東日本大震災は東北太平洋沿岸に甚大な被害をもたらした。
津波発生時に海の中で何が起きていたのか。津波前と比べて環境が変わったのか。との問いに、船舶による観測や海中に設置された自動観測システムでは充分なデータを得ることが難しかった。津波最中や直後の観測は不可能なため、データの空白期間が存在すること、前後の環境変化を比較する際に必要不可欠な災害「以前」のデータが限られていることが、津波などの大規模災害が発生した際の沿岸海域の環境変化を理解するさまたげになっていた。このような「災害以前のデータが無い、災害直後の観測が不可能」という問題は、近年頻度が増加している大型台風などの気象現象や、人為的な環境汚染物質の放出など、さまざまな状況で起こりうる問題である。この問題を解決するために、海の中に環境について自動的に記録を残し後から記録を読み出すことが可能な「フライトレコーダー」のような物があれば、災害発生前後の環境変化を調べる一助になると考えられる。
東京大学大気海洋研究所の杉原奈央子学術支援職員らのグループは、二枚貝の貝がらを利用した環境復元の時間解像度を劇的に向上させることでこの問題の解明を試みた。
貝がらの化学組成は周囲の環境を反映しており、貝がら断面には樹木年輪のような成長線が形成されているため分析した貝がらの位置がいつ作られたかがわかる。研究グループが、震災から半年後に岩手県大槌町から採取したムール貝(ムラサキイガイ)を調べた結果、貝がらのマンガン濃度が津波直後に急上昇していることを明らかにした。この変化は、津波による陸上の土砂流入や海底堆積物の巻上がりによって海水の化学組成が変化したことを示している。津波直後は調査研究を行える状況では無かったが、津波を生き延びた二枚貝の貝がらは当時の様子を克明に記録していた。
研究グループは、津波発生から半年後の2011年9月に岩手県大槌町の岸壁から、ムラサキイガイを採取した。ムラサキイガイは「ムール貝」や「シュウリ貝」などの一般名で知られている付着性の二枚貝である。二枚貝の貝がらの化学組成は生息場所の環境に影響を受けて変化する。さらに、貝がらの断面には樹木の年輪のような縞模様(成長線)を観察することができる。採取日から成長線をさかのぼって数えていくことで、その部分の貝がらが、いつ頃作られたかを知ることができる。このように、貝がらの化学組成分析と成長線の観察を行うことで、「どのような」環境変化が「いつ」起きたのかを明らかにすることができる。
これまでに貝がらやサンゴなどを利用した古環境復元については多くの研究が行われてきたが、東日本大震災のような直近の災害について、数日レベルの高い時間解像度で環境復元を行った例はなかった。ムラサキイガイのようなイガイ類は足糸によって岸壁や岩場に強固に付着しており、環境変化にも比較的強いことから本研究に最適な種である。また成長速度が早いことから化学分析を行った際に細かい時間スケールで環境変化を把握できる利点がある。
採取したムラサキイガイは貝がらを最大成長方向に沿って切断し、化学組成分析用と成長線観察用の断面を作成した。貝がらの化学組成を調べるために、「レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)」を利用して、貝がら中に含まれる重金属元素を貝がらの成長方向に沿って、100マイクロメートルのスポット径で金属元素の濃度を分析した。100マイクロメートルはムラサキイガイの1日から数日の成長速度に相当する。本研究では特にマンガンという元素の濃度変化に注目した。マンガンは、海水中よりも陸上の土壌や、海底堆積物などに多く含まれている元素である。また、貝がらには潮汐サイクルと同調するように、幅の狭い明瞭な成長線が形成されている部分と、幅の広い不明瞭な成長線が周期的に観察できた。これは大潮の時期と小潮の時期にそれぞれ対応しているとして、このパターンをもとに貝がらの形成時期を推定した。
分析の結果、貝がら中のマンガン濃度が、津波発生直後から急激に上昇していたことがわかった。この急上昇は3月下旬をピークに4月の下旬にはある程度低下していた。また4月下旬以降に形成された部位では、津波前と比較して高いマンガン濃度が持続する状況に変化したことが明らかとなった。このような貝がらのマンガン濃度の詳細な変化パターンから津波によってどのような環境変化が起こったのかを推測することができる。津波直後の急激なマンガン濃度の上昇は、津波によって海底がかきまぜられたり、陸上の土砂が大量に海水中に流れ込んだことを示している。さらに、津波後にマンガン濃度が継続的に高い状態に変化したことは、海岸構造物の破壊や地盤沈下によって陸上の土砂が海水中に流れ込みやすい環境に変化したことを示している。家屋などの倒壊によって、裸地が増加したことも、土砂流入増加の一因となったであろう。このような陸上からの土砂流入や堆積物のまきあがりに伴って、さまざまな物質が海水中に流れこんだため、沿岸域の物質循環は津波によって激しく変化し、その影響は40日程度継続したと推測された。
このような津波直後の環境変化に関するデータを観測によって得ることは現実的には困難である。実際、沿岸域の海洋観測施設は津波による損壊で使用不能であったし、津波直後の惨状では調査研究の余力は無く、大槌湾で初めて調査が実施されたのは津波による劇的な変化が収束した後と思われる5月中旬であった。貝がらを分析することで「過去にさかのぼって環境調査を実施できる」という本研究で示した手法は、海中の「フライトレコーダー」として、環境問題にも新たなモニタリング手法になると期待できる。
◆レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)
レーザーアブレーション装置によって、固体試料(本研究では貝がら)にレーザー光を照射し、微粒子化した後、ガスとともに誘導結合プラズマ質量分析装置に導入する。質量分析装置ではプラズマによってイオン化した元素を高感度で測定する。
晴れ~曇りの天気。風は穏やか。午前の畑作業は、”ズッキーニ”の受粉作業、”ミニカボチャ”の受粉作業、”ネギ”の植え替え準備。。
近所の塀に純白の小さい房状の花の塊りが見える。雪が積もった様に見える。”ニワナナカマド”の花だ。枝先に円錐花序(集合した花の姿が円錐状)を出し、白い小花が沢山付いている。花は梅の花に似て、花弁は5枚、花は小さく径数mm。
葉は奇数羽状複葉(左右に小葉が並び、先端に小葉がつく)で、”ナナカマド”に似た葉姿だ。名に”ナナカマド”とついているが、残念ながら”ナナカマド(バラ科ナナカマド属)”と違い秋の紅葉も赤い実もない。
別名には”チンシバイ(珍至梅、珍珠梅、珍朱梅)”とある。由来は判らない・・蕾が白玉の様だから、との説があるけど。
ニワナナカマド(庭七竈)
別名:チンシバイ(珍至梅、珍珠梅、珍朱梅)
学名:Sorbaria kirilowii
バラ科ホザキナナカマド属(ソルバリア属)
落葉低木
原産地は中国
開花時期は6月~7月
枝先に白い小花が沢山付く
蕾は白玉の様に美しい
1つの花は直径5~7mm位
津波発生時に海の中で何が起きていたのか。津波前と比べて環境が変わったのか。との問いに、船舶による観測や海中に設置された自動観測システムでは充分なデータを得ることが難しかった。津波最中や直後の観測は不可能なため、データの空白期間が存在すること、前後の環境変化を比較する際に必要不可欠な災害「以前」のデータが限られていることが、津波などの大規模災害が発生した際の沿岸海域の環境変化を理解するさまたげになっていた。このような「災害以前のデータが無い、災害直後の観測が不可能」という問題は、近年頻度が増加している大型台風などの気象現象や、人為的な環境汚染物質の放出など、さまざまな状況で起こりうる問題である。この問題を解決するために、海の中に環境について自動的に記録を残し後から記録を読み出すことが可能な「フライトレコーダー」のような物があれば、災害発生前後の環境変化を調べる一助になると考えられる。
東京大学大気海洋研究所の杉原奈央子学術支援職員らのグループは、二枚貝の貝がらを利用した環境復元の時間解像度を劇的に向上させることでこの問題の解明を試みた。
貝がらの化学組成は周囲の環境を反映しており、貝がら断面には樹木年輪のような成長線が形成されているため分析した貝がらの位置がいつ作られたかがわかる。研究グループが、震災から半年後に岩手県大槌町から採取したムール貝(ムラサキイガイ)を調べた結果、貝がらのマンガン濃度が津波直後に急上昇していることを明らかにした。この変化は、津波による陸上の土砂流入や海底堆積物の巻上がりによって海水の化学組成が変化したことを示している。津波直後は調査研究を行える状況では無かったが、津波を生き延びた二枚貝の貝がらは当時の様子を克明に記録していた。
研究グループは、津波発生から半年後の2011年9月に岩手県大槌町の岸壁から、ムラサキイガイを採取した。ムラサキイガイは「ムール貝」や「シュウリ貝」などの一般名で知られている付着性の二枚貝である。二枚貝の貝がらの化学組成は生息場所の環境に影響を受けて変化する。さらに、貝がらの断面には樹木の年輪のような縞模様(成長線)を観察することができる。採取日から成長線をさかのぼって数えていくことで、その部分の貝がらが、いつ頃作られたかを知ることができる。このように、貝がらの化学組成分析と成長線の観察を行うことで、「どのような」環境変化が「いつ」起きたのかを明らかにすることができる。
これまでに貝がらやサンゴなどを利用した古環境復元については多くの研究が行われてきたが、東日本大震災のような直近の災害について、数日レベルの高い時間解像度で環境復元を行った例はなかった。ムラサキイガイのようなイガイ類は足糸によって岸壁や岩場に強固に付着しており、環境変化にも比較的強いことから本研究に最適な種である。また成長速度が早いことから化学分析を行った際に細かい時間スケールで環境変化を把握できる利点がある。
採取したムラサキイガイは貝がらを最大成長方向に沿って切断し、化学組成分析用と成長線観察用の断面を作成した。貝がらの化学組成を調べるために、「レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)」を利用して、貝がら中に含まれる重金属元素を貝がらの成長方向に沿って、100マイクロメートルのスポット径で金属元素の濃度を分析した。100マイクロメートルはムラサキイガイの1日から数日の成長速度に相当する。本研究では特にマンガンという元素の濃度変化に注目した。マンガンは、海水中よりも陸上の土壌や、海底堆積物などに多く含まれている元素である。また、貝がらには潮汐サイクルと同調するように、幅の狭い明瞭な成長線が形成されている部分と、幅の広い不明瞭な成長線が周期的に観察できた。これは大潮の時期と小潮の時期にそれぞれ対応しているとして、このパターンをもとに貝がらの形成時期を推定した。
分析の結果、貝がら中のマンガン濃度が、津波発生直後から急激に上昇していたことがわかった。この急上昇は3月下旬をピークに4月の下旬にはある程度低下していた。また4月下旬以降に形成された部位では、津波前と比較して高いマンガン濃度が持続する状況に変化したことが明らかとなった。このような貝がらのマンガン濃度の詳細な変化パターンから津波によってどのような環境変化が起こったのかを推測することができる。津波直後の急激なマンガン濃度の上昇は、津波によって海底がかきまぜられたり、陸上の土砂が大量に海水中に流れ込んだことを示している。さらに、津波後にマンガン濃度が継続的に高い状態に変化したことは、海岸構造物の破壊や地盤沈下によって陸上の土砂が海水中に流れ込みやすい環境に変化したことを示している。家屋などの倒壊によって、裸地が増加したことも、土砂流入増加の一因となったであろう。このような陸上からの土砂流入や堆積物のまきあがりに伴って、さまざまな物質が海水中に流れこんだため、沿岸域の物質循環は津波によって激しく変化し、その影響は40日程度継続したと推測された。
このような津波直後の環境変化に関するデータを観測によって得ることは現実的には困難である。実際、沿岸域の海洋観測施設は津波による損壊で使用不能であったし、津波直後の惨状では調査研究の余力は無く、大槌湾で初めて調査が実施されたのは津波による劇的な変化が収束した後と思われる5月中旬であった。貝がらを分析することで「過去にさかのぼって環境調査を実施できる」という本研究で示した手法は、海中の「フライトレコーダー」として、環境問題にも新たなモニタリング手法になると期待できる。
◆レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)
レーザーアブレーション装置によって、固体試料(本研究では貝がら)にレーザー光を照射し、微粒子化した後、ガスとともに誘導結合プラズマ質量分析装置に導入する。質量分析装置ではプラズマによってイオン化した元素を高感度で測定する。
晴れ~曇りの天気。風は穏やか。午前の畑作業は、”ズッキーニ”の受粉作業、”ミニカボチャ”の受粉作業、”ネギ”の植え替え準備。。
近所の塀に純白の小さい房状の花の塊りが見える。雪が積もった様に見える。”ニワナナカマド”の花だ。枝先に円錐花序(集合した花の姿が円錐状)を出し、白い小花が沢山付いている。花は梅の花に似て、花弁は5枚、花は小さく径数mm。
葉は奇数羽状複葉(左右に小葉が並び、先端に小葉がつく)で、”ナナカマド”に似た葉姿だ。名に”ナナカマド”とついているが、残念ながら”ナナカマド(バラ科ナナカマド属)”と違い秋の紅葉も赤い実もない。
別名には”チンシバイ(珍至梅、珍珠梅、珍朱梅)”とある。由来は判らない・・蕾が白玉の様だから、との説があるけど。
ニワナナカマド(庭七竈)
別名:チンシバイ(珍至梅、珍珠梅、珍朱梅)
学名:Sorbaria kirilowii
バラ科ホザキナナカマド属(ソルバリア属)
落葉低木
原産地は中国
開花時期は6月~7月
枝先に白い小花が沢山付く
蕾は白玉の様に美しい
1つの花は直径5~7mm位
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