先週のこと。読む本がなくなっていたところへ
カウンターの美しき女性が
「電車の中で泣いちゃった」と教えてくださったのが
小沢真理「世界でいちばん優しい音楽」 講談社漫画文庫。
タイトルいいよな~。
動機はシンプル。早速BOOKOFFで見つけてきました。
冒頭の一話をちらっとご紹介
のぞみ(16歳・女)モノローグ
背景に水彩画風のベッド/シーツが乱れている。
プランター/花のない植物。キャビアの缶
----最近読んだ小説にこんなのがあった
年老いたバンドマンが
旅先の安ホテルに泊ってると
壁一枚隔てた隣の部屋から
若い恋人同士が愛し合ってる声や音が聞こえてきて
彼はまどろみのなかでそれを聞きながら
「世界でいちばん優しい音楽だ」って思うの・・・
もぉ これだけでノックアウト
だけど本筋にはバンドマンもこのカップルも登場せず、
16歳の少女と若きシングルマザー(この二人が主人公)が手際よく紹介され
この親子のハートウォーミングな日常へ導入される。
そして一話の終盤、
この父のいない年頃の娘のモノローグ再び。
----悲しいことも
むかつくことも
たくさんあったけれど
やっぱりあたしは生まれてきてよかった。
だって 死ぬほど愛し合ったパパとママの奏でる
世界でいちばん優しい音楽から
きっとあたしの命は生まれた・・・
じわっと来る。。
二話以降は時を遡っての子育て奮闘記..
はるか昔の我が身と被って笑えて泣ける。
愛おしくて懐かしくて、こみ上げるものを抑えきれないのだけれど
悲しいことに たくさんある思い出はことごとく具体性を欠き
齧りかけのパンのよう。
記憶の脳細胞が死滅していくことを予測できず
時間に追われ苛立っていた自分が恨めしい。
あぁ、こんな風に書き残すことができて
この作家は幸せだなぁ・・・。
最近自分の母性に驚くことが多い。
そんなお年頃かしら?
それから昨日また別の麗人から教えていただいた
大島弓子「つるばらつるばら」
漫画でなければ画けない世界で傑作とのこと。
探してみよう。
少女漫画は侮れない。