新型インフルエンザ・パニックに便乗したマスクの品切れに対応する苦肉の措置として,関西では小学生にキッチンペーパーを利用したマスクの作り方を教えたり,中高生向けには教員が手製のマスクを作って配布したりしています。
しかし,この措置にはかなりの疑問があります。
そもそも健常者が,ウイルスが自由に通過するような穴だらけのマスクを着用しても何の効果もないことは,よく知られているはずです。
それを,子供達が本来の使用目的ではないキッチンペーパーと輪ゴムとホッチキスでマスクのようなものを作っても,インフルエンザ・ウイルスの防止には何の役にも立ちません。残念ですが,こんなマスクでは鼻と口を塞ぐこともできません。
現在市販されているマスクの大半は花粉症対応であり,よく設計されたものも少なくないのですが,直径の大きな粒子である花粉ならばともかく,電子顕微鏡でしか見ることのできないウイルスに対しては無力です。インフルエンザ感染者の咳とくしゃみで飛散するウイルスが周辺に拡散する量を少なくするのが精一杯なのです。
ましてや,キッチンペーパー製のマスクは,作らされる子供達には気の毒ですが,おもちゃの域を出るものではありません。
それどころか,子供達が無邪気にもキッチンペーパー・マスクを信じて,これを着けていればインフルエンザは大丈夫,などと誤解したら悲劇です。
繰り返しますが,マスクの市場払底から生まれたキッチンペーパー・マスクは意味がないどころか,誤解による感染を広めかねません。