地形学とGIS / Geomorphology & GIS

ある研究者の活動と思考の記録

斜め空中写真

2009-11-10 | つれづれ
7月の若手地形学者セミナーの際に,国際地形学会の会長であるMike Crozierが,「地形学者は飛行機の窓側の席にいつも座る」と講演の中で話しました.

自分も以前はそうで,スチュワーデスに「映画をやるから日よけを下げて」と言われても,スキをみて日よけを少し上げ,地形を見ていました.しかし今は,フライトのルートや時間によっては動きやすい通路側の席をとります.Mikeの話を聞き,自分の熱意が落ちてしまったように感じました.

先週,済州島での学会に向かう時のフライトでは,窓際を確保して地形を見ていました.我が郷里である諏訪盆地の少し南側を通過しましたが,伊那市付近の風景をみて驚きました.天竜川,三峰川,小沢川の河道と段丘崖が作る,十字架のような形が見えたからです.はくちょう座か南十字星,という感じがしました.

その後,伊那市付近の地図や衛星画像を見てみましたが,十字のパターンに気づくのは困難でした.どうやら,飛行機で斜めから見ないと,認知できないようです.

地表のパターンを知るのに斜め空中写真が使えるというのは,新たな認識でした.もちろん,斜めから見るとバイアスがかかるので,読み取ったパターンの客観性は高くないのでしょう.伊那の場合にも,実際には屈曲のある地形が,斜めから見ると直線的に見えるという効果に起因するようです.それでも,予想外のパターンが見えるのは面白いと思いました.

なお,この「十字」を地形学的に説明するのは難しそうです.黒部の十字峡のように,岩盤を刻む谷であれば,方状節理などで説明できそうです.しかし伊那の場合は,河川堆積物に覆われた盆地の中なので,たまたま本流と支流がそう分布している,ということに尽きる気がします.

All right.
Sail away to the sign.
(The Sign of the Southern Cross / Black Sabbath)