怠惰なひな菊

漫画家・萩原玲二(はぎわられいじ)の怠惰なブログ(2006~2019)

くだんのはは(原作/小松左京)

2015-04-16 20:45:14 | 萩原玲二作品


コミック特盛 2015年 06 月号 [雑誌]


ホーム社


戦争はなかった (新潮文庫 こ 8-3)

影が重なる時
四次元ラッキョウ
青ひげと鬼
釈迦の掌
生きている穴
完全犯罪
木静かならんと欲すれど……
失業保険
運命劇場
戦争はなかった
くだんのはは
四月の十四日間

新潮社


4/17発売のコミック特盛春号『新耳袋アトモス』(ホーム社刊)に

『くだんのはは』(1C・36P)

原作/小松左京(初出・話の特集1968)
漫画/萩原玲二

が掲載されています。

ぜひ、ご一読を!(拝)


この号単独だと、なぜ今『くだんのはは』?ではありますが、前号までのシリーズ連載『怪談百物語・新耳袋 うしおんな』において、主人公木原少年が「うしおんな≒くだん」という「不思議な話」に決定的に関わるきっかけとなったテキストとして『新耳袋 第一夜 第十二章 〝くだん”に関する四つの話」から取り上げられ、その中で、

「くだんのはは」を読まれるといい。

と、促してもおられる。

この「うしおんな」のシリーズ連載を振られて、自分が最初に思ったのは、いっそ『くだんのはは』も漫画化すれば、今の若い読者には親切なのでは?というアイディアでありました。

こうして、その構想通り、『くだんのはは』を漫画化できたわけですが、実際描いてみての確信は、この短編小説を忠実に漫画化しようとしたら、たぶん60P程度は必要だろうということでした。

しかし、さすがに季刊のアトモス誌に60Pという台割の余裕はなく、今回の36Pというのも、相当苦労していただいたということで、かといって、前後編にすればよいかというと、ご存知の方にはおわかりでしょうが、『くだんのはは』はそういう物語ではない。

よって、36Pでおさまるように構成を調整したわけですが、「新耳」とリンクさせるには、当時(70年代)木原少年が読んだ『くだんのはは』である必要があるわけで、あまり大きな潤色はすべきでない。

また、この作品はロジカルなプロットを持たない幻想小説なので、プロットのみに単純化すると、「開かずの間を覗く」だけの話になってしまい、作品の本質が失われてしまう‥‥‥

などと、いろいろ逡巡しながらネームをきって、直したりしつつ、作画もけっこう大変で、ひさしぶりに〆切前は完徹になってしまい、消耗しきった次第でした。


目次のコメントにも書きましたが、『くだんのはは』は石森章太郎先生も1970年に別冊少年マガジン4月号で漫画化(46P)しています(45年前!)。

こちらは、原作に忠実で、原作テキストがそのままページを覆うような思い切った処理もみられ、石森先生の絶頂期の仕事という印象です。

石森先生版と自分の版との最大の違いは、良夫少年から「おばさん」と呼ばれる、くだんの「はは」のイメージではないかと。

自分はこの「はは」がこの小説の主人公と思っており、ページが潤沢であれば、この「はは」の魔術的側面をもっと描くべきであったろう―――という歯痒さがあったりするのであります。

風貌のイメージは、典型的なモガとしてのルイーズ・ブルックスで、ずばり『パンドラの箱』のルルです。


平和をわれらに! (復刻名作漫画シリーズ)

平和への願いを込めた短編を集成!

終戦記念日を機に、国民的まんが家4人がそれぞれのやり方で表現した「平和への願い」を1冊にまとめます。
収録作品は、過酷な戦場体験を昇華した水木しげるの「硫黄島の白い旗」「カンデレ」、内地で空襲体験をもつ手塚治虫の「とざされた記憶」「猫の血」など、日常を脅かす核戦争の恐怖をSFに託した藤子・F・不二雄の「超兵器ガ壱号」「マイシェルター」など、同じくSFの形で未来戦争への想像力をふるった石ノ森章太郎の「時ヲすべる」「くだんのはは(小松左京・原作)」など、選りすぐりの全12編です。

小学館


パンドラの箱 クリティカル・エディション [DVD]

フランツ・ベーデキント原作を映画化。G・W・バプストがメガホンを取った、ドイツのサイレント映画の名作。ルイーズ・ブルックス、カール・ゲーツほか出演。

紀伊國屋書店




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