小論講師の徒然草

大学受験予備校で小論文を教える者が日々思うところを徒然に…。

成人年齢引き下げ論~未成年者の意識(第2回演習添削雑感)

2009年05月06日 00時17分41秒 | 講義補足
こどもの日、私は添削に勤しんでおりました。今週は他の仕事がたまっているにもかかわらず、どさっと持って帰ってきてしまったので大変(涙)

さて、第2回演習テーマは、「成人年齢引き下げ論」。近時、世論の関心も高まりつつあるので、大いに出題が予想されるテーマです。まだあまり過去問が存在しない新しいテーマですね。死刑制度などとならんで、日本が「マイノリティー」であり、その意味でも要チェックテーマ。諸外国はだいたい18歳で成人。しかし、日本は20歳。さて、これをどう考えるか、という問題。

まずは諸外国の状況からちょっと解説。諸外国もはじめから18歳成人制ではなく、
ちょっと前までは21歳というところが多数でした。しかし、1960年代に学生運動が盛んになり、学生が政治参加を要求します。それに応ずる(屈する?)かたちで、各国が成人年齢を18歳に引き下げた。いわば、「若者が勝ち取った」んですね。

では、日本はどうか?日本でも学生運動が活発な時期はありました。東大の安田講堂も水浸しになりましたしねぇ。しかし、その時は成人年齢の引き下げには至らなかった。それで現在、2007年に成立した憲法改正に関する国民投票法が投票権付与年齢を18歳にしたことが(も)契機になって、このテーマの議論が活発にされているのです。

こう考えてみると、諸外国と我が国の背景は大きく異なる。諸外国は、若者がイニシアティブをとって積極的に権利を要求したのに対し、我が国は別に若者が要求しているわけではない。こうした背景が、答案に表れています。

20数枚添削しただけですが、大多数の答案が「今の若者は政治的関心もないし、責任感もないから、引き下げなんてできないよ」という立場。消極的な否定論。これが試験の評価を考えた上でいいか悪いかは、教室でお話します。

こうした見解が多数出てくることは、とても衝撃。個人的な感想ですけどね。論述内容を見るに、社会参加・権利主張それ自体にネガティブであるばかりか、基本的な社会の仕組みについて不知であるがゆえに、ネガティブな立場を採らざるをえない、という感じ。非常に抽象的な言い方をすると。

日本の教育は、どこかで重要な誤りを犯してしまったのではないか、そう考えさせられる一日でありました。

で、次回講義では、文章構成法よりも、基本的・基礎的知識の伝達に力を入れなくてはならないと痛感し、講義案を練り直すことを決めたのでありました。それを、今からやりまーす。

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