もう飽きたぞ。
どこどこで最高気温が何度だったとか、熱中症で今日は何人搬送されたとか。
知らんがな。
っていうかわかってるがな。
夏は暑い。
わかりきってるのになぜ毎日マスコミは騒ぐ。
もう飽きた。
えっ?啓蒙のため?注意喚起は大事?
アホ言え。
そんなんで熱中症にならへんのやったら、もうオレオレ詐欺とか、還付金詐欺に簡単に騙されてる爺婆はおらへんって。あんだけ報道されてるのに、奴ら簡単に引っかかってるやん。
はっきり言ってバカやん。
多分、どこかの還付金詐欺で騙された人のニュースも、熱中症で搬送された人のニュースも他人事。
俺は、私は、わしは大丈夫。と大きな勘違いしてるからな。
ジジババの根拠のない自信は若者よりタチが悪いぞ。
暑けりゃ喉は渇く。水を飲め。マメに飲め。
暑けりゃエアコン入れろ。もったいながるな。病院代より安い。
そんな当たり前のことがわからない。やらない。できない、従わない。
以前も書いたが、ジジイは「エアコンは体に悪い」と迷信のように未だ勘違いしてるやつ多いし、年金生活でお金をケチってるからかもったいながって使わない。
じゃぁ、昔みたいに家の前に打ち水するのかと言えばそれもしない。風通しの良い縁側で冷えた麦茶飲んだり、スイカ食ったりもしない。風鈴も吊るさない。風流などは今や無縁だ。
熱中症はほんま怖い。それはわかってる。
俺は実際になったからな。
昨年引っ越しの際、すでにエアコンを外した部屋で残りの荷物の整理してた。
窓を庭側(ベランダ側)も玄関(入り口)側の部屋も開けてりゃ、風も通るし、室温もそんなに高くない。動かなかったら汗も出ないくらい。
すでに冷蔵庫も運んでしまって無いので、クラーバッグにポカリやDAKARA、お〜いお茶、サントリーの天然水をスタンバイ。
それをマメに飲みながら作業してた。
気づけば日も暮れ始めて、いつの間にか夕方だ。
持ってきたドリンクは飲み干してる。
キリのいいところで、買い出し兼ねて&晩飯も食べに(買いに)行こうかと、もうちょっとだけ作業。
ふっと気がつく。
あれ、一気に夜になったのかと。真っ暗だ。
天井のライトも外してるから明かりは玄関の電球か、トイレや風呂の電球しか無い。灯けなきゃな。
と立ち上がった瞬間、めまい、立ちくらみ、目の裏にはチカチカなんか瞬いてる。
あれ?貧血か?
違うぞ、動けない。
暗いんじゃなくて俺がブラックアウト状態なんだ。
これが噂に聞く熱中症か。
まさか、俺がなるとは。さっきまでちゃんと水分マメに摂ってたやん、俺・・・。
ハァハァ言いながら、よろけながら家を出る。
鍵はいい、取られて困るもんなどすでにもう無い。
それより、水だ。ドリンクだ。
一番近くの自動販売機まで、這うように行った。
普段なら絶対買わないであろう激安自動販売機(大阪にはあるのよ50円とか80円で売ってる自販機が)の、これまた怪しげなスポーツドリンクのボタンを押す。
一気に飲む。
そしてもう一本買う。飲み干す。驚いた、これほどの水分を身体は欲してたんだ。
500mlのペットボトル2本分。計1リッターがすでに身体から抜けてたんだね。
これほど一気に飲んだのは鳥取砂丘で彷徨って以来じゃ無いか・・・。(砂丘を斜めに横断した後飲んだポカリは人生で一番美味しいポカリだ)
とかなんとか書いてるが、実際、どうやって自販機までたどり着いたのか、何買ったのか、どう飲んだのか記憶は定かでは無い。
それが熱中症だ。
引っ越しですでに壁掛け時計は無い。普段している腕時計も、作業に邪魔だし暑いからしていなかった。つまり時間の感覚が無い。
だから、飲みもんを口にしていないわずかな時間だと思った時間は、実は結構な時間が経過していたのかもしれない。
風が通るから油断してたが、実は室温は高かったのかもしれない。
それより間抜けなのは、水道は止めて無いんだから、蛇口ひねれば水が出たのに、なぜ俺は自動販売機を目指したのだろうか。先入観か、危機感か、本能か。
でも、この件があって、痛切に思った。
そりゃ、ジジイも死ぬわ。と。
これまた以前に書いたが、祖父が99歳で大往生しての初盆。
昔ながらの平屋で、夜は窓を全開にすると風が通る。しかし残念ながらこの日は猛暑。風も無い。
法要に参列いただいたのは、祖父の知り合いだ。したがって高齢者だらけ。
彼らは言う。
「エアコンは体に悪いけぇのぉ」
いやいや、いくらなんでもこの人数をたった2台の扇風機でどうする気だ。首振り機能?あっち向いてる最中は地獄だな。
懸念した通り、法事の間、流れ落ちる汗、滴り落ちる汗、にじむ汗。今、俺を焼いたら塩を思いっきりきかした紅鮭のようになるだろう。
朦朧とし始める意識。
しかし祖父は熱心な信者だったからか、特別大サービスで長い。
頼む、もう終わってくれ、そのくだり、もう3回目だよ。ありがたいお言葉も今は呪文のようにしか聞こえない。
ようやく終わった。
で、「一息入れましょか」と出されてきたのは熱いお茶。
なんのいじめ?ドッキリ?根性試し?
ジジイどもは言う。
「熱い時は熱いお茶やね」
「心頭滅却すれば火もまた涼し。ガハハハ」
俺は電源を切っていた携帯を取り出し、かかってきてもいない電話にでるふりして靴を履いて外に出た。
ダッシュで自販機を探そう。
『孤独のグルメ』の井之頭五郎のごとく、ジュースの自動販売機を探すのだが、見当たらない。大通りに出るがありどうな気配も無い。
山口県岩国といえばそこそこの地方都市のハズ。ちょっと歩けば錦帯橋もある。(つい最近バイクでここを走った不届き者がいたが)
そこまで歩くか。いや、それだとこの後の墓前での法要に間に合わない。(まだやるのかよ)
諦めかけた時、自販機っぽいのを見つける。駆け寄る。新聞とか電池とか、米の精米機とかじゃ無いことを祈る。
よかった、森永のビックルの自販機だ。パックのやつね。
早速お金を入れて、ボタンを押す。麦茶だね。ポチ、ビー、ガチャン。
出てきたのを見て怒りがわく。なぜ、ヨーグルトジュース???
いじめ?、試練?、何かのドッキリ?
何のことは無い、通常商品の下に押すボタンが付いているが、この自販機は上にボタンが付いてる。
紛らわしい。
もう一本買えばいいだけだ。
今度はちゃんと間違えずにお茶だ。
小銭が無い・・・。
さっきの小銭は新幹線降りてタクシーで到着した際のお釣りだ。そのまま礼服のポケットに押し込んだんだ。
本来の財布はカバンと一緒にじいちゃんの家に置いてきたままだ。
灼熱の太陽、照り返しのきつい何も遮るものの無い道路、向こうに陽炎も見える。
とぼとぼとヨーグルトジュースを飲みながら、また祖父の家に戻ったよ。恐るべし岩国。
ちなみに次回の『秘密のケンミンショー・極』は山賊焼きが登場するみたいだ。
ガキの頃は日射病とかって言われてたけど、あれは熱中症のことだったのかな。
クソ熱い中、水も飲ませず体育の授業をしてたあいつ(体育教師)は、今、同窓会をしたら土下座してみんなに謝罪しなきゃいけないな。
水を飲んだら体力が落ちる。兎跳びグランド1周、終わったら手押車だ、境内階段ダッシュだ、倒れても根性で立ち上がれ。
スポ根マンガのせいで、すっかり信じ込まされて、順わさせられてたよ。
熱中症には気をつけて。
でも、報道はもういいや。
暑いのはもうわかったからさ。
何人が搬送されたってニュースより、涼の取り方を報道してくれよ。
最高気温が何度になるって言われても、どうしろというのか。
それより家でのかき氷の作り方のコツとか教えてくれよ。
ハーゲンダッツアイスクリームのちょい足し裏レシピとかのほうが役に立つぞ。
夏は暑いんだからさ。