横須賀うわまち病院心臓血管外科

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PCPS(ECMO)の流量が出ない!どうする?

2021-10-11 16:02:25 | その他
 心原性ショックに対してPCPS(最近はVA ECMOと呼ぶことが多いようです)を装着。下大静脈~右房から脱血して、大腿動脈などの動脈系に人工肺で酸素化して返血するシステムですが、心不全などの状況では右心系から左心系に血液が循環しないことが病態の中心であり、右心系が鬱血するため、通常は脱血する血液が大量にあって脱血が良好なはず。このPCPSで流量が出ない理由のほとんどが脱血不良です。脱血不良の原因は大きくふたつあり、脱血管が組織などに当たっている、もしくは屈曲しているなどの機械的な理由で脱血出来ないか、もう一つ、脱血するべき血液がない=いわゆる血管内脱水のため脱血出来ないかどちらかの場合がほとんどです。この場合は輸液や輸血で静脈灌流を増やすことで解決する場合が多いです。
 他に大動脈弁逆流がないか、とか他に出血したりしてボリュームがとられているところがないかなど全身の評価が必要です。
 通常、心タンポナーデの状態では静脈系が鬱血するためPCPSの脱血は通常良好なはずですが、心タンポナーデの病態は心臓から拍出する血液が低下して末梢循環不全となり、静脈灌流は低下するため、その悪循環がPCPSの脱血不良を起こす可能性があります。実はこれは誤りである可能性もあり、脱血管の位置によってうまく脱血出来ないだけの可能性もありますが、いずれにしろ、心タンポナーデの病態である急性心筋梗塞後左室破裂や急性大動脈解離の循環不全にPCPSを設置して流量不足に陥り循環動態が悪化することが実際あります。この場合の最善の対処は、心タンポナーデを機械的に解除すること、すなわち心嚢ドレナージです。心臓血管外科医にとって心タンポナーデの病態を根本的に治療して救命できることは、まさに心臓血管外科冥利につきる病態で、こうした救命をしたくて実際に心臓血管外科医を目指す人がおおいのも事実です。一見、救命不可能に見える重篤な状態でも、心タンポナーデの状態ではその解除により劇的救命を可能にすることを時々経験してきました。タンポナーデ解除は心臓血管外科医の特異とするところですので、そうした病態の患者さんには積極的に関わっていくべきと思っています。
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