和裁士・徒然

岩本和裁専門学校の教師のブログです。

大島紬・生徒さんの作品

2008-09-30 23:27:03 | 教室便り
大島紬の仕立てには、少々難しいところがあります。

私の修行中のことですが、私の師匠は、
几帳面な仕立てをする人でなければ、絶対に大島紬を渡しませんでした。

地の柔らかい縮緬や綸子と違って、融通が利かないために、表と裏を
より正確に縫う必要があるからです。



写真の着物は、週1回の生涯学習教室の生徒さんの作品です。

きちっとした仕上がりになっています。つれの出やすい衿肩廻りもきれいです。

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着物に接ぎ(はぎ)を入れました。

2008-09-25 23:08:12 | 教室便り
お母さんの着物に布を接ぎ、丈を出して娘さんの着物にしました。


丈の短い着物に接ぎを入れることにより、身丈を出しました。

接ぎを入れる場所は、着て帯に隠れてしまうところです。
接ぐ分量が多かったり、場所が悪いと、おはしょりからから出てしまいます。

写真の着物は、身八つ口から5cm下で10㎝の布を足しました。

それ以上丈を長くしたい場合は、衿先から4cm上のところで10㎝位入れられます。

この方法でも足りないときは、先ず自分の身丈に合った着物を着てみて、
おはしょりの位置を十分に確認して、接ぎを入れる布の分量を決めましょう。

生徒さんの感想:
 着物が生き返りました。一枚新たに着ることが出来て嬉しいです。

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「糸」について

2008-09-21 13:14:37 | 和裁の道具

研修会の報告が続きましたので、今回は「糸」についてです。

私達が使う地縫いの絹糸ですが、今では板巻きやプラスチックの糸巻きで
売っていますが、私が小学生だった頃(凡そ40年前!!)は、糸商人が、
一束ねになった糸を、風呂敷に山ほど持ってきた中から、
天秤で「匁(もんめ)いくら」で量ったものを買っていました。

自分で、糸巻き機を使って、糸巻にまかなければなりません。
私も和裁の修行中は、白絹・黒絹・とじ糸は、糸巻き機を使ってまくのですが、
途中で、絡まないよう巻くのはとても難しく、それは緊張を強いられる作業でし
た。

和裁士にとって、当たり前のことですが、縫う前に必ず糸を指ではじいてから使います。これは、糸のよりを直すためです。これを怠り、そのまま縫い始めてしまうと、すぐに糸がからまってしまいます。

今の人は、よほど針仕事が好きでなければ、こうした糸や針の扱いに慣れていないのではないでしょうか。

私の学校では、糸をはじく練習から始めます。

写真は、糸をはじき針に通す作業が目的で、通した糸でいろいろな文様に
糸かがりをしているところです。
これをすることによって、針と糸に慣れます。

ちなみに、科学繊維の糸は、はじいてはいけません。
伸びてしまいます。
化繊の糸は、熱いコテで、さっとひとなでしてから使用すると
絡みにくくなります。



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半無双袖について

2008-09-17 23:57:04 | 和裁の基礎
14日は、渋谷の清水学園にて、秋季きもの大学の講師として、長襦袢・半無双袖、羽織の衿の始末、袷長着・衿先の本どめ等の講義と実演を行いました。

その中の「半無双袖」について、簡単に説明します。

20年位前まで、お正月になると、若い女性や女の子がウールの着物(アンサンブル)を着て、初詣に出掛ける姿がありました。

その着物の下に、ウールのモスの長襦袢を着ます。
その長襦袢の袖を「半無双」で作ることが多かったのですが、
今では、あまり作ることはありません。

「無双」というのは、表と裏を同じ生地で仕立てることです。
その際に、生地が不足するために、裏側だけ半分生地を使う縫い方です。

技術的には、難しいところはありません。
ただ、裏地の使い方が、女物では振りに、男物では口側に使います。


男物の表側です。


裏側です。

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袴の仕立て(オーダーメイド訓練)続き

2008-09-15 23:41:51 | 講習会
9月13日(土)、袴の講習2日目は、一番難しい「腰板付け」です。

「腰板付け」では、接着するのにボンドは使わずに、米糊・続飯にこだわってみました。(続飯については、8月23日の『馬乗袴・腰板作り』をご覧下さい)


受講生は一様に、米糊の付の良さに感心していました。
米糊は、布や紙を貼るのに使用すると、瞬間接着剤並みの効果を発揮します。


その後、前ひもを付けて完成です。

2日間計16時間の講習が、無事に終了し、受講生のかたには東京都から、
修了証が授与されました。

参加された皆様、大変お疲れ様でした。

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落語家さんの着物

2008-09-11 15:59:23 | 教室便り
私の学校は、東京の新宿、新宿2丁目にあります。
お隣の3丁目には、有名な末広亭という寄席があり、落語家さんから
着物の仕立てを頼まれることもあります。

さて、生涯学習教室の生徒さんが、お友達の落語家さんの着物を仕立てましたので、ご紹介します。



生地は江戸小紋です。普通は女性が着る柄ですが、芸人さんの着物は、少々派手な位でちょうどよいのでしょう。

この落語家さんは、少し体格が良くて、冬でも袷は着ず、着物は全て単衣仕立てだそうです。もちろん、この着物も単衣です。

着物を着て一番目立つのは、衿元です。
特に高座に上がる人の着物ですから、衿がすっきりと良い仕立て上がりになっています。


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袴の仕立て(オーダーメイド訓練)

2008-09-09 00:11:15 | 講習会
東京都の能力向上訓練の第1日目が9月6日(土)に終わりました。
2日目は13日(土)です。
講習名は「袴の仕立て(オーダーメイド訓練)」、飯田橋にあります、東京都立中央・城北職業能力開発センター高年齢者校の和装技術教室で行いました。



受講生は30名。裁断から素縫い、襞(ひだ)のたたみ方までを1日目に行い、
ひも作りは宿題としました。

袴には代表的なものとして、スカート状の行灯袴、ズボン状の馬乗り袴、
舞い用の仕舞い袴等がありますが、今回の講習で仕立てるのは、馬乗り袴です。

ポイントは襞のたたみ方です。これは、和裁士によって違いがあり、
私のたたみ方は、日本で唯一、和裁で人間国宝となりました小見外次郎先生から、私の祖父に、そして私に受け継がれたたたみ方です。

職人のカンに頼らず、誰でもが習えば、たためる理にかなった方法であるため、
受講生から喜ばれました。
(小見外次郎先生については、また別の機会に書くことにします。)


男物の袴は前に5本、後ろに1本襞(ひだ)があります。
写真は、襞の折りを付けているところです。
足を使って裾を押さえることで、襞のラインがすっきり決まります。


2日目の13日は、もう一度、襞のたたみ方を見せ、笹襞、腰板付け、前ひも付けとなります。
講習をするのには、だいぶ慣れてきましたが、30人もの人がじっと見つめる中での実演は、やはり緊張します。終わった時には、スポーツの後の爽快感ある疲れが残りました。次回がメインイベント、頑張ります。

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1歳・赤ちゃんの綿入れ半纏(はんてん)を作りました。

2008-09-06 16:33:29 | 子供の着物
赤ちゃんの半纏が、とても可愛らしく出来ました。

生地は木綿の洋服地で、中綿は丹前綿(木綿の綿)です。
赤ちゃんには、袖の無いほうが着せやすく、また赤ちゃんにとっても、
手を動かしやすく、着心地も楽で良いでしょう。



袖なし半纏は、体の動きが楽で、今までに制作した生徒さんからも評判が、
とても良いものです。
着物の上でも、洋服の上にも着ることが出来ます。


写真で、後ろにあります大きな半纏は、お寺のご住職に頼まれたものです。
なかなか既製品では気に入ったものがなく、冬の本堂で着用したいとの希望で作りました。前にはポケットもあります。

生地は会津木綿で、色は濃い紫です。中綿は蒲団屋さんで売っている丹前綿です。
ご本人にお渡ししましたら、大変喜ばれました。

赤ちゃんの半纏も、大人の半纏も、大きいか小さいかの違いで、縫い方は同じです。
中に入れる綿の取り扱いに慣れていないせいか、最近では綿入れ半纏を自分で出来る人が少なく、以前に講習会をしたところ、大変好評でした。

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