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怠惰なひな菊

漫画家・萩原玲二(はぎわられいじ)の怠惰なブログ(2006~2019)

Once Upon a Time in Hollywood

2019-09-20 21:55:00 | 映画



こんなだらだらしてるのに大傑作!というコメディとは、なにやら新しいジャンルみたいである。

そのメタ感はなんとなく筒井康隆作品を連想し、「シャロン・テート事件」といえば、日本だったら「近江屋事件」のような、普通の好事家なら「ほたえな」からズバッで鞘ごと削って額から脳漿がこぼれて田中光顕が駆けつけて云々と微に入り細を穿った通説をだいたい承知しているだろうから、あのタラ氏がまさかそれを几帳面になぞるんだろうか?だったのだが(ネットで検索すれば犯行現場写真やらなんやらでしょんぼりしてしまう)、この手があったか、というか「いいんかそれで!」であった。
最高では!といえる。

クソヒッピーへの暴虐のかぎりは痛快無類の大爆笑で、合衆国でもあの辺の世代、すなわち日本でいえば団塊の世代の、空想社会主義的体臭へのむかつきは強いのであろうか。

デカ氏が自分の不甲斐なさにブチ切れて一人漫談をするシーンに一番笑う。


近場のシネコンがサービスデイだったこともあり、隣接するホムセンでの買い出しのついでにこのクソ長い映画を「タイミング的に観るなら今しか!」という感じで昼下がりに飛び込んだのだったが、はたして途中「お花畑」の退出を余儀なくされる。

クリムゾンのライヴのように、初老にはインターミッションが必要!


事件後すぐに、こうしたシーン↓を撮るポランスキーはなんというのか、タフとはいえる。


Macbeth 1971 Final Fight Rescored


映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』予告2 8月30日(金)公開



筒井康隆コレクションVI
美藝公
日下 三蔵
出版芸術社


溝口健二著作集

2019-06-17 18:24:45 | 映画
書籍『溝口健二著作集』予告編(PV)The Complete Writings of Kenji Mizoguchi



↑の動画で宣伝されてる『溝口健二著作集』は、発売当時に購入していて、こんな動画があったことについ最近気づいた。

編集がゴダールの『映画史』まんまなのは、パロディなのかご愛敬なのか、はて。

しかし溝口の「画」の強さは、こうした断片を並べただけでも明快なように思う。


この本にものっているが(336p)、昭和27年の岸松雄との対談で溝口は


 大体、僕は昔から、階級の問題はコンミュニズムが解決するが、その後には男と女の問題が残る、と考えていましてね。だから男と女の問題をとりあげることに特別な関心をもっていたわけなんです。


と語っていて、21世紀の令和元年にあっても意味深長なのだ。

‥‥‥

で、男と女の問題といえばここ数日の麻雀界隈で、さすが大手広告代理店仕込みの大衆操作危機管理マニュアル・パート1!という感じで、その対応に迫力がある。

それにしても、擁護派が「不義ありき」前提の擁護ばかりなのには、フフッとなってしまう。
麻雀界隈の屈折したミソジニー(女性嫌悪)は、BL界隈のこじれたミサンドリー(男性嫌悪)同様、根が深いのだ。

‥‥‥

それはともかく、ネームが六ヶ敷(むつかし)いのだ‥‥‥





溝口健二著作集
佐相 勉
キネマ旬報社


溝口健二集成
西田 宣善
キネマ旬報社


溝口健二―情炎の果ての女たちよ、幻夢へのリアリズム (映画読本)
佐相 勉,西田 宣善
フィルムアート社


ジャン=リュック・ゴダール 映画史 全8章 BOX [DVD]
ジャン=リュック・ゴダール,ジュリエット・ビノシュ,アラン・キュニー,ジュリー・デルピー
紀伊國屋書店


CUREリーグ

2019-02-26 20:57:32 | 映画



CURE



黒沢清ファンのおれとしては、俳優・萩原聖人氏は『CURE』〔1997〕の間宮役なので、Mリーグを観ているとめっぽうMリーグにこじつけた『CURE』のパロディ漫画を描きたくなってしまう!(!)

萩原Pの催眠方法はもちろん「雷電の麻雀は面白いんです!」と指さすことで、KONAMI 麻雀格闘倶楽部の前原Pの今日の一言はなにかな?と控室を覗くと壁のホワイトボードいっぱいにでっかいバツ印がかかれていたり、セガサミーフェニックスの近藤Pが水道管だかで魚谷Pを撲殺したり、トイレで小林アナが血塗れの松本アナの顔の皮をメリメリはがしていたり、佐々木Pが帰宅すると手塚Pがからっぽの洗濯機を回していてダイニングテーブルの皿の上には生肉が用意されていたりするのである。

役所広司の高部刑事役は渋谷ABEMASの多井Pが順当だが、妻帯者である必要があるので、佐々木Pが妥当だろうか。
EX風林火山の滝沢Pがうじきつよしの精神科医役で自室の壁にでっかいバツ印をかいて滝のように汗を流してしまったりするのだった。

んが、黒沢映画ファン(シネフィル)と麻雀ファンとで重なる層がはたしてどんだけいるのか?という根本的な問題があり、このような不謹慎なパロディをげらげら笑うのはおれひとりくらいなのでは?なので、漫画なぞにしてはいけない!というのが最善であることはいうまでもないのだった。

といっても、この手のわけのわからないパロディも余裕で掲載していたのがかつての近代麻雀誌であり、もはや800円近くする中綴じ月刊漫画誌の存在理由はニッチ方面、マニアック方面に回帰すべきでは?とも思うのだった。

むろん「3年B組一八先生」も頑張っているが、それ以上に喜国さんの「mahjong まんが王」へ回帰すべきでは???なのである。



役所広司、黒沢 清監督『CURE キュア』Q&A|CURE - Q&A



CURE [DVD]

憎悪は睡眠で覚醒する。

残忍な手口の連続殺人が発生する。
それぞれの加害者はその場で逮捕されるが、動機もなく、その手口以外の共通点は全くなかった。
事件に疑問を抱いた高部刑事は、それぞれの事件を関連づけて捜査を始める。
しかし、事態は思わぬ方向へ進む。

KADOKAWA / 角川書店


The Ride of the Valkyrs

2018-08-10 02:59:13 | 映画
The Ride of the Valkyrs (1909) by John Charles Dollman



『地獄の黙示録』〔1979〕のワルキューレの騎行のシークェンスの悲壮美は、ワーグナーのプログレみたいなロックサウンド(?)はもちろんだが、それ以上に適宜インサートされた、いわゆる「ガンカメラ」のアングルのショットによる。

それはすなわち大東亜戦争末期の、アンフェタミンでガンギマったヤンキーパイロットの、おそらくP51によるだろう本土への無差別銃撃のそれと比べればおのずと理解できるのだ。


Apocalypse Now - [Air Cav - Valkyrie]


WWII Japanese Coast Ships Aerial Attacks GunCam



地獄の黙示録 特別完全版 [Blu-ray]


KADOKAWA / 角川書店


She's Wore a Yellow Ribbon

2018-05-29 11:53:03 | 映画



ジョン・フォードやハワード・ホークスの映画というものは漫画でいえば『火の鳥』や『まんが道』のようなものだから、ふと何の気なしに観返して、精神の落ち着きを得るべきなのである。


She's Wore a Yellow Ribbon | Who's Dog Is This?



↑自分が『黄色いリボン』〔1948〕で一番好きなシーン。

メイキング的な資料を読むと、フォードの作品で印象的なシーンは即興であることがやたらに多く↑もそのようなのだ。

以下、『ジョン・フォードを読む』(リンゼイ・アンダースン)の、ハリー・ケリー・ジュニアのインタビュー↓


‥‥‥軍曹役のヴィクター・マクラグレンは隊員一同を前にして出発前の訓示を垂れていた。‥‥‥リハーサル中に、一匹の犬――雑種だったよ――がしっぽを振りながらカメラの前にのこのこ入ってきた。するとフォードが「ヴィクター、その犬をかわいがるんだ」。ヴィクターは呑み込みの遅い男だったから、「何ですと?」と訊いた。「‥‥‥そいつの頭を撫でて“誰の犬だ? いい犬だ。アイリッシュ・セッターじゃないか‥‥‥と言え」とフォード。傑作なアイディアだった。アイリッシュの犬とはね!‥‥‥カメラが回った。‥‥‥マクラグレンは「さて者ども!」と演技を始め、‥‥‥「誰の犬だ? これは?‥‥‥いい犬だ。コッカー・スパニエルじゃないか」とやっちまった。フォードは「違うッ。ロシアン・ウルフハウンドだ!」というのを聞いたときには、腹を抱えて吹き出したね。‥‥‥フォードはわれわれの大笑いに目を向ける余裕もないほど、頭から湯気を立ててヴィクターに怒っていた。‥‥‥(307P)


↑の挿話も大好きなのだった。

『荒野の決闘』〔1946〕の、フォンダが床屋に吹きつけられた香水で、2回繰り返される天丼ユーモアも即興。



She Wore a Yellow Ribbon [Blu-ray]


Warner Archive Collection


ジョン・フォードを読む―映画,モニュメント・ヴァレーに眠る (ブック・シネマテーク 7)


フィルムアート社