米島勉のセカンドオピニオン

ここでは,広い意味で健康に関するセカンドオピニオンを考えてみたいと思います。

健常者がマスクをかけても予防にならない―誤解の下のマスク景気

2009年05月21日 | Weblog

 WHOによれば,新型インフルエンザはパンデミック寸前の状況だが,パンデミックを意味するフェーズ6までは達していない,とのことです。また,現在のところ毒性は通常の季節性インフルエンザのレベルである,ともいっています。
 日本では,古くからマスクの着用が社会的に認知されており,街中をマスク姿で歩いてもあまり抵抗がないようです。昭和の初め,その頃は真っ黒な厚手硬質のマスクでしたが,着用するとまるでカラストンビ(鳶)に見えたものです。冬には,肩掛けの真っ黒いマントを羽織って,真っ黒なマスクを着用した,文字通りのカラストンビが横行したものです。
 しかし,日本では流行性感冒とも云われるインフルエンザを予防するのに,これまでもマスクが使われてきましたが,マスクは本当にインフルエンザの予防に役立つのでしょうか。
 新型に限らず,インフルエンザがウイルスによるものであることは小学生でも知っています。しかし,それではウイルスとはいったいどのようなものなのでしょうか。この質問になると,かなりの人が答えられないのが現実です。
 多くの病気が細菌によるものであることは,19世紀フランスのルイ・パスツールらの貢献により明らかになり,対細菌の処置によって多くの病気が克服されました。
 しかし,ウイルスは細菌ではありません。細菌でないどころが生物とも云えないのです。その大きさは細菌とは比べようもないほど小さく,電子顕微鏡でしか見ることができません。ですから,ウイルスを濾過性病原体と呼んだ時代もあったのです。
 つまり,ウイルスは通常の濾過法では分離できないのです。
 こんな小さなウイルスを相手にガーゼや不織布で作った穴だらけのマスクを着用しても,何の役にも立ちません。マスクに効用があるとすれば,すでにウイルスに感染した患者が咳やつばきとして排出するウイルスを遠くに飛ばさないだけなのです。患者の咳で飛散したウイルスが唾や痰の乾燥と共に粉末化して空気中に浮遊するようになれば,もはやこれをガーゼのマスクで濾し取ることはできません。ウイルスは乾燥に強いのです。
 ですから,健常者がいくらマスクをしても予防にはならないのです。マスクを付けるとしたら感染済みの患者です。
 それにしても,これほどマスク姿が横行する日本の街は異常です。いや,最初に書いたように日本人はマスク姿に抵抗がないのです。
 今回のメキシコにおける豚インフルエンザに始まる新型インフルエンザでも,日本以外の国ではマスク姿はごく稀です。日本人がテレビを見て外国人は衛生観念が低いから新型インフルエンザが蔓延するのだ,などと考えるのは誤りです。
 彼らの方がむしろ合理的なのです。彼らは意味のないことはしません。それに,マスクを付けた姿は彼らにとって不気味なのです。強盗かも知れないのです。
 5月20日付けの読売新聞朝刊には,新型インフルエンザ対策の各措置に関するEU,米,WHOの立場を表にまとめてあります(14版6面)。
 その表の中のマスクに関する項だけを書き出すと,
1. 非感染者のマスク着用に関しては,EUは効果不明,米国は推奨されない,WHOは不要としています。
2. 感染者のマスク着用に関しては,EUは効果ありそう,着用した感染者が出歩けば感染を広げる,米国は不記載,WHOは着用すべきだ。
 というわけで,マスク自体の効用が疑問視されており,非感染者のマスク着用は無意味とされています。
 それなのに日本では非感染者までマスクを着用するように推奨しています。
こんな馬鹿馬鹿しい話はありません。おかげで街中にマスクは払底して,並んで買うような有様です。
 これで喜ぶのはマスクメーカーだけでしょう。日本中で夏のボーナスの減額が確実とされているのに,マスクメーカーの従業員は大喜びでしょう。
 本当に,日本という国はおかしな国です。日本は厚生労働省に潰されます。