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花粉症治療に重要なシラカバ花粉アレルゲン「Bet v 1」の大量生産に成功

2020-05-06 | 園芸
 筑波大学生命環境系(つくば機能植物イノベーション研究センター)三浦謙治教授、医学医療系野口恵美子教授、国立大学法人福井大学医学部藤枝重治教授らの研究グループは、シラカバ花粉症を引き起こすアレルゲンBet v 1を大量に生産することに成功した(4月3日発表)。また、精製されたBet v 1は、シラカバ花粉症患者のIgE抗体に対し、これまでのアレルゲンと同様の結合をすることがわかった。研究成果は、「Frontiers in Plant Science」に掲載。
 シラカバ花粉症患者は欧米や北海道で多くみられ、世界で1億人以上が罹患していると推測されている。花粉症は、体外から侵入してくる花粉に存在するアレルゲンと、体内で作られるIgE抗体が結びつくことで、アレルギー症状が引き起こされる。シラカバにおける主要なアレルゲンは、Bet v 1である。
 花粉症の治療法として、「アレルゲン免疫療法」が注目されている。これは、アレルゲンを少量ずつ患者に投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状をやわらげる治療法で、長期にわたり症状を抑える可能性がある。この療法に用いられるアレルゲンの調製には、花粉からのエキスや、大腸菌などの異種タンパク質発現システムを用いた組換えアレルゲンが使用されている。しかし、花粉エキスを用いる場合は大量の花粉を用意する必要があること、バクテリア由来の組換えアレルゲンを用いる場合は植物特有のタンパク質修飾がなされないといった問題点があった。植物においてBet v 1を作出する研究開発も行われてきたが、収量が低い(0.2mg/g新鮮重)という課題が残っていた。
 研究グループはこれまでに、植物にて大量のタンパク質を生産することができる独自のシステムを開発している。同システムでは、ジェミニウイルスのDNA複製システムと2つのターミネーターをタンデムにつなげることで、植物におけるタンパク質の発現量を増大し、ベンサミアナタバコ1gあたり約4mgの緑色蛍光タンパク質(GFP)の蓄積に成功している。植物においてタンパク質を生産することから、植物特有のタンパク質修飾がなされることが期待される。研究グループは今回、同システムを用いてこれまでの問題点を克服し、患者IgEによって認識されるBet v 1の大量調製を試みた。
 研究では、シラカバ花粉アレルゲンBet v 1を発現できるようなベクター(遺伝子を導入するための核酸分子)を設計し、つくばシステムを用いて、ベンサミアナタバコにアグロインフィルトレーション(アグロバクテリウムの感染)により、Bet v 1を発現させた。
 その結果、アグロインフィルトレーション後5日目において、ベンサミアナタバコ1gあたり、約1.2mgのBet v 1が発現していた。これは、従来法に比べて6倍の発現量であり、大量のアレルゲン生産に成功した。ベンサミアナタバコ葉から可溶性タンパク質を抽出し、硫酸アンモニウムによる分画およびアフィニティカラムクロマトグラフィーによりBet v 1を精製したところ、ほぼ単一のバンドが得られ、LC-MS/MS(液体クロマトグラフィータンデム質量分析)解析により、精製品がBet v 1であることが確認できた。精製Bet v 1を詳細に調べてみると、わずかにバンドがシフトしており、このバンドシフトは、タンパク質の糖鎖修飾によるものであると示唆された。
 シラカバ花粉症患者を含むヒト血清を用いて、精製Bet v 1とIgE抗体との反応性を調べたところ、精製Bet v 1はシラカバ花粉症患者IgE抗体によって認識されることが明らかになった。つまり、同システムにより、シラカバ花粉症の免疫治療に利用可能な、より天然に近い組換えBet v 1を、これまでに報告のある中でも最高レベルの収量で作出することに成功した。
 今回の研究成果は、植物バイオテクノロジー分野の発展と花粉症治療の分野に貢献するものと期待される。
 研究グループは、「植物由来のBet v 1を大量に生産できる方法が構築できたことから、つくばシステムは、Bet v 1と同じPR10ファミリーに属するアレルゲンの生産にも応用できるものと期待される。PR10ファミリーは、果物を食べると口がかゆくなったり、口腔が腫脹したりする口腔アレルギーを引き起こすリンゴMal d 1、モモPrup1、ヘーゼルナッツCor a 1、ダイズ(豆乳)Gly m 4などの主要なアレルゲンだ。これらのアレルゲンの効率的な生産によって、口腔アレルギーに対するアレルゲン免疫療法への発展も期待できる」と、述べている。
 ◆用語説明
 〇ベンサミアナタバコ
 タバコ植物の仲間。病原菌からの感染予防のための植物免疫システムに欠陥があり、病原菌感染の実験やアグロインフィルトレーション法によく用いられている。2012年にアメリカのグループによりゲノムが解読された。
 〇アグロインフィルトレーション
 特定の遺伝子を組み込んだアグロバクテリウムを植物体に感染させ、当該タンパク質を発現させる技術。感染後、数日で目的のタンパク質を得ることができる。
 ◆アレルゲンBet v 1
 シラカバ花粉にアレルギーを有する患者は、免疫学的な交差反応性のため、リンゴやモモなどの果物や野菜を食べたときに、口腔や咽頭の過敏症をしばしば訴える。現在、こういった現象は時に随伴する全身症状とともに、口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)と呼ばれて注目されている。
 OAS はIgE を介するⅠ型アレルギーと考えられており、シラカバ花粉と食物の間の交差抗原としては、シラカバの主要抗原であるBet v 1 とプロフィリンであるBet v 2 が挙げられている。

 朝は小雨、直に止み、空は晴れ~曇り。
 近所の空き地で、ひとかたまりで繁殖している”カタバミ”や”アカカタバミ”、花が咲いている。”カタバミ”の葉が赤紫色のものを”アカカタバミ”と言う。
 ”カタバミ”は、酢漿草・傍食・片喰・片食などと書き、様々な由来から。
  噛むと酸っぱい味がする(葉に水溶性蓚酸(しゅうさん)塩・クエン酸・酒石酸を含むため)
  葉が食べられたように欠けているから
  片葉が3つだから(片葉三)
  葉が茎の上にだけ伸び、下には伸びないから
 ”アカカタバミ”のアカは花の色ではなく、葉の色が暗い赤紫色だから。
 アカカタバミ(赤片喰、赤酢漿草)
 英名:creeping red woodsorrel
 学名:Oxalis corniculata f. rubrifolia
 カタバミ科カタバミ属
 多年草
 カタバミより全体にやや小さく、赤紫色
 環境に対する耐性が高く、繁殖力旺盛
 開花時期は4月~10月
 花は径5mm~8mm程で、黄色の5弁花。花弁の付根付近に赤い斑が入る


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