怠惰なひな菊

漫画家・萩原玲二(はぎわられいじ)の怠惰なブログ(2006~2019)

謎解き!『レインボー / モンスターズ・オブ・ロック〜ライヴ・アット・ドニントン 1980』

2016-05-05 23:00:17 | 音楽



黄金週間ということでもあり、ここはやはり、先日リリースされたハードロック記念碑!たる『レインボー / モンスターズ・オブ・ロック〜ライヴ・アット・ドニントン 1980』についての自由研究、謎解きブログをしたためねばなるまい。

MORの録音・撮影について、『ブラックナイト リッチー・ブラックモア伝』(ジェリー・ブルーム)での記述は以下の通り。

 ショウはレコーディングと撮影がされていたため、さらなる収益源となる可能性があった。そしてペインの立案でフェスのアルバムがリリースされる。ただし全出演アーティストのコンピレーションだったため、レインボーはわずか2曲しか収められていない。映像のほうはテムズ・タレントの一部門であるグリーン・バック・フィルムズが担当したが、今日まで陽の目を見ていない。ただし30分に編集されたハイライトシーンは、イベントのすぐあとでBBCで放映されている。(267P)

ネットで散見される意見として、今回の音源のマスターは、このBBCで放映された30分番組用の素材では?(初回盤に同梱されたDVDのそれ)―――という推測であり、自分もそうに違いなかろうと確信している。

かつて、スタッフが番組の映像マスターを探索した中で一緒に音源マスターも発見されたんじゃなかろうか。
映像のマスターは1980年という時期的に2インチなのか1インチなのか、とにかくVTRではあろう。

映像のソースそのものは16ミリフィルムだろうから、音は入っていないし、フッテージはキャメラ毎にバラバラだったはずである。

映像を観るかぎり、キャメラは最低4台はあると思われ、ライヴ後、そのラッシュフィルムが編集室に持ち込まれ、切った貼ったがなされた。


当日のセットリストは以下であるが、

△威風堂々(オープニングSE)
●アイズ・オブ・ザ・ワールド
○ラヴズ・ノー・フレンド
○ブランデンブルグ協奏曲~シンス・ユー・ビーン・ゴーン~オーヴァー・ザ・レインボー
○スターゲイザー
○銀嶺の覇者
●キャッチ・ザ・レインボー
●ロスト・イン・ハリウッド~ア・ライト・イン・ザ・ブラック(間奏パートのみ)~リッチー・ブラックモア・ソロ(ベートーヴェン交響曲第9番)~ドン・エイリー・ソロ(未知との遭遇)~コージー・パウエル・ソロ(オーヴァー・ザ・トップ/1812序曲)~ロスト・イン・ハリウッド(リプライズ)

●レイジー~オール・ナイト・ロング
●ブルース~ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー
●ロング・リヴ・ロックンロール

●キル・ザ・キング(ギター・クラッシュ)
●ロング・リヴ・ロックンロール(リプライズ)
△オーヴァー・ザ・レインボー(エンディングSE)

このうち番組と(一部でも)かぶっているのが黒丸の曲である。

今回の発掘音源にぴたりと合う。


推理するに、番組で使う曲目が決定し、完パケ編集の前にその使用曲のミックスダウンが要請されたのではなかったか。

そう考えれば、今回の発掘音源に「ラヴズ・ノー・フレンド」「銀嶺の覇者」が―――そして「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」「スターゲイザー」も、存在しなかったのは自然なことだといえる。

当時、TVのステレオ放送がイギリスで行われていたかどうかは知らないが、とりあえず当時の放送の標準仕様だろうモノラルでミックスダウンされた。

それが今回の発掘音源であり、そのマスターから30分番組のサウンドトラックが編集された。

当時のTV受像機の貧弱なスピーカーを想定すれば、この音源のいわゆる団子ミックスは理に適っているのだろう。


A Light in the Black


Imports


ちなみに、2015年のボックスセット『ア・ライト・イン・ザ・ブラック』で、はじめて公式リリースされたMOR映像のサウンドトラックは、80年に放映されたものと音源は一緒だろうが、新たに編集されたものに差し替えられている。

マスターVTRに入っていた当時のサウンドは、使い物にならず、修復もできなかったのだろうか?
それとも現存している映像マスターは無音で、放送に使用された完パケが行方不明とか‥‥‥?

自分は今回の初回盤の、イーグル・ロック?で念入りに修復されたDVDは未見なので、そのあたりは輸入版で確かめたいと‥‥‥(音源はCD一枚という方が聴きやすかろうし‥‥‥)。


Monsters of Rock Live at Donington 1980 [DVD] [Import]


Eagle Rock Ent


で、畢竟!われわれにとって最重要の関心事は、大元のマルチトラックマスターテープが現存するのかどうかということだと思う。

これまでに発表されていた音源とは、


『Monsters Of Rock』(1980) LPのみ
「スターゲイザー」「オールナイトロング~ブルース」

Monsters Of Rock


Polydor

モンスターズオブロック (1981 - YouTube


『ファイナル・ヴァイナル / Finyl Vinyl』(1986)
「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」

ファイナル・ヴァイナル+2


USMジャパン


『All Night Long: An Introduction』(2002)
「オール・ナイト・ロング」

All Night Long: An Introduction


Polygram UK


『Anthology』(2009)
「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」

Anthology


Ume Imports


の、5曲であり、このうち、「オール・ナイト・ロング~ブルース」は、コンピレーションアルバム用のテイクというべきもので―――今回収録された音源でも「オール・ナイト・ロング」はオーバーダブされているのだが、ギターソロなど違いが大きい―――それ以外の3曲は今回収録された音源と同じマスターだと思われる。

「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」と「スターゲイザー」は、上記のアルバムでフェードイン、アウトの編集がなされた状態のマスターしか見当たらなかったのだろう、リッチーのトリルでつなげられて演奏されたにもかかわらず、今回、曲間が不自然な編集となってしまっており、マルチトラックの不在が一層強調される結果に‥‥‥

その曲間に挿入されているボネット氏のMCは本来「キャッチ・ザ・レインボー」の前のもので、「OK!」というMCはダブって収録されてしまっている。


これらによって判るのは、少なくとも、1986年の『ファイナル・ヴァイナル』の編集作業時点ではMORのマルチトラックは現存していたという事実である。

「スターゲイザー」と「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」は確実にステレオミックスで、しかし、謎なのはコンピレーションアルバムの「オール・ナイト・ロング~ブルース」はモノに聴こえるという‥‥‥


また、もし新たにMORの映像フッテージがでてくるとすれば、それは撮影したネガそのものか、ラッシュプリントに由来する必要があり、それが発見されたとしたら、ひょっとするとその中に、われわれにとって「聖杯」といえる「スターゲイザー」の演奏フッテージも存在するかもしれない‥‥‥

‥‥‥

さて、そんなもろもろの権利の管理者は現在誰なのか?―――普通に考えるとブルース・ペインということになり、ペイン氏といえば、つい最近のディープ・パープルのロック殿堂入りの式典で、リッチーの出席を断固拒否したことは記憶に新しい。

そういったもやもやが、今回の『モンスターズ・オブ・ロック〜ライヴ・アット・ドニントン 1980』のライヴアルバムのもやもやそのものといえるのではないか‥‥‥

もろもろのマスターがペイン氏の秘密金庫?だかどこかに眠っていることを祈るのだった。

むろん、1980年の日本ツアーのマルチも一緒に‥‥‥!!!

日本での何公演かは将来のライヴ盤リリースをにらんで正式にレコーディングされ、この「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」はある晩のギグのあとでも録られている。(264P)

1980年の日本ツアーの録音について、『ブラックナイト リッチー・ブラックモア伝』での記述は↑の通り。


「夢」は続いているのだろうか‥‥‥???


ブラック・ナイトリッチー・ブラックモア伝


シンコーミュージック




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