方向音痴はつらいよ

　「華子、今の電話　聞いてくれてたでしょう？

どうしよう……」

「太郎お兄ちゃんに電話してみよう。」

「うん。わかった。

あ。太郎？お母さん。

仕事中に　会社に電話して　ごめんね。

　今ね。お祖母ちゃんが入っている

老人ホームのスタッフから　電話があって、

　お祖母ちゃんが、入浴中　目の焦点が

合わなくなって、ロレツも回らなくなって、

西救急病院に　救急搬送されたんだって。

それで　家族に救急病院に来てほしいって言うの。

　叔父さんに連絡しようとしたけど、

携帯を持ってないし、会社に電話したら

今日は有給取って、会社は休んでる。

　自宅は留守電で　吹き込んではあるけれど、

聞いてもらえているのか分からない。

連絡が取れないんで、私の所に電話がきたの。

　私はちょうど　華子の出産の手伝いで

華子の所に来ちゃていて、

これから　どんなに急いで行っても

５時間はかかる。

とても行くことは出来ない。

　太郎、申し訳ないけど　会社の帰り

病院に行ってもらえないかな？

………良い？良かったーー。

よろしくお願いします。

　病院から電話して、教えてね。

どうもありがとう。じゃぁね。」

「お祖母ちゃん、大した事ないといいねぇ。

だけど、電話連絡取れないのは困るね。」

「本当に、困るよ。

もう　これが初めてじゃないんだよ？」

「どうして叔父さんは携帯を

持たせてもらえないんだろうね？」

「どうもスマホで買い物をされるのが

奥さんのきーちゃんにはイヤみたいでさ。」

「きーちゃんも、不便だよね？」

「そうよ、いちいち連絡が全部

自分の所に来るんだからねぇ。」

「家族で意地悪しあってもしょうが無いよね？」

「同じ屋根の下に住んでて、いがみ合っても、

毎日が不幸なだけだよ。」

　　　　　　　　┐(´д｀)┌ﾔﾚﾔﾚ