米島勉のセカンドオピニオン

ここでは,広い意味で健康に関するセカンドオピニオンを考えてみたいと思います。

“ドリエル”は高すぎる

2007年05月17日 | Weblog
 あえて商品名をあげます。「睡眠改善薬」と称して,寝つきが悪い,眠りが浅い,などの自覚症状を改善する薬として2003年発売開始直後から大ヒットとなっている市販薬です。最大の特長は,いわゆる催眠薬,睡眠薬と異なり副作用も習慣性もほとんどなく,医師の処方箋が必要な「要指示薬」ではなく,薬局で自由に買える(Over-the-Counter,OTC薬)ことです。
 それはいいのですが,成分が塩酸ジフェンヒドラミンで含有量は1回2錠中50mgであることに注目してください。この塩酸ジフェンヒドラミンという薬品は古典的とも云うべき抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)で,過去にはじんま疹などのアレルギー症状に投与されていたものです。したがって,その安全性などはとっくの昔に立証されており,何ら新しい薬品というわけではないのです。抗アレルギー薬として風邪薬にも配合され,副作用として眠くなることが最初から明示されており,風邪薬の服用後に自動車運転をしないよう注意書きされているのは,主としてこの塩酸ジフェンヒドラミンの配合によるものです。ドリエルは,この「眠くなる」欠点を逆手に取ったものといえますが,これも製造販売元エスエス製薬の独創ではなく,アメリカでは1980年代に,ヨーロッパでも90年代には承認販売されていたのです。日本では,エスエス製薬が睡眠改善薬として最初に許可申請し,市販後調査期間を経て2003年4月に販売開始されたのです。
 それでは,値段を見てみましょう。ドリエルの末端販売価格は,12錠1箱で1900円前後です。1回2錠ですから,1回当たり300円程度となります。
 一方,同じく塩酸ジフェンヒドラミンを成分とする抗ヒスタミン剤「レスタミンコーワ糖衣錠」は,ネット通販価格で220錠入り1瓶1300円程度です。もちろん薬局や薬の量販店で自由に買えます。ただし,こちらは1錠当たりの含有量が10mgですから,ドリエル1回分と同じ量を摂るには5錠必要です。ですから,220錠入りであればドリエル44回分に相当します。したがって,睡眠改善薬として服用する場合は1回当たり約30円程度となります。
 つまり,ドリエルの代わりにレスタミンコーワ糖衣錠を服用するようにすれば,コストは10分の1で済むわけです。
 研究開発に数十年の歳月と数千億円といわれる開発費を投じる新薬とは違うのです。ちょっと高すぎるのではないでしょうか。睡眠改善薬としての塩酸ジフェンヒドラミンが「儲かる」と知ったメーカーが続々出現しているのも,この薬が「おいしい」からでしょう。塩酸ジフェンヒドラミン含有の抗ヒスタミン薬をのんでも眠れないが,塩酸ジフェンヒドラミン含有の睡眠改善薬ならば眠れる,というのならなにをかいわんや,でしょう。そういう人は砂糖の錠剤(プラセボの1種として)でも眠れます。