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窒素原子が埋め込まれたナノチューブを分子性物質として化学合成した

2020-05-17 | 科学・技術
 東京大学大学院理学系研究科の磯部寛之教授(JST ERATO磯部縮退π集積プロジェクト研究総括)の研究グループは、周期的に窒素原子が埋め込まれたナノチューブ分子(窒素ドープ型ナノチューブ分子)の化学合成に世界で初めて成功した。昨年、独自に開発したばかりのナノチューブ分子の化学合成法に、窒素原子を埋め込む工夫を新たに凝らした結果である。窒素ドープ型炭素材料には、半導体利用などの応用研究において注目されている、本研究成果は、今後、こうした材料科学研究をより一層、加速させるものと期待される。本研究成果は、国際学術雑誌「Nature Communications」に2020年4月14日に掲載。
 ポイント
 〇窒素原子が埋め込まれたナノチューブを分子性物質として化学合成した。
 〇これまで制御不可能であった「窒素ドープ」を、組成・位置・構造などを完全に制御した上で実現した。
 〇謎に包まれていた、ナノチューブの電子的性質・化学的性質に対する「窒素ドープ」の効果を明確にした。窒素はナノチューブに電子を受け取りやすくさせる効果があり、ナノチューブをn型半導体になりやすくさせる。
 発表内容
 カーボンナノチューブやグラフェンなどのナノカーボンは、その発見以来、新材料として期待を集めている。ナノカーボンに、炭素以外の異種元素をドープ(埋め込み)すると、物性を大きく変えられることから、その開発が注目されている。なかでも、窒素ドープ型ナノカーボンの研究が盛んになっており、年間200報に迫る論文が発表されている。しかし、物理的な製造法を利用していることから、ナノカーボンに窒素原子の位置や数を制御しながら埋め込むことが不可能であったことが、新材料開発を阻むボトルネックとなってきた。
 今回、研究グループは、窒素原子を特定の位置に特定の数だけ埋め込んだナノチューブ分子の化学合成に成功した。

 2019年に独自に開発したナノチューブ分子化学合成法(2019年1月11日発表プレスリリース参照)に、新たに窒素原子を埋め込む工夫を凝らした。これまでベンゼンを用いてきた化学合成法に、新たにピリジンを活用した成果である。本法により、ナノチューブ分子の304個の構成主原子のうち、8個を窒素原子とすることができ、窒素原子の含有率を精確に2.6%とすることができた。これまで材料科学分野で検討されてきた窒素ドープナノカーボンの窒素含有率は2~5%の幅であった。本法で合成した窒素ドープナノチューブ分子は、その幅内に収まる窒素含有率を持っている。このことから、材料検討されてきた窒素ドープナノカーボンの電子的性質・化学的性質を正確に探るのに適した組成を持っていることになる。
 今回の研究では、また、最先端X線構造解析法により、窒素上の孤立電子対(ローン・ペア)の存在を明確にし、さらに理論計算によりその電子的寄与を明らかにした。
 その結果、窒素にはナノチューブに電子を注入させやすくする効果があることが見つかった。これまで窒素ドープナノチチューブは、p型半導体にもn型半導体にもなることが報告されていたが、その由来や制御法は明らかになっていなかった。今回の研究成果は、窒素が電子を受け取り易くすることで、n型半導体になりやすくさせることを明らかにしたものとなる。これらの新知見は、今後の窒素ドープナノカーボン材料の開発を加速することが期待される。
 ◆用語の説明
 〇カーボンナノチューブ(CNT)
 炭素原子だけで構成される直径が0.4~50 nmの一次元性のナノ炭素材料。その化学構造は、グラファイト層を丸めてつなぎ合わせたもので表され、層の数が1枚だけのものを単層CNTと呼び、複数のものを多層CNTと呼ぶ。

 天気は晴れ~曇り。最高気温は25℃・最低気温15℃と夏日になった。
 塀に絡まって満開に咲いている”ナニワイバラ”。花は径7~8cm位の5弁花、中心には黄色い雄しべが沢山。秋には実が赤橙色に熟す。実は生薬となり、金桜子(きんおうし)と言い、止瀉・縮尿などの薬効があると言う。
 名(ナニワイバラ:浪花茨・難波茨)の由来には諸説ある、中国(か台湾)から江戸時代に難波商人によって持ち込まれた・の説、難波商人でなく植木職人・の説、など。
 ナニワイバラ(浪花茨、難波茨)
 バラ科バラ属
 学名:Rosa laevigata
 蔓性植物、蔓には鋭い棘がある
 原産地は中国南部・台湾
 開花時期は5月~6月
 花は白花、径7~8cm位の5弁花、中心には黄色い雄しべが沢山
 秋には実が赤橙色に熟す


炭素二原子分子(C2)を常温常圧で化学合成することに成功

2020-05-16 | 科学・技術
 東京大学大学院薬学系研究科の宮本和範准教授、内山真伸教授(信州大学先鋭材料研究所教授(クロスアポイント)、理化学研究所 開拓研究本部 主任研究員(兼務)、JST CREST)らの共同研究グループは、発見から約一世紀経過した現在でも基本性質さえ謎に包まれたままであった炭素二原子分子(C2)を初めて化学合成することに成功し、その特異な化学結合(一重項ビラジカル性を有する四重結合性)を実験により明らかにした。さらに、本手法によって発生させたC2から炭素ナノ材料(C60、カーボンナノチューブ、グラフェン)が自然形成することを発見した。本成果は2020年5月1日(英国夏時間)、国際科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載。
 発表のポイント:
 〇高温・高エネルギーが必要不可欠と考えられてきたC2を常温常圧で初めて化学合成することに成功した。
 〇実験化学者と理論化学者間で論争となっていたC2の化学結合について、電荷シフト結合を含む4つの結合が存在することを初めて実証した。
 〇C2が常温常圧下において自然と重合し、炭素ナノ材料(フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン)が合成されることを発見した。
 研究の背景
 二原子炭素(C2)は炭素二つから構成される地球上において最も単純な炭素分子である。古くから、ろうそくの青い炎や宇宙空間に存在することが知られてきたが、発見から一世紀が過ぎようとする現在でもその基本的性質さえ多くの謎に包まれている。C2 は過酷な条件(たとえば、3500度以上にした炭素蒸気)でしか発生しないと考えられてきたため、高エネルギー状態での発生・調査がこれまで行われてきた。たとえば、黒鉛へのアーク放電やレーザー光照射などにより C2 を人工的に発生させることができますが、こうして発生させた C2 は、「二重結合(一重項ジカルベン)」か「三重結合(三重項ビラジカル)」として振舞うことが知られてきた。ところが、2012 年に、イスラエルのグループらは高精度量子化学計算を用いて、C2 が基底状態において“四重結合(一重項ビラジカル)性”をもつと提唱しました(Shaik et al. Nature
Chem. 2012, 4, 195.)。すなわち、実験化学者と理論化学者の見解は、真っ向から対立していた。
 研究の内容
 実験化学者と理論化学者の大きな乖離は、実験条件(高エネルギー状態)と理論条件(基底状態)の違いによるものではないかと考えた。そこで本研究では、室温(あるいはそれ以下)でのC2の発生法に取り組んだ。その結果、超原子価ヨウ素の“超”脱離能を活用した分子設計により、世界で初めて常温常圧において C2を化学合成することに成功した。さらに本研究グループは、常温常圧下に発生させた C2を各種捕捉実験などにより丁寧に性質を調べることで、「一重項ビラジカル(電荷シフト結合を含む四重結合性」を初めて実験的に証明した。この結果は、理論化学者の予測を見事に再現するもので、実験化学者との長年の論争に決着をつけるものである。
 C2 はこのビラジカル性により、空気中の酸素や不純物ですぐに捕捉・不活化されてしう。そこで、本研究グループは、不活性ガス(アルゴン)雰囲気下に無溶媒・常温常圧条件にてC2の発生を試みたところ煙を上げて黒色固体が生じることを見出した。黒色固体を詳細に調べたところ、固体のトルエン抽出液からは、C60に対応する分子イオンピークが MALDI-MSによって観測された。このとき C70 以上の高次フラーレンは検出されなかった。次に、トルエン不溶の黒色固体について、アモルファス炭素部分を酸化処理により除去した試料を ラマンスペクトルや HRTEM(high-resolution transmission electron microscope)を用いて精査したところ、「2次元グラフェンシートが密に詰まったグラファイト」および「カーボンナノチューブとカーボンナノホーン」が観測された。これらは C2 が常温常圧下、ナノカーボンの起源になり得ることを証明した初めての結果である。
 今後の展開
 フラーレン(C60 など)、カーボンナノチューブ、グラフェンなどナノサイズの炭素物質は「ナノカーボン」と呼ばれ、その特異な構造や機能からさまざまな分野で応用研究が進められている。しかし意外なことに、その発生機構や構造多形の起源に関しては多くの謎に包まれてきた。
 本研究で見出された C2 の常温常圧における簡便発生法は、C2 から炭素同素体への成長メカニズムの解明を含む、新しい基礎科学(化学結合論)および炭素材料科学を展開するための、強力な方法になることが期待される。得られたナノカーボンは、その構造や形態がいずれも特徴あるものばかりで、抵抗加熱法やアーク放電法、レーザー光照射などの高エネルギーを用いる従来法と比べて大きく異なっている。本法により実現した低温 C2 発生法は、ナノ炭素材料の“化学合成”に向けた革新的な一歩になると期待される。
 ◆用語説明
 〇ビラジカル
 ラジカルとは、不対電子(対を作っていない電子)を持ち、かつ電荷を持たない化学種。ビラジカルは同一分子内にラジカルを2 つ持つものを指す。
 〇一重項と三重項
 一重項とは、分子全体の総ての電子スピン(角運動量)の総和が 0 になっている状態を指す。
 三重項とは2つ以上の不対電子を含み、平行な電子スピンを2 つ持っている状態を指す。
 〇カーボンナノチューブ
 カーボンナノチューブは、ナノカーボンの一種でグラフェンシートを円筒状に丸めたものを指す。ナノメートルサイズの細線で、導電性・弾性・機械強度に優れ、電子材料としての理想的な特性を持つ。
 〇グラフェン
 グラフェンとは、炭素1原子の厚さのシート状物質を指す。蜂の巣状の六角形格子構造をとっており、この二次元ネットワークがZ軸方向に積層したものが、グラファイト(黒鉛)になる。
 〇アーク放電
 アーク放電とは、気体放電現象の一種であり、高温(太陽の表面を超え、1万度以上に達する)で強い光を発するのが特徴である。炭素やタングステンなどの電極を接触させ、電流を流している状態で電極を引き離すと電極間にアーク放電が起こる。
 〇カルベン
 カルベンとは、電荷を持たない2配位(結合手を2つ持つ)炭素化学種。その中で一重項カルベンは空軌道と孤立電子対を併せ持ち、一般に非常に反応活性な化学種である。
 〇超原子価
 典型元素化合物は通常、価電子(最外殻電子)を8個持っているが、超原子価(化合物)では、それを上回る9個以上の電子を持っている。
 〇電荷シフト結合
 通常、分子は共有結合とイオン結合によって形成されるが、電荷シフト結合はその中間のような結合様式を示す。具体的には、ラジカル同士は“強い”共有結合を作ろうと相互作用するが、さまざまな理由でそれが妨げられ弱い相互作用しかできない時に出現する“弱い”結合である。
 〇MALDI-MS
 MALDI とはマトリックス支援レーザー脱離イオン化法を指し、MALDI-MS はそれを利用した質量分析法である。分子量の大きな化合物を破壊することなく、直接検出する手法として生体分子や高分子の分析などに広く用いられている。
 〇Raman スペクトル
 Raman 分光法とは入射光と異なった波長をもつ光(ラマン散乱光)の性質を調べることにより、物質の分子構造や結晶構造などを知る手法で、Raman スペクトルはそれによって得られたスペクトルである。
 〇HRTEM(high-resolution transmission electron microscope)
 HRTEM とは、透過型電子顕微鏡(TEM)のうち、特に分解能の高い(HR)ものを指す。TEM とは、観察対象に電子線をあて、透過してきた電子線の強弱から、観察対象内の電子透過率の空間分布を観察するタイプの電子顕微鏡のことを指す。
 〇カーボンナノホーン
 カーボンナノホーンとは、ナノカーボンの一種で、グラフェンシートを円錐形に丸めたものを指す。燃料電池の電極材料やガス吸蔵材への実用化に最も近いナノカーボンとして注目されている。

 今日の天気は晴れ~曇り、朝は雲が多かった。
 駐車場と畑の堺に金網の塀が立っている。この塀に絡みつく様に、”ヒメウツギ(姫空木)”が満開に咲いている。小さな白い花が沢山咲いている。
 名(ヒメウツギ:姫空木)の由来は、”ウツギ(空木)”によく似て、花の大きさが少し小さいから。
 ヒメウツギ(姫空木)
 学名:Deutzia gracilis
 アジサイ科ウツギ属
 耐寒性落葉低木(樹高1.5m位)
 日本原産
 開花時期は4月~5月
 花はやや俯き勝ち、花色は白、花弁数は5枚
 雄しべ数は10本


鉄を含む汎用材料で鉄単体より20倍大きな磁気熱電効果が得られる

2020-05-15 | 科学・技術
 東京大学物性研究所の酒井明人助教、Taishi Chen特任研究員、肥後友也特任助教、東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻・物性研究所およびトランススケール量子科学国際連携研究機構の中辻知教授らの研究グループは、金沢大学の見波将博士後期課程大学院生(研究当時)、石井史之准教授(理化学研究所客員研究員)、東北大学大学院理学研究科物理学専攻の是常 隆准教授、東京大学大学院工学系研究科の有田亮太郎教授(理化学研究所 チームリーダー)、物性研究所・トランススケール量子科学国際連携研究機構の三輪真嗣准教授らの研究グループと協力して、鉄を含む汎用材料で鉄単体より20倍大きな磁気熱電効果(=異常ネルンスト効果)が得られることを発見した。本成果は2020年4月27日(英国夏時間)、「Nature」オンライン版に掲載。
 磁気熱電効果は従来の熱電変換と異なり、温度差と垂直方向に発電し、大面積化やフレキシブル化が容易で、高効率で発電が行えるという利点を持つ。本研究により、鉄にアルミやガリウムといった元素を添加することで、鉄単体の場合より20倍大きな磁気熱電効果が得られることを発見した。特に鉄やアルミは地球上の資源として豊富で、廉価な材料であり、このような汎用材料での巨大な磁気熱電効果の発見はその実用化に向けて大きなブレイクスルーとなる。また、同一面積・温度差あたりの発電量は従来技術を凌駕しており、薄膜型デバイスへの発展が期待される。
 本研究開発における材料探索には、まず、東北大学を中心として第一原理計算を用いた磁気熱電効果を自動的に計算するハイスループット計算手法を開発し、磁気熱電効果の理論値をデータベース化した。その中から、安価かつ工業的にも利用しやすい鉄系材料に着目して材料の作製と実験を行った。その結果、本材料の発見につながった。また、この材料の性能理解のため、金沢大学および理化学研究所で電子状態の詳細な解析が行われた。その結果、ノーダルウェブと呼ばれるトポロジカルなバンド構造に由来していることが明らかになり、今後の材料開発の指針が明らかとなった。
 本成果により磁気熱電効果を利用した熱電変換デバイスの開発が加速し、IoT機器の自立電源などに利用されることが期待される。
 ポイント
 〇鉄にアルミやガリウムを添加した材料で鉄単体より20倍の磁気熱電効果の増大を発見するとともに、薄膜でも性能を維持し、室温・ゼロ磁場で世界最高の磁気熱電効果を実現した。
 〇高速自動計算(ハイスループット計算)による材料探索や、ノーダルウェブと呼ばれるトポロジカルな電子構造の解明など、本研究の発見には数値計算が大きく貢献した。
 〇同一面積・温度差あたりの発電容量は従来型熱電技術を凌駕するほど大きく、薄膜型熱電デバイスへの発展が期待される。
 研究の背景
 既存の熱電技術に代わりうる革新的技術として、近年、磁性体の磁気熱電効果が注目されている。これまで多くの研究開発が行われてきた熱電変換はゼーベック効果という物理現象に基づくもので、温度差と同じ方向に起電力が発生する。そのため柱状の多数の素子を立体的に並べるモジュール構造であり、薄膜化・フレキシブル化や大面積化が難しいことや、多重の接合に起因する不可避な大幅な性能低下などの問題がある。
 一方、磁気熱電効果を利用した発電では温度差と磁化に垂直方向に起電力が発生する。発電方向は磁化の方向で制御できるため、大面積の薄膜かつ無接合のモジュール構造が実現可能である。加えて、性能を下げるペルチエ熱の発生が起きないため、効率的な発電が可能になると考えられている。このような特長を持つ磁気熱電効果は、IoT 機器に搭載する自立電源や省エネ社会の実現に資する革新的な熱電変換技術として期待されている。
 研究内容と成果
 本研究グループは、鉄にアルミニウムやガリウムを25%添加したFe3Al, Fe3Gaが、鉄単体に比べて10倍以上大きな磁気熱電効果を示すことを明らかにした。また100℃の高温から-100℃の低温まで高い性能を維持し、耐久性・耐熱性にも優れているためさまざまな場所・シーンで利用可能である。さらに、厚さ数十ナノメートルのFe3Al, Fe3Gaの薄膜作製にも成功した。薄膜でも性能を維持するだけでなく、ゼロ磁場でこれまでの報告値を全て凌ぐ世界最高の磁気熱電効果を示すことが分かった。さらに、同一面積・温度差当たりの発電量は従来技術を凌駕するほど大きく、薄膜型デバイスへの発展が期待される。
 本研究で発見された巨大な異常ネルンスト効果は、ノーダルウェブと呼ばれるトポロジカルなバンド構造に由来していることが明らかになった。異常ネルンスト効果の増大にはベリー曲率と状態密度を同時に大きくするバンドの存在が重要だということが知られていたが、本物質のバンド構造はまさにそのような条件を満たすものとなっていた。
 本研究の材料探索には、ハイスループット計算を用いた候補物質のスクリーニングを行った。これまでの第一原理計算によるハイスループットスクリーニングでは、エネルギーやバンドギャップといった比較的単純な物理量が主な対象であった。今回、磁気熱電効果を利用した新たな機能性材料の探索のため、異常ネルンスト効果という非常に計算が複雑な物理量を自動的に計算することに成功した。さらに、この手法を磁性体のデータベースに適用することにより、1400以上の材料の理論値を計算し、候補となる物質を抽出した。本手法は、さまざまな複雑な物理量の計算をハイスループット化することを可能にする技術である。実験的にも今回のスクリーニング手法が有効であることが確認されたため、今後、さまざまな対象への適用が期待される。
 今後の展望
 磁気熱電効果を用いた熱電モジュールや熱流センサーの開発を行う。Fe3Al,Fe3Ga は、結晶の乱れに強い性質を持ち、汎用材料を用いた廉価で応用性の高い材料であるため、実用化へ大きな飛躍が期待される。実用化の暁にはフレキシブル化・薄膜化や大面積化によりさまざまな場所で排熱を回収でき、環境の微量な熱を利用した電源としてIoT センサーや熱流センサーなどに活用されることが期待される。
 ◆用語解説
 〇従来型熱電技術(ゼーベック効果)と磁気熱電効果(異常ネルンスト効果)
 物質に温度差を加えると、電流の運び役となる電子(キャリア)が温度差に沿って移動するため、温度差と同じ方向に起電力が生じる(ゼーベック効果)。磁性体では磁化の存在のためキャリアの移動が曲げられ、磁化と熱流に垂直方向にも起電力を示す(異常ネルンスト効果)。
 〇第一原理計算
 第一原理計算は実験で得られた値を用いず、結晶構造のみから量子力学に基づいて物質の電子状態や物性を計算する手法である。物質の本質的な振る舞いを予言、解明するのに大変有効である。
 〇トポロジカルなバンド構造、ノーダルウェブ
 電子の持つ波数(運動量)により電子の状態を表したものをバンド構造という。トポロジカルなバンド構造とは2つのバンドが(偶然ではなく)何らかの対称性の存在により交差しているものを言う。そのような場合、対称性を破ることでしかバンド交差をほどくことができないため、「トポロジカルに守られている」とも言われる。点で接するものに、ワイル半金属やディラック半金属、線で交差するものにノーダルライン半金属などがある。
 「ノーダルウェブ」はノーダルラインが複数交わり、かつ平坦な形状をしている場合のことを指す。
 〇IoT 機器
 IoT(Internet of Things、モノのインターネット)を通じてやり取りをするセンサーやカメラなどの情報取得機器の総称。 〇ペルチエ熱、ペルチエ効果
 ゼーベック効果の逆効果であり、電流を流すと温度差が発生する現象。従来型熱電材料を電池として使うと、熱電材料自身に電流が流れるためこの効果が発生し、元の温度差を小さくするように働く。一方磁気熱電効果では温度差と電流方向が垂直であるためこの温度差減少機構が働ない。
 〇ベリー曲率
 波数空間で磁場と同様の数式で定義される物理量であるため仮想磁場ともよばれる。磁気熱電効果や異常ホール効果など横方向の応答の起源となる。
 〇状態密度
 電子が取りうる状態の数を表す。

 今日の天気は曇り~晴れ。お昼近くに、パラパラと小雨がパラついた。
 畑までの道沿いで、垣根を飾る様に小さな黄色の花が咲いている。満開の八重の”モッコウバラ(木香薔薇)”だ。”バラ”と言っても刺(とげ)のないバラである。
 ”モッコウバラ”と言うと、一般的にこの淡黄色の八重咲(ロサ・バンクシア・ルテア)を言うようだ。花姿には一重咲と八重咲があり、花色にも淡黄色と白色がある。黄色の八重には香りが少ないが、一重の黄花や白花に芳香がある。白花は黄花より少し遅れて咲き、花の数は少ない。
 因みに、この”モッコウバラ(木香茨)”は、秋篠宮家眞子内親王のお印である。お印(おしるし)とは、日本の皇族が身の回りの品などに用いる徽章・シンボルマークの事である。
 モッコウバラ(木香茨、木香薔薇)
 学名:Rosa banksiae f. lutea(黄色・八重)
 学名:Rosa banksiae f. alboplena(白・八重)
 バラ科バラ属(トゲがない)
 常緑つる性低木(丈は0.5m~7m)
 原産地は中国の西南部
  日本には江戸時代に渡来、観賞用として庭園に栽植
 開花時期は4月~5月
 花色は淡黄色と白色、一重・八重咲きがある
 花径は3cm位


機械学習で高性能な磁気冷凍材料を発見、水素液化の高効率化・低価格化に前進

2020-05-14 | 科学・技術
 物質・材料研究機構(NIMS)は、AI(人工知能)技術の1つである機械学習を用いることで、二ホウ化ホルミウム(HoB2)が水素液化に用いる高性能の磁気冷凍材料になり得ることを発見したと発表した(2020年5月12日)。本研究は、国立研究開発法人 物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の高野義彦グループリーダー、寺嶋健成主任研究員、カストロ・ペドロ大学院生からなる研究チームによって行われた。
 研究の背景
 現在の文明社会は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料によって 支えられている。しかし、化石燃料を 燃焼させると 、地球温暖化を起こす二酸化炭素が大量に発生する。このため、近年この地球温暖化は顕著になり、気候変動や海面上昇など世界的な社会問題となっている。京都議定書などにあるように、地球温暖化を防ぐために二酸化炭素の排出削減が強く求められている。そこで、二酸化炭素を一切出さないクリーンなエネルギー源として、水素が注目されている。水素はガスのままではかさばるため、貯蔵や輸送に適しない。そこで、液化天然ガス (LNG) のように水素も液化して体積を小さくし、貯蔵や輸送しやすい状態にする必要がある、LNGの液化温度は-162度である。しかし、水素の液化温度は-253度(約20K (ケルビン))と大変低く、気体の圧縮を利用して温度を下げる 一般的な気体冷凍装置では 、摩擦による熱の発生などが避けられず エネルギーロスが大きくなってしまう。そのため、気体冷凍方式による液化効率は25%程度と低く、 結果、液化水素の価格が高くなってしまうことが懸案となっていた。そこで、安価な液体水素を供給するために、気体・冷凍に替わる新たな水素液化の方法として期待されているのが、理論的には50%以上の効率が見込まれる磁気冷凍である。
 磁気冷凍とは、次のような原理で冷却する方法である。
 磁場の無い環境では磁性体はランダムな方向を向いている。
 磁性体に磁場を印加すると磁性体の磁気モーメントの向きがそろい、減少したエントロピーが発熱して外部に放熱する。
 次に反対に、磁性体が磁場中にあり磁気モーメントの向きがそろった状態から、磁場を取り除くと、磁性体の磁気モーメントの向きは ランダムになりエントロピーが増大する。この増大した エントロピー変化に相当するエネルギー分の温度が下が るので、水素などの吸熱 に使うことができる。
 この、行程を繰り返すことにより冷却する仕組みが磁気冷凍である。大きなエントロピー変化を示す磁性材料ほど吸熱量も大きくなるため、エントロピー変化は磁性材料がもつ冷凍能力の指標となる。
 磁性材料のエントロピー変化は、温度に強く依存し、材料が磁性体となる温度である磁気転移温度付近で大きな値を示す。 磁気冷凍装置の開発においては、水素液化温度付近で 磁気エントロピー変化の大きい磁気冷凍材料の発見が求められていた。
 研究内容と成果
 研究チームでは、機械学習を用いて高いエントロピー変化を示す磁性材料を探索した。その結果、二ホウ化ホルミウム(HoB2)が 水素の液化温度付近で世界最高性能を示す磁気冷凍材料として機能する可能性が高いことを発見した。
 本研究で見いだされた二ホウ化ホルミウム(HoB2)は、大きなエントロピー変化を示すだけでなく、動作温度域が広いことも特徴で、1つの材料で水素液化温度近くの広い温度域を冷却できることは水素の液化・貯蔵に適している。
 我々は、機械学習を行うために、約1,600個の磁気冷凍材料データを論文から集めた。磁気エントロピー変化が分かっている約1,600 個のデータのうち8割を用いて組成とエントロピー変化の関係を機械に学習させた。学習効果の妥当性を調べる目的で、残りの2割についてエントロピー変化の機械予想値と実験値との比較をした。機械予想と実際の値との比較で、直線に沿っ
て右上がりの分布を示すことは、機械予想の精度が高いことを示していた。
 次にこの学習を基に、エントロピー変化が未知の約800個の強磁性体について機械予想したところ、高い値を示す候補物質が34個見つかった。その候補物質の中から実際に物質を合成し、磁気冷凍性能を実験にて評価した結果、二ホウ化ホルミウム (HoB2)が水素液化温度付近において世界最高のエントロピー変化 Δ S=0.35(J/cm 3 K) を示すことを見いだした。驚いたことに機械予想で得られた二ホウ化ホルミウム(HoB2)のエントロピー変化 Δ S=0.14(J/cm 3 K) と比較して、2倍以上良い結果が得られた。この違いを機械学習にフィードバックすることにより、今後より正確な機械予想が可能になると思われる。さらに 、 二ホウ化ホルミウム(HoB2)が高いエントロピー変化を示すメカニズムを解明することにより、今後、新たな高性能磁気冷凍材料の発見が期待される。
 なお、本発見については、特許出願済み。
 今後の展開
 本研究には2つの成果がある。
 第1の成果は、機械学習が材料開発に有効に活用されたことである。機械学習を用いた新材料開発は、最近、精力的に行われているが、実際に材料を作り高性能な新しい材料を発見した例はまだ少ない。このたび、機械学習を用いて、高性能な磁気冷凍材料を発見できたことは、機械学習が有効に材料開発に活用された良い事例である。今後同様の手法を用いることで、例えば、エアコンや冷蔵庫に使えるような温度域などの、異なる温度域でより高性能な材料を発見する可能性があり、機械学習を使った材料開発はますます発展していくと思われる。
 第2の成果は、二ホウ化ホルミウム (HoB2)が 高性能な磁気冷凍材料として機能する可能性が高いことを発見できたことである。
 今後、この材料を用いた磁気冷凍装置が完成すれば、本未来社会創造事業が目指す磁気冷凍技術による革新的水素液化システムの開発を通して、水素の液化効率や液化量の向上や液体水素の価格の低減が期待さる。本発見は、水素社会の発展に大きく貢献するものであり、そして、二酸化炭素の削減、地球温暖化防止につながると考えられる。
 ◆用語解説
 〇磁気モーメント
 物質中の各原子が大きさと向きをもつ磁気の源。各原子の磁気モーメントの向きがそろうことで、物質全体が磁石としての性質を示す。
 〇エントロピー
 乱雑さを表す量。磁気エントロピーは物質内の磁気モーメントの向きがどれだけ乱れる/そろっているかを示し、磁気冷凍材料では磁場をかけて磁気モーメントの向きをそろえることでエントロピーが大きく減少する。
 〇機械学習
 データベースなどに由来する教師データを入力して解析を行い、そのデータから有用な規則、判断基準などを学習し、未知現象を予想する手法。
 〇1次転移/2次転移
 相転移の区別で、その前後でエントロピーの不連続な変化を示すものが1次転移、エントロピーが連続的に変化するものが2次転移。身近な現象の例として、氷を熱すると水に変化する現象が1次転移、鉄を熱すると磁石につかなくなる現象が2次転移として挙げられる。1次転移物質は転移温度付近で急峻なエントロピー変化を示す一方、2次転移物質はなだらかなエントロピー変化を示す傾向にある。
 〇ホルミウム (英: holmium)
 ホルミウムは原子番号67の元素。元素記号はHo。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。
 銀白色の金属で、常温・常圧での安定構造は六方最密充填構造 (HCP)。比重は8.80、融点は1461℃、沸点は2600℃(融点、沸点とも異なる実験値あり)。
 空気中で表面が酸化され、高温下で全体が燃えて酸化物になる。水にゆっくりと溶ける。酸に易溶。ハロゲンと反応する。 安定な原子価は3価。希土類金属で最大の磁気モーメントを持つ。

 今日の天気は晴れ。明日から下り坂の天気予報・・雨が降るかな。
 暑くなってきた、散歩も暑さ対策が必要となる・・日傘が良いかも。
 お庭の石の側での”タツナミソウ”の花。花は茎から基部で急に曲がって直立した筒状で、先が丸く膨らみ横向きとなっている。茎に幾つもの花穂を出し、同じ向の花を付ける。この様な花姿が波頭の文様を思わせる・・この様子が名の由来。
 タツナミソウの仲間には多くの種があり、分類が難しいとのこと。学者により見解が異なるので、学名なども違う・・と言われる。
 タツナミソウ(立浪草)
 別名:スクテラリア
 学名:Scutellaria indica
 シソ科タツナミソウ属
 多年草
 原産地は東アジア(北海道を除く日本列島を含む)
 開花時期は4月~6月
 花冠は筒部が長い2~4cmの唇形、基部で急に曲がり直立する
 上唇は兜状に丸く膨らみ、下唇は内側に紫色の斑点があり3裂している
 花色は紫が基本で、青紫・淡紅紫・ピンク、白もある


蚊が暗闇で飛べる、自らの羽ばたきでのかすかな気流で障害感知

2020-05-13 | ニュース
 千葉大の中田敏是助教と英王立獣医大などの研究チームは、「真っ暗な部屋の中でも蚊が自由に飛べるのはなぜか。未解明だったこんな疑問を千葉大などの国際研究チームが数値計算などで解き明かした。」5月8日、米科学誌サイエンスに発表した。
 コウモリが超音波をレーダーのように反射させているのと違い、自らの羽ばたきで起きる気流、反射した気流の乱れを触角で感じているという。
 研究チームは、高速度カメラによる蚊の3次元運動測定やシミュレーションなどから、体長約4mmの蚊の羽ばたきによって生じる気流を数値計算で詳細に再現。その結果、体長の10倍近い3~4cm離れた壁や床などの障害物にぶつかって生じる気流の乱れでも、触角の根元にある感覚器官(ジョンストン器官)で感知可能であることが分かった。
 この知見を基に、ドローンに気流の変動センサー機能を付けたところ、同様の仕組みで壁や床を検知できることも実証した。
 中田助教は「蚊は最も人を殺す生き物といわれるほど影響が大きいのに、分かっていないことが多い。薬品なしでも飛べない環境をつくるなど、防除や制御につなげていければ」と話している。

 天気は晴れ、午前に曇り~小雨があった。小雨はホンの少し、畑への慈雨にはとても足りない。
 畑までの沿いのお庭。咲き始めた藤の花と満開が少し過ぎた?”ハナズオウ”の花。枝の葉に先立って花芽を多数付けて咲いている。花には花柄がなく、枝から直接に花が付く。花は長さ1cmほどの蝶形花。花色は、お祝いごとの様に紅白、白花と紅花の木が隣り合わせで咲いている。実は長さ数cmの豆果で秋から冬に黒褐色に熟す。
 名(花蘇芳、はなずおう)の由来は、花弁の色が”スオウ(蘇芳:赤色染料とされた木)”で染めた色に似ているからと言う。因みに、”蘇芳”は古い時代から染料としてマメ科の低木の中国名で、材の芯や莢に赤色色素を含む。媒染剤によって、赤・赤紫・黒っぽい紫に発色する。この染料は、奈良時代に渡来している。
 ハナズオウ(花蘇芳)
 別名:蘇芳(すおう)
 学名:Cercis chinensis
 マメ科ハナズオウ属
 落葉低木(樹高2m~5m)
 原産地は中国、江戸時代初期(1695年ころ)に渡来と言う
 開花時期は4月~6月
 花色は紅紫色・白色
 枝を取り囲むように長さ1cm~2cm位の蝶型花を枝一杯につける
 花柄がないために、花が枝からいきなり出ているように見える
 花後に数cm~10cmの豆果が付き、秋から冬に黒褐色に熟す


中性の電解水、コロナを死滅

2020-05-11 | 生活
 連日「コロナ」の話題が多いね。
 新聞(日本経済新聞朝刊)に、「食塩水の電気分解で得られる中性の電解水が、コロナウイルスを効果的に死滅させる」との記事があった。参考に紹介。
 北里環境科学センターより
 食塩水の電気分解で得られる中性の電解水が、コロナウイルスを効果的に死滅させることを確かめた。この電解水は消毒用アルコールや塩素系消毒剤に比べ皮膚などへの刺激が少ないのが特徴。新型コロナウイルス感染症予防の手洗いや医療施設の屋内噴霧用などに使えるという。
 実験にはネコの腸などに感染するネココロナウイルスを使った。有効塩素濃度が30、50、100PPMの電解水にウイルスを30秒さらすと、ウイルスの感染力を示す値がいずれも検出限界以下に低下した。
 電解水はプラントメーカーの日本テクノが食塩水に振動を加えながら電気分解する独自技術で開発。食品添加物と化粧品の認可を受けており、スキンケア製品やプールの消毒用などに使われている。これまで確認されていたインフルエンザウイルスや食中毒原因菌への作用に加え、コロナウイルスへの効果を今回新たに確かめた。

 朝は雲が多い晴れ、午後から雲少ない晴れ。気温は高く、最高気温27℃・最低気温24℃とか・・初夏の気温だよ。
 近所のお庭で見つけた、”エニシダ”の花が咲きだした。
 細かい葉が密生した枝に総状花序を作り小さな花が沢山咲く。花の姿は、マメ科特有の蝶形の両翼花弁、花色は黄色(黄金色)だ。マメ科の植物だから、果実はさやえんどう似ており、熟すと黒褐色となる。枝葉の形は、ほうき形、なので西洋では”エニシダ”の枝で箒(ほうき)を作り、魔女の箒はこの枝での箒?と言われる。因みに、枝・葉にアルカロイドが含まれ、食べると中毒を起こす。
 エニシダ(金雀枝、金雀児)
 学名:Cytisus scoparius
 マメ科エニシダ属
 半耐寒性常緑低木
 原産地は地中海沿岸
 日本には中国から江戸時代初め(1670年頃)に渡来
 開花期は5月~6月
 花は小さな蝶の形で、黄金色(黄色)
 白花や赤花がある
  ホオベニエニシダ(頬紅金雀枝):黄色の下地に、赤い紅を塗った様な斑が入る
  シロバナエニシダ(白花金雀枝):白花種
  アカバナエニシダ(赤花金雀枝):赤花種
  ヒメエニシダ(姫金雀枝):小さな黄色い花


赤錆の光触媒作用によって太陽光・水から水素ガスを高効率に製造

2020-05-10 | 科学・技術
 神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授のグループは、赤錆の光触媒作用によって太陽光と水から水素を製造する際の効率を飛躍的に高める構造制御技術の開発に成功した。本研究成果は、令和2年4月30日(現地時間)にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開され、表紙デザイン(inside cover)にも採用された。
 立川准教授らは、安全・安価・安定で、可視光を幅広く吸収できるヘマタイト(赤錆)のメソ結晶(5nm程度の超微粒子の集合体)を透明電極基板に焼き付けるだけで、極めて高い導電性を有する光触媒電極を作製できることを見出した。この光触媒電極では、光照射によって生成した電子と正孔が速やかに分離すると同時に、粒子表面に正孔が高密度に集まることで水分解のボトルネックである水の酸化反応が高効率に進行することがわかった。
 今後は、開発した世界最高性能の光触媒電極をさらに高効率化するとともに、本技術を様々な材料や反応系に適用することで、太陽光水素製造や人工光合成の実用化を産学連携で進めていく。
 ポイント
 〇10ナノメートル未満の光触媒超微粒子を配向を揃えて集積、焼結することで、粒子内部に酸素空孔注5)を高密度に形成できる。
 〇酸素空孔の付与によって光触媒電極の導電性が向上するとともに、粒子表面に大きな電位勾配が生じ、電子と正孔の分離が促進される。
 〇同時に多数の正孔が粒子表面に移動し、水を高効率に酸化分解することで、ヘマタイト系電極で世界最高の光水分解性能を達成した。
 〇本技術は、太陽光水素製造をはじめ、幅広い用途に向けた光触媒の開発に応用できる。
 研究の内容
 メソ結晶技術光触媒反応における効率低下の主要因は、光照射によって生成した電子と正孔が基質分子(本研究では水)と反応する前に再結合してしまうことである。立川准教授らは、光触媒の超微粒子を配向を揃えて三次元構造化した「メソ結晶」をソルボサーマル法によって合成し、さらに、メソ結晶を透明電極基板に集積・焼結することで、導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した。
 光触媒性能と原理チタンを含むヘマタイトメソ結晶を透明電極基板上に塗布し、700℃で加熱することで、メソ結晶光触媒電極を作製した。メソ結晶表面に助触媒を付着させ、アルカリ水溶液中で擬似太陽光を照射したところ、1.23Vの電圧印加の下、5.5mAcm-2の光電流密度で水分解反応が進行することがわかった。これは、光吸収特性とコストの両面において理想的な光触媒材料のひとつであるヘマタイトにおける世界最高性能である。また、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極は、100時間に渡る繰り返し実験においても安定に動作することがわかった。
 高効率化の鍵は、メソ結晶を構成する微粒子のサイズである。5nmまで小さくし、粒子同士の接触面積を増やすことで、焼結する際に生成する酸素空孔の量を飛躍的に増やすことができる。それにより、電子密度が飛躍的に増加し、メソ結晶の導電性が大幅に向上する。
 電子密度の増大は、メソ結晶表面に大きなバンドの曲がりを形成する。それにより、初期の電荷分離が促進されるとともに、表面に正孔が集まりやすくなる。この効果は超微粒子からなるメソ結晶において最大化され、水分解のボトルネットとされる水の酸化反応が高効率に進行することがわかった。
 今後の展開
 今回、メソ結晶技術によって効率低下の主要因である再結合損失を大幅に低減することに加え、水の分解反応自体を飛躍的に促進できることがわかった。本技術は、ヘマタイトだけでなく、他の金属酸化物へも適用できると期待される。
 今後は、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極の更なる高効率化と太陽光水素製造システムへの導入を産学協働で進めると同時に、人工光合成を含む様々な反応系への応用展開を図っていく。
 ◆用語解説
 〇光触媒
 光を照射することにより触媒作用を示す物質。光触媒を基板上に塗布し、電極化したものを光触媒電極といい、光電極とも呼ばれる。本研究では、水を酸化分解し、酸素を生成する反応に光触媒を用いている。
 〇ヘマタイト(α-Fe2O3)
 酸化鉄のひとつ。ヘマタイトは安全・安価・安定(pH > 3)であるとともに、広域の可視光(約600nm以下)を吸収できる。太陽光エネルギー変換効率の理論上限値は約16%(光電流密度 13mAcm-2)である。
 〇メソ結晶
 ナノ粒子が規則正しく三次元的に配列した多孔性の構造体。数百ナノメートルからマイクロメートルのサイズで、ナノ粒子間の空隙に由来する2~50ナノメートルの細孔を有する。
 〇人工光合成
 光合成を人為的に行う技術のこと。太陽光を利用して、地球上に豊富にある水を分解して水素ガスやその他の有用化合物を作ることができる。
 〇酸素空孔
 結晶格子中の酸素が欠損し、生じた空孔。ヘマタイトでは、酸素空孔が生成すると電気的中性条件を満足させるためにFe3+がFe2+に還元される。
 〇光エネルギー変換効率
 入射する光子の数に対して、反応に利用された光子の割合。
 〇ソルボサーマル法
 高温、高圧の溶媒を用いて固体を合成する方法。
 〇助触媒
 光触媒と組み合わせることで触媒反応を促進する物質。本研究では、酸素生成を促進する助触媒として、リン酸コバルト(Co-Pi)を用いた。
 〇バンド
 半導体中の電子と正孔が取り得る幅のあるエネルギー準位で、伝導帯と価電子帯がある。伝導帯内の電子密度が増加すると、表面に向かって上向きの湾曲が生じる。
 〇フォトコンダクティブAFM
 原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて試料の電気的特性をナノスケールで分析する手法。本研究では405nmの波長のLED光を照射しながら個々のメソ結晶粒子上での電流測定を行った。

 今日の天気、午前は小雨~曇り、午後から晴れ・・雲がとても多い。気温は、最高気温20℃・最低気温14℃とか。
 畑の野菜も元気に成長している。もうじき収穫できそうなのが、春ダイコン・・径数cm程だ。
 ”絹さや”も花が咲きだしている。白花と赤花だ。
 エンドウのうち、サヤを食べるものを総称して”サヤエンドウ(莢豌豆、英:podded pea)”と呼び、”絹さや”のほか”スナップエンドウ””オランダエンドウ””砂糖エンドウ”などがある。”絹さや”は豆が大きくなる前のサヤを食べるのに適した品種である。絹さやを成長させてもスナップエンドウはできないし、スナップエンドウを早採りしても絹さやにはならない。
 サヤエンドウ(莢豌豆)
 英:podded pea
 マメ科エンドウ属
 開花・収穫時期は3月~5月頃
 原産地は中央アジア~中近東地域
 数千年前からあり、古代のエジプト・ローマ・ギリシャでも栽培されている
 日本には、インド・中国を経て8~10世紀頃に渡来したとされる
 サヤエンドウを食用するようになったのは江戸時代と言われる


ステロイドの副作用からこどもの骨を守る治療法開発に成功

2020-05-09 | 健康・病気
 北海道大学大学院医学研究院の髙畑雅彦准教授、同大学院歯学研究院の網塚憲生教授らの研究グループは、第一三共株式会社と共同で、同社が創生したシグレック15抗体が小児ステロイド性骨粗しょう症に対し、有効かつ安全な治療法となり得ることを世界で初めて証明した。本研究成果は2020年3月23日(月)公開のBONE誌にオンライン掲載。
 ポイント
 〇抗シグレック15療法がステロイドの副作用である骨粗しょう症の予防に有効であることを証明。
 〇抗シグレック15療法は骨成長を妨げずに骨量及び骨強度を増加させる。
 〇小児ステロイド性骨粗鬆症治療薬開発の進展に期待。
 骨粗しょう症は高齢者に多い病気だが、小児でも骨系統疾患(生まれつきの骨の病気)やネフローゼ症候群、小児がんなどの疾病やその治療に用いられる薬剤によって骨粗しょう症を発症することがある。
 最も頻度が高いのはステロイド薬による骨粗しょう症で、長期的に使用した場合やパルス療法を行なった場合は、脆弱性骨折を起こすこともまれではない。成人では、ステロイドを投与する場合、予防的に骨粗しょう症治療薬を併用投与することが推奨されている。しかし小児では、既存の骨粗しょう症治療薬の安全性が確立されておらず、ステロイドと併用できる骨粗しょう症治療薬がない。そのため、小児にも安全に使用できる新しいステロイド性骨粗しょう症治療薬の開発が必要とされている。
 骨粗しょう症の治療には破骨細胞の分化や働きを抑える骨吸収抑制薬が主に用いられるが、この薬剤を成長期の小児に使用した場合、骨の成長を妨げる可能性がある。これは、成人の骨が形を変えないままリモデリング(新陳代謝)で維持されるのに対し、成長期の骨はリモデリングに加えて、成長に伴う形態変化(モデリング)が必要なためだ。破骨細胞はこのモデリングにおいても重要な役割を担っている。実際に、遺伝的に破骨細胞ができない/機能しないマウスでは長幹骨に成長障害がみられ、こびと症を呈する。
 シグレック15抗体と既存骨粗しょう症薬、予防効果と骨成長への影響をラットで比較
 シグレック15 は主に破骨細胞の細胞膜に発現するシアル酸受容体ファミリータンパク質のひとつで、破骨細胞の最終分化を制御するI型膜タンパク質。シグレック15遺伝子を欠損するマウスは破骨細胞分化不全による大理石病様表現型を示すものの、成長障害はきたさない。これは成長帯付近にシグレック15の代償経路が存在するためだ。つまり、抗シグレック15分子標的療法は、骨の成長に悪影響を与えずに骨量を増加させる理想的な小児骨粗しょう症治療法といえる。そこで今回、研究グループは、成長期の小児ステロイド性骨粗しょう症に対するシグレック15 抗体と代表的な既存骨粗しょう症治療薬であるアレンドロネートの予防的治療効果と骨成長への影響を、ラットを用いて検討した。
 6週齢の成長期雌ラット背部にステロイド(プレドニゾロン)が徐々に溶け出すペレットを埋め込み、ステロイド性骨粗しょう症モデルを作成。このラットに、シグレック15 抗体、アレンドロネート、溶媒のみ(コントロール)をステロイド投与と同時期に6週間投与し、骨成長への影響と骨量・骨強度増加効果を比較検証した。骨成長への影響は、経時的な体長、大腿骨長の計測と成長帯の組織学的観察で評価した。骨量・骨強度増加効果は、X線マイクロCTを用いた骨量・骨微細構造解析、重エネルギーX線吸収測定法による骨密度測定、組織学的観察で評価した。
 抗シグレック15療法は骨成長を妨げず、骨量と骨強度を増加
 ステロイドを投与したラットは、健常ラットと比較して大腿骨の骨量と骨強度が低下するとともに体長及び大腿骨長の成長が鈍化した。ステロイドに加え溶媒のみを投与したラットと比較して、シグレック15抗体を投与したラットでは体長や大腿骨長に変化はなかったが、大腿骨の骨量、骨密度と骨強度が有意に改善した。アレンドロネートを投与したラットでは、骨量や骨密度が有意に改善したが、骨の形態異常や骨成長帯に異常が生じた。シグレック15抗体はアレンドロネートと比較して骨量増加効果や骨強度改善効果が優れていたが、これはアレンドロネート投与により骨形成がさらに低下したのに対し、シグレック15抗体投与では低下しないためと考えられた。つまり、骨成長に対する安全性だけでなく、骨粗しょう症治療効果においてもシグレック15抗体は既存の骨吸収抑制剤よりも優れる可能性が示された。
 研究グループは、「抗シグレック15療法は、小児ステロイド性骨粗しょう症に対して有効かつ安全に使用できる可能性が示された。小児がんや自己免疫疾患、ネフローゼ症候群などの病気に苦しむ子どもにステロイドを使う際の有効な予防法になると期待される」と、述べている。
 ◆用語解説
 〇破骨細胞
 骨の新陳代謝の過程において、古い骨を溶かして吸収する細胞。閉経や炎症、がんなどで過剰に数が増えると病的な骨吸収を引きおこし、骨粗しょう症や病的骨破壊の原因となる。
 〇シグレック15
 骨の吸収を担う破骨細胞の最終分化を制御するタンパク質(免疫グロブリン様受容体)。
 〇成長帯
 関節の近くの軟骨でできた部分。骨は、成長帯において伸びる。
 〇パミドロネート、アレンドロネート
 骨粗しょう症治療の第一選択薬であるビスフォスフォネート製剤。破骨細胞に取り込まれ、細胞の自死(アポトーシス)を誘導することで骨吸収を強力に抑制する。

 今日の天気は晴れ。日々、気温が上がり、今日の最高気温は、23℃とか。
 小さなお庭の隅で、”ゴウダソウ”の花が咲き始めている。・・まだ団扇の様な丸い莢の実は付いていない。
 名(ゴウダソウ)の由来は、1901年(明治34年)に東京美術学校教授の合田清氏がパリから種子を持ち帰ったのが始まりである。学名はルナリア(Lunaria annua)、属名の Lunaria はラテン語の「Luna(月)」からである。団扇(うちわ)の様な丸い莢(さや)の形から名づけられたものである。因みに、昨日紹介した”ヒメキンギョソウ(姫金魚草)”は、別名:リナリア(Linaria)。
 花後にできる莢がとてもユニークで、団扇の様な円形の平たい莢の中に数粒の種がある。最初は淡緑色だが段々と曇りガラスの様な透明感のある薄い膜となる。熟して種が出てしまっても薄い膜(隔膜)が株に残る。
 ゴウダソウ(合田草)
 別名:大判草(おおばんそう)、銀扇草(ぎんせんそう)、銀貨草(ぎんかそう)
    ルナリア(Lunaria)
 学名:Lunaria annua
 アブラナ科ルナリア属
 一年草
 原産地はヨーロッパ中央部
 開花時期は5月~6月
 花は径2cm位でアブラナ科特有の十字形の花びら
 花色は赤紫色、白色もある
 花後の種子は薄く半透明で団扇のような形の莢に入っている


ものづくり現場で中性子線を使った材料分析が可能に

2020-05-08 | 科学・技術
 日本原子力研究開発機構物質科学研究センターの徐平光研究副主幹、鈴木裕士グループリーダーおよび理化学研究所光量子工学研究センターの中性子ビーム技術開発チームの高村正人上級研究員、大竹淑恵チームリーダーらの共同研究グループは、原子力機構が開発してきた中性子回折法による集合組織測定技術と、理研が開発してきた理研小型加速器中性子源システムRANS(ランズ)を組み合わせることで、中性子回折法による実験室レベルでの集合組織測定技術の開発に世界で初めて成功した。本研究成果は、国際学術誌「Journal of applied crystallography」のオンライン公開版(3月26日(日本時間))に掲載。
 鉄鋼材料は一般的に高強度になるほど変形しにくくなるために、高強度と高い延性を両立した材料の開発が必要となっている。鉄鋼材料は複数の小さな結晶の粒(結晶粒)が集まってできた多結晶と呼ばれる状態にあり、これらの結晶粒はそれぞれ異なる方向を持っている。この結晶粒の方向は、圧延や加熱によって、ある程度揃った(偏った)状態になる。この結晶の向きの偏りは集合組織と呼ばれ、その偏りの仕方によって材料の強度や延性などの材料特性が変化する。そのため、延性を持たせた高強度な鉄鋼材料の開発には、その集合組織の状態を正しく把握して制御することが重要になる。鉄鋼材料のバルクに対して集合組織を測定するには、鋼材に対して透過性の高い中性子を用いる中性子回折法が有効である。しかし、その中性子源は研究用原子炉などの大型実験施設に限られ、企業の実験室や工場などでの利用が期待される小型中性子源では、ビーム強度が低くこれまで測定されてこなかった。
 発表のポイント
 〇自動車などの輸送機器の軽量化には、高強度と高い延性を両立した鉄鋼材料の開発が必要不可欠であるが、その実現には、鋼材の材料特性に影響する集合組織を定量的に把握することが重要。
 〇その集合組織を測定する技術として、中性子回折法は有効であるが、ものづくり現場でこれを実現する技術は存在しないため、現場で手軽に使える小型中性子源を用いた集合組織測定技術の開発が期待されている。
 〇この度、国立研究開発法人理化学研究所の開発する理研小型加速器中性子源システムRANSと、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が開発する中性子回折法による集合組織測定技術を組み合わせることで、ものづくり現場で実現できる中性子回折法による集合組織測定技術の開発に、世界で初めて成功した。
 〇小型加速器中性子源を利用した実験室レベルでの日常的な研究開発と、大型中性子実験施設を利用した先端研究開発を組み合わせた新たな研究開発サイクルの構築が、イノベーション創出を実現する革新的な材料開発や製品開発につながると期待される。
 研究の背景
 近年、地球温暖化対策として二酸化炭素(CO2)排出量の削減が求められており、自動車などの輸送機器は、その軽量化による燃費向上が急務となっている。軽量化のためには、部材として多く使われている鋼板の厚さを薄くすることが有効である。そのため、薄くても高い強度を維持できる高張力鋼板が注目されているが、一般的には鋼の強度が高くなるにつれて成形性は低下し、部品成形のためのプレス加工が難しくなる。これらのことから、強度と成形性を両立した材料の開発が重要な課題となっている。
 自動車部材として広く利用されている鉄鋼材料は、複数の小さな結晶の粒(結晶粒)が集まってできた多結晶と呼ばれる状態にあり、これらの結晶粒はそれぞれ異なる方向を向いている。材料製造の過程で圧延(ロールなどで薄く延ばす)したり、加熱したりすることで、結晶粒の向きがある程度揃った(偏った)状態になる。この結晶粒の向きの偏りは集合組織と呼ばれ、その偏りのしかたや強さによって強度や成形性などの材料特性が変わる。そのため、延性を持たせた高強度の鋼板の開発には、その集合組織の状態を正しく把握して制御することが重要である。
 集合組織の測定には、量子ビームによる回折測定が広く用いられている。しかし、一般的によく用いられるX線回折法や電子線後方散乱回折法では、鋼板のごく表面層の集合組織しか測定できない。したがって、これらの手法は、強度や加工性といったマクロな特性の評価には必ずしも適しているとは言えない。これに対して、透過能に優れた中性子回折法は、鉄鋼材料内部の結晶情報をバルク平均で得られる特徴を持つことから、集合組織を測定する上で有力な手段の一つである。しかし、現状では中性子回折測定が可能な中性子源は、研究用原子炉や大型加速器施設などの大型実験施設に限られ、これらは共用施設のため利用者が頻繁に測定する機会を得ることは困難である。一方、理研では、大学や企業の研究室、工場などの現場で手軽に使える中性子源として、「理研小型加速器中性子源RANS(ランズ)」を構築し、その利用技術の研究開発を進めてきた。
 大型実験施設と比べるとビーム強度の低い小型加速器中性子源では、中性子回折法による集合組織の測定は困難と考えられてきた。しかし、小型加速器中性子源によって鋼板の集合組織の測定が可能になれば、企業や大学などの研究室レベルの中性子利用により、新しい材料開発や鋼材の品質管理などの手法が大きく進歩すると期待できる。そこで共同研究グループは、原子力機構が開発してきた中性子回折法による集合組織測定技術と、理研が開発してきたRANSを組み合わせることで、中性子回折法による実験室レベルでの集合組織測定技術の実現を目指した。
 研究手法と成果
 RANSでは、飛行時間型中性子回折と呼ばれる回折手法を用いている。様々な波長をもった複数の中性子線が同時に発生して試料に向かう。波長の異なる中性子線はそれぞれ異なる速度を持つため、中性子が発生してから試料に当たり、検出器にたどり着くまでの時間を計測することで、異なる波長の中性子線を見分けることができる。中性子線が試料に当たると、その物質の結晶粒の向きによって、異なる方向に異なる波長、異なる強度の中性子線が跳ね返ってくるため、それらを解析することで、試料の集合組織を知ることができる。
 共同研究グループは、自動車用鉄鋼材料の一つであるIF鋼を使った一辺が15mmの立方体形状の試料(以下、「試料」という。)を用意した。回折計の構築では、遮蔽を効率的に配置することでバックグラウンドノイズを低減し、中性子ビームを有効利用することで、出力の小さい小型加速器中性子源でも複数の回折ピークを識別できるようにした。また、試料に入射中性子線を当てる角度を変えて実験を繰り返すために、試料を2つの軸で回転させる方式を取り入れた。一方、RANSに設置された100mm×600mmの面積を有する検出器の検出面領域を16個に分割することで、16の異なる方向の回折線を同時に捉えることを可能にした。これにより、試料を回転させる回数をできる限り少なくすることが可能となり、試料の全方位の回折パターンを5時間で測定することができた。そして、測定した弱い回折パターンを有効に活用するために、解析条件の最適化を行うことで、小型加速器中性子源により鉄鋼材料の集合組織を測定することに初めて成功した。今回の結果は、J-PARC MLFの工学材料回折装置「匠」で測定した結果とほぼ一致しており、小型加速器中性子源でも大型実験施設と同等の精度で集合組織測定が可能であることが示された。
 今後の期待
 今後、さらなる検出器の増設や中性子源の高度化によって、小型加速器中性子源による集合組織測定時間の短縮が見込まれる。これにより、大型実験施設と比べてビーム強度と分解能で劣る小型中性子源であっても、研究室や工場レベルでの日常的な利用が可能となり、鋼材開発といったものづくり現場に貢献することが期待できる。一方で、大型中性子実験施設との相補的利用は中性子を利用した材料工学研究の発展に不可欠であり、小型加速器中性子源を利用した実験室レベルでの日常的な研究開発と、大型中性子実験施設を利用した先端研究開発を組み合わせた新たな研究開発サイクルの構築が、イノベーション創出を実現する革新的な材料開発や製品開発につながると期待される。
 ◆用語解説
 〇理研小型中性子源システムRANS
 RANS(ランズ)は、RIKEN Accelerator-driven Compact Neutron Source の略称。
 理研が開発し、現在高度化を行っている普及型の小型中性子源システムで、中性子ビームが2013年1月に取り出された。J-PARCに代表される大型中性子源より手軽な装置として、企業の研究所や工場といったものづくり現場への普及を目指している。 また、小型な可搬型加速器中性子源として、橋梁などの大型構造物非破壊検査健全性診断システムを確立することも目指している。
 〇延性
 長く引き延ばされる性質のこと。
 〇バルク
 界面などが有している特異な性質とは異なり、物質本来の性質が現れる一定レベル(ここでは例えば1mm3程度)以上の体積を持つかたまり。
 〇中性子回折法
 中性子線の持つ波の性質を利用して、結晶の格子面間隔のような整列した原子間で回折を起こし、その間隔を測定する手法。回折の強度から結晶の向きや量を測ることができる。回折法では測定したい間隔(鋼材では0.05~0.3ナノメートル程度)に近い波長を持つ放射線を使用し、中性子線の他にもX線や電子線を用いた回折法が有名である。中性子線は鋼材に対して比較的透過性が高く、数ミリから数センチメートル程度の内部まで測定できる。
 〇J-PARC
 J-PARCは大強度陽子加速器施設(Japan Proton Accelerator Research Complex)の略。
 高エネルギー加速器研究機構と原子力機構が茨城県東海村で共同運営している大型研究施設で、素粒子物理学、原子核物理学、物性物理学、化学、材料科学、生物学などの学術的な研究から産業分野への応用研究まで、広範囲の分野での世界最先端の研究が行われている。J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)では、世界最高強度のミュオンおよび中性子線を用いた研究が行われており、国内のみならず世界中から研究者が集まっている。
 〇X線回折
 X線を用いた回折法。中性子線に比べると鋼材に対する透過性は低く、表面層の測定が可能である。
 〇電子線後方散乱回折法
 測定対象の物質に電子線を照射したときに試料表面から生じる後方散乱回折を解析することにより、結晶材料の微小領域の結晶構造などを調べる手法。
 〇IF鋼
 Interstitial Free鋼の略。
 炭素量が10ppm以下という極低炭素鋼の一つ。自動車用鋼板として利用される。
 〇工学材料回折装置「匠」
 J-PARCの MLFに設置された飛行時間型中性子回折装置。世界最高水準の高い分解能をもつ。実験しながら、その場で材料内部のひずみ分布や微細構造変化を詳細に測定できるため、工学材料研究の強力な手段になっている。

 天気は朝から晴れ。雲がほとんどない快晴。風も弱く、穏やかな日だ。
 道沿いの小さなお庭。”ヒメキンギョソウ”の花が咲いている。
 茎先に穂状の総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、ピンク・白・黄色の唇状の花が付く。上向きの花びら(上唇弁)が縦に大きく2つに裂け、それがウサギの耳の様に見える。
 名(ヒメキンギョソウ:姫金魚草)の由来は、少し小型で金魚草に似ているから。因みに、”キンギョソウ”とは同じ仲間ではない。”キンギョソウ”は、ゴマノハグサ科キンギョソウ属で、波打つような花弁が金魚の尾びれに似ている・・名の由来・・とか。
 ヒメキンギョソウ(姫金魚草)
 別名:紫海蘭(むらさきうんらん)
    リナリア(Linaria)
     Spurred snapdragon
 学名:Linaria-bipartita
 ゴマノハグサ科ウンラン属
 一年草
 原産地:地中海沿岸地方、日本には明治時代の末期に渡来
 開花時期は3月~7月


アルツハイマー原因物質の抑制、既存薬が効果

2020-05-07 | 医学
 福井大などの研究チームは、くも膜下出血や緑内障の治療に使われている「ROCK阻害薬」がアルツハイマー病の原因物質の蓄積を抑え、治療効果を持つ可能性があることを動物実験で確認したと発表した(4月1日)。
 認知症の大半を占めるアルツハイマー病は、脳の神経細胞の働きに必須の「タウたんぱく」が異常にリン酸化し、毒性の強い集合体(タウオリゴマー)を形成したり、さらに長い塊になったりして、神経細胞死を引き起こすことが主な原因とされる。
 福井大の浜野忠則准教授らは、これまでの研究で高脂血症の治療薬がタウたんぱくのリン酸化を抑えることを確認していたが、副作用などの課題もあり、その仕組みをさらに詳しく調べていた。研究チームは、リン酸化に関わる酵素「ROCK」に着目。認知症の半数以上を占めるアルツハイマー型認知症の原因となる脳内のタウたんぱくの異常を、くも膜下出血などの治療に使われている「ROCK阻害薬」が抑制することを発見した。「ROCK阻害薬」をアルツハイマー病のモデルマウスに投与したところ、タウオリゴマーが減少したことなどが分かった。
 浜野准教授は「早期の段階であれば、(アルツハイマー病の)進行を遅らせる機能が期待できるのではないか」と述べ、今後、ROCK阻害薬を用いた治験を進める考えを示した。
 ★認知症
 認知症とは、脳の認知機能障害(記憶障害・意識障害・判断力の低下等)が日常生活に支障となる疾患である。高齢者(65才以上)では4人に1人は「認知症」と「その予備軍」と言われるほどである。
 認知症は症候に対する呼び方で、種々の原疾患がある。最も多いのは、アルツハイマー病で認知症の5割~6割である(7割説もある)。アルツハイマー病はβアミロイド蛋白(蛋白質)が脳の神経細胞に蓄積し、神経細胞が破壊され、脳が萎縮して脳機能が低下する。現在の医学では、症状を一時的に軽減できても進行を止める事はまだ。

 朝から晴れ。風がとても強い。
 散歩道沿いのお庭で、背高い”ハナミズキ”が見え、お花が咲いている。お花は、白色と桃色だ。
 ”ハナミズキ”の花は中央にある黄緑色のツブツブで、白色や紅色の花弁(はなびら)に見えるのは、苞(ほう、つぼみを包む葉)である。咲き始めに花弁に見える苞が淡緑色なのは”葉”だからで、数日ほどで白色・紅色を帯びる。
 同じような花姿には”ヤマボウシ”があり、両者の区別は、”ヤマボウシ”は苞片の先端が尖っており、”ハナミズキ”のは先端が凹んでいる。
 ハナミズキ(花水木)
 別名:アメリカ山法師(やまぼうし)
  アメリカ原産で日本の近縁種のヤマボウシに似ているから
 学名:Cornus florida
 ミズキ科ミズキ属
 落葉高木
 北アメリカ原産
  日本での植栽は、1915年(大正4年)に米国ワシントン市へ桜(ソメイヨシノ)を1912年に贈った返礼として贈られたのが始まり
 開花時期は4月~5月
 花色(苞の色)は白・赤・ピンク
 中心にあるツブツブの花は小さく(径数mm程)、黄緑色の4弁花
 秋に複合果の赤い実を付ける
 実は球形、直径1~3センチ程で食用になる


花粉症治療に重要なシラカバ花粉アレルゲン「Bet v 1」の大量生産に成功

2020-05-06 | 園芸
 筑波大学生命環境系(つくば機能植物イノベーション研究センター)三浦謙治教授、医学医療系野口恵美子教授、国立大学法人福井大学医学部藤枝重治教授らの研究グループは、シラカバ花粉症を引き起こすアレルゲンBet v 1を大量に生産することに成功した(4月3日発表)。また、精製されたBet v 1は、シラカバ花粉症患者のIgE抗体に対し、これまでのアレルゲンと同様の結合をすることがわかった。研究成果は、「Frontiers in Plant Science」に掲載。
 シラカバ花粉症患者は欧米や北海道で多くみられ、世界で1億人以上が罹患していると推測されている。花粉症は、体外から侵入してくる花粉に存在するアレルゲンと、体内で作られるIgE抗体が結びつくことで、アレルギー症状が引き起こされる。シラカバにおける主要なアレルゲンは、Bet v 1である。
 花粉症の治療法として、「アレルゲン免疫療法」が注目されている。これは、アレルゲンを少量ずつ患者に投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状をやわらげる治療法で、長期にわたり症状を抑える可能性がある。この療法に用いられるアレルゲンの調製には、花粉からのエキスや、大腸菌などの異種タンパク質発現システムを用いた組換えアレルゲンが使用されている。しかし、花粉エキスを用いる場合は大量の花粉を用意する必要があること、バクテリア由来の組換えアレルゲンを用いる場合は植物特有のタンパク質修飾がなされないといった問題点があった。植物においてBet v 1を作出する研究開発も行われてきたが、収量が低い(0.2mg/g新鮮重)という課題が残っていた。
 研究グループはこれまでに、植物にて大量のタンパク質を生産することができる独自のシステムを開発している。同システムでは、ジェミニウイルスのDNA複製システムと2つのターミネーターをタンデムにつなげることで、植物におけるタンパク質の発現量を増大し、ベンサミアナタバコ1gあたり約4mgの緑色蛍光タンパク質(GFP)の蓄積に成功している。植物においてタンパク質を生産することから、植物特有のタンパク質修飾がなされることが期待される。研究グループは今回、同システムを用いてこれまでの問題点を克服し、患者IgEによって認識されるBet v 1の大量調製を試みた。
 研究では、シラカバ花粉アレルゲンBet v 1を発現できるようなベクター(遺伝子を導入するための核酸分子)を設計し、つくばシステムを用いて、ベンサミアナタバコにアグロインフィルトレーション(アグロバクテリウムの感染)により、Bet v 1を発現させた。
 その結果、アグロインフィルトレーション後5日目において、ベンサミアナタバコ1gあたり、約1.2mgのBet v 1が発現していた。これは、従来法に比べて6倍の発現量であり、大量のアレルゲン生産に成功した。ベンサミアナタバコ葉から可溶性タンパク質を抽出し、硫酸アンモニウムによる分画およびアフィニティカラムクロマトグラフィーによりBet v 1を精製したところ、ほぼ単一のバンドが得られ、LC-MS/MS(液体クロマトグラフィータンデム質量分析)解析により、精製品がBet v 1であることが確認できた。精製Bet v 1を詳細に調べてみると、わずかにバンドがシフトしており、このバンドシフトは、タンパク質の糖鎖修飾によるものであると示唆された。
 シラカバ花粉症患者を含むヒト血清を用いて、精製Bet v 1とIgE抗体との反応性を調べたところ、精製Bet v 1はシラカバ花粉症患者IgE抗体によって認識されることが明らかになった。つまり、同システムにより、シラカバ花粉症の免疫治療に利用可能な、より天然に近い組換えBet v 1を、これまでに報告のある中でも最高レベルの収量で作出することに成功した。
 今回の研究成果は、植物バイオテクノロジー分野の発展と花粉症治療の分野に貢献するものと期待される。
 研究グループは、「植物由来のBet v 1を大量に生産できる方法が構築できたことから、つくばシステムは、Bet v 1と同じPR10ファミリーに属するアレルゲンの生産にも応用できるものと期待される。PR10ファミリーは、果物を食べると口がかゆくなったり、口腔が腫脹したりする口腔アレルギーを引き起こすリンゴMal d 1、モモPrup1、ヘーゼルナッツCor a 1、ダイズ(豆乳)Gly m 4などの主要なアレルゲンだ。これらのアレルゲンの効率的な生産によって、口腔アレルギーに対するアレルゲン免疫療法への発展も期待できる」と、述べている。
 ◆用語説明
 〇ベンサミアナタバコ
 タバコ植物の仲間。病原菌からの感染予防のための植物免疫システムに欠陥があり、病原菌感染の実験やアグロインフィルトレーション法によく用いられている。2012年にアメリカのグループによりゲノムが解読された。
 〇アグロインフィルトレーション
 特定の遺伝子を組み込んだアグロバクテリウムを植物体に感染させ、当該タンパク質を発現させる技術。感染後、数日で目的のタンパク質を得ることができる。
 ◆アレルゲンBet v 1
 シラカバ花粉にアレルギーを有する患者は、免疫学的な交差反応性のため、リンゴやモモなどの果物や野菜を食べたときに、口腔や咽頭の過敏症をしばしば訴える。現在、こういった現象は時に随伴する全身症状とともに、口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)と呼ばれて注目されている。
 OAS はIgE を介するⅠ型アレルギーと考えられており、シラカバ花粉と食物の間の交差抗原としては、シラカバの主要抗原であるBet v 1 とプロフィリンであるBet v 2 が挙げられている。

 朝は小雨、直に止み、空は晴れ~曇り。
 近所の空き地で、ひとかたまりで繁殖している”カタバミ”や”アカカタバミ”、花が咲いている。”カタバミ”の葉が赤紫色のものを”アカカタバミ”と言う。
 ”カタバミ”は、酢漿草・傍食・片喰・片食などと書き、様々な由来から。
  噛むと酸っぱい味がする(葉に水溶性蓚酸(しゅうさん)塩・クエン酸・酒石酸を含むため)
  葉が食べられたように欠けているから
  片葉が3つだから(片葉三)
  葉が茎の上にだけ伸び、下には伸びないから
 ”アカカタバミ”のアカは花の色ではなく、葉の色が暗い赤紫色だから。
 アカカタバミ(赤片喰、赤酢漿草)
 英名:creeping red woodsorrel
 学名:Oxalis corniculata f. rubrifolia
 カタバミ科カタバミ属
 多年草
 カタバミより全体にやや小さく、赤紫色
 環境に対する耐性が高く、繁殖力旺盛
 開花時期は4月~10月
 花は径5mm~8mm程で、黄色の5弁花。花弁の付根付近に赤い斑が入る


外部からの支援なしで発光し続ける発光植物が開発される

2020-05-04 | 音楽
 新聞記事で、「外部要因なしで発光し続けるファンタジーな発光植物が開発される」とあった。
 国際的な研究チームは、光るキノコの遺伝子を植物に組み込むことで、植物を生涯にわたって発光させ続けることに成功した。研究内容の詳細はロシア科学アカデミーのタチアナ・ミティオウキナ氏らによってまとめられ、4月27日に学術雑誌「Nature Biotechnology」に掲載された。
 〇光る植物の発光メカニズム
 蛍とかと同じ生物発光。いわゆるルシフェリン・ルシフェラーゼ反応。
 ルシフェリンがルシフェラーゼの存在下で酸化されて3-ヒドロキシヒスピジンと二酸化炭素に分解され、この3-ヒドロキシヒスピジンのカルボニル基が電子的に励起された状態にあって、それが基底状態に戻る時に光が放出される。
 (発光の仕組みの図は記事からの引用)

 発光の仕組みは図のように、カフェイン酸(カフェインとは無関係)を材料として「ルシフェリン・ルシフェラーゼ」反応(蛍の光る仕組みと同じ)を起こす。この反応にかかわるのは4つの酵素。
 最初の2つがカフェイン酸をキノコ製のルシフェリンに変換し、3番目の酵素(ルシフェラーゼ)によって酸素がくべられ発光が起こる。そして4番目の酵素によって、発光後の燃えカスは再びカフェイン酸へとリサイクルされる。
 ここで、発光メカニズムの材料であるカフェイン酸は全ての植物に含まれている。カフェイン酸は植物の細胞壁の重要な材料でもあるからである。つまり、キノコの発光遺伝子があれば、全ての植物は潜在的に光る能力を秘めていることを意味する。
 さらに、リンゴやバナナが発するエチレンガスを吹きかけると、発光量が劇的に増加することが分かった。
 近年の研究によって、植物は化学物質を使って周囲の個体とコミュニケーションをとっていることが判明しており、化学物質と発光パターンの変化を調べることで、植物の会話を探れると考えられる。
 実験では主にタバコが使われていたが、今後はバラやペチュニア、ツルギキョウなどにも遺伝子組み換えを行っていく予定。試みが成功すれば、様々な種類の樹木や草花に発光遺伝子を組み込み、ファンタジーや映画に養生するような幻想的な光る森を作り出すこともできるかも・・。

 今日の天気は晴れ。気温も高く、最高気温24℃・最低気温15℃とか。風も穏やかで、初夏の様だ。
 塀越しで、”ユズリハ”の花が咲いている。”ユズリハ”は雌雄異株で、この木は雄株で雄花が付いている。萼片も花弁も無い小さな花だ。雄花の蕾は赤味を帯び、赤い雄蕊の葯が破れると花粉が出て、葯は紫褐色となる。秋に見る実は雌株(雌花)に付く。
 名(ユズリハ:譲葉)の由来は、春先~初夏に新葉が出ると古い葉が落葉する。子が成長してから親が譲ることに例え、世代の交代が絶えることなく続く「代をゆずる葉」から、縁起物として正月や祝い事の飾り物として使われる。因みに、実や枝葉には有毒成分(アルカロイド、強毒ではない)があり、食べない。
 ユズリハ(譲葉)
 別名:親子草(おやこぐさ)
 学名:Daphniphyllum macropodum
 ユズリハ科ユズリハ属(1科1属)
 雌雄異株
 常緑高木(樹高は5m~10m)
 原産地:中国、日本
 開花期は5月~6月
 雌花は2つに分かれた柱頭を持つ子房があり、その根元には緑色の退化した雄蕊
 結実期は10月~12月、果実の径は0.8cm~1.0cm位、始めは紅色・後に黒藍色に熟す


太陽光と海水と空気から常温・常圧下でアンモニアを合成

2020-05-03 | 科学・技術
 大阪大学太陽エネルギー化学研究センターの白石康浩准教授、平井隆之教授らの研究グループは、太陽光照射下、海水と窒素ガスを原料として、常温・常圧下において非常に高いアンモニア合成活性を示す光触媒技術を開発した。本研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版にて日本時間2020年4月3日(金)0時(米国時間4月2日(木))に公開された。
 アンモニアは化学肥料の原料として重要な化学物質であるほか、近年では、再生可能エネルギーの貯蔵・輸送を担うエネルギーキャリアとしても注目されている。従来のアンモニア合成は、非常に高い水素圧力と温度下で行われている。これに対して光触媒反応では、太陽光エネルギーにより水と窒素ガスからアンモニアを製造する(1/2N2 + 3/2H2O → NH3 + 3/4O2)ことが原理的には可能であり、省エネルギープロセスとして期待されている。しかし、通常の光触媒では、水の四電子酸化(2H2O → O2 + 4H+ + 4e-)と、N2の六電子還元(N2 + 6H+ + 6e- → 2NH3)を進めることは難しく、新しい反応技術の開発が求められていた。
 研究グループでは、ビスマスオキシ塩化物半導体に表面酸素欠陥を形成させたBiOCl-OVs光触媒を、海水などの塩化物イオン(Cl-)を含む水溶液に懸濁させ、窒素ガス流通下で太陽光を照射することにより、太陽エネルギー変換効率0.05%以上と、一般植物による天然光合成(~0.1%)に匹敵する効率でアンモニアを生成する光触媒技術を開発した。金属オキシ塩化物半導体は合成が容易であるため、今回の技術を応用することで、さらに高活性なアンモニア合成光触媒が創製できるほか、豊富な天然資源である海水を用いる人工光合成反応を創製できると期待できる。
 研究成果のポイント
 〇アンモニアは再生可能エネルギーのエネルギーキャリアとして有望視されているが、多量の水素ガスを原料とする高温・高圧プロセスで合成されており、常温・常圧下、安価な原料からアンモニアを合成する光触媒技術が期待されていた。
 〇本研究開発において、常温・常圧下、太陽光エネルギーを用いて、光触媒としては最高レベルのアンモニア合成性能を示す光触媒技術の開発に成功した。
 〇ビスマスオキシ塩化物半導体を“海水”に懸濁させて太陽光を照射する方法により、水を電子源として効率よく窒素ガスからアンモニアを合成する光触媒技術を開発した。
 〇海水を原料としてアンモニアを合成する小型アンモニア製造デバイスの実現が期待できる。
 研究の内容
 研究グループではこれまで、光触媒によるアンモニア合成に注目した技術開発を進めてきた。今回、ビスマスオキシ塩化物半導体に表面酸素欠陥を形成させたBiOCl-OVs光触媒を開発した。この粉末光触媒を、海水などの塩化物イオン(Cl-)を含む水溶液に懸濁させ、窒素ガス流通下で太陽光を照射することにより、極めて効率のよいアンモニア合成が可能となることを見出した。
 本触媒が紫外線を吸収することにより電子と正孔を生成する。触媒表面の酸素欠陥はN2の還元サイトとして働く(N2 + 6H+ + 6e- → 2NH3)。一方、正孔は、触媒層間のCl-を酸化してCl2を生成する(2Cl- → Cl2 + 2e-)。この反応は、水の酸化反応(2H2O → O2 + 4H+ + 4e-)よりも極めて進行しやすいため、光触媒反応が効率よく進む。生成したCl2は速やかに次亜塩素酸(HClO)となる(Cl2 + H2O - HClO + H+ + Cl-)。生成したHClOは紫外線を吸収することによりO2とCl-に分解される(HClO → 1/2O2 + H+ + Cl-)。これらの一連の反応により、結果的に水の電子がN2還元に使われ、水を電子源とするアンモニア合成が可能になる。正孔による酸化反応により触媒層間のCl-は失われるが、溶液中のCl-がそれを補填することにより構造を維持し、光触媒活性は保たれる。
 これらの、①正孔による層間Cl-の酸化、②生成したHClOの光分解、③Cl-の補填による触媒構造の維持、により安定的にアンモニアが生成する。本反応では、海水を反応溶液に用いた場合にも太陽エネルギー変換効率0.05%以上と、一般植物による天然光合成(~0.1%)に匹敵する効率でアンモニアが生成する。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換は古くから研究されているが、水の酸化は極めて進行しにくい反応であり、高効率変換の妨げになっていた。本研究で開発した、①正孔によるオキシ塩化物層間Cl-の酸化、②生成したHClOの光分解、③Cl-の補填による触媒構造の維持、を組み合わせる反応技術を用いれば、水の酸化を促進することが可能である。オキシ塩化物は合成が容易であり、化学的に安定であるため、多くのオキシ塩化物半導体が合成されつつある。そのため、今回の技術を応用することで、さらに高活性なアンモニア合成触媒が創製できるほか、豊富な天然資源である海水を用いる人工光合成反応を創製できると期待できる。
 ◆用語説明
 〇エネルギーキャリア
 エネルギーの輸送・貯蔵のための化学物質。特に、アンモニアや有機ハイドライド、ギ酸、H2O2など、海外など再生可能エネルギーが豊富な地域で得た電気エネルギーを化学的に変換して消費地まで貯蔵・輸送するのに用いられる化学物質を指す。
 〇光触媒
 光を吸収することにより生ずる正孔と電子により、それぞれ酸化・還元作用を示す物質。代表的な光触媒として、二酸化チタン(TiO2)が知られている。
 〇太陽エネルギー変換効率
 太陽光または疑似太陽光により照射した光エネルギーのうち、化学エネルギーに変換された割合。

 今日は5月3日、憲法記念日。日本の国民の祝日の一つ。国民の祝日に関する法律(祝日法、昭和23年7月20日法律第178号)では「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」ことを趣旨としている。なお、日本国憲法の公布日である11月3日は、文化の日となっている。法案を審議した参議院文化委員会の委員長を務めた山本勇造議員(作家の山本有三)は、「この日は、憲法において、如何なる國もまだやつたことのない戰爭放棄ということを宣言した重大な日でありまして、日本としては、この日は忘れ難い日なので、是非ともこの日は残したい。そうして戰爭放棄をしたということは、全く軍國主義でなくなり、又本当に平和を愛する建前から、あの宣言をしておるのでありますから、この日をそういう意味で、「自由と平和を愛し、文化をすすめる。」、そういう「文化の日」ということに我々は決めたわけなのです。」と説明している。(出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」より)
 先日(4月26日)に、”ギョイコウ(御衣黄)”の開花をお知らせした。あれから1週間、そろそろお花も終わりかな。
 ”ギョイコウ(御衣黄)”の花は花弁数が十数枚(10~15位)の八重咲き。花色の初めは白~淡緑色で、中心に紅色の条線が見える。これが、次第に中心部から赤みが増し(紅変)、散る頃にはかなり赤くなる・・写真を見比べて。花の大きさは数cmであるが、場所・時期により大きさや色合いなどに大きな差があると言う。
 ギョイコウ(御衣黄)
 学名:Prunus lannesiana cv. Gioiko
 バラ科サクラ属
  オオシマザクラ系のサトザクラ
 落葉高木
 開花時期は4月下旬
 花色の初めは白~淡緑色、中心に紅色の条線が見える。これが、次第に中心部から赤みが増し(紅変)、散る頃にはかなり赤くなる。


世界初の中波長紫外線(UV-B)領域の半導体レーザを発明

2020-05-02 | 科学・技術
 名城大学の赤﨑勇終身教授の研究グループの岩谷素顕准教授らは、三重大学、旭化成株式会社の共同研究により世界初の中波長紫外線(UV-B波長領域)半導体レーザを発明した。本研究成果は、2020年2月17日(英国時間)に英国物理学会(The Institute of Physics)発行の科学誌「Applied Physics Express」で掲載。
 レーザ光はLEDや太陽光など自然界に存在する光とは異なり波長・位相が制御された究極的な光源であり、医療・工業・家電・情報通信・計測・フォトニクスなどさまざまな新しい産業・学問分野が創造されている。レーザ光を生み出す装置のうち、半導体レーザは小型・高効率・低消費電力など優れた性能を有していることから、レーザ光の社会実装に大きく貢献している。これまで赤外線・赤色・緑色・青色レーザが実用化され社会実装されており、より波長が短くエネルギーの大きな紫外線(UV)領域のレーザの実現が強く望まれていた。
 紫外線は長波長紫外線(UV-A:光の波長が380~320nm)、中波長紫外線(UV-B:320~280nm)、短波長紫外線(UV-C:280nm以下)の3種類に分類される。既に、名城大学や浜松ホトニクス㈱などのグループから長波長紫外線領域の半導体レーザが、旭化成㈱および名古屋大学のグループから短波長紫外線領域の半導体レーザの実現が報告されていた。本成果により、紫外線領域全域にわたって半導体レーザが実現できることが実証された。
 中波長紫外線領域の半導体レーザが実現できない理由はその領域の高品質な結晶が得られないことに起因していた。本グループでは、赤﨑勇終身教授が青色LEDの発明でノーベル賞を受賞した窒化物半導体を用いた。基板にはサファイア基板を用い、三重大学の三宅秀人教授が開発した高品質な窒化アルミニウム(AlN)テンプレート上に、赤﨑方式によって高品質かつ格子緩和した窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を開発した。これは長波長紫外線や短波長紫外線領域のレーザとは異なる方法であり、本グループ独自の手法である。さらに絶縁体に相当する同材料の大電流密度動作を達成し、未踏領域の半導体レーザを発明した。
 紫外レーザは、医療・バイオサイエンス・化学・殺菌・工業用途など多くの分野での応用が期待できる。特に中波長紫外線は生体に対しての影響が大きいため、DNAシーケンサーや皮膚治療など他の波長域ではできないような新しい応用が期待できる。また、既存のガスレーザや固体レーザの紫外領域の市場が1,000億円/年以上あるとされていることから、優れた特性を持つ半導体レーザでそれが実現できることから従来の市場価値に加えてイノベーションの創出が期待できる。
 研究の内容
 中波長紫外線領域のレーザを実現するためにはバンドギャップエネルギーが3.8~4.4eVの半導体材料が必要であり、特に高品質な結晶が必要という課題がある。これまで青色よりも短波長な半導体レーザは、2014年にノーベル物理学賞を受賞した「青色LED」材料である窒化物半導体が用いられてきた。しかしながら、このバンドギャップエネルギーを用いた窒化物半導体は適切な基板がないため、高品質な結晶が得られないという課題があった。また、半導体レーザを実現するためには、数kA/㎝2(キロアンペア毎平方センチメートル)以上という大電流動作を実現させる必要がある。しかしながら、従来の電子物性工学ではバンドギャップエネルギーが3eVを超える材料は絶縁性が高く、大電流注入が極めて困難であるという課題があった。本グループでは、これらの課題に対して以下の2つのアプローチを適用することによって問題を解決した。
 まず三重大学の三宅秀人教授の研究グループが開発した手法であるサファイア基板上に、スパッタ法で作製したAlNテンプレート上に3次元成長を用いることによってバンドギャップが3.8~4.4eVの高品質AlGaNを実現した。この方法は、高輝度青色LEDの発明で用いられているサファイア基板上へのGaNの作製法を踏襲することによって得られた。AlNとこのバンドギャップエネルギーを持つAlGaNの間には1%以上の大きな格子不整合が存在する。従来の結晶工学では1%を超える格子不整合を持つと高品質な結晶が得られない。しかし青色LEDの発明時にそれを打ち破るために低温バッファ層を用いた手法(赤﨑方式)が発明された。その際に効果を発揮したのが3次元成長である。3次元成長させることによって、成長層上部に高品質なGaNを得ることができ、それが青色LEDの発明に直結した。本研究グループでは、スパッタ法で作製したAlN上にAlGaNを成長させることによって3次元成長させることが可能であり、それによって高品質なAlGaNを得ることが可能であることを見いだした。
 次に電流注入による手法においては、分極ドーピング法を適用した。従来の半導体では不純物を添加することによって自由電子と自由正孔を形成し、電流注入する方法が広く用いられてきた。しかしながら、ワイドギャップ半導体であるAlGaN材料では、この方法ではレーザ発振レベルの大電流注入は実現できなかった。これは、従来の電子物性工学ではバンドギャップエネルギーが3eVを超える材料は絶縁体(電流を流すことができない)とされていたが、紫外領域の半導体レーザを実現するためには、バンドギャップエネルギーは5eVを超える材料を用いることが必須であることに起因している。本グループでは、米国ノートルダム大のグループが提案した分極ドーピング法をAlGaN材料に適用することによってレーザ発振が可能なレベルの電流注入を実現した。ノートルダム大のグループは分極ドーピングを青色発光素子に適用したが、本グループでは紫外発光素子に対して有用であると考え研究を進めてきた。その結果、2019年5月にApplied Physics Letters(https://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.5095149)にレーザ発振レベルの大電流注入を実現できることを報告しました。
 これらの手法を適用することによって、298nm波長の電流注入による中波長紫外線領域のレーザを発明した。
 作製した試料の構造
 試料は上述のような方法で作製した高品質AlGaN上に一般的な半導体レーザで用いられている分離閉じ込めヘテロ構造によってデバイスを試作した。デバイスプロセスを行い室温パルス下で電流を注入することによって評価をおこなった。その結果、電流-光出力特性に明確な閾値が確認できたこと、自然放出スペクトルからレーザ発振特有の急峻な半値幅が極めて細いスペクトルが得られていること、明確な偏光特性が現れていることからレーザ発振に到達していることを確認し、本サンプルはレーザ発振に到達していると結論づけた。
 今後の展開
 紫外領域の光はさまざまな化学結合を切断したり融合したりすることが可能であることから、紫外線硬化および紫外線接着・乾燥(UV キュアリング)、アトピー治療などの医療分野、DNAシーケンスなど多くの応用分野がある。これまで、この波長域のレーザはガスレーザや固体レーザの高調波などが用いられてきており、応用分野の発展の足かせになっていた。半導体レーザは小型・高効率・長寿命など優れた特性があること、またAlGaNのAl組成を変えることによって中波長紫外線領域の全ての波長域のレーザ光を実現できることなどから、今後さまざまな光応用が広がることが期待される。これらによって、光科学分野のさらなる発展が期待され、この分野において日本がイニシアティブを取っていけることが期待できる。
 ◆用語解説
 〇波長・位相
 物理学で、波動などの周期運動の過程で、空間を伝わる波の周期的な長さを表すのが波長、どの点にあるかを示す変数を位相と表す。光は電磁波と呼ばれる波動で表されることが知られており、半導体レーザは波長だけでなく周期運動の過程でどの点にあるか示す変数も揃っていることが特長である。
 〇バンドギャップエネルギー
 バンド間遷移の際に吸収・放出されるエネルギーのことである。
 〇スパッタ法
 薄膜を生成する手法の1つで、アルゴンガス粒子をターゲット(薄膜にしたい物質)に衝突させ、その衝撃ではじき飛ばされたターゲット成分を基板上付着させて薄膜を作る方法のことである。
 〇分極ドーピング法
 一般的に半導体結晶は、原子を形成することによって中性な性質を有している。しかしながら窒化物半導体は対称性が低いことから大きな分極電荷を有している。この分極電荷を活用することによって電気伝導する電荷担体を発生させるという方法が分極ドーピング法であり、従来の半導体工学では用いられていない方法である。
 〇分離閉じ込めヘテロ構造
 半導体レーザにおいては、電荷担体と光を活性層内部で閉じ込める必要があるため、ヘテロ構造と呼ばれる異種材料を組み合わせる方法が用いられる。しかしながら電荷担体と光を閉じ込める最適な膜厚が異なることから、本構造を適用することによって高い光出力と光変換効率を実現できる。

 今日の天気は晴れ~曇り。風は穏やか。気温はいきなり高く、最高気温29℃・最低気温14℃とか。体調が変化について行けない?!。
 塀際に”シロヤマブキ”の花が咲いている。黒い実もまだ付いている。
 ”シロヤマブキ”は白花の”ヤマブキ”ではない、同科異属である。”シロヤマブキ”はバラ科シロヤマブキ属であり、”ヤマブキ(山吹)”はバラ科ヤマブキ属(本種のみの一属一種)である。”ヤマブキ”の花色は黄色(山吹色)で5弁花。”シロヤマブキ”は白色で4弁花。葉の付き方は、”シロヤマブキ”は対生、”ヤマブキ”は互生である。
 ”シロヤマブキ(白山吹)”の名は、花の様子が”ヤマブキ(山吹)”似の白花から付けられた。因みに、実がなるのは”ヤマブキ”も”シロヤマブキ”も花が一重(ひとえ)だけ。
 シロヤマブキ(白山吹)
 学名:Rhodotypos scandens
 バラ科シロヤマブキ属
 落葉低木
 開花時期は4月~5月
 花は花弁4枚(径3cm~5cm)で白色
 果実は痩果で、1花に光沢がある黒色の実が4個付く
 4個の実は熟すと黒色となる


50℃で水素と窒素からアンモニアを合成する新触媒を開発

2020-05-01 | 科学・技術
 東京工業大学科学技術創成研究院の原亨和教授、元素戦略研究センター長の細野秀雄栄誉教授らは、50℃未満の温度で水素と窒素からアンモニアを合成する新触媒の開発に成功した。この触媒は豊富なカルシウムに水素とフッ素が結合した物質「水素化フッ素化カルシウム(CaFH)」とルテニウム(Ru)ナノ粒子の複合材料「Ru/CaFH」で、室温で水素と窒素からアンモニアを合成できる。
 原教授らはCaFHが低い温度で電子を与える力が強いことに着目し、その学理を低温でアンモニアを合成する触媒の開発に繋げた。アンモニア生産の大幅な効率化だけでなく、自然エネルギーを使った温室効果ガスのCO2排出ゼロにつながることが期待される。
 アンモニアは肥料として世界人口の70%の命を支える人類に必須の化学物質で、水素と空気中の窒素から触媒を介して生産する。しかし原料の水素はメタンなどの化石資源から作られるため、CO2排出は総排出量の3%を越えている。水から水素を作ればCO2排出問題は解決するかのようにみえるが、従来の触媒で水素と窒素からアンモニアを合成するには400 ℃近くの高温が不可欠。従来のアンモニア生産を自然エネルギー発電と繋げても発電量の大半はアンモニア生産に費やされ、十分な水素を作れない。水素と窒素からのアンモニア合成の温度を大幅に下げる触媒の開発はCO2排出ゼロのアンモニア生産への道を開く成果である。
 本研究成果はネイチャーコミュニケーションズ(nature communications)オンライン速報版に4月24日に掲載。
 要点
 〇50℃未満で水素と窒素からアンモニアを合成できる触媒の開発に初めて成功
 〇今回、開発した触媒は既存の触媒を凌駕する性能で、CO2排出ゼロを実現
 〇開発した触媒によって自然エネルギーからのアンモニア生産へ道が開かれた
 背景
 アンモニア(NH3)は触媒を介して水素(H2)と空気中の窒素(N2)から生産される化学物質であり、肥料として人口の70%の生命を支えている。人類が最も多く生産する化学物質で、年間1億7千万トンに達する。このように、人類にとって重要なアンモニアだが、地球温暖化とともにその生産が大きな問題となっている。
 それは、どこから水素を得るかということである。現在、アンモニアの原料となる水素は天然ガス、石炭、石油といった化石資源を燃やして生産している。その結果、膨大な量のCO2が排出され、総排出量の3%を越えている。人口が増え続ける限り、化石資源が枯渇するまで、アンモニア生産に伴うCO2排出は増え続けることになる。
 人類社会を支えるアンモニア生産と問題
 CO2の排出なしに、アンモニアを生産する方法として、自然エネルギー発電の利用が考えられてきた。風力や太陽光発電によって水を電気分解すれば、CO2排出なしにクリーンな水素を得られる。この水素を原料にすればCO2排出なしに、そして化石資源の枯渇に怯えることなく、人類はアンモニアを手に入れることができる。
 しかし、この手法には大きな問題がある。それは水素と窒素からアンモニアを合成する既存触媒は400℃程度の高温を必要とすることだ。電力で高温を生み出すには、かなりのエネルギーが必要になる。これは、自然エネルギーの発電量の大半を水素と窒素からのアンモニア生産に消費され、水の電気分解による水素生産に回せる電力が足りなくなるという本末転倒の結果になりかねない。自然エネルギー利用のアンモニア生産のシナリオを可能にするには、水素と窒素からアンモニアを合成する触媒の作動温度を大幅に低下させることが求められている。
 研究成果
 新しいアプローチ
 このような背景の中、アンモニア合成触媒が大幅に低温で作動する新たなアプローチを原教授らが着想した。
 砂糖を水に入れるより、お湯に入れた方が早く溶けるように、アンモニア合成速度も温度と共に速くなってくる。これまで、高い温度で高い性能を発揮する触媒は、低い温度でも、相応の高い性能を発揮すると考えられていた。しかし、原教授らの研究によって、これまで開発されてきたいずれの触媒も、100~200 ℃の間で作動しなくなることが明らかになった。
 すなわち、従来のアプローチは、作動の起点を100~200 ℃とする傾きの異なる触媒を開発する取り組みで、傾きの大きな触媒が高性能な触媒とされてきた。しかし、これでは高温での合成速度は速くなるが、低温での合成速度は速くはならず、大幅な低温化は実現できない。
 本研究では、触媒の作動温度を50℃未満にスライドさせ、温度-アンモニア合成速度曲線自体を低温側に引き下げるアプローチを試みた。こうすれば、低温領域のアンモニア合成が著しく高くなるはずだが、これまで成功した事例はなかった。
 古典的学理に学ぶ新たな電子供与材CaFH
 上述のアプローチはこれまで試されたことがないため、何がこのアプローチに繋がるかは手探りの状態だった。原教授らは、まず低温で強く電子を与えることができる材料(電子供与材)の開発に着手した。アンモニア合成の最大の難関は窒素分子N2の窒素原子にまで分解する過程である。窒素分子は強固な結合によって結ばれた2つの窒素原子から成る安定な分子。この分子を原子にまで分解するには鉄などの遷移金属から窒素分子へ電子を一時的に与える必要がある。
 金属への電子供与による窒素分子の分解加速
 しかし、遷移金属だけの電子供与は不十分であり、この電子供与をブーストするため、アンモニア合成触媒には金属に電子を与える物質、すなわち、電子供与材料が組み込まれている。100年以上も前から現在までアンモニアの大量生産に使われている鉄触媒では酸化カリウム(K2O)がこの電子供与材料に当たる。これまで様々な電子供与材がアンモニア合成触媒に組み込まれてきたが、既存の触媒では100~200 ℃で電子を与える力が弱まり、この温度領域で作動しなくなると原教授らは予想した。そこで、ありふれた脱水材「水素化カルシウムCaH2」に着目した。CaH2はCa2+の陽イオンと水素の陰イオンH-(ヒドリドイオン)が結合したイオン性固体であり、200 ℃より高い温度にすると一部のH?が水素分子として抜け、電子をCa2+イオンの周りに残す(2H-→H2↑+ 2e-)。この状態の電子はアルカリ金属並みの電子供与能(大きなイオン化傾向)をもつため、この電子で遷移金属の電子供与をブーストすればN2分子は窒素原子まで分解できる。しかし、Ca2+-H-のイオン結合エネルギーが強いため、低温で使うことができない。
 そこで、原教授らは大学の1年次で基礎として学ぶ古典的な学理を利用することにした。それはCa2+とより強い結合をつくる陰イオンを入れ、Ca2+-H-の結合エネルギーを弱めてしまうということである。Ca2+-F-の結合エネルギーはCa2+-H-のそれの2倍の強度をもつため、CaH2のヒドリドイオンの一部をF-で置き換え、水素化フッ素化カルシウムCaFHをつくれば、そのヒドリドイオンは低温で水素分子として脱離し、低温で強い電子供与能を発揮するはずである。実際に合成したCaFHでは室温程度からヒドリドイオンが水素分子として抜けることが確認された。
 今後の展開
 今回開発したRu/CaFHに2つの意味がある。
 第一に、触媒の最低作動温度を引き下げるという新しいアプローチと、それを可能にする新たな触媒材料の開発によって300 ℃以下の低温領域のアンモニア合成触媒性能を著しく上げたこと。
 第二に、100 ℃以下でも作動する触媒を生み出したこと。これまでの触媒は100 ℃以下では作動しない。従って、いかなる改良を施しても、100 ℃以下でアンモニアを合成することはできない。「0に何をかけても0にしかならない」からだ。一方、Ru/CaFHは室温程度でもアンモニアを合成できる。これまでの触媒がこれまでのアプローチによってその性能を向上してきたように、Ru/CaFH、あるいはその概念に基づく触媒の性能はまだまだ押し上がる余地が十分に残っている。
 原教授のコメント
 今回の研究に対する私たちの感想は、「社会が求めるアンモニア生産のきっかけを見つけた」に過ぎません。しかし、化石資源を使わずに肥料を生産し、人々に食糧を届けることが単なる夢想ではなくなり、現実味を帯びてきました。従来の触媒開発がしてきた性能向上をたどることによって、私達のアプローチ・触媒は真に地球・社会・人が求めるアンモニア生産に繋がると考えています。
 ◆用語説明
 〇水素化フッ素化カルシウム(CaFH)
 融雪剤である塩化カルシウムCaCl2はCa2+陽イオンに2つのCl-陰イオンが結合した固体のイオン化合物。CaFHは物質として既に知られていたが、材料として使われたことはない。なお、CaFHはフッ化カルシウムCaF2と水素化カルシウムCaH2の混合物を500 ℃以上で十数時間以上加熱することによって得られる。しかし、このようなCaFHを触媒に使っても、そのアンモニア合成速度は低い。高温で長時間の加熱がCaFHの焼結を進め、表面積が小さくなってしまうためだ(1 gのCaFHの面積は1 平方メートル未満)。そこで本研究では大きな表面積をもつCaFHを低い温度(200 ℃)・短い時間(3時間)で合成する全く新しい方法を開発した。この方法で合成した1 gのCaFHの面積は30平方メートルに達する。
 〇活性化エネルギー
 反応を進めるために必要なエネルギー。水素と窒素からアンモニアが生成する反応は発熱反応であり、丘の頂上から平地に下る反応である。しかし、丘の頂上は目に見えない塀で囲まれており、この塀を乗り越えないと丘を下ることはできない。この塀の高さが活性化エネルギーである。当然、塀の高さ、即ち活性化エネルギーが低い触媒ほど、反応が進みやすい。

 晴れ~曇り。気温も高く、最高気温22℃とか。
 駐車場横のお庭、チョット日陰になっている所で、シャガが纏まって咲いている。
 白いアヤメに似た花で、3枚の外花被(萼)と3枚の内花被(花冠)、雄蕊からなる。外花被には青紫と黄橙色の斑紋が見られ、縁はフリル状(ギザギザ)である。不稔性(タネができない性質、三倍体のため)なので、繁殖は根茎を横に伸ばして行う・・なので、日本各地に広がったのは、人為的と考えられている。人の影響が少ない自然林内には自生せず、人間が住んでいた場所などで見られるから、との事。
 名(シャガ)の由来は、葉が似ている檜扇(ひおうぎ、ひおうぎあやめ)の漢名の「射干(やかん)」を音読みしたと言われる。
 シャガ(射干、著莪)
 別名:胡蝶花(こちょうか)
 学名:Iris japonica
 アヤメ科アヤメ属
 常緑性の多年草
 原産地は中国、古くに日本に渡来
 15世紀末に宮中での立花に使われた記録がある
 開花期は4月~5月
 花は朝開いて夕方にしぼむ。
 花径は数cm、花色は淡紫色が基調色
 中国には二倍体の個体があり、花色・花径などに多様な変異がある