和裁士・徒然

岩本和裁専門学校の教師のブログです。

ものさしについて

2009-11-10 13:39:02 | 和裁の道具
長さのメートル(m)、重さのグラム(g)に対して、東アジア独特の単位、
尺と貫があります。

今年、韓国では、野菜などの小売りに今でも市場等で、普通に使用されている
『貫』をやめて、gに統一しようというニュースを見ました。

私たち和裁士が使用している尺も、昭和40年代に禁止しようという動きが
国からありました。

タレントの永六輔さんや、私の祖父など尺を使う仕事を生業とする人々の
反対運動が起こり、現在でも尺を使っての仕事が出来ます。

またキモノメジャーという便利なものがあります。


これは着物を着る人のヒップを計ると、その人の着物の前巾、後巾、抱巾が
瞬時に割り出せるメジャーです。


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糸通し器

2009-09-26 22:22:58 | 和裁の道具
20代、30代の頃には、目がかすむ、物がよく見えないなどということは、
まったく考えられませんでした。

よる年波には勝てません。今では夕方5時を過ぎると、針に糸を通しにくくなりました。

まだ私はお世話になってはおりませんが、糸通し器というものがありまして
10年以上前からあったのですが、最近のものは性能も良く、しかも安価です。



私に母、88歳が今でも和裁を続けていられるのも、この糸通し器のおかげです。


裁板について

2009-09-05 15:38:24 | 和裁の道具
和裁の道具で一番大きい物が裁板です。

木の無垢のもの、張りのもの、テーブルの上で使用できるよう厚紙で
出来たものもあります。

木の無垢のものでは、樫(かし)、朴(ほう)、桂(かつら)、銀杏(いちょう)のように
堅い木が向いていますが、高価です。
(普通に使用するには、3万円位の板で十分です。)

私の学校では、赤柳(外国産)と銀杏の無垢の裁板を使用しています。

銀杏はどちらかと言うと柔らかく、ヘラは付きやすいのですが
木に跡が残りやすい。

裁板はヘラ付けのために、表面が徐々にぼこぼこになってきます。

凹凸になった裁板は大工さんにカンナをかけてもらうと
新品のようになります。
今では電動のグラインダーをかけます。

私が修行中、裁板に針をつきさす事は厳禁でした。

折れた針が板の中に残ると、大工さんのカンナの刃がかけてしまうからです。

よく丸みを絞る時に、針を裁板にさして布を止めているのを見ますが、
決してやってはいけません。

(写真は振袖用の袖丸みを作っています。)

私の学校では、板に白い布をかぶせて使用しています。


こうすることで生地、特に刺繍を傷めることがなくなりますし
汚れもつきません。また、コテのかかりも良くなります。

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昔ながらの「針刺し」を作りました。

2008-11-17 22:08:43 | 和裁の道具
中に"米ぬか"を入れた「針刺し」です。

先ず初めに、米ぬかを煎ります。
(米ぬかは、10㎝四方の針刺し10個分作れるほどの量を、お米屋さんで100円位で売っています。)


米ぬかを煎らないと、後で穀象虫(こくぞうむし)が発生する心配があるからです。
針刺しの中に、綿や髪の毛を入れる場合もありますが、米ぬかの良い点は、
適度な油分と重みのあるところです。


10㎝四方の布2枚で袋状に縫います。
必ずモスか芯モスで、米ぬかが外に出てこないように裏打ちをします。


米ぬかを中に入れます。


ぬか入れ口をくけて出来上がりです。
(自分の針箱の大きさに合わせて、形は工夫出来ます。)


仕立てで毎日のように使っても、10年位は大丈夫です。
ただし表の布地は痛んできますが。


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鋏(はさみ)

2008-10-11 21:46:58 | 和裁の道具



鋏には和鋏と洋鋏とがあります。
U字型の和鋏は、握り鋏とも言って、今では糸切り専用に、刃先の短い
もの(10㎝位)を使用しています。

布地の裁断に使用する裁ち鋏は、洋鋏と言い、明治時代に入ってから
和裁で使用されるようになりました。

それまでは、長刀と呼ばれる20cm位の和鋏や、芯切、包丁で裁断していました。
(今でも帯など芯を切るのに使用されています)

裁縫道具の中で、高価なものは、裁ち板、コテ鎌などですが、
裁ち板は、特に高価な銘木である必要はありません。
コテ鎌も、12,000~13,000円です。

もしお金をかけられるのであれば、良い鋏を買うのを勧めます。
私が使用しているのは、<長太郎>の28cmの裁ち鋏です。

良い鋏を使うと縮緬通しに切ることが出来ます。
縮緬通しに切るというのは、地の目に沿って切れるということです。

私のように毎日使っていれば、それほど問題はないのですが、
そんなに使用しない時は、布を切った後に、刃についた細かいホコリを
ふき取っておきましょう。

刃に付いたホコリが湿気をおびて、サビや切れにくくなる原因となります。

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「糸」について

2008-09-21 13:14:37 | 和裁の道具

研修会の報告が続きましたので、今回は「糸」についてです。

私達が使う地縫いの絹糸ですが、今では板巻きやプラスチックの糸巻きで
売っていますが、私が小学生だった頃(凡そ40年前!!)は、糸商人が、
一束ねになった糸を、風呂敷に山ほど持ってきた中から、
天秤で「匁(もんめ)いくら」で量ったものを買っていました。

自分で、糸巻き機を使って、糸巻にまかなければなりません。
私も和裁の修行中は、白絹・黒絹・とじ糸は、糸巻き機を使ってまくのですが、
途中で、絡まないよう巻くのはとても難しく、それは緊張を強いられる作業でし
た。

和裁士にとって、当たり前のことですが、縫う前に必ず糸を指ではじいてから使います。これは、糸のよりを直すためです。これを怠り、そのまま縫い始めてしまうと、すぐに糸がからまってしまいます。

今の人は、よほど針仕事が好きでなければ、こうした糸や針の扱いに慣れていないのではないでしょうか。

私の学校では、糸をはじく練習から始めます。

写真は、糸をはじき針に通す作業が目的で、通した糸でいろいろな文様に
糸かがりをしているところです。
これをすることによって、針と糸に慣れます。

ちなみに、科学繊維の糸は、はじいてはいけません。
伸びてしまいます。
化繊の糸は、熱いコテで、さっとひとなでしてから使用すると
絡みにくくなります。



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コテ(鏝)について

2008-08-10 14:51:55 | 和裁の道具

今では、二本差しの電気ゴテが普通ですが、明治時代までは、炭火鉢でコテを熱して使っていました。

私が修行中に師匠から聞いた話ですが、昔は、コテの温度を頬に近づけて確認していました。うっかり、頬にコテが当たってしまい、火傷をして、あざを作ってしまったお針子さんが何人もいたそうです。

今は、サーモスタットのおかげで、生地が焦げてしまうほど熱くはならないので安心です。ただコテをあてる時は、あたり(布が光ること)・コテの汚れが付くのを防ぐために、あて布をしましょう。

コテで注意しなければならない点は、布を焦がさないようにするのは言うまでもなく、コテをヘラ代わりに使うことです。

コテをヘラ代わりに使用すると、深い、しっかりした印が付きますが、間違った場所に付けた場合、なかなか消えなくなってしまいます。
初心者はコテべらはしないほうが無難でしょう。

国家検定の実技試験の際、一番問題になるのがコテでした。
試験会場側の用意したコテの効きが悪い、反対に熱すぎると受験生から文句が出ることがあります。

そのため今では、持参する事が可能になりました。
しかし、試験当日、朝早く、それでなくても荷物が多い上に、さらに重い約2kgあるコテ一式を持って行くのは、かなり大変です。女性が一般の交通機関を使って、試験会場まで行くだけで、くたくたになってしまうかもしれません。


仕立てをする前に、布のミミをコテで伸ばします。とても大事なことです。




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ヘラについて

2008-08-02 18:01:08 | 和裁の道具
ヘラも和裁には欠くことの出来ない道具です。

普通、なぎなたの形をしています。また、両刀のヘラもあります。

初心者が、よく鉛筆のように持って、使っているのを見ますが、
本当の持ち方は、ヘラを完全に握ってしまいます。

そして、時には体重をかけてヘラ付けをします。

ヘラの素材には、プラスチック、牛骨、象牙があります。
一番良いのは、牛の大腿骨で作ったヘラです。とても丈夫で使いやすいのです。
プラスチックのヘラは、強いヘラ付けをすると、布が切れてしまう恐れがあります。

象牙のヘラは良いものですが、高価で手に入れにくく、また丁寧に扱わないと、
硬い物や、裁ちバサミなどに当てると、欠けてしまうことがあるのです。

私が和裁を始めた約30年前には、和裁のヘラだけを作る職人さんがいました。
廃業するとの知らせを聞いて、慌てて買いに行った覚えがあります。

今では握りの太いヘラが手に入らないのが残念です。

牛の大腿骨で作ったヘラです。


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綿(わた)について

2008-07-24 23:29:53 | 和裁の道具
和裁で使う綿には、絹綿と綿(めん)の綿があります。

絹綿には、真綿、袋綿、吹き止め真綿があり、綿の綿には、青梅綿、丹前綿などがあります。

今、綿を取り扱っているお店も少なくなり、子供の被布や花嫁さんの被る綿帽子に使う袋綿や、半纏(はんてん)に入れる吹き止め綿(これは片面に、ニカワが塗ってあり、表に綿が出てこないようになっています。)などは、入手が困難になっています。

昔は着物の袖口と裾には、必ず綿を入れました。
しかし、今では呉服屋さんや、デパートの一部でしかしていません。

写真は7歳女児のお祝い着の袖口を口綿仕立てにしているところです。


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