goo blog サービス終了のお知らせ 

横須賀総合医療センター心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

手術時の手洗いの変遷 ブラッシング法からラビング法へ

2020-03-15 10:48:09 | その他
 手術の際に手指を滅菌する作業を「手洗い」と呼んでいますが、この数分間の滅菌作業、時代の変遷もあります。
 筆者が研修医時代から行っていたのは、習ったとおりではありますが、ブラシでイソジンスクラブを使用して3分×3回手洗いを行うというものでした。その当時からブラシが皮膚を損傷してそこが皮膚のバリアが壊れて細菌を持ち込む温床となるという意見もありましたが、昔ながらのやり方が継続されていたと記憶されています。
 その後、アメリカのCDCの感染予防ガイドラインが作られるようになり、日本でもこうした手術関連の感染予防の一般化が図られるようになってきました。
 その中での大きな変化は、それまで滅菌水で手洗いしていたのが、通常の水道水でも感染リスクが変わらないということが言われるようになり、水道水での手洗いが一般化したこと、そしてブラッシング法からアルコールを手指に擦り込むラビング法へと変わったことです。それまでのブラッシングによる皮脂や皮膚の汚れを落とす作業は最低限として、アルコールの擦り込みによる滅菌が中心となり、おそらく現在の医療施設の殆どでこの方法がこの10年ほど前から行われるようになりました。清潔に敏感な心臓外科医や整形外科医の一部に反発の動きも一時はありましたが、現在はそれが当たり前となって毎日実施されています。

 さて、昨今の新型コロナウィルスパンデミックによる混乱で消毒薬が不足して病院手術室にも手指擦り込み用のアルコールの入手が困難となってきました。消毒剤が無くなれば手術は出来なくなります。しかしながらこの混乱は、手指擦り込み用のアルコールのみの一時的な需給バランスの異常が引き起こすものであり、直ぐに解消されると思いますが、この手指擦り込み用アルコールが不足することで現在行われているラビング法が出来なくなりつつあります。それに打って変わって、昔行われていたブラッシング法をするように、と言われても現在の若手の看護師さんは、ラビング法しか知らない、という現実があると聞き、筆者も年齢を実感しました。今の若者はラビング法しかしらず、ブラッシング法をやれと言われても出来ない、痛い痛いと文句ばかりいう、のだそうです。
 最近感じたのは、13という数字を聞いて縁起が悪い、といっても若者には通じない、ということ。
 老年にさしかかった筆者にはこれからますますこうした世代間ギャップを日々感じることになりそうです。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 血圧の薬って一度始めたら一... | トップ | 心臓手術後の患者さんは新型... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

その他」カテゴリの最新記事