見えざる声

感じたこと・思ったこと・追想、思うままに書きなぐった文章の
羅列を目指し・・。

運転手は見た 惨劇の館 四

2007年12月23日 | ショートストーリー
ドアのカウベルが激しくなって、ヘルメットを被ったまま全身黒
のいでたちのガタイの良い異様な雰囲気を漂わす集団が入
ってきた。正一は凝視していた目を、そっと伏せた。
一見して凶暴そうな男達と悟った。パソコンに目を向けやり過
ごそう・・。どかどか足音が続き、奥へと歩いていく。正一は溜
息をつき、画面に集中した。
その中の「惨劇」を開くと、中がまた小分けされている。
その中の「廃墟のうら悲しさ」のタイトルが気になって、それを
開いてみた。ホームページ形式の画像とその解説がしたため
てある。解説文はなかなか味のあるものだった。
栄枯衰退の側面が、雑草に覆われた建物から窺い知れる。
しかし関心があるのはあのフォルダだし、廃墟もいいがそれ
よりは股間を刺激する画像を想像すると、パスワードを思い
つくままひねり出し当てはめてみる。
だがすべてが徒労に終わる。そこで何気なく枠の表示のマウ
スを当て並べ替えてみた。すると今までバラバラと思っていた
フォルダの記号が整然と並ぶ。
正一はその頭文字をキーボードで叩いた。
「やったぁ!」
あのフォルダが開いたから、思わず叫んでしまった。
「あれあれ、ご苦労さん、お前はレトロが好きだね」
いつの間にマスターが傍らに立って、画面を覗き込んでい
た。正一はむかっ腹が立った。といって先程の件で「暖簾に
腕通し」は分かっているので無視した。
「おいおい、無視するな、飯が出来たよ、あっちで食べるか?」
正一は顔を上げてマスターの示す方向で、見ずに即座に頭
を振った。
「なんだ、お前、女、嫌いか?」
正一はマスターの意外な言葉にギョッとした。
(女?、ウソだろ)正一は急いで奥に視線を向けた。
仰天した。あの革ジャンのいかにもの人々が、その上着を脱
いで寛いでいるが、確かに女達なのだ。
「どうだ、面倒くさいからあっちに運ぶよ、なっ!」
マスターは返答を聞かずに、すたすた奥に歩いていく。
正一ははたと困った、にしても開けたフォルダに納められて
いる画像をクリックして、表示してみてがっかりした。
確かに秘蔵写真なんだろう。五六十年前の女の水着写真ばかり
である。正一は溜息が出た。
「おい、青年、こっちに来いよ、いいってよ・・」
マスターが大声で、正一を呼んだ。
正一はおずおずと、そちらへ近づいていった。
五人の視線が、正一に集まる。
「こちらの皆さんは、宿泊客なんだが、青年も泊まるか?」
マスターがこれまたあっけらかんと口を開く。
正一はもう付いていけなくなって、ただうな垂れて端の椅子に
腰掛けた。

              来年に続く・・。






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