一箱500円時代に突入、全面禁煙のバーに声援も…それでも喫煙派がタバコをやめない理由とは?2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、東京都では受動喫煙防止条例が施行された。さらに今月からはタバコの値上げも行われ、喫煙者にとっては厳しい時代に突入している。16日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、改めて喫煙派・嫌煙派双方の意見を聞いた。
■「喫煙者を罪人だと思っているのではないか」
かつては在来線のホームやタクシー車内、さらには航空機内など、場所を選ばず吸うことができたタバコ。1996年、咽頭がんの治療を終えたばかりの昭和の大スター・勝新太郎さんが退院会見でタバコを吸っても、世間は"勝さんらしい"と大らかだった。
しかし、タバコへの風当たりはこの頃から強まっていく。2002年、千代田区が全国初の路上喫煙禁止条例を施行。以後、全国で喫煙エリアの制限が進んだことなどから、1966年には83.7%だった成人の喫煙率は現在、27.8%にまで下がっている。(専売公社/JT調べ)。千代田区神保町で60年以上にわたって喫煙者の憩いの場として営業を続ける喫茶店「さぼうる」の常連客は「昔は前が見えないくらい吸っていたよ。みんな煙いから、副流煙なんて考えられなかったよね」「肩身は狭くなっているけど、吸っている1人としては、吸える場所は残していただきたいというのが本心」としみじみ。
70年以上続く老舗たばこ店「野村たばこ店」の店主・野村正興代表は「絶対必需品だよ。ストレスが溜まる人なんかは絶対いいね。タバコをやっている人の間ではまったく上下はないね。本当にそう。年寄り、若者関係ない。男女関係ない」。そんな中、先月オープンしたのが東京・千代田区の「スモーカーズカフェ・ブリケ」だ。その名の通り全席が喫煙可能で、国の基準の2倍以上の換気量を持つ最新システムが設置され、わずかな煙も外に漏れにくい仕組みにした。2万人が働くオフィスビルの中で唯一タバコが吸えるカフェとあって、オープンから3週間、喫煙者たちで連日満席になる大盛況を見せた。店内では葉巻にパイプ、そしてライターのZippoまで販売しており、まさに愛煙家たちのオアシスだ。同店の堀江哲也さんは「来られた方からは"よくぞやってくれた"とか"時代に逆行しているよね""本当助かる"と応援の声をいただく」と話す。こうした喫煙者の声を世の中に発信してきたのが「喫煙文化研究会」だ。山森貴司事務局長は「良いイメージではないのは承知している。しかし反喫煙者の方々は、タバコを吸っている人が悪事を働いている罪人だと思っているのではないか」と憤る。■全面禁煙を決断のバー経営者に応援の声も続々
一方、街の若者からは「煙だけでも嫌だ。汚くなった気分になる」「持っているタバコを全部水に捨ててやろうと思うくらい本当に嫌」「酔っ払った時にそのまま無理矢理吸わされるとかはあった」「駅のホームでアイコス吸っている人がいてヤバイなと思った」と、タバコのイメージは散々だ。産業医科大学の大和浩教授の実験映像では喫煙所を退室した人に煙がまとわりついて外に出ていくのが確認できる。さらに最近では"目に見えない煙害"と呼ばれる「サードハンド・スモーク」(3次喫煙)の懸念もあるとされ、タバコを消した後の有害物質・ニコチンが大気中の成分と反応すると発がん性物質のニトロソアミンが生成されるというのだ。厚生労働省によると、喫煙者が肺がんになる確率は非喫煙者に比べ男性では約4倍、タバコを1日20本以上吸っている場合は心筋梗塞や狭心症になる確率が約3倍になるとしている。また、タバコが原因の医療費は約1.5兆円、このうち受動喫煙による医療費は約3200億円ほどに上り、生産性の損失と医療費などを足すと約4.3兆円に達すると指摘している。日本禁煙学会の作田学理事長は「タバコというのは覚せい剤や大麻よりもやめにくい。日本では年間13万人位が亡くなる。副流煙による死亡者は1万5000人位だ」と主張する。禁煙の波に乗り、"全面禁煙"を打ち出したのが東京・渋谷区の「BAR ODIN」だ。世界中から1000種類を超える酒を調達し人気を呼んでいたが、全面禁止にしたところ、客足が遠のいてしまったのだという。「喫煙する方が減り、禁煙にしようという意見もあったので思いついきでやったが、最初の1週間、10日くらいは閑古鳥だった」とマスターの菊地貴彦さん。