米島勉のセカンドオピニオン

ここでは,広い意味で健康に関するセカンドオピニオンを考えてみたいと思います。

お客様の感想であり効用ではありません―サプリメントの怪

2008年09月16日 | Weblog

 サントリーのサプリメントのテレビCMでは、画面の上の方に「お客様の感想であり効用ではありません」と白い小さな字で書いてあります。視聴者に見せたいのか見せたくないのか、ともかく控えめに書いてあります。たぶんなるべくなら見てほしくないのかも知れません。視聴者からなにかクレームがついたときに、「テレビCMでちゃんとお断りしています」と逃げるつもりかも知れません。似たような文言を同じように出しているCMが他にも1件ありました(健康家族)。他にもあるのかも知れませんが、共通するのは画面の目立たないところに目立たない大きさと色のフォントで書いてある、ということです。
 私もサントリーのサプリメントを複数服用していた時期がありました。その感想としては他のメーカーよりも良心的かも知れない、と云うことでした。ここで良心的、というのは商品としてその取り扱いが良心的だったというだけの話で、効いたか効かなかったか、と訊かれれば、はっきり云って効きませんでした、ということです。そのサントリーにしてこの有様です。
 もし私が「テレビの宣伝のようには効かなかった」と抗議しても、「お客様のごらんになったテレビCMは、すべてCMに『出演された』お客様の感想ですから」と逃げられてしまうでしょう。
 しかし、「お客様の感想であり効用ではありません」とは、結局このサプリメントが効いた効かなかったかはお客様次第ですよ、当社では効くとは云ってませんよ、ということではありませんか。
純正の医薬品のCMではこんなことは許されないでしょう。頭痛薬の宣伝に「この薬で頭痛が治ったと思ったのはお客様がそう思っているだけで、私どもはそんなつもりで薬は売っていません」
 こんな薬の売り方はあり得ません。とうぜんです。医薬品だからです。それではなぜサプリメントではお客様の感想をいかにも効能のように思わせて売ることができるのでしょうか。サプリメントは、その名の通り栄養補助食品であって直接の薬効は保証していないからです。いや、保証してはならないのです。厚生労働省の定めるサプリメントの定義がそうしているのです。ですから逆に、サプリメントでは効能を謳ってはならないことになっており、その規制は非常に厳しく、外箱から添付説明書に至るまで、また新聞雑誌・テレビCMにいたるまで徹底しており、「癌に効く」などもってのほかで、成人病一般にも「効果がある」といった文言は絶対に入れてはならないのです。実際にこの規則に違反して薬効を謳って逮捕起訴された人も数多くあります。
 ところが最初に挙げたサントリーはもちろんのこと、まったく治験報告がないヒアルロン酸内服カプセルなどでも、いかにも効いたと思わせる「お客様の感想」がまかり通っているのです。これでは一種の詐欺、誇大広告と同じではありませんか。体内に存在して一定の役割を果たしていることが知られた物質でも、それを外部から補給してそれが体内に存在する物質と同じく機能するという例は決して多くはないのです。ヒアルロン酸がいい例です。CMではいかにも粘りけがある液体を見せて、これを服用したら膝の関節に集まって歩行が楽になる、と思わせているだけです。手品ではあるまいし、そんなことはあり得ません。
 それを、あるサプリメントを服用したら登れない階段を楽々登れた、というようなテレビCMを絶え間なく流して、画面に小さく「お客様の感想であり効用ではありません」と書くのはいかがなものでしょうか。有名俳優を使ってCMを作り、これを絶え間なく流して売りつける、というのはよほど儲かるからできることでしょう。
 この点では、サントリーも同じです。各界の有名人を『出演』させていることではヒアルロン酸よりも派手でしょう。いったい『出演料』にいくら払っていることやら。
 お客様が服用してその気になればいいじゃないか、とは無責任過ぎませんか。