熱があったとして、それが経口摂取による誤嚥性肺炎なのか、唾液の誤嚥による不顕性の誤嚥性肺炎なのか、尿路感染症なのか、自律神経系の体温調整がうまくいかないことによる発熱なのか、食事摂取に伴う発熱なのか、脱水、外気温の上昇などなど思いつくだけでも、様々な発熱の原因がある。

そうした原因の鑑別に関心を持たなくては、熱発の原因が分からない。

原因が分からなくては、介入しようが無い。

下手に介入して、悪くするのなら、介入しないべきでは?

そうした反省から謙虚に学ぶ事が、必要不可欠だ。

でないと、延々と被害者を製造し続けることになる。