はぐれの雑記帳

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歌集  雑念の書 第二章 この国のかたち

2016年08月22日 | 短歌
歌集  雑念の書 第二章 この国のかたち

憤 り1

939 居眠りする人にまざり眠るなんだか弱々しくなった国の夜
940 眠る振り、席をゆずらぬ若者を前に、老人は早く死ねばいい
941 正面の若者の心に巣食う不安じっと見つめる一人の年寄り
942 美しい日本のかたち求めた作家の憂いに暮れるビルの街
    (司馬遼太郎死す)
943 人民をひき殺せと命じた上官のこころのズレ引きずっている国 (司馬遼太郎によせて)
944 悲しいなやはり悲しいこの国の若者の姿かたちはとても悲しい



憤 り2
    (コソボ問題・キルギス人質事件・チェチェン紛争)
949 スパイ衛星画像にとらえて送る人殺し合う地域のあちらこちら
950 ジグソーの一片コソボうまく収まらず完成しないセビリアのパズル
951 昨日までの隣人敵味方に殺し合わせて座る独裁者の椅子
952 難民となった子の行方案じる憂い簸に刻んで瞼とじる母
953 隣人を殺せと命じる権力亡者に昔「ハイル」「ハイル」と手をあげた
954 危険見逃して人質拉致された国のなお病状悪化の平和惚け


955 人質盾に争ブコーカサスの高い山々は理解しずらい遠い山脈
956 争いを呼ぶ神の条理はしらずされど人を殺せとは説くまいに
957 殺教は神々の争い権力への執着名も無い無産の民が逃げ惑う
958 テロとは卑怯な幼子も眠るアパート深夜丸ごとの爆破





ああ隣国(北朝鮮)

959 隣国とは仲良くすること難しいとか昨日ミサイルを発射しました
960 半世紀過ぎていまだ自立できない国人民飢えて食料の強要
961 権力者祝う行進一糸乱れずナチス進軍の亡霊のように
962 この北の国はどこにいく国棄てて逃出す民秘密裏にふえて
963 マラソン優勝の女兵士家もらいおずおずとキッチンの蛇口をひねる
964 人民は何も知らないミサイルは取引の武器隣国は食料遺せ
965 土痩せた国土に独裁者の巨大な宮殿合成されない写真画像







この国のかたち
司馬簡太郎氏が亡くなった。軍隊に入れられて上官が同朋である国民に銃を向けよと命じられた経験を基に、改めて「この国のかたち」がどこから作り出されてきたかを問いつづけた。しかしその形骸は消えることなく、また改革されることなく「この国」のすがたとなっている。平和惚けしたままに、この国はどこへいくのだろう.

969 言語貧弱の宰相舵をあやつり右旋回する航路です  (小渕首相)
967 大政翼賛会構成して庶民に突きつける10%の人頭税
968 パンのみにて生きる民の国あり守護神は雲隠れしたまま (自公内閣誕生)
969 無理無理に法質し通し頬かむりする子々孫々への借金  (赤字国債)
967 介護の必要なお年寄り貯金通帳密かに覗き見る     (介護保険制度)
968 年金などに頼らずに国民はあまねく死ぬまで働きなさい
969 私を騙そうと言い訳しているこの国のかたち不透明のまま
970 不正融資した社長逮捕され白けてゆく大蔵省の宴の席    
971 九月半ば身を焦がすほどに虫が鳴き妄だけの生を追う
 (第一勧業行幹部逮捕) 







見知らぬ衝に新宿副都心地下街

975 夏服の上着わしづかみにして汗ふきだすままの十月になる
976 地下の階段くねくねといくつも上り土竜は地表に顔をだす
977 買い物袋からおもむろに主婦が取り出すパソコンソフト
978 昔住んだ街大理石に惑わされて迷いこむ地下通路
979 巨大神殿繋ぐ地下通路背広着た神官忙しげに行き交う




東海村

1999年9月30日ウラン臨界事故発生あってはならない事故が発生し、原子力行政の杜撰さが明るみにされると同時に、その恐ろしさを改めてしらされる。情報も不確かであり、住民の多くは知らされずに数時間をすごしていた。チェルノサイリやウクライナまでにならないまでも、この狭い日本で同じような事故が起きたならとんでもないことだ。民間の企業の杜撰な管理を見逃してきた行政の国民に対する責任は大きい。未来に対する責任をどう感じているんだろう

980 真昼放射能大量に漏れて灰色に溶けてゆく日本列島
981 ウランは街にあふれ町工場原子爆弾製造所立ちならぶ
982 放射能汚染広がる夜遠くチェルノブイリの友のメールを開く
983 ウラン扱う作業手順書記載漏れの君の家族の生死の章
2Ul 憤る海は青ざめて残暑厳しい住民蒸発したままの街通り





世紀末異変
1999年世界の各地で大地震が発生し、死者多萄新しい世紀を迎える前に、この地球はわれわれに何かの信号を発しているのではないだろうか。

トルコ地震・ギリシャ地寮
986 アジアの果ての大地が崩れ死者数多あり戦争よりも激しく
987 死者の霊瓦礫の中にさまよう無残と言うにあまりに無残
988 等しく死は訪れるとしても天変地異の不運深海の働巽
989 ギリシャの大地も裂けて人が死ぬ青々深くエーゲ海あり







台湾大地震

990 台湾に亀裂走り瓦礫となった棲家見つめる人の群れ
991 生死の境紙一重運不運生還する子あり瓦礫の中より
992 妻が旅した台中県太平郷中山路四段陶磁器店所在不明
993 倒壊するビル振れて剥き出しとなる手抜き工事の見本例
994 地球大地のひと隅にいてかけがいのない生いとおしい








覚 悟1

995  一生を人に支配されること嫌い老いにむかえばわが道をゆく
996  一世紀生き抜くことを覚悟すればおおらかに陽はそそぐ
997  一つの命ありがたくとことんまでも生きてやれと風騒ぐ
998  一介の名も無い人のひとりなら自由気ままの雲流れてゆく
999  一年は春夏秋冬めぐり路傍の石にも陽はあたる
1000 一本の大樹のごとくどつしりと命の仕上げにとりかかる

1001 一人所詮一人で死んで行く所詮自己満足と蒼い山みて笑う
1002  一升の酒のみ交わす友おれば人の為にもせっせと働く
1003 一筋の道を歩いているはずなのにまたあらわれる獣道
1004  一念発起して夢を追う老木の若葉活き活きとしてみどり






覚 悟2

1005 どんよりと曇る空重く目覚めるまえに夢占つている
1006 ベランダから見る蒼い山波色濃くなってこの街を愛す
1007 武蔵野の野の広がり小手指ケ原に遠く黒々赤城山がある
1008 植木鉢に赤い花咲き光りに透けるやわらかな君の薄絹
1009 この時代だから携帯電話着信音は「主よ人の望みの喜びよ」
1010 眠気をさそう穏やかな昼カラスが鳴いて幼子と若い母の声
1011 めつきり涼しくなって毛布二枚に抱かれてねむりつづける
1012 葡粛二房テーブルにあり静かに妻と向き合う昼下がり

1013 仕事をはなれ歌を作るとき無才を琴三羽のカラスめ
1014 美少女の一途な瞳目線そらせば稽古着の藍色あせている
1015 山に行きたい自然に溶けたい旅費なくて遣る瀬無い青空
1016 大蒜の匂い部屋に充満し夫を追出す妻の手口かもしれず







覚 悟3    
1017 風やんで穏やかな朝放射能しずかに雨に溶けて降る
    (臨界事件後〕
1018 年頃の娘二人を野におけば薄紅に親心の文様
1019 昨夜騒がしく遊び疲れて青年がピカソの顔に歪んで眠る

1020 電話もない日量った頭の中を戦闘機が飛行してゆく  (普天間基地)
1021 インターネットで検索する皮下脂肪増加と愛減少の理由
1022 玉葱を薄く刻んだ指先にてつかむ秘所隠す薄衣
1023 卓上の時計針遅々として動かず愛薄れてく微かな予感

1024 捨て去ることのできる拘りもある死を前にして許す父の過ち
1025 遮断機に阻まれて立ち止まる救急車 黙したままのサイレン
1026 やわやわと日のあたれば天命を待ちながらなごむ風に歩く
1027 もういいよと肩たたかれたみたい回り右して軌道を変えるか

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