米島勉のセカンドオピニオン

ここでは,広い意味で健康に関するセカンドオピニオンを考えてみたいと思います。

緑青汁1億杯だって?―員数が合わない

2008年11月11日 | Weblog

 主として大麦若葉を原料とする、と称する緑青汁のうちの1つが発売後1年ほどで1億杯を売り上げた、と宣伝しています。緑青汁と書くといかにも汚らしい漢字ですが、緑とか青を単独で使うと特定の製品を暗示させますから、ここでは緑青汁としておきます。
 さて、くだんの緑青汁は、ネットで調べると1回分が3.3グラムとありますから、これを基礎にちょっと計算してみましょう。計算に誤りがあるといけないので、逐次書き出してみます。
 3.3グラムが1杯分で1億杯ですから、粉末として3億3千万グラム(330,000,000 g)になります。キログラム(kg)にすると33万キログラム(330,000 kg))、さらにトンに直すと330トン(330 t)になります。ただしこれは乾燥粉末です。
 多くの植物は90パーセント以上が水分(例えばキャベツは92~93パーセント)ですから、ここでは仮に大麦若葉の水分を90パーセントとしておきます。そうすると、乾燥粉末でなく生の大麦若葉とすれば乾燥粉末の10倍の重量となります。すなわち3千3百トン(3,300 t)です。こんな量は調達可能なのでしょうか。
 ここに興味深い資料があります。中国四国農政局による「有限会社スプラウト島根」の紹介です。この会社は島根県江津市桜江町市山429 (電話0855-92-1233)に所在し、業種は「大麦若葉の製造・販売」です。法人の設立は平成16年11月、資本金は3百万円とあります。
 問題の生産量ですが、資料によるとこの会社は、「年間2回~3回収穫するため、順次播種するとともに、1日当たり20 aで収穫し、生葉で2 t(乾燥後200 kg=0.2 t)を生産している。また、収穫専用機の導入と作付回数を増やすことで生葉で200 tを収穫、乾燥品で20 t生産する予定にしている。乾燥後は、安来市の食品工場で超微粉砕・殺菌加工処理を行い、健康食品会社に原料として販売している。なお、同社は有機JAS認証を取得している。出荷は、殺菌・粉砕し10 kg単位の袋に詰め、医薬品・健康食品製造販売会社や茶製造販売会社、緑茶関連商品販売会社へ直接出荷している」そうです。
 ですから、生葉としてはもちろん、乾燥粉末としても員数が合わないのです。どうやって1年で3,300 t の生葉、330 tの乾燥粉末を調達したのでしょうか。どれだけの作付面積が必要かは、上の資料からでも計算できます。
 もちろん緑青汁の販売会社では、「大麦若葉など…」としており、大麦若葉の調達先も「阿蘇の大地など…」だそうですから、上記の島根の会社とは限りませんし、大麦若葉単独の製品でないことも断っています。しかし、年間330 tの乾燥粉末というのは簡単に調達できる量ではありません。あえて云えば大麦若葉よりも調達しやすく安価な葉緑素含有粉末、たとえばクロレラとかスピルリナなどの方が多いことも考えられます。
 なぜここまで緑青汁に疑問を抱くかと云うと、今の緑青汁ブームが異常すぎるからです。、
 このブログでは以前にも「お客様の感想であり効用ではありません―サプリメントの怪」と題して薬事法に触れずに効能を謳う栄養補助食品の商法に疑問を投じてきましたが、大麦若葉もそのたぐいです。大麦若葉商法がいかに儲かるかは、テレビコマーシャルに見る緑青汁メーカーの占有率で分かります。1億杯売り上げたという会社は、1年前にはほとんど無名の会社でした。いまでは昼の2時間の映画を連日1社でスポンサーになるほどです。ヒアルロン酸を売りまくる会社も同様です。名優と云われる映画俳優に、「私は○○を毎日服んでいます」と商品名を云わせるまでになりました。
 よほど儲かるのですね。これも「効能を謳ってはならない」サプリメントだからこそできることです。成分の百分率も表示する必要はありません。世の中、医薬品を出そうものならC型肝炎で訴えられることもあるのに、サプリメントなら気楽なものです。「お客様の感想」を並べておけば効くも効かないも無関係なのですから。イメージだけ膨らませればいいのです。
 どうも人間は、緑色のものに健康を連想するらしく、ポパイのほうれん草から始まって、たとえば笹の葉エキス、葉緑素、クロレラ、スピルリナと色々の緑ブームが起きました。そして浮かんでは沈み、流行っては廃れてきました。大麦若葉の「お客様」が一生飲み続けると「感想」を述べていても、やがては廃れて忘れ去られてしまうかも知れません。
 いや、そうでないとこのボロ儲けがいつまでも続くことになります。そしてひたすら健康を願う善良な人達が高いお金を払わされることになります。