世紀末ウィーンとシェーンベルク ~自由な音楽を求めて~
に行ってきました。最初に3D映像(メガネをかけてみるやつ)で簡単な紹介を、東京文化会館の音楽監督の大友直人が話します。なかなか興味深い試みです。
さてプログラムですが、
浄夜(弦楽六重奏オリジナル版)
月に憑かれたピエロ(ピエロ・リュネール)
の2曲です。
浄夜はすばらしいアンサンブルで、ロマン的な雰囲気を十分に伝えた演奏でした。特にこの曲で重要な役割を与えられているヴィオラが素晴らしく、弦楽六重奏(Vn・Va・Vc各2)という特殊な編成である必然性を感じさせました。
月に憑かれたピエロは、シェーンベルクの最高傑作で、20世紀の最高傑作の一つという評論家もいたと思います。自分も20世紀に書かれた曲では、春の祭典とこの曲の2曲が最高傑作と思っています。
演奏は技術的にはほぼパーフェクトであったと思います。メンバーそれぞれが仕事を持ち、集まって練習する機会はそう多くはなかったはずなのに、素晴らしかったです。特に自分がやっている楽器であるクラリネットは、この曲の難しさをよく知っているだけに、非常に感銘を受けました。
しかし、演奏後の観客の反応は、浄夜のほうがよかったような気がします。難しいと感じてしまったようです。実際、指揮者も終わりに「やるほうも難しいんだけど、聞く方も難しいよね」というようなことを言っていました。自分も、ちょっと難しさを感じさせてしまう演奏であったように思いました。
それには一つテンポの速さがあったと思います。(私が感じるに)全体にやや早めのテンポでした。それでアンサンブルは破綻せずに素晴らしく進んでいくのですが、もう少し余裕がほしいというか、この曲の持つ「甘さ」にやや欠けていました。
また、生で初めて聞いてみると、生で演奏する上でのこの曲の持つ、本質的な難しさのようなものを感じました。一つには、やや歌が伴奏で埋もれてしまうことです。これは会場の関係もあるかもしれません。また、ピアノがどこか微妙というか違和感を感じます。奥に配置されていたのですが、弦・管とのアンサンブルがもう少し溶け込んでほしいと感じたことと、ピアノがソロとして使われている部分はちょっと遠くに聞こえてしまいます。これは曲に内在する問題で、解決不能であるような気もします(曲によってピアノの位置を変えるわけにもいきませんし)。マイクを通してミキシングしないとバランスが整理されないのではと思いました。
この演奏を聴いて、聴衆が、「やっぱりシェーンベルクは難しいんだね」と感じてしまったら残念であると思います。ピエロ・リュネールは、非常にロマン的で甘い曲であると思います。例えば最後の「おお、なつかしい香りよ」は、しみじみとしていて、懐かしさを感じさせる、泣かせる曲です。その雰囲気は今ひとつ伝わっていないように感じました。
しかし、この曲を生で聴けるのはめったにないことなので、大変良い経験でした。