大阪大学大学院医学系研究科の中森雅之特任講師(常勤)、望月秀樹教授(神経内科学)、産業科学研究所の中谷和彦教授らの研究グループは、根本的治療法のない神経難病であるハンチントン病の遺伝子異常を是正する低分子化合物を発見した。ハンチントン病は、遺伝子上のCAG3塩基の繰り返し配列(リピート)が異常に伸びることが原因の神経変性疾患である。リピートが長ければ長いほど重症となることが知られており、患者さんの神経細胞でも徐々にリピートが伸びて症状の進行につながる。こうしたリピートの伸長には、CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造が関与すると考えられていた。
中森特任講師らの研究グループは、中谷教授により創製された、CAGリピートが形成する特徴的なDNA構造に結合する核酸標的低分子化合物ナフチリジンアザキノロン(NA)に、異常に伸長したCAGリピートを短縮させる作用があることを見出した。従来の遺伝子治療はウイルスベクターなどにより正常な遺伝子を導入して異常遺伝子の機能を補う方法が一般的であるが、本研究成果により、ハンチントン病の原因となる伸長したCAGリピートを短縮して正常化するという究極の遺伝子治療への道がひらけた。またこの治療法はCAGリピートの伸長が原因である脊髄小脳失調症など他の神経疾患へも同じ原理で効果が期待される。 本研究成果は、国際科学誌「Nature Genetics」に、2月15日(土)午前1時(日本時間)に公開。
研究成果のポイント
〇根本的治療法のない神経難病であるハンチントン病の遺伝子異常を是正する低分子化合物を発見
〇ハンチントン病の原因となる、塩基繰り返し配列の異常伸長を短縮させる方法を世界で初めて報告
〇同じ塩基繰り返し配列の異常伸長が原因となる脊髄小脳失調症や筋強直性ジストロフィーへの応用も期待
〇核酸を標的とする低分子創薬は日本が世界に先行する分野であり、今後製薬企業も一体となった治療開発に期待
研究の背景
これまで、ハンチントン病や脊髄小脳失調症の一部は、CAGリピートの異常な伸長が原因で、これらのリピートはどんどん伸びて病状を悪化させる現象が知られていた。こうした疾患はいずれも神経難病で根本的治療法がなく、異常に伸びたリピートを短縮できるという発想すらなかった。
これまでに、大阪大学産業科学研究所の中谷教授らは、核酸標的低分子化合物ナフチリジンアザキノロン(NA)が、CAGリピートが形成する特徴的なDNA構造に結合することを明らかにしていた。
本研究の成果
研究グループでは、ハンチントン病などでCAGリピートが異常に伸長する際に、CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造をとることが関係していることに注目し、このDNA構造に結合する低分子化合物によってリピートを短縮できないかという仮説に基づき研究を進めてきた。CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造に強く結合する分子として、NAが、ハンチントン病モデル細胞、モデル動物でCAGリピートの短縮作用を示し、モデル動物での神経変性を抑制することを実証した。このようなCAGリピートの短縮誘導には、生体に備わるDNA修復を介したメカニズムが考えられており、核酸標的低分子をもちいてDNA修復機構を制御することで、究極の遺伝子治療が実現する可能性がある。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果により、これまで治療法がなかったハンチントン病や脊髄小脳失調症などの神経難病の根本的治療法開発への道がひらけた。リピートが異常に伸長しておこる病気には、他にも筋萎縮性側索硬化症や筋強直性ジストロフィーなどがあり、これらの原因となる異常伸長リピート全般を対象とした核酸標的低分子化合物創薬にも期待がもてる。
研究者のコメント
核酸を標的とする低分子創薬は日本が世界に先行する分野であり、今後製薬企業も一体となって神経難病などに対する治療開発が進むことを期待しています。
◆用語説明
〇ハンチントン病
ハンチンチン遺伝子のCAG3塩基繰り返し配列が異常に伸びておこる遺伝性の神経変性疾患で、舞踏運動などの不随意運動や精神症状、行動異常、認知障害などを呈す。現在のところ根本的な治療法は残念ながらない。
〇繰り返し配列(リピート)
遺伝子上には塩基の繰り返し配列がいたるところに存在している。これらのリピートが異常に伸長することがあり、なかには病気を引き起こすものがある。具体的にはCAGリピートが原因となるハンチントン病、脊髄小脳失調症の一部や、CTGリピートが原因となる筋強直性ジストロフィーやフックス角膜ジストロフィー、CGGリピートが原因となる脆弱性X症候群、GGGGCCリピートが原因となる筋萎縮性側索硬化症などがある。
〇CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造
CAG繰り返し配列が異常に伸長することにより、本来のDNA二本鎖構造ではなく、CAG同士がくっついてヘアピン上のslipped strand構造をとる。CAGとCAG同士で二本鎖をつくるが、A-Aの塩基でミスマッチ構造が生じ、このスペースにNAが結合すると考えられている。
〇ナフチリジンアザキノロン(NA)
グアニン(G)と水素結合する「ナフチリジン」と、アデニン(A)と水素結合する「アザキノロン」の2つの構造を繋いだ「人工設計分子」。当初はG-Aミスマッチ塩基対に結合する分子として設計・創製した分子で、後日、CAG繰り返し配列が形成するヘアピン構造中のC-G塩基対で挟まれたA-Aミスマッチに結合することを発見した。
〇脊髄小脳失調症
歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らないといった運動失調を症状とする神経の病気である。このなかで遺伝性のものがあり、塩基繰り返し配列の異常な伸長が原因のものには脊髄小脳失調症1型、2型、3型、6型、7型、8型、10型、17型、31型、36型や歯状核赤核淡蒼球萎縮症などが知られている。
今日の天気は晴れ。暫く雨が降らないので、畑で水やり。
4月の末日になった。長い長い1月だった、来月は良い月になります様に。
畑までの道、建物の小さなお庭で”アジュガ”の花が咲きだした。株から青紫色の小さな花(径1cm位)が幾重にも重なって付いた塔の様な花穂(かすい)が立ち上がり、この花穂が幾つも見える。花は特徴的な唇形で、上唇は2つに浅く裂け、下唇は大きく3つに裂け、真ん中の裂片が大きい。
キランソウ属は、シソ科の属の1つで、ラテン名のアジュガ(Ajuga)で呼ばれることも多い。世界の熱帯・温帯地域に約50種が分布している。主に、”アジュガ”の名で見かけるのは、アジュガ・レプタンス(Ajuga reptans)である。これを、和名で”セイヨウジュウニヒトエ(西洋十二単)”と呼んでいる。
因みに、「十二単(じゅうにひとえ)」とは平安時代の宮中の女官の正装である。花の名は、花が幾重にも重なって咲く様子を十二単に見立てた。
アジュガ
別名:西洋十二単(せいようじゅうにひとえ)、西洋金瘡小草(せいようきらんそう)
学名:Ajuga reptans
シソ科キランソウ属
原産地はヨーロッパ、中央アジア
開花時期は4月~5月
中森特任講師らの研究グループは、中谷教授により創製された、CAGリピートが形成する特徴的なDNA構造に結合する核酸標的低分子化合物ナフチリジンアザキノロン(NA)に、異常に伸長したCAGリピートを短縮させる作用があることを見出した。従来の遺伝子治療はウイルスベクターなどにより正常な遺伝子を導入して異常遺伝子の機能を補う方法が一般的であるが、本研究成果により、ハンチントン病の原因となる伸長したCAGリピートを短縮して正常化するという究極の遺伝子治療への道がひらけた。またこの治療法はCAGリピートの伸長が原因である脊髄小脳失調症など他の神経疾患へも同じ原理で効果が期待される。 本研究成果は、国際科学誌「Nature Genetics」に、2月15日(土)午前1時(日本時間)に公開。
研究成果のポイント
〇根本的治療法のない神経難病であるハンチントン病の遺伝子異常を是正する低分子化合物を発見
〇ハンチントン病の原因となる、塩基繰り返し配列の異常伸長を短縮させる方法を世界で初めて報告
〇同じ塩基繰り返し配列の異常伸長が原因となる脊髄小脳失調症や筋強直性ジストロフィーへの応用も期待
〇核酸を標的とする低分子創薬は日本が世界に先行する分野であり、今後製薬企業も一体となった治療開発に期待
研究の背景
これまで、ハンチントン病や脊髄小脳失調症の一部は、CAGリピートの異常な伸長が原因で、これらのリピートはどんどん伸びて病状を悪化させる現象が知られていた。こうした疾患はいずれも神経難病で根本的治療法がなく、異常に伸びたリピートを短縮できるという発想すらなかった。
これまでに、大阪大学産業科学研究所の中谷教授らは、核酸標的低分子化合物ナフチリジンアザキノロン(NA)が、CAGリピートが形成する特徴的なDNA構造に結合することを明らかにしていた。
本研究の成果
研究グループでは、ハンチントン病などでCAGリピートが異常に伸長する際に、CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造をとることが関係していることに注目し、このDNA構造に結合する低分子化合物によってリピートを短縮できないかという仮説に基づき研究を進めてきた。CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造に強く結合する分子として、NAが、ハンチントン病モデル細胞、モデル動物でCAGリピートの短縮作用を示し、モデル動物での神経変性を抑制することを実証した。このようなCAGリピートの短縮誘導には、生体に備わるDNA修復を介したメカニズムが考えられており、核酸標的低分子をもちいてDNA修復機構を制御することで、究極の遺伝子治療が実現する可能性がある。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果により、これまで治療法がなかったハンチントン病や脊髄小脳失調症などの神経難病の根本的治療法開発への道がひらけた。リピートが異常に伸長しておこる病気には、他にも筋萎縮性側索硬化症や筋強直性ジストロフィーなどがあり、これらの原因となる異常伸長リピート全般を対象とした核酸標的低分子化合物創薬にも期待がもてる。
研究者のコメント
核酸を標的とする低分子創薬は日本が世界に先行する分野であり、今後製薬企業も一体となって神経難病などに対する治療開発が進むことを期待しています。
◆用語説明
〇ハンチントン病
ハンチンチン遺伝子のCAG3塩基繰り返し配列が異常に伸びておこる遺伝性の神経変性疾患で、舞踏運動などの不随意運動や精神症状、行動異常、認知障害などを呈す。現在のところ根本的な治療法は残念ながらない。
〇繰り返し配列(リピート)
遺伝子上には塩基の繰り返し配列がいたるところに存在している。これらのリピートが異常に伸長することがあり、なかには病気を引き起こすものがある。具体的にはCAGリピートが原因となるハンチントン病、脊髄小脳失調症の一部や、CTGリピートが原因となる筋強直性ジストロフィーやフックス角膜ジストロフィー、CGGリピートが原因となる脆弱性X症候群、GGGGCCリピートが原因となる筋萎縮性側索硬化症などがある。
〇CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造
CAG繰り返し配列が異常に伸長することにより、本来のDNA二本鎖構造ではなく、CAG同士がくっついてヘアピン上のslipped strand構造をとる。CAGとCAG同士で二本鎖をつくるが、A-Aの塩基でミスマッチ構造が生じ、このスペースにNAが結合すると考えられている。
〇ナフチリジンアザキノロン(NA)
グアニン(G)と水素結合する「ナフチリジン」と、アデニン(A)と水素結合する「アザキノロン」の2つの構造を繋いだ「人工設計分子」。当初はG-Aミスマッチ塩基対に結合する分子として設計・創製した分子で、後日、CAG繰り返し配列が形成するヘアピン構造中のC-G塩基対で挟まれたA-Aミスマッチに結合することを発見した。
〇脊髄小脳失調症
歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らないといった運動失調を症状とする神経の病気である。このなかで遺伝性のものがあり、塩基繰り返し配列の異常な伸長が原因のものには脊髄小脳失調症1型、2型、3型、6型、7型、8型、10型、17型、31型、36型や歯状核赤核淡蒼球萎縮症などが知られている。
今日の天気は晴れ。暫く雨が降らないので、畑で水やり。
4月の末日になった。長い長い1月だった、来月は良い月になります様に。
畑までの道、建物の小さなお庭で”アジュガ”の花が咲きだした。株から青紫色の小さな花(径1cm位)が幾重にも重なって付いた塔の様な花穂(かすい)が立ち上がり、この花穂が幾つも見える。花は特徴的な唇形で、上唇は2つに浅く裂け、下唇は大きく3つに裂け、真ん中の裂片が大きい。
キランソウ属は、シソ科の属の1つで、ラテン名のアジュガ(Ajuga)で呼ばれることも多い。世界の熱帯・温帯地域に約50種が分布している。主に、”アジュガ”の名で見かけるのは、アジュガ・レプタンス(Ajuga reptans)である。これを、和名で”セイヨウジュウニヒトエ(西洋十二単)”と呼んでいる。
因みに、「十二単(じゅうにひとえ)」とは平安時代の宮中の女官の正装である。花の名は、花が幾重にも重なって咲く様子を十二単に見立てた。
アジュガ
別名:西洋十二単(せいようじゅうにひとえ)、西洋金瘡小草(せいようきらんそう)
学名:Ajuga reptans
シソ科キランソウ属
原産地はヨーロッパ、中央アジア
開花時期は4月~5月