ジョージのインドネシア体験記

パダン(Padang)という、インドネシア、西スマトラの地方都市での生活体験記。

No.21 パイナン(09.09.23)

2009-09-28 10:30:00 | No.21~No.30
 ラマダンが19日で終わり、20日はIdul FitriあるいはLebaranという、断食明け祭を迎えました。日本でいえば、お正月のような感じです。数日前から帰省ラッシュが始まり、その様子がテレビで報道されていました。
 第三世界の都市でよくあるように、パダンも近年に都市化が急速に進んでいるようで、生粋のパダンっ子というのはそれほど多くはないよう。私の友人たちも多くは田舎、周辺の地域へ里帰りしています。
 私もこの機会に、3月にパダンへ来て以来ずっと行きたくて行けずじまいになっていた、パイナン(Painan)へ行くことにしました。
 パダンからパイナンへは、バスで2時間から2時間半。何種類かのバスがありますが、今回私が利用したのでいえば、料金は片道2万ルピア(約200円)。行きはデキがバイクで送ってくれて、1時間40分ぐらいでした。今回は1泊2日でしたが、日帰りもできそうです。

 パイナンはパダンの南東にある、海辺の小さな町です。町の南西がインド洋に面して入り江になっています。他の三方は丘や山に囲まれていて、小ぢんまりとした、たたずまい。だいたい2km×3kmぐらいの範囲におさまるでしょうか。
 私が初めてパイナンを訪れたのは2006年。その当時は、その1年前に日本での仕事を終えた友人のドナがパイナンの実家にいて、地元の高校で日本語を教えていました。
 初めてパイナンを訪れた時、強い印象を受けたのを今も覚えています。それ以前に見たパダンの町とその周辺、あるいは高原の観光地となっているブキッティンギと比べても、きれいな町だなと思いました。道路もパダンよりはるかに整然としてきれいです。落ち着いた雰囲気で、町に気品があるように感じました。
 私の印象では、私の知っている日本の町に例えると、西スマトラの州都であるパダンは、ゴミゴミして騒がしいのが大阪や名古屋のようで、パイナンは、小ぢんまりと落ち着いた感じが鎌倉のようです。

 海へ向かって右手、町の北側の丘に登ると展望台があって、町が一望できます。町の反対側、パダンの方向もずっと見渡せ、そちらの海岸は砂浜が砂嘴状になっていて面白い。バリサン山脈の緑豊かな山々が幾層にも重なって見えます。そして真っ青な空とインド洋の海とが遥か彼方まで広がり、そこに点々と島が浮かんでいます。
 この景色だけでも、私はすっかりパイナンが気に入ってしまいました。ドナの話によると、毎年この丘で、パラグライダーの大会が催されるそうで、オーストラリアやヨーロッパからも多くの人が来るのだそう。今回訪れた際には、3人の人がちょうど飛ぶところを見ることができました。

 丘のふもと、入り江の口の先に当たるところには砂浜があります。入り江の湾内もずっと砂浜になっているようですが、そこには漁業者がメインで、あまり一般の人は入らないよう。
 私が知っているこの3年間だけでも、ちょっと様変わりしたほどに、ここの浜辺は観光スポットとして整備が進められています。今回は少し海が埋め立てられて、100m四方ぐらいの駐車スペースができていました。かなり広く見えますが、レバランという、日本の正月休みのような時だからか、車とバイクでいっぱいになっていました。
 砂浜から海上には遊歩道が設けられていて、すぐ向かいの、干潮時には歩いて渡れるようになる小島にもつながっています。そこからさらに、2、300mほど沖にある島まで、いくつもの渡し船が行き来しています。これも私が前回に来た、約1年前にはありませんでした。

 このレバランにはパイナンを訪れる他、日本に絵はがきを送ろうと思っていました。ですが、ずっと前から気にしていたし、ラマダン以降は積極的に探すようにしていたのに、パダンでは絵はがきが見つかりません。いろんな人に聞いて、郵便局、文房具店、お土産屋などを探し回っても、ない。たかが絵はがき程度の物と思うのですが、それが見つからない。
 パイナンにならあるかも知れないと思ったのですが、すでに述べたように、駐車スペースがいっぱいになるほどの人出で、飲み物、食べ物を売る人や店は多いのに、土産物を専門に扱う店は近辺には見当たらないし、民芸品なんかを並べて売っている人も少ないのです。あまり探す時間もなかったのですが、パイナンでも手に入りませんでした。
 どうも、土産物屋の品揃えを見る限り、ここでのお土産はお菓子類が最もポピュラーで、形が残るものはマイナーなようです。

No.20 ネズミ捕り(09.09.19)

2009-09-25 21:23:51 | No.11~No.20
 今の家に入居して間もなく、ときどき屋根裏で物音がするようになりました。ネズミが入ってきているのです。でも、下に降りてくることはないようだし、1匹ぐらいいても害はなさそうなので、そのまま放っておくことにしました。屋根裏にいる限り、こちらから手出しもできませんし。
 けれども、いつ頃からか、物音のする頻度は高くなるし、どうも2匹以上になってる様子。こっちから手出しはできないけれど、もし雄と雌がそろっているなら、子供を産んで増えていく可能性があります。「ネズミ算式に」とまではいかなくても、あんまり増えられるのも気持ち悪いし、なんとかして追い出せないかな、なんて考えていると、ついに実害が出始めました。

 台所の流しに置いてあった石鹸が、ガスコンロの下に落ちていました。かじられた跡がたくさんあります。カラスが石鹸を好んで食べるということは聞いたことがありますが、ネズミも食べるんですね。石鹸だけではありません。停電の時なんかに使うのに置いているろうそくが、無残な姿になって床に落ちてます。インスタントラーメンの袋が食い破られていたこともあります。
 それまでは気付いてなかっただけで、おそらくずっと以前から降りてきていたのでしょう。そのころから、「実物」を見かけることも多くなりました。浴室や台所横のスペースの上には天井板を張っていないので、屋根が直接見えます。そこで徘徊しているのをしょっちゅう見ます。
 日本でネズミを見ることなんて、ほとんどありませんでしたけど、どうも日本のネズミより大型のよう。初めて見た時は、予想外に大きそうに見えて、ちょっとびっくりでした。
 さらに、ちっこいのを連れて歩いているのも見ました。ついに繁殖してしまったよう。

 とにかく、下に降りてきていろいろ食い荒らしたり、子作りするのなら、我が家から退去願いたい。見つけた時に追いかけたって、捕まりっこありませんから、罠を仕掛けることにしました。それで、家にあるものを使って、もっとも原始的な罠から初めて、何度か試したのですが、それがことごとく失敗。
 どうも、たかがネズミと侮っていましたが、私の思っていたよりもずっとネズミの能力は高いようです。おまえがバカなだけだという声も聞こえてきそうですが。

 私の間抜けっぷりを見かねたのか、デキが「ネズミ捕りの接着剤を使え」とのアドバイス。そんなものがあるんですねえ、知りませんでした。さっそく買ってきて、試してみました。
 どういうものかというと、早い話がゴキブリホイホイのネズミ版。ただし、粘着剤だけなので、自分で板などに塗らないといけません。
 市販品の効果はどんなものかと期待していると、間違いなく上を踏んでいるのに、逃げられてしまってます。ネズミの脚力よりも粘着力が弱くて、捕まらない。なんという期待外れ!

 市販品でもダメとなると、どうしたものかなと思っていたのですが、3日目についに捕まえました。まだ体毛も薄い子供です。子供はまだ力が弱くて逃げられなかったのでしょう。
 ネズミがくっついた板をそのまま家の中に置いておくわけにいかないので、棒で首を押えて窒息死させ、板ごと捨てました。デキに、「やっと1匹捕まえた。子供だ」と言うと、「板はどうした?繰り返し使えるから、捨てちゃだめだ」。
 一回成功すると、うまくいくようになるものなのか、その後続けてさらに2匹の子供が捕まりました。デキはペンチで首を折ってそのまま板からはがし、袋に入れて捨てます。私はNo.19で書いたような鶏のとか、平気なはずだったけど、ペンチで…かあ。

 子供ばかりですが3匹捕まえて、なんとなく要領がわかってきたので、接着剤を買い足して、新しい罠を作ったところ、これが成功。ついに大人のネズミを捕えました。しっぽを除いた体長は約16cm。思っていたよりも小さいので、雌かもしれません。確認しなかったのでわかりませんが。どっちにしろ、つがいの片割れがまだ残ってますし、他にもまだ残っている可能性はあります。

 ネズミ捕りの過程でわかったことなのですが、今までヤモリの糞だと思っていたものは、実はネズミのものでした。落ちている場所や性状でヤモリのだと思っていたのです。
 最近は無くても、以前に落ちていたことのある場所を思い出してみると、えーっ、こんなところにもうろついてたのか、というのが何か所も。知らない間は幸せでした。

No.19 学生の仲良しグループ(09.09.14)

2009-09-15 15:12:00 | No.11~No.20
 この日曜日は、ブン・ハッタ大学の学生たち10人が家に来て、断食明けの食事を一緒にしました。以前に計画したのが、一度お流れになって、今回は実現することができました。
 連中は同じ学年の仲良しグループ。何かとしょっちゅう集まる中に、私も巻き込まれているのです。全員だと17、8人ほどでしょうか。男女比はほぼ半々。数人の仲良しグループができるのは、どこででも常の話ですが、十数人が頻繁に集まっては何かやってるというのは、ちょっと珍しい。

 12時過ぎに、2時頃に来るという携帯メールがきて、どのくらい遅刻するものかと、料理の段取りなんかを考えながら待ってると、だいたい集まってきたのが3時半頃。私は一人暮らしだから、たくさん料理するのに慣れてないし、のんびりやってて6時20分の断食明けに間に合わなくなると困るから、さっそく料理に取りかかります。というか、そうさせられました。
 今回作ったのは、親子丼とルンピアという春巻き。ルンピアに要るものや調理の手順がわからないので、限られた場所と器材をどう使ったものかと、ちょっと考える間もなく、4人の女の子たちがルンピア作りを始めたのです。
 止める間もなく、あるものを手当たり次第に使っていきます。親子丼は私が作ることになるので、最低限必要になる鍋2つを確保するのがやっと。さらに同時進行でゼリーまで作り出します。各人がそれぞれ自分の思うままのことをするという感じで、段取りも何もあったものじゃない。使い終わったものをそのままにして、すぐに片づけてくれなかったりもするので、後がつかえてはいけませんから、一つ終わったと見れば、私がさっと片づけてしまいます。
 さらに男どもはほとんど手伝いもしないのに、覗き込んできたり、まわりをうろちょろして、狭い場所が余計に狭くなる。

 料理に限らず、仕事なんてのは一般的に言って、段取り7分。料理番組なんかのように、要るものをそろえてからやれば、あとは楽にキレイにできるのに、そういう習慣はできてないよう。学生なんだから、もうちょっと頭を使ってほしいところ。まあ、日本でも要領の悪い人はいくらでもいるし、彼女たちだけを見て、これをお国柄というわけにはいきません。
 それでも、彼女たちを見ていると、ある程度の役割分担はあるよう。まず、男どもに関しては、手伝いたくても料理ができないから手出ししないのか、初めから手伝う気は毛頭ないのか、こういう時にはほとんど何もしません。一人だけちょっと手伝いをするのがいたから、前者でしょうか。それにしても、後片付けや、飲み物の用意ぐらい、ちょっと気が利くならできることはあるのに、まあ全くしませんね。
 女の子も、火を使う所によくいる子、洗いものをよくしてる子とかって感じで、誰がどういうことをするのか、いつもだいたい同じで、なんとなく決まっているよう。

 親子丼にはもちろん鶏肉が要ります。ルンピアにも鶏を使いました。パダンで鶏肉は、日本のように部位ごとに切り分けては売られていなくて、1羽単位で売られています。市場では生きた鶏が囲いに入れられていて、客があれば、首を切って壺のようなのの中に放り込み、失血死したところを羽をむしって売ってくれます。今回学生たちはスーパーで買ってきましたが、それも1羽丸ごとがパックされてます。
 つまり、家で鶏肉を料理するなら、肉をさばくところから始まります。私は肉をさばいた経験がなく、以前にえらく苦労しましたが、今回は先にルンピアで使うために、ついでに親子丼の分もやってもらいました。

 親子丼の味付けの基本は醤油とみりんですが、両方ともパダンでは売っているのだけれど非常に高いために、私は持っていません。酒もありません。中華の醤油に似たものがあって、それはパダン料理にも使われるので、安く手に入ります。
 だしは、見た目には煮干しが市場でよく売られていますが、おそらく煮ずに干しただけのもので、臭みが強い。昆布はもちろんありません。我が家には顆粒のだしの素があるので、それを使いました。
 という調味料の制約がある中で作ったにしては、自画自賛の出来で、かなりうまくいったと思います。もし日本でこれを食べても、不満はないかもというぐらい。
 しかし、私がおいしいと感じるものは、パダンではウケがいまいち。卵が半熟だとダメで、固めにしないといけないのは承知していたので、十分に火を通したのですが、それだけではありませんね。おそらく、だしの味に慣れてないから、塩気や甘味がかなりしっかりないといけないのでしょう。私の好きな京風の薄味料理は、パダン料理の中にはありません。

No.18 生物ろ過の浄水装置(09.09.07)

2009-09-07 14:51:26 | No.11~No.20
 今回も水の話題です。前回は違う話題で1週間あいたわけですから、もうそろそろ濾過池の生物相が安定しだして、飲用にし始めていると思われた方もいるかもしれません。私もそういう心づもりでいました。が、何事もそう思い通りにいかないのが面白いところ。
 ということで、今回は失敗談です。

 まずは、ちょっと時間をさかのぼって、水を通し始める前の話から。
 粗ろ過池とするために、プラスチックのごみ箱6個に穴をあけて、そこにホースを通して砂利を詰めたわけですが、いざ水を通してみると、ホースの継ぎ目からポタポタと水が漏れてくる。場所によっては、何度もやり直しても、どうしてもジワーッと水が漏れ出してくるところもあります。シーリングが思いのほか難しい。
 もし屋外だったら、面倒だし、ちょっと濡れるぐらいは、ほっといてもいいんですけど、室内にあるだけに、床が水浸しになってしまいます。どうしても漏れてくるところは、水を誘導して、容器に受けることにしました。今は、濁り成分で穴がふさがったのか、漏れてこなくなりました。

 水漏れの問題を何とか解決して、今度こそと思ってみると、粗ろ過用の砂利が小さすぎて、濾過抵抗が大きく、思うように水が流れてくれない。メインの砂層に使う砂の大きさは本に載ってましたが、粗ろ過に使うものの大きさは載ってなかったのです。それで、粗ろ過池6個のうちの2個に1~5mmぐらいの砂利を使ったのですが、これが小さすぎたのです。
 仕方がないので、その砂利を全部捨てて、もっと大きな石を入れることにしました。他の粗ろ過池も、礫層の上の水深がやや深すぎたようなので、この機に石を追加することにしました。
 と言っても、砂や石は川原で集めて洗ってから持って帰ってくるわけですから、アシがなくて私一人では行けない。この浄化装置を作るにあたっては、ずっとデキに手伝ってもらっていましたが、デキと私の都合が合わないと、なかなか先に進まないのです。それがこれほど時間がかかっている最大の理由でしょう。今の時点でも、6個の粗ろ過池のうち、一つは空っぽのままなのです。

 ポンプが使えるのは、はじめに原水をくみ上げる1回限りですから、まずタンクに水をくみ上げて溜めます。タンクの下部に蛇口があって、そこからちょっとずつ粗ろ過池に流し、自然流下でそのままメインの砂層に水が流れていくという構造になっています。
 タンクの中がいっぱいのときは水圧が高いけど、水が減ると共に水圧も下がるわけですから、蛇口から出る水の量も減ってきます。すると、砂層では流出水よりも流入水が少なくなってしまって、水深が下がってしまう。
 こんなことは初めから分かっていたし、蛇口の水圧を一定にするぐらいの細工は、そんなに難しいことでもありません。でも、作るのを忘れていたために、これからするとなると、水を全部抜かなきゃならないし、付属品も外さないといけない。かなり面倒なことになってしまいました。

 ここまでは、私が実際にこういうものを作るのが初めてで、ド素人ゆえの過ち。もし他でも作ることになったら、もう失敗しないでしょう。ですが、まだ問題があります。
 砂層に水を通し始めてから、もう2週間経つのですが、砂層上には一向に藻が生えてこないのです。砂層上だけではなく、粗ろ過池にも見た目には何も生えてきてません。鉄バクテリアばかりが増えているよう。藻なんてものは、ほっときゃいくらでも生えてくるものだと思っていただけに、何かが足りないのか、または繁殖が阻害されるほど何かが多すぎるのか、思案にくれています。
 それで、室内に設置しているだけに、シードソースがないのかと思って、家の横の溝に生えている藻を採って来て、濾過池に入れてみたのですが、増えるどころか、徐々に減っていき、姿を消してしまいました。昼間は、小さい気泡を出していましたから、ちゃんと光合成して生きているはずです。生きられる条件がなくて枯れているわけではなさそう。観察していると、どうやらユスリカの幼虫などに食べられてしまっているよう。繁殖よりも被食の方が早くて、繁茂できないようです。ということは、もっとたくさん採って来ればいいということでしょうか。

 ということで、「完成した…」なんてタイトルをつけてしまったのは早計だったようで、まだ完成したとは言えない状態です。水質も初日からほとんど変わってません。
 私はもちろん飲み水を作るつもりだし、できなければ、それこそ失敗だと思ってるんですけど、デキは「これだけキレイになってて、まだダメなのか?」と言います。デキは臭気プンプンで茶色く濁った原水をよく知ってますからね。「こんなに簡単にキレイな水が作れるなら、自分の家にも作りたい」と言ってくれたのは、とても嬉しいことです。